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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter4:邪教戦士篇前編
40/330

第40話『勇ましきアザレア』

シリーズ第40話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

美と洗練が煌めくアザレア王国にて用心棒オールをガイドとして加えた一行。オールの薦めにより、ゆっくりとアザレアの文化を堪能しようとしていた。



「皆様、アザレアを満喫するにあたり、何かご希望はございませんか?」


「そうだなぁ…じゃあアタシ、AKロックが聴きたい!」


「おっ、良いね!俺も俺も!」


「かしこまりました。ちょうどその手の分野に詳しい仲間がおりますので、連絡してみますね」


「う〜ん……私はあまり気乗りしません。ザラームの件は急がなくて大丈夫ですか?」


「構わん。ちょっとくらい息抜きしたって良いだろう。ザラームにとっても見聞を深める良い機会だ」


「うん、大丈夫!ワタシも音楽聴きたいよ〜!」


「モニカさん、真面目なのは貴女の美徳である。でも、いつも力んだままでは疲れてしまうのであるぞ?貴女のためにもなるのである。よく学びよく遊ぶのである!」


「はい…カシブ、すみません」


「フフッ、ほらほら、そんな暗い顔をしなさるな。羽を伸ばすときはめいっぱい伸ばすのである!」



昼過ぎ頃、オールの仕事仲間が宿まで訪ねてきた。一行はロビーに集まり、自分達への来訪者を出迎える。現れた人物は一見すると男性と思うような長身だが、顔立ちは明らかに女性のそれであった。



「やあ、テレーズ。ご足労かけたね」


「いいってことよ!オールの頼みだし、AKロックと聞いた日にゃ黙っちゃいられないさ!」



テレーズはオールよりも大柄で180センチはあろう長身だ。肩まで伸びたダークブラウンの髪、青い瞳に白い肌、黒やダークグレイのモッズファッションに身を包んだ姿は洗練されていながらワイルドな印象を受ける。鍛えられた逞しい体躯はオールとは異なる色合いで男性的な雰囲気を醸し出していた。



「モニカ・リオーネと申します。大所帯ですが、よろしくお願い致します」


「アタシはテレーズ。すっげぇ、満員のライブハウスみたいに賑やかじゃん!よろしく!」



テレーズを加え、アザレア王国都市部へと繰り出す。整った美しい街並みにはこの地に生きる人々の高貴な精神が息づいていた。



「オール姉ちゃんとテレーズ姉ちゃんはイケメンやからアザレアの街並みがよう似合うてんなぁ。コレット姉ちゃんが顔真っ赤になっとるで〜♪」


「…うん…2人とも、カッコイイ…」


「フッ、恐縮です♪」


「おいおい…お嬢ちゃん達、おだてても何も出ないぜ?まあいいや、サンキュー♪」


「そういえば、2人はいつから友達なの?すっごく仲良しだよね!」


「オールとは子供の頃からの付き合いなんだよ。昔から勉強するのも遊ぶのも一緒だったよな!」


「そうだね。贔屓目抜きにテレーズは信頼の置ける人だ。どうか安心して私達に任せてもらいたい」


「ああ、ヨロシク!で、AKロックはどこで聴けるんだ?」


「トリッシュ、今すぐには聴けないみたい。開演まではまだ時間があるよ?」


「よし、なら手始めに歴史館に行ってみようか。AKロックを知るには一番、ファン垂涎のスポットだよ!」



テレーズの案内で歴史館へと向かう一行──少しずつ遠く離れていくその背をグレーの彩りを持つ機械少女が見つめていた。



「マスター、標的群が人口密度が低い地点に入る見込みです」


『よし、そのまま追跡を続けるんだ。不要な騒ぎを起こさぬよう注意しろ。必要なのはデータだけだ』



プロトの影が迫ることを知る由もない一行はAKロック歴史館に到着した。AKロック界の偉人達の功績や彼らの愛用品、AKロックの成り立ちから現代に至るまでの歩み──AKロックという音楽の足跡が縮図になって収められていた。



「ここが歴史館か…すげぇ、なんか輝いて見えるぜ!」


「ヒャッホウ!こりゃあROCKだなぁ!」


「わーい!AKロック〜!」


「こら、ザラーム!触るんじゃないぞ?」


「おお…これは素晴らしい!このギターは53年前、この衣装は32年前…現代の奏法が確立されたのは37年前まで遡るんですね…」


「フフッ、ケイトは歴史好きだからね…って、リデル?どうしたの?」


「エレンさん…さっきから誰かに見られてる気がするんです…」


「うん…気のせいじゃないかな。それとも慣れない場所で落ち着かないかい?」


「リデルさん…ご安心ください。何があっても貴女は私が──」


「オール!必要以上のお触りは禁止だよ!あんた、わかってンだろうね!」


「やれやれ…可愛い女の子に目がないのも変わってないな…」


「オールさん…ありがとうございます♪」


(リデルちゃん…いいなぁ…オールさん、カッコイイなぁ──)


「ほれ、コレット!ボーッとしとると危ないぞい!どれ、もっと見てみるとするかのう!」


「マスター、警戒しているのは1名のみです」


『よし、そのまま続けろ』



遠くの歴史に触れた後は間近で実物に触れる。トリッシュとリタが楽しみにしていたAKロックのライブが始まろうとしていた。



『We are GOLD RUSH!さあ、最高のグルーヴ、始めようぜ!!』


『ウオオオォォ〜ッ!!』


「フフッ…テレーズ、こうしてハメを外すのも久しぶりだね──」


「オール!始まったらもう何も考えるな!頭を空っぽにしてブッ飛ばすぞ!!」


「あ、ああ…そうだね…(テレーズも相変わらずだ。昔からライブが始まると、こうして目の色が変わっていたっけ…)」



2時間余りの公演はあっという間に過ぎていく。革新と伝統の調和はアザレアの洗練とロックの力強さが融合したものとなり、一行の心を強く揺さぶっていった。



「Yeah!ロック最高!!めっちゃめちゃ楽しかったじゃん!な、クレア!」


「うん!あたしもロック大好きになったよ!フェリーナ、面白かったね!」


「ええ。歌声や演奏からとても力強い気を感じたわ。この気が音楽が人の心にもたらす力なのね…」


「そうだな。俺も来られて良かったぜ…ルーシー、楽しかったか?」


「はい!すごく素敵でしたわ!わたくしもロック音楽への認識を改めないと──」



皆の余韻を引き裂くようにプロトが現れた。人は既に疎らになっていたが、辺りの石畳で整地された古風な街並みに対し、プロトの機械的な佇まいは極めて異質に映っている。



「な…なんだ君は!?」


「貴女はガローファノ国で会ったプロト…!」


「標的確認──戦闘体勢に入ります──」


「何者かわからねぇが、只者じゃないな!オール、いくぜ!」


「OK。アザレアの地を汚させはしない!」


「よし、任務開始!みんな、気を付けて行くよ!」



モニカ達は周囲を取り囲み、街に被害が及ばないように注意を払いながらプロトと対峙する。しかし、プロトは前回と同じように軽く受け流す程度の反撃しかしてこない。モニカ達を見定めるように、対峙する者の力量を測るように、冷たい瞳で見つめていた。



「バグズバンプス!」


「若草色の虫──火力極小だが複数の補助効果を検出。装備武器の補助パーツとして搭載──」



「スプラッシュロンド!」


「水色の水──撹乱機能良好。データ分析を実施し、活用パターンを適宜作成する──」


「熱き血潮のストレートッス〜!」


「琥珀色の闘──瞬間的破壊力に秀でる。データサンプルを即時作成する──」


「グラッサージュ!」


菓桃(キャンディピンク)の菓──威力を使用者の精神に依存。搭載に際し要検討──」


「ダークスフィア!」


「濃紫の闇──火力は平均値を僅かに下回るが、エネルギー装填により補完可能。予備武器として装備する──」


「ソニックブーム!」


芳紫(ラベンダー)の時──狙撃武器として機能優秀。搭載に際しリボルバー回転数向上が課題──」



プロトに対しオールとテレーズも臆することなく挑みかかる。愛するアザレアを守ることへの使命感が勇猛な2人を動かしていた。



「マンチェスタースマッシュ!」


「オラァ!!」


「風術式展開──ウィンドカッター──」


「うわっ!?」



疾風の刃が駆け抜け、オールを切り裂いた。プロトの黒いボディスーツがミントグリーンに染まっている。その彩りはフェリーナの紋様と全く同じ色であった。



「オールさん!?大丈夫ッスか!?」


「これはフェリーナお姉様の技…いったいどうして──」


「龍術式展開──龍鱗砕き──」


「グッ!!生意気な奴だ……いつまでも調子乗ってんなよぉ!!」



テレーズの魂の精霊が目覚め、左手にコーラブラウンの紋様が発現した。ステラの紋様と同じ橙色に染まったプロトの攻撃を荒々しく受け止め、目覚めた力をみなぎらせていた。



「テレーズさんに紋様が…浮かび上がりましたわ!」


「間違いないわ…たった今、此処で発現した…初めて見たわ!」


「力が…体の奥底から沸き上がってくる!これがアタシの力なのか…!?」


「…新しいデータを保存。直ちに戦闘を中止し、インストール作業に移行する──」



プロトはまたしても去っていった。一行の健闘で周囲の景観は守られたが、オールとテレーズの表情は晴れず、悔しさに歪んでいた。



「チッ、逃げやがった!美しきアザレアを乱すなんて、次に会ったらただじゃおかねぇ!!」


「うむ…皆様何やらお困りのご様子。私達でよければ事情を聞かせていただけますか?」



一行は宿屋に戻り、オールとテレーズに事情を説明した。愛する祖国に迫り来る邪教戦士の魔の手を感じ取り、凛とした2人の表情は更に引き締まっていた。



「邪教戦士か…恐ろしい輩がいるものですね…」


「それなら眼には眼をだ!機械に詳しい知り合いがアザレア工科大学にいるから手伝ってもらおう!」


「テレーズ、もしかしてシェリーかい?う〜ん…彼女は少し変わり者だからなぁ…私はあまり──」



真剣な様相を見せていたテレーズの顔色が憤りに染まり急変する。難色を示したオールの胸ぐらを掴み、激しく食らい付きながら詰め寄った。一方、モニカは決意を胸に秘めたまま表情を崩すことなく立ち上がり、2人の元へと歩み寄る。



「なりふり構ってられるかよ!力を一つにしてアザレアを守るんだろ!?祖国を想う気持ちに感性や価値観なんて関係ねぇよ!!」


「オール、私達全員がテレーズと同じ気持ちです。シェリーさんに会わせてください!」


「モニカさん…かしこまりました。すぐに手配致しましょう…テレーズ、すまない…」


「気にすんなよ。お前なら解ってくれると思ってたさ♪で、アタシも同行してもいいかい?邪教戦士退治に協力させてくれ!」


「ええ、喜んで。逞しくて勇ましい貴女がいてくださるなんて、心強いわ…」


「ビアリー様の仰る通りなのである。邪教戦士の好きにはさせないのである!」



テレーズとモニカの熱意にほだされ、オールは濁していた表情を穏やかに緩める。美と洗練のアザレア王国にまで邪教戦士の脅威が襲い掛かってきた。一行は科学者シェリーとの出会いと来るべき戦いに備え、宿で心身を休めるのであった。




To Be Continued…

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