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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter3:カストル篇
37/330

第37話『魔空間〜夢幻〜』

シリーズ第37話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

古代に“妖精の祠”として祀られながら地に沈み忘れ去られていた菓の神殿にてリーベは精霊アプロディテの試練を乗り越えた。聖なる力の加護を受け、遂に魔族七英雄カストルとの決戦に挑む。



「さあ、行きましょう!今こそ愛と夢と希望の光を灯す時です!」


「ピエロ野郎!首を洗って待ってるッスよ!」


「ネイシア、もう少しの辛抱だ。俺達が今助けに行くぜ!」


(ザラーム、待ってろ…この因縁に決着を着けてみせる!)



カストルの居城、魔空間〜夢幻〜。辺り一面に紫色の空間が広がり、所々ガラス片のように煌めいている。幻想的な雰囲気の中、嘲り半分、面白半分といった風合いの笑い声をあげながら魔空間の主が姿を現した。



「アッハハ〜!ウェルカ〜ム!ボクもおふたりさんもお待ちかねだよ〜♪」


「ザラーム!ネイシア!」


『お姉ちゃん!』


『みなさん…来てくれたんですね!』



プリズムの檻に閉じ込められた甘桃(スイートピンク)の聖女ネイシアとヴィオの妹ザラーム──2人の彩りを視界に捉え、モニカ達の表情はより一層引き締まる。



「年貢の納め時だ!2人は返してもらうぞ!」


「そうはいかないよ〜だ!スロース、頼んだよ!」


「はいよ〜…フワァ〜、面倒だなぁ…全軍用意〜!」



スロースの号令で地中から次々に魔物が這い出てくる。ヴィオは先陣を切ってスロースに飛び込み、両掌に構える褐色の刃で斬りかかった。ヴィオのダガーとスロースのロッドが金属音を辺りに撒き散らしながらぶつかり合う。



「オラッ!切る!」


「ほっ、よっと〜…う〜ん、良い攻めッスけど退屈ッスね〜…フワァ…」


「チッ…今に欠伸も出ないように喉元を掻っ切ってやる!オラァァッ!!」



ヴィオに続いてモニカ達も魔物の群れに飛び込んだ。祝福の証に宿された彩りの力を振るい、次々に魔に立ち向かっていく。数多の色彩が天に架かるは己の使命のため──愛する仲間のため──



「ブライトエッジ!」


「バグズバンブス!」


「グアアァッ!」


「シードポップガン!」


「スプラッシュロンド!」


「ギャアァッ!」


「へぇ、なかなかやるね!ここで息抜きのショータ〜イム♪皆様、お二人にご注目〜♪」



カストルの合図に合わせ、赤々と燃える球体から熱を帯びた光線が2人を閉じ込めたプリズムに降り注ぐ。スペクトルが真紅に感光し、檻の中が燃え始めた。



『イヤッ、熱い…助けてください!』


『怖いよ!怖いよ!お姉ちゃ〜ん!!』


「ザラームッ!!なんてことだ…!!」


「そんな…どうしよう…やめて!やめてよ!グスッ…」


「姉貴、泣かないで……グッ…ふざけてんじゃねぇぞコラァ!」


(ヒヒヒ…これを見せしめにボクをバカにした連中を見返してやる!)



『ぬしは真に将か?型を真似するのみで己を磨かず戦おうなど、驕慢甚だし!』


『人真似しか出来ないアンタなんてアテにしてないわ』


『虫ケラめ。貴様が何故俺達と同じ魔族七英雄なのか、理解に苦しむ。そこで指でも喰わえてろ!』


『自ら敵の二の舞を舞うとはな。見るに堪えぬ醜態だ』



(ボクだって魔族七英雄なんだ!もうバカにさせない…)


「貴方という人は…どれだけ卑劣な真似を!」


「そうです!人の命を遊びみたいに弄んで…許せない!」



カーキとダークグリーンの魔方陣が重なる。ティファとアイリスはカストルへの憤りと祝福の証の使命を瞳に燃やしながら彩りの力を最大限に振り絞った。



『堅牢なる意志よ。我等の城壁となり、仇成す者の障壁となれ!シュバリエ・ヴィジョン・ド・ムール!!』



カーキの障壁が四方に連なってぶつかり、2人の彩りを閉じ込めた檻は激しい音を立てて崩れ去った。囚われていた2人の身体が宙に浮かび上がった刹那、ヴィオとリタが互いに示し合わせていたかのように飛び込んだ。



「ザラーム、ケガはないか?」


「うん!やっぱりお姉ちゃんは最強だね!」


「よっと…ネイシア、大丈夫?」


「リタちゃん…私、リタちゃんのこと──」


「さ〜て、形勢逆転だね!お仕置きしてやるから覚悟しなよ!」


「く〜っ!なんてこった!ボクのコレクションが〜!」


「兄貴、慌てることないッス。まだまだオレらが優勢ッスよ!」


「それはどうです?愛と希望を心に煌めかせる私達が勝ちますよ!」


「わたし達は負けません!妖精族の誇りにかけて!!」



ベビーピンクとキャンディピンクが魔方陣となり重なる。甘やかで柔らかな彩りが僅かに残った魔物とディアボロ七人衆スロースを瞬く間に呑み込んだ。



『甘美なる可憐な巨塔よ。愛に煌めき、希望に耀け!グラン・ドルチェ・ローザ・パルフェ!!』



「ぐおわああぁぁッ!カストル兄貴いいぃぃッ!!」



「スロースッ!!…キ・ミ・た・ち〜!ボクを本気で怒らせたなあぁ!?死んでもらうぜえぇ!!」



スロースを討たれ、憤るカストルの身体を黒紫のオーラが包み込むと、プリズムはラベンダー色に染まった。禍々しい狂気に駆られながら音速の刃をひっきりなしに辺りに飛ばす。



「ヒャハハハ!ソニックブーム!!」


「龍鱗砕きじゃい!」


「ううっ!」



ステラの張り手の衝撃でカストル──の身代わりとなったケイトの身体が吹き飛んだ。無傷で自身を嘲り笑うカストルの姿にステラは呆然とするばかりであった。



「なっ…なんじゃと!?」


「アハハハ!仲間同士で傷付け合ってやんの!バ〜カ!」


「しまった!ステラに教えていなかったか…!」


「ヴィオは詰めが甘いね〜♪もちろんキミにはこの技で…って、ありゃ…?」


(…?…様子がおかしいな。まさか…)


「じゃあお気に入りのこの技で…って、あれれ?どうなってるの〜!?」


「ん?私の鞄が光ってる…セピア国の館で拾った玉が!?」


「あたしのポケットも…これ、妖精の城で拾ったやつだよ!」



彩りの力を模倣するも無色透明なままであり、カストルは混乱する。アイリスの鞄が薄紫に、クレアのポケットがチョコレートブラウンに煌めくのを見るやヴィオの表情が一気に緩んだ。余裕の表情に変わったヴィオは懐からコーヒーブラウンの小さな玉を取り出した。




(この薄紫の玉、なんだろう…?何かヒントになるかも──)


(ん?これは何だろう?チョコみたいな色の…ビー玉?たしかここはカストルがいた──)




「フッ…ハハハ!バカは貴様だ!ほら見ろ!」


「ぎょえっ!?なんでキミ達が持ってるのおぉ!?」


「そういうことか。貴様から私のコピーを削り取ったのも忘れるくらいだ。結果は見えていたな!」


「クソッ…!こうなったらキミ達を全員コピーして嬲り殺しに──」


「誰が誰を嬲り殺しにするんだ?今から俺達がお前をKOするんだぜ?」


「そんなにお好きなら差し上げますわ。熱情の赤、溜め息の青──2つが重なる紫を…」


「ウチら全員怒りMAXやで!反省せぇ!」


「貴方なんかには負けない!負けられないんです!」


「貴様は絶対に許さん!我等の力に平伏すのである!」



『受けよ!祝福の証の彩りを!!』


「なんだって!?か、体が…」



リタ、ビアリー、アミィ、ケイト、カシブの5人がカストルに左手の甲を向ける。カストルの胴体のプリズムの同じ位置に彩りの光が射し込み、全身が紫に染まるや否や、カストルの動きは鈍っていった。



「ぐぬぬ……なんのこれしき〜っ!」


「クッ…あと少しなのに…負けたくない…!」


「ケイト姉ちゃん、あと一歩やで!ここでなんとかせな──」


「……」


「えっ!?アンタどうして!?」


「ヒイラギさん…!?」



突如魔空間に飛び込んだのは滅紫の暗殺者、ヒイラギだった。薄紫、濃紫、マゼンタ、ラベンダー、チリアンパープル、滅紫──6つの紫が胸に突き刺さり、カストルは遂に幻惑的な動きを完全に封じられた。



「うぐおぉ〜…体が重い…動けない…!」


「カストル、覚悟しろ!チェックメイトだ!」


「許せません!これで決めます!」



コーヒーブラウンとラベンダー色の魔方陣が重なり合う。ヴィオの両手からコーヒーブラウンに彩られた無数のダガーが放たれ、ケイトの魔方陣が姿を変えたラベンダー色の帯に縛られたカストルの直前で停止する。あたかも時が止まっているかのような不思議な現象が映し身の道化の最期を告げようとしていた。



『積み重ねし汝が業、虚空を駆けよ!クロノチェイス・ペイバック!!』


「嘘だあああぁぁぁッ!!!!」



ケイトが指をパチンと鳴らすのを合図に飛び交ったヴィオの逆襲の刃に貫かれ、カストルの野望は胴体のプリズムと共に粉々に砕け散った。一行の彼の立っていた位置にはプリズムのように耀く無色透明の宝玉が遺されていた。



(カストル…これが奴の末路か──)


「わわっ!?じ、地震です!」


「魔空間が崩れるのである!急いで脱出するのである!」



均衡が崩れた魔空間は次々にヒビ割れていく。一行が辛くも脱出した直後、魔空間〜夢幻〜は魔の彩りである黒紫の炎に焼かれ、黒々とした煙を立てながら消滅した。



『祠の方で何か爆発したであります!紫の炎が燃えてるであります!』


『わわわ…私達が魔族と関わった裁きだわ!呪いだわ!ああ、どうしましょう…』


『いいえ。彼女達が成すべき使命を成したのです。さあ、勝利の宴の準備をなさい!』



妖精王のもとへと帰り着いた一行を盛大な宴の席が待っていた。一行は歓喜に沸いていたが、ヒイラギはいつの間にかいなくなっていた。妖精王は後ろめたさに翳った安堵の表情を見せている。



『よくぞ魔族を討ってくれました!しかし、この度は申し訳ないことを……』


「もう過ぎたことだ。それにツケはカストルにしっかり払ってもらったから安心してくれ」


「えっ?いつの間にもらってたの…?あれれ、その腕輪、どうしたの!?」



クレアがヴィオの右腕に輝くアポフィライトの腕輪に眼を見開く。ヴィオは悪戯な笑みを浮かべながら自慢気に腕輪を見せびらかした。



「これか?カストルからもらったツケの領収証だ。良いだろう?」


「そんなもん持っててどうするってンだい!なんならあたいが壊してやろうか?」


「いや、それはいい。奴に陥れられたこと、あの悔しさを忘れたくない……だから私が持っておくよ。少なくともこの旅の間はな」


「ねえ、お姉ちゃん!ワタシも連れてってよ!置いてきぼりにしたら許さないんだからね!」


「ハァ…わかったわかった。アランチョ国までだぞ?」


「は〜い!ワタシも頑張るね!よろしくお願いしま〜す!」


「フフッ、良かったね、ザラームちゃん。私も無事還れたことを天に──リタちゃん…?」


「ネイシア…お帰り」


「リタちゃん…ただいま♪」



満面の笑みを浮かべたザラームは苦笑するヴィオの胸に無邪気に飛び込み、愛らしく微笑むネイシアをリタがそっと抱き締める。世界を混乱に堕とさんとするカストルの野望を打ち砕いた一行は暖かな歓喜の中、更なる旅路へと想いを馳せるのであった。




To Be Continued.The Story Goes To Next Chapter…

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