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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter3:カストル篇
35/330

第35話『甘い罠?苦い罠?』

シリーズ第35話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

魔空間を目前にして妖精の仮想空間に引き込まれた一行。菓子や料理が地形という到底信じがたい空間でカストルの“計らい”でそれぞれ散り散りに引き離されてしまった。一行の中核を担うモニカはピエロ面の騎士に行く手を阻まれていた。



「クッ、ここは…?早く皆と合流しないと──」



ザクッ!



モニカが立っていたのは床板──ではなくウェハースだった。不意に足場が崩れ、バランスを崩したモニカは闘争しながらも逃走を図り、仲間との合流を目指して駆けていった。



「イタタ…せいやっ!ブライトエッジ!」


『ウオオォォ──』



一方、エレンの周囲には熱気が白く湯気となって立ち上る。エレンが立っていた黒い地面は瞬く間に熱を帯びていき、エレンを足元から焦がさんばかりに攻め立ててきた。



「熱ッ!これ、鉄板だ!あのピエロがあぁ…調子乗るのもいい加減に…お前らも邪魔すんなこの野郎おおぉぉッ!!」


『グアアァァッ!』



エレンが魔物達に爆発寸前の怒りをぶつけている頃、カタリナは何処吹く風とばかりに鼻歌を歌いながらコーラの池の畔を散策──のんびりと一行の到着を待っていた。



「♪〜♪♪〜それにしてもすごい場所だなぁ…って、うわっ!?足が滑っ──」



ザッパーン!!



「転んじゃった…びしょびしょになっちゃった〜…クシュン!」



リデルは色とりどりのゼリーが並ぶ純白の台地に佇んでいた。リデルが歩を進める度にコツン、コツン、と陶器に触れる音が鳴り響いていた。



「これ、食べられるのかな…?モグモグ…美味しい♪これはイチゴ味…あっちは──」



ステラは特に辺りを警戒することもなく前へ前へと進む。猪突猛進とばかりに豪快に突き進むと、チリアンパープルの彩りが湯気の中からでもはっきりと確認出来た。



「おっ、中華パスタじゃ!って、カシブ!何やっとるんじゃい!?」


「ぐぅ…ステラ…さん…助けて、ほしいのである…」



ステラは熱々な中華ソバのスープの中からカシブを引き上げた。縮れた麺や渦巻き模様の練り物の間から救出されたカシブは肌が紅潮しており、すっかりのぼせてしまっていた。



「うう、飛ばされた場所が此処で…危ないところだったのである。申し訳ない、助かった…」


「大丈夫か?ほれ、冷たいもんを探しに行くぞ!背負ったるわい!」



エイリアとケイトも合流していたが、2人の足場はピザ。辺りの熱で融けたチーズが足に絡み付いて拘束していく。



「エイリアさん!大丈夫ですか?」


「うん、どこもケガしてないよ。ケイトも無事で良かった…それよりもこのチーズ剥がしてくれる?動けなくなっちゃって…」


「はい。それじゃ…あれ?私もここから足が…離れない!?」


「どえっ!?どうしよう…うう〜、動けない〜!」



アイリスはピンチはチャンスとばかりに奇妙な風景を写真に収め、合流していたアミィはハンバーガーで出来た壁を千切っては口にしていた。



「う〜ん、これも巡り合わせですね!この写真を見たら編集長もきっと驚くぞ〜♪」


「アイリス姉ちゃん、珍しいんはわかるけど…油売ってて大丈夫なん?」


「大丈夫です!歩いていればきっとみんなに会えます。焦ることありませんよ!」


「ん〜…そやな。とりあえずお腹は減らんから、ゆっくり行こか!モグモグ…」



ティファはビールの川の流れに沿って慎重に歩を進める。大盾を構えながら一歩ずつ進んでいたが、黄金色の中に深紅の彩りを見つけると、安堵と共に足早に駆け寄った。



「ビクトリア!貴女もここに──」


「プハ〜ッ!ティファ、いいところに来たね!ここならビール飲み放題だよ!ほら、あんたも飲みな!」


「ハァ…心配して良かったのか悪かったのか…」



少しずつ彩りの束が出来る中、魔物をやり過ごしたルーシーとフェリーナは策を練っていた。2人が佇むのはチョコ菓子の木々が鬱蒼と続く黒い森。ルーシーの水色とフェリーナのミントグリーンはチョコレートブラウンの深淵にはよく映えている。



「敵がどこから来るかわかりませんわ。持久戦を想定してわたくし達の拠点を作らないといけませんね」


「そうね。このチョコ菓子の木で何か出来ないかな…」



その南東、魔物を確実に駆逐しながらカステラの平原をとぼとぼと歩くリタ。際限なく続く景色に途方に暮れていたが、ふと右手の指輪、冥の精霊プルートに呼び掛けた。



「プルート、歩けど歩けど誰もいないんだ…助けてくれ!」


『うむ、事情は粗方把握した。お前以外だと精霊同士なら交信出来る。お前の仲間に精霊の契約を交わした者はいるか?』


「1人いるぜ!雷の精霊ヴォルトだ!」


『心得た。任せておけ!』



リタの右手の指輪から薄紫の閃光が一直線に天へと駆けていく。冥の彩りはテリーとクレアが踏み締めていた唐揚げの山の頂をも越えて伸び、薄ピンクの空を薄紫に染めていった。



「うおぉっ!?何やら光っているッス〜!」


「あの色はきっとリタだね!よ〜し、元気出して頑張ろ〜!」



その光はソーダ水の池で休息を取っていたトリッシュにも確かに届いていた。青々と透き通った水面に右手の指輪、雷のトパーズが放つ黄色い煌めきが反射して輝いている。



「な、なんだありゃ?もうちょっと休んだら見に行ってみるか──」


『やれやれ、貴女も呑気な方ですね』


「ヴォルト!?テメェ、開口一番に誰が呑気だぁ!?あんまりふざけてっと──」


『プルートから交信です。静かになさい。ふむ…なるほど…』



ヴォルトとプルート、彩りの戦士と契約を交わした精霊が言葉を交わす。彼らもまた祝福の証の使命に導かれ戦う“戦士”の一員なのだ。



『先程光が昇った地点に向かいなさい。それが現状で出来る最善策です』


「う、うん…」



トリッシュがリタのもとに辿り着くと、既にルーシーとフェリーナ、リボンが到着していた。ルーシーの指示を受け、フェリーナとリタは忙しなく動き回っている。



「なんだよこれ?柱か何か?」


「俺達の小屋を建てるんだよ。設計図はルーシーから借りて!」


「わたしは皆さんを探してここに連れてきます!頑張ってください!」



チョコ菓子の木を切り崩して小屋を築き、リボンは一行の捜索に飛んでいく。それぞれに散らばっていた一行は即席の小さな小屋に集められた。



「合流出来て良かったね、トリッシュ!ぎゅ〜っ♪」


「どわ〜っ!姉貴、甘い匂いするしベタついてるぞ!?抱き着くなって!」


「へえ、こりゃまた随分と立派に出来たもんだねぇ。あたいは飲み足りないのが不満だけどさ…」


「ヴィオ姉ちゃんまだ来てへんなぁ…大丈夫やろか?」


「ビアリー、コレット…エイリアにケイト、リーベもいないよ!?」


「奥の方へ入ってしまったのかもしれないわね…急ぎましょう」


「では、またグループに別れましょう。戦況を見極めて慌てずにじっくりと戦うべきですわ」



モニカ、エレン、フェリーナがリーダーとなり、進軍と拠点整備、不在者の探査を開始する。フェリーナ班が小屋に残り、モニカ班とエレン班が捜索に飛び出した。



「やれやれ、とんでもないところだね…早くここから脱出したいな〜…」


「エレンさん、こんなに素敵な写真が撮れたのであながち悪くもないですよ。不思議の世界特集が組めます!」


「あっ、あそこにいるのビアリーじゃない?行ってみよう!」



唐揚げの山を越えたエレン班が進軍した先に広がっていたのはワインの湖だった。艶やかな芳香が鼻をくすぐる中、濃紫の皇女が何故か魔物達を自身に侍らせていた。



「ウフフッ、なんて愉しいんでしょう…貴方達のお陰で素敵な夜になりそうだわ♪」


『ガウッ!ガウウッ!』


「ア、アンタって奴は…心配して損した…」


「流石は皇女様…生身の魔物を使役するとは、恐ろしい方なのである…」



一方、モニカ班はピザの平原へと踏み入る。エイリアとケイトが囚われる地点にすぐに到達した。



「皆さん、すみません…助けてください!」


「おう、ワシらに任せろ!テリー、やるぞい!」


「よっしゃ、行くッスよ!せーの!!」


『そおぉらッ!!』



ステラとテリーが力を込めて引っ張ると、エイリアとケイトはチーズの罠から解放された。幸い2人とも拘束されただけでケガ一つない。



「サンキュー、助かった!どうなるかと思ったよ…」


「無事で良かったです。2人とも疲れたでしょうから、一度小屋に戻りましょう」



モニカ班が到着すると、フェリーナ班が巨大な魔物と対峙していた。パスタのような触手にコレットが捕えられている。



「えぇ〜ん…怖いよ〜…助けて〜ッ!」


「今助けるわよ!ウィンドカッター!」


「ガードシェル!」


「ギャアアッ!」


「よし来た!…コレット、大丈夫か?」


「うん…リタ、ありがと…だ〜い好き♪」



魔物から逃げ延びたコレットを保護することに成功。フェリーナ班も加わってエレン班が進んだ山岳地帯へと向かう。3つのグループが合流し、更に進軍すると、コーヒーブラウンの彩りが縛られていた。



『ヴィオ!!』


「グウッ…クソッ、動けん…」



ヴィオはドーナッツの輪に全身を拘束され、身動きがとれない状態にされていた。更に槍を携えた大型の魔物が2体1対に待ち構えており、迂闊に近付けば一突き見舞われそうだ。



「クソッ、カストルめ…つくづく卑怯な奴だぜ…」


「あっ…あれ!ヴィオさんが…!」



リデルが指を差したのはヴィオの真下──赤みを帯びた褐色の液体がボコボコと音をたてながら煮えたぎっており、釜は大きく口を開けている。魔物が槍を使ってヴィオの体を縛り付けるドーナッツを突き崩し始めた。



「いかん!このままだとヴィオが釜茹でにされてしまうぞい!」


「許せない…よくも私達の仲間をッ!!」


「エイリア…アンタまで…!?」



エイリアの左手に空色の紋様が浮かび上がる。宙を華麗に舞いながらドーナッツの輪を砕き、踊るように軽快な動きでヴィオを助け出した。



「よっと!ヴィオ、ケガはない?」


「ああ、大丈夫だ。すまない、借りが出来たな」


「グルルオォ…」



ビアリーが靴を鳴らしながら近付く。艶っぽい笑みを浮かべたかと思うと、魔物の毒々しい色の頬に躊躇いなく口付けをしてみせた。魔物は刹那的な快楽に溺れ、錯乱している。



「ビアリー!?何をしているんですか!?」


「ウフフッ…さあ、もっと気持ち良いこと、してあげるわ…」



パンッ!ドシッ!ズバッ!!



『グギャアアァァッ!!』


「ウフフッ、いい鳴き声ね…そんなに気持ち良かったの?」


(ビアリー、やっぱりパンクだなぁ…ブッ飛んでるよな…)


(せやな。皇女様には敵わんわ、ホンマ)



エイリアの覚醒とビアリーの騙し討ちでヴィオを救出した一行。更に奥地へと進むと、規則正しく石畳で整地され、それまでとは明らかに雰囲気が違っている。リーベはいつになく真剣な表情で立ち尽くしていた。



「リーベ!ここにいたのか…心配してたんだぜ…」


「リタお姉様、ごめんなさい。私、ここに呼ばれたような気がして…」



一行の眼前には巨大な神殿が建っていた。薄ピンクとクリーム色で彩られた不思議な佇まいは柔らかな色彩に反して精錬された厳かな空気を醸し出していた。



「しかし、神殿は鍵が無いと入れないはずッスよ?」


「ああ、さっきビアリー様が倒した魔物がそれらしいものを持っていたのである。ほら、これなのである!」



カシブがポケットから取り出した物は、まさしく精霊の試練を受ける為の鍵だった。中心にはキャンディピンクとクリーム色の宝石が甘やかな輝きを放っている。



「それよ!リーベと同じ気の流れを持つ精霊の息吹を感じるわ!」


「うむ。ならばこれはリーベちゃんに託すのである。精霊は正しく生きる者に必ず味方するのである!」



鍵がカシブからリーベに手渡された刹那、飾りの宝石とリーベの左手が同調するようにキャンディピンクの彩りを放った。リーベは精霊の試練に打ち克てるのか?何故妖精の世界に精霊の神殿が存在しているのだろうか…?




To Be Continued…

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