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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter3:カストル篇
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第28話『暴走夢想少女』

シリーズ第28話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

クリムゾンの彩りを振るう凶剣士フレアと対峙した一行。モニカが善戦したものの、彼女は闇に消えてしまう。負傷したトリッシュとリタを病院に残し、騎士団領の怪事件の真相を追うこととなった一行は女性騎士ティファに連れられ、大きな城へと通された。



「ようこそバーミリオン領へ。私はこの城の主、フランシスコです。」


「モニカ・リオーネです。陛下、よろしくお願い致します。」


「ああ、よろしく。ティファ、皆様に依頼する墓地の怪奇事件はどうなってる?」


「はっ!アイリスさん、説明をお願い致します。」



アイリスが一行の前に飛び出し、鞄から一冊のバインダーファイルを取り出す。一連のフレアの騒動から落ち着きを取り戻した眼鏡の奥の瞳は凛とした光を放っていた。



「はい、現場とされている墓地は隣のスカーレット領にあります。スカーレット領へは山岳地帯を越える必要があり、車両での進行は極めて困難です。徒歩しかありません。」


「と、徒歩、ですか…」


「そうか…うむ、続けてくれたまえ。」


「はい…また、現場周辺において近郊の生態系と大きく異なる動植物の発生が確認されており、魔族による影響の可能性が示唆されています。」


「魔族の匂いッスね…よっしゃ!みんな早速──」


「いや、今日はこれから天気が大きく崩れる。明日まで待機した方がいい。君達の安全な任務遂行が最優先だ。ほら、もう雨が降りだした…無理せずに今日は休みなさい。」


「ぬう!自分、戦いたくてウズウズしてるッスよ!早く魔族を叩き潰して──」


「テリーさん!!」


「むぐっ!?ル、ルーシー…」


「陛下の仰る通りですわ。私達まで怪我をしてトリッシュさんとリタさんに心配かけたくないでしょう?急がば回れ、ですよ。」


「むむ…自分の負けッス。ルーシーの言う通りにするッス…」


「それがいいわ。じゃあ、みんながゆっくり休めてテリーの戦闘欲求も満たせる場所に案内してあげるわね。」


「マジッスか!?うおお〜!燃えてきたッス!早速行くッス〜!!」


「あっ、ちょっとテリー!雨降ってるから濡れちゃうよ!待ちなさ〜い!」


「なあ、ビアリー姉ちゃん…ルーシー姉ちゃんが大声出すって珍しない?」


「そうですわね。リタさんと離れてから落ち着きがないように見えるわ。静かな水面のような平常心はかくも難しい…心配ね。」



平静を装いきれぬルーシーを気にかけつつ、ティファに案内されたのは縦横にそびえる大きな建物だった。その姿に圧倒されながら中に通されると多くの騎士達で賑わい、活気が溢れている。また、ティファとは違う甲冑を着た騎士の姿も散見された。



「ここは騎士団ギルド。騎士団領の情報局であり、訓練場であり、活動の拠点でもあるのよ。」


「すごい…!これは大スクープですね!」


「フフッ、すごいでしょ?数あるギルドでも世界最大規模として知られているの♪」


「では、ここでしっかり明日の準備をしましょう。買い物はどちらですか?」


「買い物はこっち、宿は向こうの階段の先、そしてテリーお待ちかねの武道館はあっちよ。」


「うおおぉ!血沸き肉躍る戦いが自分を呼んでるッス!ファイヤ〜〜ッ!!」


「ハハッ!そう来なくッちゃねぇ!面白そうだし、あたいもちょいと一暴れしてくるよ!」


「ビ、ビクトリアさんまで…2人とも気を付けてください!治癒術が必要ならすぐに言ってくださいね!」



テリーとビクトリアは武道館に駆けていく。飛び入りという形になったものの、騎士達は新たな挑戦者を嬉々として出迎えた。



「うおぉ〜ッ!いざ勝負ッス〜!!」


「なんだなんだ?君、剣相手に素手でやろうっていうのかい?」


「自分には剣は不要ッス!この鋼の拳でお相手するッス〜!!」


「ほぅ…大した自信だな。じゃあこっちは大人げなくいくぞ!」


「両者構え!始め!」



テリーは全身から闘気をみなぎらせ、鋼鉄の鎧を身に纏った騎士に怯むことなく拳を振るう。意気揚々と構えていた騎士は周囲の予想を裏切ってテリーの拳勢に圧倒されていった。



「ぐはぁっ!」


「そこまで!勝者、テリー・フェルナンデス!」


「最後に勝負を決めるのは武器じゃないッス!燃える闘魂ッスよ!!」



ビクトリアも騎士の大男に臆することなく果敢に向かっていく。戦闘を楽しむような姿に周りの騎士達は驚きを隠せない。雄々しい連撃で瞬く間に騎士を討ち伏せた。



「そこまで!勝者、ビクトリア・スコールズ!」


「なんだい!騎士とあろうもんが情けないねぇ!こんなか弱い娘に負けちまうなんてさぁ!」


「ビクトリアって…か弱くはない、よね?」


「クレア…本人に聞かれたら殴られますよ。」


「ステラ、行かなくていいの?アンタなら勇んで行くと思ってたんだけど…」


「うむ…ちぃとルーシーとカタリナが心配でなぁ。ほれ、2人ともあの様子じゃろう?」


「…リタさん。私が未熟なばかりに…ごめんなさい…」


「ルーシー…大丈夫。大丈夫だからね…大丈夫…」



リタを想う余り自責の念に駆られたルーシーは遂に人目も憚らずに泣き出してしまった。突然の出来事にモニカ達は勿論、周りの騎士達も心配そうに見つめている。傍らに付き添うカタリナも眼鏡の奥の瞳から今にも涙が溢れ出しそうだ。



「ルーシー、カタリナ…大丈夫?泣かないで…」


「うん…トリッシュは強い娘だから、大丈夫、だよ…」


「グスッ…ごめんなさい…私、リタさんの支えになりたくて…」


「その気持ちだけでも十分やって!2人はここまでめっちゃ活躍しとるんやから、今はゆっくり休んでもらおうや!」


「えっと…アミィの言う通り、です…2人はそれだけで嬉しいと思いますよ──」


「素敵…愛に溢れてる…きっとあの人達が…」


「ん?……!!」



振り向いたケイトの視線の先にいたのはアミィと同じくらいの年頃と思われる小柄な少女だった。ショートボブの薄ピンクの髪にキャンディ型の髪留めを付け、カラフルな衣装に身を包み、夢想に微睡んだ眼をしたその容貌は絵本からそのまま飛び出してきたかのようだ。少女はケイトの視線を察すると、逃げるように走り去っていく。



「あ…待って!」


「ケイト?どこに行くんですか!?」



ケイトは少女を追い掛けていった。が、すぐに見失ってしまう。特徴的な服装であるとは言え、広い騎士団ギルドの中では瞬く間に人混みに溶け込んでしまった。



「ケイト…どうしたのですか?」


「変わった服を着た女の子が私達を見てて…愛がどうのこうのって呟いてました。目を合わせたらすぐに逃げてしまって…」


「気にすることないわ。それに用があるなら向こうから来るわよ。」


「うん、フェリーナの言う通り!気に病んでも仕方ないよ?明日に備えて今日はゆっくり休もう!」


「はい…心配かけてすみません。」



一行は騎士団ギルドの共同宿舎で一夜を過ごす。夜も更け切り、寝静まろうかという時分、甲高い悲鳴がギルド中に大きく響いた。



「キャ〜ッ!!」


「むむっ!?悪の気配ッス!みんな、一仕事するッス〜!」



騎士達に続いて一行が宿舎から飛び出すと、1人の少女が独りでに動く鎧の右手に掴まれ、捕らわれていた。銀灰色の甲冑は誰の身にも纏われておらず、自らの意志で動いているかのようだ。少女の姿を見るや否やケイトの顔色が変わる。



「あの娘…さっき私達を見てた娘です!」


「助けて…助けて〜ッ!」


「見て!あの娘の左手…」



少女の左手がキャンディピンクの彩りを放つ。紛れもなく1人の“仲間”であると悟った一行は少女を救うべく、騎士達を蹴散らす不気味な甲冑に次々と攻撃を仕掛ける。



「サンライトエッジ!」


「フロストザッパー!」


「ストーンフォールズ!」



攻撃を受けた甲冑は重々しい動きを止める。が、すぐに何事もなかったかのように動き始め、騎士団ギルドを荒らし回った。



「アカン、全然効かへん!どないしよ…」


「閃きましたわ!!では、こちらに…」



ルーシーはステラ、テリー、ビアリー、リデルを呼び出し、耳打ちをする。4人に指示をするその瞳には揺るぎない自信が満ち溢れていた。



「いい案ですわ。ルーシーさん、素敵よ♪」


「うむ、あのお嬢ちゃんを助けるには最善の策じゃな!」


「が、頑張ってみます…」


「よし、行くッス!」



ルーシーの指示に合わせ、4人がそれぞれに散っていく。各人が持ち場に着いたことを確認したルーシーが前に飛び出す。左手を水色が彩り、そのまま美麗な細い指で竪琴を爪弾いた。



「スプラッシュロンド!」



激流が甲冑の足下に渦を巻き、激しく包み込む。狙い通り甲冑の動きが止まり、ルーシーはタクトを振るように舞い、右手でリデルを、左手でビアリーを指差す。



「スパイダーネット!」


「ムーンライトバインド!」



リデルとビアリーの彩りの力が枷となって甲冑の足を止める。甲冑は若草色と濃紫に彩られた罠に身動きが取れない。



「そりゃあぁ!」



足下へステラが猛烈な突進を見舞う。甲冑は大きく軋みながら仰向けの姿勢で倒れ込む。テリーが右手に向かって飛び込み、少女を助け出した数秒後、甲冑が床に倒れ、辺りにけたたましい金属音が鳴り響いた。



「大丈夫ッスか?」


「ありがとうございます!ああ、私の王子様…」


「ぶ〜!ずる〜い!テリーはわたしの王子様だもん!」


「コレット…何を張り合ってンだい…しかし、なんだってこんなものが独りでに──」


「みんな、怪我はない?」



一行のもとにティファが駆け寄った。突然の騒動にも慌てた様子はなく、変わらぬ落ち着きを見せている。



「大丈夫です。ティファは大丈夫ですか?」


「私は大丈夫。もしかしたらこれも魔族の──」


「アハハハ!ロボットみたいでカッコよかった〜♪」



緊張感の欠けた笑い声が騎士団ギルドに響く。胸部に秘められたプリズムが灯の火を受けて怪しく煌めいていた。



「カストル!やっぱりアンタだったんだね!」


「あれ、いつも邪魔する黒い髪の娘いないの〜?じゃあ遠慮なく可愛いキミを連れてっちゃお〜!」


「やらせない!みんな、いくわよ!騎士の力、思い知りなさい!」


「ティファ…!!」



左手がカーキに彩られたティファの号令でネイシアを囲むように陣形を取る。救出した少女もフォークのような槍を手に一行の陣形に自然に加わった。少し立ち回りが遅れたケイトの姿をプリズムが捉え、ラベンダー色に染まる。




「アハハ!ソニックブーム!」


「ガードシェル!」



カーキの巨大な盾が現れ、衝撃波を弾き飛ばす。防御出来ずまともに喰らったカストルは大きくよろめいた。



「グラッサージュ!」



少女の彩りがカストルを捉える。劣勢に立たされたカストルは苦虫を噛み潰したような表情で逃げ去っていった。少女はその瞳を爛々と輝かせている。



「素晴らしいわ!私、貴女達に着いていきます!」


「えっ…?あ、私はモニカです。貴女は…?」


「私はリーベ・グルマン。さあ、共に世界を愛と夢と希望で満たしに行きましょう!」


「ええっ!?ちょっ…!」


「フフッ、楽しい娘ですね…天よ、感謝致します…」


「ハッ、ツッコミのリタがいないのが残念だねぇ…ま、旅は道連れさ!仲良くいこうや!」




To Be Continued…

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