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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter3:カストル篇
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第24話『哀しき蒼炎、冥紫の銃弾』

シリーズ第24話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ〜!

セピア国の廃墟の洋館の超常現象の真相を突き止め、紫に煌めく鍵を見つけたモニカ達一行は遺されたメモに記された冥の神殿を目指し、暗く木々が鬱蒼と生い茂る森を進んでいた。



「冥の神殿…どこにあるんでしょう…?」


「ふう…進めど進めど森ばっかりやな〜…足が疲れてきたわぁ…」


「あ、待って…セピアアゲハ…」


「リデル、危ないよ!虫取りはまた今度ね!」


「見て!きっとあれが冥の神殿だわ。精霊の力が強まるのを感じる…」


(冥の精霊…俺の力…俺は守りたい人がいる。試練に打ち克たないと!)



一行は冥の神殿に到着した。鈍色の墓石が立ち並ぶ中、薄紫と黒に彩られた神殿が静かにそびえ立っている。リタが鍵を使うと、鍵と紋様の薄紫に呼応し、大きな扉は軋みながら開いた。



「ここが冥の神殿…私の紋様も力を強めているみたいですわ。」


「ビアリーの紋様ってリタの紋様と近い色だもんね。きっと相通ずるものがあるんだよ♪」


「そうだね、カタリナ。…うわっ!これ、ドクロ!怖いよぉ〜…」


「ふむ…森の中だからかのう。トリッシュのときよりも薄暗い気がするわい。」


「そうですね…リタ、貴女の力、貴女の彩り、冥の精霊に見せてやりましょう!」



モニカの言葉に頷いたリタは無言で最奥の祭壇へと歩み寄っていく。彼女の凛とした眼差しは祭壇に突き刺さるように注がれた。



「我が名はリタ。冥の精霊プルートよ。我が呼び声に応えよ。我に道を示したまえ!!」


(ふわぁ…リタ…カッコいいなぁ…)


「コレット…なんで顔紅くしてンだい。…っと、精霊様のお出ましみたいだね!リタ、来るよ!!」



リタの声が静寂を破り天井まで響くと、祭壇を中心に不気味な唸り声が巻き起こる。薄紫の禍々しい波動が集束すると1人の青年が姿を現した。黒い衣装に長く伸びた青紫の髪。肌は雪のように白く、大きな両刃の鎌を携えている。



「私はプルート。亡者の王、冥府の番人なり。神々の子よ。生ある者である汝がここに何をしに来た?」


「俺はこの力で世界を…俺の大切な人を守りたい。精霊の試練を受けさせてくれ!」


「ふむ、よかろう。汝の意思、汝の力がいかほどか…その力を示せ!」



プルートが鎌を振るうと、激しい地響きと共にリタとプルートの周囲を薄紫の墓石が取り囲む。リタが振り返ると重なる薄紫の十字架の奥にモニカ達が驚きの表情で見つめていた。



(この墓石…死ぬ気で来い、ってことだな。よっしゃ、俺の本気、見せてやる!逃げ場なし、誤魔化しなし…それはそれで悪かないぜ!!)



リタの口角が自然と上がる。その瞳には生き生きとした期待が満ち溢れ、今にもプルートに挑みかかろうかという様相だ。



「どうした?何故笑っている?笑っていられるほど私の試練は甘くはないぞ。」


「ヘヘッ…そりゃわかってる。けどよ、俺の覚悟、偉い精霊であるあんたに見てもらえるんだぜ?ワクワクして仕方ねぇんだよ!」


「ほほぅ…良い眼だ。それでこそ我が試練を受けるに相応しい。行くぞ!!」



鎌を握り直し飛びかかるプルートに対し、リタは得意げな表情を崩さぬまま銃を両手に構える。薄紫の彩りが煌めき、銃口から黒紫の弾が放たれた。



「シャドウバレット!」


「フッ、やらせん!」



プルートの鎌の一閃が冥紫の銃弾を真っ二つに切り裂いた。そのまま勢いを殺さずに凄まじいリタに向かって斬りかかってくる。



「はあぁあぁっ!」


「クッ…オラァ!」


ドシッ!



間一髪でかわしたリタはブーツで足元を狙って右足を振り上げる。蹴りは重々しい音を立て、プルートの細めな脛を捉えた。



「むうっ…!なるほど、思った以上に落ち着いている。やるようだな!」


「俺には負けられねぇ理由があるからな。お前にも負けないぜ、プルート!」


「ハハハ!それは大層なことだな。さあ、もっと私を楽しませてみろ!」



プルートは更に勢いを付け、リタを斬り刻もうと襲い掛かる。紫と黒の彩りの閃光が飛び交い、暗い神殿を一瞬照らす。



「そぉら!斬る!!」


「よっと!ほら、そこだ!!」



けたたましい音と共に放たれた銃撃がプルートの衣装を掠める。眉をピクリと動かすと鎌をサッと振り上げる。瞬く間に彼の足元にはリタと同じ薄紫の魔方陣が現れた。



「私もみすみす屈するわけにはいかない。受けよ、ブラッディデスサイス!」


「グッ…!!」



黒紫の闇の刃が無数に飛び交い、リタに襲い掛かる。冷静に“試練”と向き合い、プルートに相対していたリタが遂に一閃を受けてしまった。冥の精霊の力は更に容赦なく彼女に迫り来る。



「受けよ、冥府の蒼炎!ヘルズパーガトゥリー!!」


「うあぁあぁあぁっ!」



リタは蒼々と揺らめく炎に体を包まれ、冥府の力に飲み込まれた。膝をつき、プルートを睨み付ける彼女の紋様は力強く煌めき、薄紫に彩られている。



「リタちゃん!ああ、神よ…うっ、うっ…」


「ネイシア、泣かないで。まだまだ…リタの意思は揺るぎませんよ!」


(ハァ…ハァ…これくらいで…俺は負けられない。だけど、もう一度距離を詰められたらマズいな…クソッ、どうしたら…)


「フフフッ、いいぞ…我が一閃と煉獄の焔を受けて尚闘志を失わぬ瞳…ますます気に入った。しかし、迷いが見えるぞ。何を焦っている?」


「クッ…!!そ、それは…」


「躊躇うな。此処には逃げ場などない。汝の力、その程度ではないことは自分が一番理解しているはずだ。まだ汝の力は示されてはいないぞ!」


「ヘヘッ…OK♪やってやるぜ!この命がある限り!!この紋様が彩る限り!!!」


(フフッ…何故だろうか。これほどまでに戦うこと、鎌を振るうことを喜ばしく思うのは…私の力を分かつ“神々の子”がこの少女だからかもしれないな…)


「さあ、お楽しみはこれからだ!俺の力が高まってるのを全身で感じる…俺の彩り、見せてやるぜ!!」



リタは胸の前で手にした銃を交差させる。プルートの言葉に胸の内の混沌を断ち切り、己を奮い立たせ、更に凛々しさを増した彼女の表情には一片の迷いも無くなっていた。薄紫の彩りにもより一層力強さが増していく。



「喰らいな!ファントムスティング!!」


「ぐあああぁぁっ…!」



幾つもの紫の槍がプルートの体を貫く。冥の精霊の黒い影をリタの紋様と同じ薄紫の閃光が包み込んだ。更に起き上がり、居直ったプルートは驚いて眼を見開く。見つめる先に立つリタは飄々とした表情で涼しげな視線を向けている。加えて余裕ありげな様子で銃をクルクルと回していた。



(むっ…なんだ!?いったい何をしようと言うのだ…?)


(来いよ、プルート。攻めたきゃガツンとその鎌振りな!)


(ぐぬっ…リタ、と言ったな。貴様、いったい何の真似をしている…?)


(俺は逃げも隠れもしないぜ。プルート、お前はどうなんだ?)


(ふむ…面白い。挑発に乗って差し上げようじゃないか。)


(よし…プルート、晒し合おうぜ、互いの胸の中。見せ合おうぜ、互いの腹の中。)



その後、2人は互いに駆け引きを楽しむように無言で牽制し合うばかりだ。音も立てずに宙に浮きながらリタの顔色を探るプルート、ブーツで床を鳴らしながらプルートの動きを注視するリタ。互いの様子をうかがいながらもその眼差しはただ一点だけを見つめている。リタの靴音だけが鳴り響き、重々しい静寂が神殿の空間を支配していた。



「リタ…いったい何をするつもりなのでしょう?」


「う〜ん…2人とも疲れちゃったのかな?甘いもの食べてもらおう!精霊さん、何が好きかな〜?」


「いや、そういうことじゃないと思う…きっと静かに闘志を燃やしていて──」


「むむっ!これはいわゆるノーガード戦法ッス!リタはここからKO勝ちに向けて思索を巡らせて──」


「ちょっと黙りな。あんたはどこまで脳筋なんだい!」


「いいえ、テリーさんの言うこともあながち間違ってはいないと思いますわ。リタさんはとても理性的な方ですから、好機を見出だすために胸中を探っているのでしょう。」


「うん…その可能性もあるけど…私は同じ冥の力を持つ者同士、その力を同調させているんだと思うわ。実際、リタとプルートの呼吸が重なっているのを感じる…精霊と心身の気を同じくするのは簡単には出来ないことだけど、リタなら出来るはずよ。」


「あわわっ…これは…薄紫の気流…!?」


「リタ…!!」



リタとプルート。同じ彩りを持つ2人が共有する時間と空間を冥を司る薄紫の波動が取り巻いていく。波動は渦を巻きながらリタの心身に取り込まれていった。



「身体が…高ぶってきたぜ…なんだ、この高揚感は…?」


「冥の力…其は万物に平等に宿りし力。生きとし生ける者に平等に訪れし、“死”を司る力。抗うことは許されず、全ての命に平等に在る…否、“死”在ればこそ、全ての命は“生”を全うすることが出来るのだろう。」


「“死”を司る、か…俺がそんな大それたことをするなんて眉唾物だぜ。」


「何を今更?その覚悟があるからここに立っているのだろう?もっと素直になれ。心の門を開くのだ。」


「ヘッ、全部お見通しってワケか…そうさ、この二丁銃は鎌の替わりだ。でも俺は…亡くすため、壊すためじゃなくて、生かすため、守るためにこの力を使いたい!!」


「ふむ、理想を抱くのはおおいに結構。だが、亡くすことと生かすこと、壊すことと守ることは表裏一体であることは心しておくだな。」


「ハッ、やれやれ…さすがに精霊様が仰ることは御大層なことだぜ。なら、“生かす力”…受けてみな!」


「よかろう。そこに汝の覚悟を見せてみるのだな!甘ったれた理想ではないことを証明してみせよ!」



激しい地響きと共に地中から巨大な門が現れる。開くと中から苦悶の叫び声があがり、リタの心を揺さぶった。



『タスケテ…タスケテ…』


『イタイ…クルシイ…』


『サミシイ…アイタイ…』


(グッ…苦しい…これが“亡くす力”…俺は…“生かしたい”!)



リタの周りの空間が激しく揺らぐ。まばゆい薄紫の光がリタの体を包む。薄紫の光の雨は柔らかに彩り、神殿中に降り注ぐと、亡者の魂を慰めるように煌めいた。



「“死”の悲哀よ。“再生”の歓喜に還れ!!冥紫の彩り、ビオレータ・レエンカルナシオン!!」


「ぬうっ…!これが…“生かす力”…私には…“亡くす力”しか無かった…」


『…アリガトウ…』


『モウ…クルシクナイ…』



少しの静寂の後、プルートは鎌を収め、リタに歩み寄る。その表情は穏やかで、何かを悟ったような晴れやかさも見られる。



「リタ。私はお前のような希望を眼に宿した人間は初めて見た。ここに来る者は皆、死を迎え、希望を亡くした哀しい眼をした者ばかりだったからな…」


「…プルート…」


「此処に力は示された。我が力の象徴、“冥のアメジスト”を授けよう。」



リタの右手の薬指に薄紫の宝玉の指輪が煌めいた。リタの瞳によく似た凛々しさをたたえた彩りを放っている。



「汝の“生かす力”…必ずや魔を討ち、平和と再生をもたらすことだろう。」


「ありがとうよ。俺もプルートの力、生かすために使うぜ!」


「よろしい。さあ、お前を待ち、愛する者のもとに還るがよい。私はいつもお前と共に在る。さらばだ…」



プルートは穏やかな微笑みを浮かべ、消えた。リタは祭壇に背を向け、歓喜に満ちた表情で待つ仲間達のもとへと還っていった。“生かす力”を振るい、愛する者を守るために…




To Be Continued…

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