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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter3:カストル篇
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第21話『新たなる野望』

シリーズ第21話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

魔族七英雄の1人魔濤隊隊長アルニラムを打ち倒し、囚われの身となっていたカタリナを救出した一行。魔族打倒の協力者となってくれたゼータとキャプテン・ロビンの2人との別れの時を迎えていた。



「ゼータ、ロビン、ありがとうございました」


「助けてくれてありがとう♪2人がいたから、私、戻って来られた。みんなのもとにまた帰れた…」


「何、礼には及ばん。私も愛という素晴らしきものを見せてもらった…感謝する」


「また助けが必要になったら言ってくださいね。この左手の紋様に誓って、7つの海は私が守ります!」


「2人とお別れするの嫌だ…グスッ、グスッ…」


「コレット…仕方ないだろ?俺だって寂しいよ。でも2人だって事情があるんだし…」


「嫌だ嫌だ嫌だッ!!うええぇぇん!!」


「コレットちゃん…天の導きに感謝し、仲間として想うからこそ寂しいんですね…ゼータさん、どうしましょう?」


「泣くな、コレット。またいつか…そうだ、これをやろう」



ゼータは左腕にはめていたブレスレットを外し、泣きじゃくるコレットに手渡した。艶を帯びた黒が静かに煌めいている。



「オブシディアンの腕輪だ。これを私だと思って持っていてくれ。必ずまた会える…達者でな」


「グスッ…ゼータ…ありがと!元気でね!」


「私からも贈り物です!とっておきのお宝、このカルサイトの首飾りをどうぞ♪エレン姐さん!」


「ありがとう!ありがたく頂いておくよ。アンタに負けないようにしなきゃね!」


「わたくし達は離れても一緒ですわ。お二人もかけがえのない大切な仲間です」


「そうですね。ルーシーの言う通り、私達は仲間です。さあ、行きましょう!」



『祝福の証の彩りのもとに!!』



その頃、魔空間。魔族七英雄の1人、蒼波の魔女アルニラムの敗北は魔族達に大きな衝撃を与えた。



「アルニラム…負ケタ…グルアァアァアッ!!」


「なんということだ…アルニラムが討たれるとは…彼女の美は悲哀の青か…」


「無念…戦に在らばいずれ黄泉の客となるが定めなれど、諸行無常の極也」


「クッ…神々の子め…カストル、奴の様子はどうだ?」


「まあまあかな〜…アンタレスもけっこう悪趣味だよね〜♪」


「フッ、お褒めに預かり光栄だな。魔族七英雄最後の1人、レグルス…その力を振るう日もそう遠くはないようだ」



魔空間の深部。1人の青年が禍々しい鎖に手足を繋がれている。青みを帯びた黒髪に白めの肌とその容貌こそ人間だが、アルニラムと同じ黒紫の瘴気を身にまとっていた。その首筋にはトゲのようなものを刺された痕が点々とあり、その傷跡は怪しく疼いていた。



「俺は…道を過つのか?あんな些細な運命によって…クッ…頭が痛い…ここは、どこだ…俺は、誰だ…」



苦しそうにもがく彼の右手の薬指には瑠璃色の指輪が輝いている。魔の漆黒が覆う暗闇にその濃い青紫が一点だけ彩りを、彼の瞳の輝きを繋ぎ止めていた。一方、他の七英雄達は次なる一手の策を練っていた。



「さて、アルニラムが討たれた今、誰が彼女達を討つ?」


「はいは〜い!ここはボクに任せてよ♪」


「グルルル…カストル…オ前、大丈夫ナノカ?」


「あれ〜?信用ないなぁ〜…もう初手は打ってるのに〜…絶対イケるって!」


「フッ、早計よな…だが魔族の理想の為なればそれもまた善し。カストル、ぬしは腐っても将。夜郎自大の輩とならぬよう心せよ」


「わかってるって!みんなは大船に乗った気分でポテチでも食べながらのんびりしててよね!じゃ、行ってきま〜す♪」


「ハァ、やれやれ…ベガ、奴に任せて大丈夫だと思うか?」


「およそ信頼に値しないな。彼が同じ魔族七英雄とは信じがたい…つまらぬ道化者め…」



一方、モニカ達一行。アズーロ合衆国ネイビー州。ゼータとロビンと別れ、彼女達も新たな旅に向けて歩き始めようとしていた。



「さて…これからどうしようか?ノッてきたこのビートのままガンガン行こうじゃん!」


「そうですね…ラムダ博士の情報を見ると残る魔空間は6つ…この中からどこに巣食っている魔族達を叩くか方針を定めないと…」


「うむ、方針か…どうしたらいいもんかのう──」


「待ってえぇ!待って待って待って待って待ってえええぇぇぇッ!!」



一行の後方から大声で叫びながら1人の女性が駆けてきた。肩まで伸びた深緑の髪、小さな顔に対し大きな眼鏡、黄緑のニット──妙齢の女性にしては少しばかり地味な印象を受ける。一行の前に躍り出た彼女は激しく息を切らしていた。



「ハァ…ハァ…貴女達が…神々の…子…ハァ…ハァ…やっと…見つけ…」


「ちょっと落ち着きな!そんなに慌ててあたいらになんの用だってンだい!?一回深呼吸しな!」


「ハァ、ハァ…すみません。神々の子である貴女達に折り入ってお願いがありまして…」


「なるほど。お見受けする限り余程急を要するようですね。みんな、話を聞いてみましょう」


「そやなぁ、とりあえず立ち話もなんやから、あそこのファミレス入ろうや!」


「ありがとうございます!あ、私はアイリス・ドーシーと申します。国際報道機関クローマ・ジャーナルの記者です。よろしくお願いします!」



一行は図らずもアイリスの依頼を聞くこととなった。慌てていたアイリスもすっかり落ち着きを取り戻し、理路整然とした表情で一行に向き合っている。



「お待たせ致しました。ボルドーワインでございます」


「あら、美味しそう♪いただきますわ。それで…ご用件は何かしら?」


「はい…実は最近、世界的に妙な事件が多発していて、みなさんにご協力をお願いしたいんです」


「はあ…具体的にどんなことが起こってるのですか?」


「廃墟の洋館で起こる超常現象、夜な夜な死者が生き返る墓地、被疑者のアリバイが第三者からも明らかに立証出来る不可能犯罪…とにかく不思議な事件ばかりなんです。こちらの資料も併せてご覧ください」



アイリスはテーブルに写真を引き延ばした資料を広げる。そこには洋館の家具が宙に浮いている現場、墓場に蠢く腐肉の人だかり、防犯カメラの画像と完全に一致する被疑者の写真…その一つ一つが怪事件の実態を物語っていた。



「ふえぇ…これ、映画とかじゃないんだよね?どうなってるの…?」


「怖い…えっと…警察の方は…動けないんですか…?」


「はい…実は警察も対処しきれずに野放し状態で…ここ最近、公安機関に対する信頼が揺らいでいるんですよ…」


「それで、あたし達に協力してほしいってこと?う〜ん、大丈夫かな〜…」


「クレア、迷いは不要ッス!悪の匂いがするところには迷わず赴くッス!正義の拳を叩き込むッス〜!!」


「うん、テリーの言う通り!恐怖があるなら燃やしてやればいいよ!やってやろうじゃない!!」


「ありがとうございます!なんとお礼を言ったら良いか…」


「決まりですね。しかし、いったいどうしてこんなことが──」


「待って。そう言えば…ネイシアが私達の仲間に加わったとき、ブラン教皇国の墓地の亡骸が魔族の力で蘇って暴れていたわ。もしかしたら、それも魔族の仕業…」


「それは十分にあり得る話ですわね。調べてみる価値はあると思います」


「そうだな、ルーシー。もしフェリーナの言う通りなら俺達としても都合がいいし、アイリスの協力も出来るから一石二鳥だな」


「それならまずは廃墟の洋館を調べてみるのはどうでしょう?迷える霊魂が関わっている可能性があるなら魔族の仕業かどうか見分けやすいと思います」


「賛成!ネイシア冴えてるじゃん!それがいいよ!ね、モニカ?」


「はい、そうしましょう。では、大所帯ですがよろしくお願いします」


「こちらこそ。この左手の導きもありますからね♪」



アイリスはテーブルの上で組んでいた手を解いて左手を見せる。そこには深緑に煌めく祝福の証が彩られていた。



「おっと、アンタも仲間だったんだね。その紋様の力、遠慮なく見せてよ!」


「はい。私の力は微々たるものかもしれませんが、是非とも協力させてください。この紋様に恥じぬように頑張ります!」


「ぬおぉおぉ!新たな友との出会い、燃えるッス〜!…って、ちょっ、ビアリー様…!?」


「テリーさん…素敵…私の愛、受け止めて…」


「ちょっと…まだ夕方だし、公衆の面前ッスよ!?待つッス待つッス!誰か助けてほしいッス〜!!」


「ったく、ビアリーときたら…ワイン飲んですっかり出来上がっちまってるじゃないのさ!仕方ないねぇ…」


「やれやれ、どうなることやら…とにかく、よろしく頼むぜ」


「ハハハ…これからみなさんと旅すると思うとなんだか楽しそうです。では、これも旅の思い出に…」



カシャッ!



「あっ、目瞑っちゃった!アイリス、もう一度撮って!」


「姉貴、そんなこと言ってる場合じゃないって!テリーを助けないと!」


「んおおぉぉ〜っ!!ビアリー様の場所を選ばぬ、ためらわぬ愛…末恐ろしいッス〜!!」



そんなことをしているうちに夜も更け、アイリスを加えた一行は宿で一夜を明かした。新たな旅の第一歩として不可思議な現象が起こる洋館に向けて動き始めるところである。



「さあ、行きましょう。アイリス、案内をお願いします」


「はい!廃墟の洋館はセピア国郊外にあります。ここからだと飛行機でおよそ9時間ほど──」


「く、9時間!?どれだけ時間かかるってンだい!途方もないねぇ…」


「う〜ん、この人数で飛行機…えらい額やなぁ…この先何度も飛行機乗るって考えると採算取られへんわ〜…報酬でやりくりするのも限度あるし、どないすんねん?」


「そうだね〜…あ、そうだ!私に任せといて!」



何か思い付いたエレンはどこかへと電話をかけていた。何やら相手と親しげな様子で話している。積もる話もそこそこに通話を切り上げると、いそいそと駅に向かうように小走りで駆けながら一行に呼び掛けた。



「助っ人頼んだよ!ネイビー州立空港で待ち合わせするから、急ごう!」



エレンの一声で一行は空港へと向かう。空港職員から滑走路に通されると、数分後に大きな旅客機が降り立ち、その中から女性のパイロットが姿を現した。スカイブルーの髪を後ろで束ね、ネイビーのパイロットスーツを着用している。彼女はタラップから飛び出すや否やエレンのもとへと駆け寄った。



「やっほ〜、お待たせ〜!」


「ありがとう!相変わらず元気そうじゃん!」


「いいっていいって!そっちも元気そうで安心したわ!」


「みんな、紹介するね。私の親友のエイリア・ロンディネ。パイロットとして急遽手伝いに来てくれました」


「はじめまして、エイリアです。エレンがいつもお世話になっています。よろしくお願いしますね♪」


「私はモニカです。よろしく。すみません、エイリアさんもお忙しいのに…」


「まあまあ、困ったときはお互い様!微力ながらお手伝いさせていただくので、仲良くやりましょ♪さて、祝福の証に導かれしご一行様をセピア国までご案内〜!」



アルニラムを討った喜びも束の間、怪事件という形で世界に迫り来る新たな魔族の影。アイリスとエイリアを加えた一行はその正体を探るべくアズーロ合衆国からセピア国へと飛び立つのであった。果たして怪事件の真相は?そしてモニカ達を待ち受けるものは?




To Be Continued…

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