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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter2:アルニラム篇
20/330

第20話『碧色の愛』

シリーズ第20話目です。どうぞお気軽にお楽しみくださいませ!

キャプテン・ロビンの協力を受け、魔空間〜海鳴〜に突入したモニカ達一行。遂に魔濤隊隊長アルニラムとその腹心エンヴィを追い詰めるも、カタリナを捕えた水泡の檻を瞬く間に水が満たしていき、一行の心にも焦燥が満ちていた。



「さあ、どうするの?ボーッとしてると可愛いお姉ちゃんが死んじゃうわよ?」


「チッ…こンの野郎…!」


「トリッシュ、退け!クレア、フェリーナ、リタ、行くぞ!」


「オッケー!」


「おう、任せろ!」


「行くわよ!」


『掃射!!』



ゼータ達4人が畳み掛けるように檻に向かって狙撃する。激しい爆発音をあげるも檻は破られず、既に水はカタリナの肩まで届いていた。



「クソッ、何故だ…!」


「アハハハ…愉快ね。楽しみを取っておいた甲斐があったわ。さあ、カタリナちゃん、貴女も私が味わった哀しみを味わいなさい!」


『嫌ッ…死にたくない…助けて――ッ!!』


「姉貴いいぃぃッ!…クソッ…なんのためにここまで…!!」


「あんたが諦めてどうすンだい!シャキッとしな!カタリナを助けるんだろう!?そのために強くなったんだろう!?」


「んなこと言うたってあれを破れへんと…精神論だけじゃどうもならへんやん!」


「そんな…見ているだけだなんて…!」


(フフッ…これであの人に…ショーン…)



──3年前──



『キャンベラ、今日はいい風が吹いてるからクルーザーに乗ろう』


『まあ、素敵だわ!行きましょう!』


『よし、早速行こうか。スマルト海の大海原が僕達を呼んでるよ!』


(彼と未来を誓い合ったのに…あの日、彼と私は…このスマルト海に愛を引き裂かれた…!)


『キャンベラ!クソッ、波が…』


『イヤッ…ショーン!ショ―――――ン!!』


『キャンベラァァッ!!』


(私は…死ぬの?彼と永久の愛を誓ったのに…生きたい、生きていたかった…)


『汝が願い…我らが魔の思念にて具現する。心の眼を開かれよ』


(魔の思念…それを受け入れれば生きられるの?…ショーンに…会いたい!!)


──あの日、私はこの力を手に入れた。蒼波の魔女アルニラムとして生きることを選んだ──





(私は…あの哀しみを忘れない。カタリナ…私の哀しみを味わうのよ!)


『助けて…ゴボゴボッ!』


「あわわわ…どうしたらいいの!?」


「ふえぇん…カタリナが死んじゃうよぉ…」


「そんな…!姉貴が…姉貴が…!チクショウ…!!」



遂に水が青き檻を満たした。中で捕らわれたカタリナが苦しんでいる。“雷のトパーズ”が黄色い光を放ち、理性の色濃い声がトリッシュの心に響く。



(トリッシュ、諦めてはなりません)


(お前は…ヴォルト!?)


(みすみす貴女の為すべきことを見過ごし、悔いを残すだけでなく貴女の守るべき人を亡くすつもりですか!彼女は貴女の救いを…貴女の愛を求めているのです!)


(アタシの愛を…姉貴が…)


(さあ、トリッシュ。貴女の為すべき使命、果たしなさい!貴女が私に示した愛と絆の力を魔族にも示しなさい!!)


(…そうだ、アタシには…大切な人がいる。こんなところで負けられっかよ!!)




「姉貴いいぃぃッ!!!」



雷のトパーズと紋様が黄色く煌めく。意を決したトリッシュは瞳に覚悟と決意を秘め──地を蹴り上げ──青き檻に飛び込んだ。



「ト、トリッシュ!?」


「何をするつもりだ!?想定外だな…」


「あら…お姉ちゃんが1人で逝くのは可哀想だから、貴女も一緒に逝くのね?仲良く2人でお逝きなさ〜い♪」



水泡の檻を突き抜け、水の中で苦しんでいたカタリナに触れる。カタリナの表情には穏やかな安堵の色が現れた。



(姉貴…助けに…来たよ)


(トリッシュ…ありがとう。待ってたよ…私の一番…大切な人…)


(姉貴、一緒に帰ろう。みんなが待ってる…そして、誰よりアタシが…)



2人の紋様の黄色と青が檻から溢れる。その愛に満ちた煌めきは瞬く間に水泡の檻を打ち破った。



「トリッシュ!カタリナ!すごい…檻を破ったぜ!」


「素晴らしいわ!お二人の愛の力ですわね!」


「クッ…何故だ!アルニラム様…」


「まあ、いいわ。みんなまとめて潰してあげる。かかってらっしゃい!」


「さあ、年貢の納め時です。私達は祝福の証の使命のもと、貴女を討ちます。アルニラム!!」



カタリナを救出し、更に畳み掛ける。左手に彩られた力で魔物達を次々と駆逐していく。魔物達は数えるほどとなり、一行は一気に勢い付いていった。



「せいやぁ!ブライトエッジ!!」


「クッ、嘗めるな…オーシャンバブル!!」



エンヴィの足元を群青色の魔方陣が彩る。濃青の水塊がモニカに襲いかかる──かと思われた──が、濃紫と血紅色がそれを破った。



「あら…その程度で私達の意思を揺るがすことが出来ると思って?」


「何ッ!?貴様ら…!」


「モニカ、油断するな!最後まで魔を討つ心を絶やさずに剣を振るえ!」


「ビアリー、ゼータ…ありがとう」



アルニラムに対してもトリッシュを中心に束になり、彩る神々の力をぶつけていく。気付けば魔濤隊はもう一押しで制圧されようという状況となっていた。



「オラァ!サンダースピア!」


「シードポップガン!」


「リフレクトシュート!」


「クッ…多勢に無勢ね。まあ、これも一興…私とエンヴィは負けない…彼は私の──」



「メタルスピナー!」


「バグズバンプス!」


「うおっ!しまった…剣が…」


「よっしゃ!モニカ、任せたぜ!」


「覚悟!リオーネ流奥義!!武神豪天斬!!!」


「ぐあぁあぁあぁっ!!」



エンヴィはモニカの凄まじい斬撃を受け、音もなく倒れた。魔族の証である黒紫の鮮血が流れる。彼の脳裏には──アルニラムへの想い──それを打ち明けられなかった悔い──その2つが複雑に絡み合いながらよぎっていた。



(クソッ…俺はここで果てるのか…告げられなかった…アルニラム、様…)



エンヴィは苦悶の表情を浮かべながら事切れた。腹心の死を目の当たりにしたアルニラムはそれまでの余裕が嘘のように取り乱している。



「エンヴィ…!やってくれたわね!!負けられない!!貴女達には…ウアァアァッ!!」



次第に憤怒が具現化した紫のオーラがアルニラムを包む。その瞳は殺意に満ち、理性を完全に失っていた。



「オオォオォアアァッ!!」


「マジかよ…激怒ってレベルじゃないぜ…」


「酷い…負の感情が暴走しているわ。どうしてこんなことに…」


「ウ…ウ……ショオオォォオオォォン!!」



アルニラムは誰彼構わず銛を振るう。モニカ達はおろか僅かに残った配下の魔族達にさえもその矛先を向ける。そこには彼女自身の感情も理性も皆無──闘争本能しかなかった。



「ショオオォォン!!」


「ショーン…?えっと…人の名前…ですよね?男の人の…」


「恐らくはエンヴィさんに想い人の姿を見ているのでしょう。彼女に愛を伝えられれば…神よ…」


「姉貴…アタシらでやってみよう!」


「うん、トリッシュとなら…彼女に愛を伝えられる。彼女の想い…繋ぎ止めてみせる!!」



トリッシュとカタリナ、2人の紋様が更なる彩りの光を放つ。黄色と青──2人の魔方陣が重なり、新たな碧色の彩りを紡ぎ出した。



『彩り重なるは碧色の愛!アイシクルブースター!!』



黄色く轟く雷撃と共に青く煌めく氷柱が降り注ぐ。碧色の閃光がアルニラムを取り巻く紫の瘴気を打ち消した。



「ギアァアァアァアァッ!!!ウアァ…ショオォオォオォン!!!」




(キャンベラ…)


(ショーン…ショーンなの?ごめんなさい。私は…なんて愚かなことを…)


(もういいんだ。また共に歩もう。君の傍には僕がいる。また2人で歩こう)


(ショーン…ありがとう。“愛してる”…)



アルニラムは眼前にショーンの幻影を見ると、安らかに果てていった。彼女の立っていた場所に淡い青が煌めいている。トリッシュが拾い上げてみると、それは指輪だった。



「やった!!私達の勝利、祝福の証の勝利です!!」


「うおおぉぉ!素晴らしき愛の勝利ッス〜!!」


「トリッシュ?今ポケットに何入れたんじゃい?」


「ん?なんでもないよ…って、なんだ!?地震が…!」


「アルニラムが倒されてこの魔空間の均衡が乱れているようだ。急いで脱出する!感慨に浸るのは後だ!」



足元が揺れ動く中モニカ達は潜水艦まで慌てて駆けていく。魔空間の地は裂け、大気は震える。今にも歪み、潰れてしまいそうだ。



「ロビン、早くしとくれよ!ここでやられちゃたまったもんじゃないからね!」


「はい!全速前進!!」



一行を乗せた潜水艦は速度を上げ海へと向かう。渦の出口が目前に迫った刹那、背後から迫る紫の気流に押し流され──スマルト海の奥底から吹き飛んだ──



「なんだなんだ!?凄い音がしたぞ!」


「潜水艦だ…あの紫の光の中から出てきたのか?」


(フフフ…その使命、果たしましたね。しかし、まだまだ…これからですよ…)



アズーロ合衆国、西海岸地域のネイビー州。一行は無事に帰還した。歓喜と安堵が渦巻く中、トリッシュはどこか緊張した表情だ。



「姉貴…ちょっと教会に行かない?」


「教会?いいけど…どうしたの?」


「誓いたいんだ。姉貴を愛し、守るって。みんなの前で」


「…うん♪」


「わぁ〜!プロポーズだ〜!!ゼータ、2人の衣装を用意して!!」


「クレア、いくらなんでもそれは無理でしょう…ゼータにだって出来ないことは──」


「了解した。少し待っていろ」


「なんでやねん!出来るんかいな!!」



港町の教会。トリッシュは白いタキシード、カタリナは真っ白なドレスに身を包んでいる。2人の前に牧師として立っていたネイシアが口を開いた。



「では、トリッシュさん。カタリナさんに誓いの証を渡してください」


「誓いの証?…綺麗!その指輪、どうしたの?」


「これ…これからはずっと一緒って、約束の証。姉貴にやるよ」



トリッシュはカタリナの左手の薬指にアクアオーラの指輪をはめる。果てたアルニラムが遺した指輪だ。涼やかなマリン・ブルーがカタリナの細い指を彩ると、トリッシュはカタリナを抱き寄せる。



「姉貴…今日1日、アタシから離れるの禁止な」


「うん…トリッシュ。私…今、最高に幸せだよ♪」


「やれやれ、またこれだ…イチャイチャにも慣れてたはずだけど、久しぶりになるとやっぱ小恥ずかしいね」


「ま、今日くらいええんちゃう?気が済むまでイチャイチャさせとこうや!」


「うぅうぅ…なんて感動的な愛…どんなお宝よりも美しいです〜!」


「うん!2人が仲良しで私もと〜っても嬉しい!ね、ゼータ?」


「フッ…そうだな、こういうのも悪くない。トリッシュのカタリナへの愛は私の想像以上だったよ」


「私達には…この絆がある。力だけではない強さ…それが愛なのですね。トリッシュ、カタリナ…おめでとう」



心を1つにしたモニカ達一行の“祝福の証”の力の前に魔濤隊隊長アルニラムの野望は水の泡と散った。黄色と青が交わる──碧色に彩られし、愛の物語が紡がれた。カタリナを救出したモニカ達一行は更なる旅路へと進んでいくのであった。




To Be Continued.The Story Goes To Next Chapter…

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