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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter7:ベガ篇前編
199/330

第199話『Rosier Shangri-La』

シリーズ第199話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

薔薇の貴公子ベガに囚われたテラコッタの騎士達とマルベリー王国女王ナモを救うため、マグノリア、ポルポ、カチディス、ハドソン、サラの5人を迎え入れて新たな一歩を踏み出した彩りの義勇軍一行。次なる目的地である偉大なる賢人の待つゴギョウ国へ向けて動き出した。



「さて、ゴギョウ国に向けて出発しますが…まずはマルベリー王国に立ち寄ることになりますね」


「うむ。では、せっかくだからマルベリー王国で皆様をおもてなし申し上げよう。フェアソー山脈は険しいので準備もしっかり行わなければいけないから好都合だ」


「そうそう!山は何が起こるかわからないからね!急がば回れ、備えあれば憂い無しだよ!」


「マグノリアさん…お気持ちは嬉しいですけど、ナモ様のことは大丈夫ですか?」


「ヴァレンタイン殿、心配には及ばん。私は…今はこの軍の一員として、貴女方と共に過ごす時間を大切にしたいと思う」



一行はマグノリアに連れられ、マルベリー王国城下町を練り歩く。フランボワーズ王国と比べ花の薫りは無く華やかさは一歩譲るものの、チェス盤の目のように整えられた街並みは違った美しさを醸し出している。整然とした色合いの街は一行を穏やかに迎え入れた。



「皆様、マルベリー王国へようこそ!謹んで歓迎しよう!」


「わあ~…とっても綺麗!建物の並びも道路もキチッとしてて素敵です!」


「とても洗練された美しい街並みですね…我々の祖国アザレアを思い出します」


「ケイト殿、オール殿、そう言ってもらえて光栄だ。では、城下町を案内しよう」



マグノリアは軽やかな足取りで一行を先導し、次々に店を廻る。王城へと歩を進める道中、馴染みの武具屋に立ち入るや否や、店主の男に対して穏やかに微笑みかけていた。



「マグノリア様!おはようございます!」


「やあ、ごきげんよう。今日は私の仲間達をお連れした。歓待してやってくれ」


「はっ!皆様、マルベリー王国軍御用達の武具、心ゆくまでゆっくりご覧になってください!」


「マグノリア…マルベリー王国に入ってから表情が明るくなった気がするわ」


「んだなぁ、フラゴラ。自分の国を大事に想う気持ちはみんな一緒なんだべ!」



一行は安堵すると同時にマルベリー王国に立ち寄ったことを心から善しと思った。マルベリー王国を案内するマグノリアの姿は生き生きとしており、表情には自然と笑みが浮かんでいる。たとえ生を受けた国ではないとしてもマルベリー王国を“祖国”として愛し、大切に想うマグノリアの真摯な心意気が窺えた。



一方、魔族七英雄ベガの居城である魔空間~艶麗~。だが、テラコッタの騎士達とナモの姿は無く、薔薇の貴公子ベガと配下の青年ラストの2人だけが一帯に立ち込める妖気の中で静かに向き合っていた。



「ベガ様…フランボワーズ王国への侵攻は失敗に終わりましたが…今後はいかが致しましょう?」


「そうだねぇ…ここは暫し様子を見るとしよう。彼女達は面白い所へ向かうみたいだからね」


「畏まりました。では、我らの理想郷の旗印となる“あの娘”はいかがされますか?」


「うむ…無垢で可憐な彼女のこと、また下賎な輩に狙われるかもしれない。適宜観察しようではないか…近くで…もっと近くで…フフフッ…」


「は、はあ…承知しました…ベガ様の仰せのままに」



一方、マルベリー王国。一行は王城へと通されるが、玉座は空席である。主のいない玉座を見るや否や、明るかったマグノリアの表情は暗転。主君を守れなかった罪悪感に苛まれていた。



「ここが我が主君の座する玉座の間だ…ナモ様…」


「…マグノリア…」


「クンクン…椅子ノ近ク、甘イ匂イスル…」


「これは…ナモ様ご愛用の香水の薫りだ。ナモ様が近付くといつもこの薫りがしていた…私の心を癒してくれる薫りだ」


「ねえ、マグノリア。アンタがナモからどんな命令されたのか聞かせてくれる?」


「承知した。では、“あの御方”…いや、ベガとナモ様による取り決めについて私の知る限りのことを話そう」



マグノリアはエレンに促され、2つの王国が魔族の戦禍に呑まれるに至った顛末を語り始めた。渦中にいたマグノリアにとっては思い返すのも憚られると思われたが、毛ほどにも気落ちした様子は見せず、毅然とした表情で話していた。



某日、魔族七英雄ベガが自らを“預言者”と名乗り、女王ナモを尋ねて謁見する。マグノリアはナモの片腕としてマルベリー王国の恒久的な繁栄と安寧のために日々尽力していたが、謁見に立ち会えないことに一抹の不安を抱いていた。謁見後、ナモは無邪気にマグノリアに駆け寄ってくる。



『ねえねえ、マグノリア!みんなでフランボワーズ王国を侵略するのよん!マグノリアも手伝って!』


『フランボワーズ王国を…侵略ですって!?』


『うん!フランボワーズ王国を乗っ取って、ぜ~んぶマルベリー王国のお庭にするのよん♪どう、素敵でしょ?』


(ナモ様…何をされるおつもりか?“あの御方”にあらぬことを吹き込まれたか…?いや、私の知る限りナモ様が過ちを犯したことは無い。ナモ様のお考えになることなら、きっと何か理由があるはず…)


『マグノリア…どったの?手伝ってくれないの…?』


『コホン…失礼致しました。ナモ様の、意のままに…不肖マグノリアも力を尽くしましょう』



顛末を一行に語り聞かせるマグノリアは後悔していた。主君が道を過つ前に、己自身の意思を示すべきだった――主君ナモへの盲信が度を越してしまい、間違っていると指摘することも憚ってしまったという。



それ以来、マグノリアはマルベリー王国軍を率い、フランボワーズ王国への侵攻を繰り返すようになる。幾度となく刃を交えたフレッサとミルティはマグノリアを悪とみなし、互いに敵意を向け合う仲となっていた。



『…フン、その程度か。我らマルベリー王国の敵ではないな!』


『クッ…侵略なんて、絶対にさせないわ!』


『マグノリア…貴様、その悪の心ごと細切れにしてくれるわ!!』


『フハハ!やれるものならやってみるがいい!くらえ、サイコハルバード!!』



数週間後、マグノリアが愚直に戦いを繰り返していた最中、妖しき預言者は再びナモのもとに現れ、言の葉を紡いだ。主君を案じるあまりに訝しげな表情のマグノリアが会談を終えたナモのもとにスタスタと早足で歩み寄る。



『ナモ様!あの男と何を――』


『マグノリア、聞いて聞いて!フランボワーズ王国がお庭になったら“あの御方”とマルベリー王国の理想郷になるんだって!』


『はあ…理想郷、ですか?』


『うん!お庭になったフランボワーズ王国にたくさんの魂を集めて、綺麗なお花畑にするのよ!とっても楽しみなの!ニャハハハッ!!』



ナモの真っ直ぐな言葉を必死に受け止めようと苦慮するも、預言者の“理想郷”はマグノリアの想像が及ぶものではなかった。が、絶対の忠誠を誓う主君ナモが指し示すまま、マグノリアは戦いという選択肢を選ぶしかなかった。



斯くして、マルベリー王国には彩りの戦士達や腕自慢の傭兵が集い、フランボワーズ王国の戦乱に至った。知る限りの顛末を語り終えたマグノリアは気丈に見せているものの、表情には後ろめたさが滲んでいた。



「そうだったんだ…ベガの奴、マグノリアの目が届かないのを良いことに好き勝手言ってたってわけだね!」


「ところでさ、ナモ様やテラコッタの騎士さん達って元の姿に戻れるのか?仮に助けたとしても魔物のままじゃマズいよなぁ…」


「そうだな、ヤチェ殿…そうだ!世界樹の恵み…それが実現すれば、あるいは助けられるかもしれない!」


「世界樹の恵み?ちょっと聞いたことがないのである…どういうものであるか?」


「うむ。マルベリー王国に伝わる伝承、謂わばおとぎ話のようなものだが…遥か太古の創世の時代、この地は一度、草木も大地も魔物の瘴気で枯れ果てた。だが、精霊の宿る大樹だけは枯れずに生き残った。人々は恵みを願い、大樹に祈りを捧げた。祈り始めて3晩経った日の夜明け、祈りに応えた世界樹の精霊が降臨され、この地は木々が生い茂り、花々が咲き誇る豊かな地に生まれ変わったのだ」


「そう…フランボワーズとマルベリーは精霊の御加護のもとに栄えた王国なのね」


「あの…私、世界樹の精霊さん…見たことある、かも…」



普段控えめなリデルの口から思いがけぬ一言が飛び出し、彩りの義勇軍全員の視線がリデルに集束する。内気なリデルは皆の視線を一身に受けてたじろぎながらも言葉を続けた。



「あ、あの、えっと…闘技大会でタンガさんと戦った時、負けそうになった私の前に…樹の精霊ユグドラシル様の幻が――」


「ユグドラシル!?リデル殿…まさか貴女が…」


「あの…?マグノリアさん…?」


「…うむ、どうやらリデル殿に間違い無いようだ。そのまま待っていてくれ」



マグノリアはリデルを数秒ほどジッと見つめると、瞬間移動を以て一瞬にして消える。一行が訳もわからぬまま立ち尽くしていると、マグノリアは瞬間移動で再び現れる。その左手には若草色と赤茶色の宝玉が輝く鍵が握られていた。



「お待たせした。これをリデル殿に託そう」


「これは…せ、精霊の試練の鍵、ですよね…?どうして…?」


「ナモ様が先代国王から受け継いだと聞いている。世界樹の恵みを体現する者が現れた時、これを持ってマルベリー王国とフランボワーズ王国のちょうど境目に聳え立つ大樹のもとに行け、と…」


「世界樹の恵みを、体現…私がですか…?」



突如として世界樹の恵みを体現する使命を突き付けられ、リデルは黙り込む。玉座の間に暫し静寂が重くのしかかっていたが、ビンニー国の闘技大会でリデルと共に戦ったセレアルとグィフトが沈黙を破った。



「あれだな~…きっとリデルなら世界樹の恵みでみんなの力になれるんだな、うん!」


「そうそう!きっとリデルなら大丈夫だよ~!ね、頑張ろ?」


「…はい!みなさんの力になるため、ナモさん達を助けるため、精霊の試練を受けさせてください!」


「よく出来ました!みんながその言葉を待ってたわよ!」


「よし、決まりだな。では、準備が整ったら国境の大樹に向かおう」



リデルの強い意思によって彩りの義勇軍は世界樹の御元へと誘われることとなった。彩りの義勇軍一行はフランボワーズ王国とマルベリー王国の国境線に聳え立つ大樹を目指し、態勢を整えるのであった。




To Be Continued…

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