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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter7:ベガ篇前編
196/330

第196話『魔薔の傀儡』

シリーズ第196話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

フランボワーズ王国とマルベリー王国、2つの王国が真っ向から衝突して火花を散らす。フランボワーズピンクの王妃とマルベリーパープルの暗愚王、両軍の旗印たる少女は戦いを目の前にしているとは思えないほど朗らかに笑っていた。



「あら~、マルベリー王国の女王様!お隣同士、仲良くしましょう♪」


「フフン、何をおっしゃいますの?これからみんなで楽しいパーティーなのですよん!」


「まあ、なんて素敵なの!こんなにたくさんの方々とパーティーだなんて、嬉しいですわ♪」


「その言葉を待っていましたよん♪さあ、一緒に楽しみましょう!ニャハハハッ!」


「ナモ様…言葉が微妙に食い違っているような…」


「ビビアン様…やれやれ…」



いかなる時も前向きでメルヘン思考な王妃ビビアンと残酷さに染まった無邪気さを振りかざす女王ナモ、両軍の旗印同士の会話は噛み合っていないようで絶妙なバランスで噛み合っている。旗印同士の奇妙な会話は周囲で聞いていた者を失笑させていた。



一方、山を隔てた隣国のビンニー国を統べる蛮族四天王は鰯青(サーディンブルー)の蛮族モリスティアを連れて彩りの武勇を見せ付ける。隣り合う王国の危機を黙って見過ごすことは出来ない――蛮族四天王のザキハ、ナダベ、イザサ、リューゲルは勿論、マルベリー王国から一行に加わったモリスティアも同じ想いだ。



「ブッ飛びな!スコロドン・ツェクリ!!」


「奥義!ポッロチネーゼ・ジャヴェロット!!」


「ぐわああぁぁッ!」


「俺様の拳、骨身に焼き付けな!パラミータ・コンバット!!」


「儂の本気、とくと味わえ!アンギーユ・マルテッロ!!」


「うげええッ!」



蛮族四天王は圧倒的な剛力を以てマルベリー王国兵を次々に撥ね飛ばす。赤き蛮族王エレンに敗れるまでの長きにわたり強きを尊ぶ蛮族の国に王者として君臨してきた4人の武は彩りの義勇軍の一員となってからも輝きを増すばかりであり、気弱なモリスティアも自然と背を押されていた。



「く、くらえ!サーディンバンプ!!」


「ぎゃああッ…!」


「よし、勝った!でも、見知った顔もいるからちょっと気遣うなぁ…」


「モリスティア、遠慮は要らんぞ!お主はもう今は儂らの仲間なんじゃから、コイツらには――」


『うわああぁぁッ!』



フランボワーズ王国兵とマルベリー王国兵、両軍の兵が同時に断末魔の悲鳴をあげる。2人の叫びの方に視線を移した彩りの義勇軍一行は絶句すると同時に我が目を疑う。両軍の兵を亡き者としたのは18人の彩りの騎士――テラコッタ・ソシアルナイツの面々だった。



「そんな…どうして!?私の可愛いラナン…お願い、応えて!」


「パンジーも…みんな、どうしちまったんだよ!?」


「…ベガ様…」


「…ベガ様…」



ニュクスとポワゾンの言葉も全く耳に届いていない。主君の名を繰り返すばかりのテラコッタの騎士達には既に自我はなく、人間の姿をした操り人形だ。その瞳に生気を無くした彩りの騎士達は目の前に立ち塞がる者を見境無く討ち、闘争心に委ねるままに左手に印された色彩の力を解き放った。



「…フリーズラッシュ…」


「…サンダーファング…」


「ぐわああぁぁッ!」


「サルビア、ミモザ…もう俺達の言葉も通じないのか?」


「ええ、少なくとも今はそのようね。彼女達から強い邪気を感じるわ…!」



フェリーナの言葉に同じく邪気を感じ取れるカシブは無言のまま頷き、リタは無力感に唇を噛み締め、ティファは息を呑む。かつては敵として一行と刃を交えながらも共に旅路を歩む中で絆を紡ぎ、ビンニー国での闘技大会でも各グループの勝利に大きく貢献してきた彩りの騎士達の突然の蛮行――彩りの義勇軍の皆にとって信じがたい光景だった。



「ヴィオ!あの騎士達、どうして急に暴れだしたのよ!?」


「…知らん。だが、奴らの生気を無くしたあの瞳…覚えがあるような…」


「ええ。彼女達のかつての主君である邪教戦士ローザと戦ったとき、わたくし達の前であのように…」


「だとしたら…まさか…!」



ルーシーとエレンが弾き出した結論にコレットとリデルは静かに頷き同意を示す。テラコッタの騎士達の造反を受け、彩りの義勇軍とフランボワーズ王国軍の陣営には俄に緊張が走る。ただでさえ兵力で劣るフランボワーズ王国には大きな衝撃が走り、戦況は劣勢の一途を辿っていく。



一方、マルベリー王国陣営。最初は敵軍の同士討ちが始まったと嬉々としていたが、事態は予想以上に深刻だった。陣頭指揮を執っていた蛍光マゼンタの邪術士マグノリアは君主であるナモの身を案じ、彼女の傍らで戦局を見つめている。



「どういうことだ?両軍の兵をいとも簡単に討つとは…あの騎士達は何者かに操られているというのか…?」


「…様…」


「…ん?ナモ様、何かおっしゃいましたか?」


「…ベガ様!ベガ様ァ!!ニャハハハハハッ!!!」


「な、なななっ!?ナモ様…ナモ様…!うわあああぁぁぁッ!!!」



変わり果てた主君の姿にマグノリアは激しく取り乱す。マルベリーパープルの暗愚王ナモは背中から茨を這わせ、自らの色彩であるマルベリーパープルの薔薇の花を全身に咲かせていた。右腕とも言える蛍光マゼンタの邪術士が必死に自らの名を叫ぶのも何処吹く風と無邪気に笑う彩りの暗愚王は禍々しい邪気を纏った人型のブーケと化していた。



「ベガ様…愛しのベガ様ァ…」


「ナモ様、お気を確かに!私です、マグノリアです!聞こえますか、ナモ様!?」


「マグノ、リア…?ニャハハッ!ニャハハハハハッ!!」


「グッ…!なんということだ…ナモ様!」


「ニャハハハッ!ベガ様に代わっておしおきよ~ん♪ニャハハハハハハッ!!」


「クソッ…ナモ様ァァァァッ!!」



邪気を纏った茨の鞭に薙ぎ払われ、マグノリアは全身を激しく打ち付ける。愚直なほど従順に付き従ってきた主君ナモから突然刃を向けられ、心身共に追い詰められたマグノリアの心中たるや筆舌に尽くし難い。



そんな中、オクトパスレッドの戦士ポルポが得物のサーベルを振るって茨の鞭を切り落とした。客将として雇われる身のポルポにとっては君主に刃を向ける背信行為と言えるが、ポルポの胸中には己の正義に裏打ちされた真っ直ぐな闘志が赤々と燃え盛っていた。



「っと、2発目には間に合ったか…マグノリア様、大丈夫かい?」


「ありがとう、ポルポ。私なら大丈夫だ…しかし、ナモ様が…!」


「ああ…こりゃ何かとんでもねぇことが起きてるみたいだね…やれやれ、丘にあがるってのは気苦労が絶えないもんだ!」


「ニャハハッ♪ニャハハハッ…ベガ様…ベガ、様…」



一方、彩りの義勇軍とフランボワーズ王国の陣営も慌ただしさを増す。王妃ビビアンを守るために各スクラムで散開していた兵全員が一帯に集結し、1つの大きなスクラムを形成していた。



「全軍、全勢力を挙げてビビアン様をお守りするのだ!」


「フレッサ様、承知しました。我らアザレアの戦士も全力でお守り致します!」


「ベガ様…ベガ様…」


「みんな、来るッスよ…闘魂燃やすッス!」


「了解した。不本意ではあるが…任務開始!」



幾人ものフランボワーズ兵を蹴散らしながら襲い掛かるテラコッタ・ソシアルナイツの面々に対して臆することなく、1人1人が彩りの力を紡いで迎え撃つ。元来仲間である彩りの騎士達と刃を交えることに僅かな躊躇いが滲むものの、闘志を奮い立たせて守るための戦いに挑んでいった。



「Rock You!スパークリングキラーチューン!」


「出でよ、妖精の剣…ニュンフェ・デーゲン!」


「…ウインドアロー…」


「…ストーンスマッシュ…」


「くうぅ~…さすがは騎士様ですな…これだけ束になっても一筋縄では――」


「あ、あれは!?みなさん、あれを見てください!」



獅子座のミノアが指差す方へ一行が視線を移すと、魔の彩りである黒紫の薔薇の花弁が無数に舞い上がっていた。辺りを吹き付ける風が止むと、魔族七英雄である薔薇の貴公子ベガと彼の配下ラストが妖気を全身を纏いながら姿を現す。テラコッタの騎士達とマルベリーパープルの暗愚王ナモはベガとラストの妖気を感じ取るや否や戦いの手を止めて踵を返し、フラフラした歩様のままベガとラストのもとへと歩み寄っていった。



「ああ…ラスト様…」


「よしよし、可愛いエーデル…僕達の理想郷のために力を尽くしてくれてるんだね…」


「ベガ様…ベガ様ァ…」


「フフフ…愛しきナモよ…よく頑張ってくれたね。全ては私の告げた通り、筋書き通りに進んでいるよ」


「貴様ッ!どういう了見だ!?このマグノリアのサイコパワーで潰してくれる!」


「ごきげんよう。私の名はベガ。君達には“あの御方”という呼び名で通っているらしいが…」


「何ッ!?なんということだ…まさか、貴様が…“あの御方”だったなんて…!」



真実を突き付けられたマグノリアは打ちのめされ、絶句する。君主ナモの心身を魔に染めたのはあろうことか“あの御方”と呼び慕っていた男だった。マグノリアは自らの浅慮を悔いると同時にベガへの憤りを沸き上がらせる。誰より守りたい桑紫(マルベリーパープル)の彩りの女王を弄ばれることに我慢ならず、赤黒い怒気を全身に纏っていた。



「マグノリア…君のおかげで美しき彩りの宴は大いに盛り上がってきたよ。主催者として心から感謝しよう!」


「魔族七英雄ベガ…我々を騙していたのか!」


「騙す…?人聞きの悪い無粋な言葉を使うとは醜いものよ。我ら魔薔隊の理想郷の実現は目前だというのに、目を背けようとは愚かな…」


「愚かなのは貴様だ!ナモ様を返してもらうぞ!!」


「…マグノリア、私も行くわ。テラコッタの騎士ブライア、いざ参る!」



両掌に彩りの闘気を漲らせるマグノリアの傍らにテラコッタの賊騎士ブライアが熱き闘志を携えて躍り出る。ダスティグレーの賊騎士ブライアは自らの家族と言えるテラコッタの騎士達を救うため、蛍光マゼンタの邪術士マグノリアは君主ナモを守るため、薔薇の貴公子ベガに挑みかかる。果たして彩りの義勇軍はベガの理想を打ち砕き、妖しき魔の茨に囚われし者達を救えるのだろうか?




To Be Continued…

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