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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter7:ベガ篇前編
190/330

第190話『桑紫の暗愚王』

シリーズ第190話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

美しき花々の咲き誇るフランボワーズ王国庭園にて彩りの義勇軍一行。魔物の騒ぎを聞き付けたフレッサ、ミルティ、フラゴラ、スグリの4人が庭園に駆け付けたが、既に魔物はアルボルと彩りの戦士達に討たれており、4人は驚きと同時に胸を撫で下ろした。4人に遅れて到着した彩りの義勇軍一行も状況を汲み取るや安堵の表情を見せる。



「皆々様、庭園に魔物が現れたと一報を受けたのですが…お怪我はございませんか?」


「うん、大丈夫だよ~!アルボルが魔物をやっつけてくれたんだよね~!」


「えっ、それマジ!?って、アルボルの左手…ウチらの同じ印じゃん!」


「ああ。みんなのおかげでオラも戦えるようになっただ。みんなと一緒にフランボワーズ王国を守るべ!」


「アルボル、よろしく。私達と共に絆を紡いでいきましょう!」



モニカとアルボルが爽やかに握手を交わす。誇り高きウォルナットブラウンの庭師アルボルを加え、彩りの義勇軍は総勢129人となった。新たな彩りを加え、守るための戦いへ向けての意気は高まるばかりである。



一方、国境を隔てたマルベリー王国は妖しい彩りの闘気が充ち満ちていた。蛍光マゼンタの邪術士マグノリア、ハンターグリーンの狙撃手マチルダ、ハンティングピンクの狂戦士ガンズ――そしてもう1人、マルベリーパープルの祝福の証を持つ女性が佇んでいた。



「さぁて、どれだけ潰せるか…グウウゥゥッ!」


「ガンズ、待ちきれねぇって顔に書いてあるじゃないのさ!あたしゃ今すぐでも出撃出来るっての!ヒャヒャヒャッ!!」


「やれやれ、血気盛んだこと…もう待てない連中もいるので、もうじき仕掛け時としてよろしいでしょうか…ナモ様!」


「うん、良いよ!楽しみだよね~♪パーティーにはお客さんがたくさん来てくれるの?」



マグノリアら彩りの戦士を率いていたマルベリー王国の君主はナモと呼ばれる女性だった。濃紫の長い髪を三つ編みに結い、薄紫のマントの下に黒とショッキングピンクのチェックの服を着ている。間違いなくマルベリー王国を統べる女王らしいが、その容貌と声色は幼い少女のようだ。



「はい、マチルダとガンズの他にもたくさん客将を控えさせております。戦線ではこのマグノリアが陣頭指揮を執ります故、ナモ様はごゆるりと“パーティー”をお楽しみくださいませ」


「そっか!みんなで一緒ならきっとワクワクだよね~!フランボワーズ王国と戦いになったら面白そう!マグノリアのサイコパワー、頼りにしてるからね!」


「はっ、必ずやフランボワーズ王国を討ち伏せてみせます!どうぞ我らにお任せを!!」


「わぁ~、もう今からウキウキしちゃう!みんなでフランボワーズ王国を潰しちゃお~ね!ニャハハハハハッ!!」



隣国との戦乱を“パーティー”と称する無邪気さと表裏一体の残酷さを剥き出しにするマルベリーパープルの暗愚王が高笑いを響かせ、付き従う彩りの戦士達も不敵な笑みを浮かべる。が、彼女達はフランボワーズ王国に集いし彩りの義勇軍と同じく薔薇の貴公子に踊らされているに過ぎなかった――



――魔族七英雄ベガの居城。フランボワーズ王国とマルベリー王国、隣り合わせで火花を散らす2つの王国を掌で転がす策謀家である薔薇の貴公子は勇んで戦いに挑まんとしているマルベリー王国陣営の様相を配下であるディアボロ7人衆ラストと共に見つめていた。



「うむ…我が美しき花ナモよ…さて、これはどうしたものかな…」


「どうにも皆さん血の気が多いですね…ベガ様、出撃許可はいかが致しましょう?もう許可しますか?」


「ふむ…私はいささか早い気もするが、致し方ない。彼女達の意思を無下にするのも無粋だろう。彼女達に任せる手筈としようか」


「…承知しました」



マルベリー王国陣営の意思とベガ陣営の思惑に若干の齟齬が生じる中、妖しい策謀の歯車が遂に回り始めた。一方、彩りの義勇軍は広々とした食堂に勢揃いし、皆で穏やかに食事を摂っていた。



「美味しい…!野菜本来の味を活かした優しい口当たり…スプルース国を思い出すわ!」


「ありがとう、ミリアムさん。シェフが腕にヨリをかけて作ったから、みんなもたくさん食べてね!」


「オッス!フラゴラさん、肉料理おかわりッス!!」


「テリー…これバイキングだから自分で取りにいかなきゃ。しかも肉料理ってたくさんあるから、どれかわかんないよ!」


『アハハハハッ!!』



クレアのツッコミに皆が爆笑する。彩りの義勇軍一行は王宮の客人用の宿舎に通され、暫しの平穏を満喫していた。気兼ねすることもなく皆で笑い合う光景はフランボワーズ王国を守るための戦いが間近に迫っていることを忘れてしまいそうなほどに穏やかで和やかだ。



「フフフッ、たくさんの人と一緒に幸せを共有出来て楽しいですね、リタちゃん♪」


「そうだな、ネイシア。ここ最近でたくさん仲間が増えて賑やかになったけど、それだけたくさんの人と共に過ごす時間を共有出来るって素敵なことだよな!」


「はい。私はこうして皆が一緒に笑顔でいられる時…リタちゃんと笑い合える時が一番幸せです♪」


「フフッ…俺も同じ気持ちだぜ…俺、キミと笑い合えて幸せだよ。ネイシア♪」



甘桃(スイートピンク)のプリンセスであるネイシアの可愛らしい微笑みに応え、普段はクールな冥紫の王子リタも優しく微笑む。共に歩む旅路の中で皆の想いが1つに織られたカラフルな絆の輪が美しく紡がれていく。いつ戦乱の火蓋が切られてもおかしくないことを皆が忘れかけている中、フランボワーズ王国の夜は穏やかに更けていった。



翌朝、花薫る王国の空に薄紅色の東雲(しののめ)が移ろう頃、一行を包んでいた穏やかな空気が一転する。マルベリー王国から武装した小隊が迫っているという一報が王城に届き、宿舎で休んでいた彩りの義勇軍一同にも緊急徴集がかかった。



「皆さん、軍議通りに守衛専従でお願いします。では、参りましょう!」


「了解。さて…朝早いが、仕事するか…」


「ふわぁ…眠いよぉ…おやすみなさ~い…」


「コレット、寝てる場合じゃないぞい!ほれ、フランボワーズ王国を守りに行くぞ!」



夜明け直後の早朝に奇襲を受け、彩りの義勇軍にも俄に緊張が走る。一行が軍議で決めた編成でスクラムを組んでそれぞれ持ち場へと急ぐが、王城の最奥――玉座の間では全く別の問題が紛糾していた。



「フレッサ、離しなさい!私も一緒に行くんです!」


「なりませぬ!ビビアン様に万一のことがあっては、我は陛下に合わせる顔がありません!我らと共に玉座の間にいてください!!」


「嫌です!フラゴラとスグリとアルボルが…お友達になったばかりの皆さんが朝から楽しくお出かけするというのに、私は1人寂しくお留守番ですか!?そんなのあんまりです!!」


「た、楽しくお出かけって…それに留守番は私とフレッサも一緒ですよ。ビビアン様…」


「やれやれ…ビビアン様は言い出したら聞かんからな…困ったものだ…」



顔を見合せるフレッサとミルティは困り果てていた。フランボワーズピンクの王妃ビビアンが自らも戦列に加わると聞く耳を持たなかったのだ。とは言うものの、目の前に迫るのは戦いであるということさえ自覚していないビビアンを戦列に加えることがあまりにも危険であるのは誰の目にも明らかだ。ビビアンは小さな体をじたばたさせながらフレッサの羽交い締めを振りほどこうと必死に抵抗するが、その様相は緊張感が欠けていた。



「ビビアン様…だ、大丈夫だべか…」


「うん…なんか揉めてるの聞こえるよね…こりゃフレッサとミルティも大変だよ…」


「まあ、とにかくビビアン様はフレッサとミルティにお願いして、アタシ達は防衛に集中しよう。どんな理由があったとしても、フランボワーズ王国を汚すことは絶対にさせない!」



アルボル、スグリ、フラゴラの3人は後ろ髪を引かれるような思いを必死に断ち切り、スクラムの持ち場へと急行する。愛する祖国を守るため、戦いを解していない王妃を守るため――その想いは1つだ。



一方、彩りの義勇軍はマルベリー王国との国境に築かれた外郭に到着した。無機質な表情を崩さないコンクリート打ちっぱなしの堅牢な障壁はフランボワーズ王国とマルベリー王国の冷えきった関係を如実に物語っていた。



「でっかい壁ッスね…パンチやキックじゃびくともしなさそうッス!」


「うむ、此度は我々の正義を以て悪を跳ね除ける障壁となろうではないか!親愛なる同志テリーよ!!」


「マルベリー王国…どういうつもりなんだろうな…胸糞悪りいぜ…」


「そうだね、ヤート。どんな理由があるにせよ僕達が両国の架け橋にならなければ――」


「わわわっ!?バイク!?誰ですか!?」


「よう、テリー・フェルナンデス!アタシのこと、忘れたとは言わせねぇぞ!?」



テリー班の前に艶やかな黒のバイクが駆けてくる。早朝の空気が紡ぐ淡い色彩に映えるパンサーブラックの彩り、打倒テリーに執念を燃やす彩りの格闘家ジャンヌが姿を現した。黒豹の拳闘士は今にも宿敵テリーに殴りかからんばかりに前のめりにファイティングポーズを取っていた。



「もちろんッス!ちょっと前にも戦った…ジャンヌ…ジャンヌ・なんとかッスね!」


「ジャンヌ・“パンサー”だ!いい加減覚えろよ!!マジでケンカ売ってんのか!?」


「すまない、テリーに悪気は無いんだ…昔から興味の無いことは全く覚えないんだよね…」


「ジャンヌさん…悪いけど、今、私達はジャンヌさんに構ってる暇は無いです」


「そうそう、ラパンの言う通り。これからマルベリー王国の進軍を止めさせないといけないんだよ!」


「そうだ!親愛なる同志ヤートの言う通りよッ!!今、事態は一刻を争う!!私闘ならば日を改めるが良いッ!!!」



マルベリー王国と耳にした刹那、ジャンヌの表情が妖しい笑みを帯びる。ファイティングポーズを解き、“表面上”は友好的な色合いの表情を見せながら宿敵テリーに歩み寄っていった。



「へぇ…それならアタシも手伝ってやるよ!フランボワーズ王国さんを守れば良いんだろ?それぐらいこのジャンヌ・パンサー様にかかれば造作もないさ!」


「本当ッスか!?手伝ってくれるなら心強いッス~!」


「ああ、今回だけは特別サービスで手伝ってやる!任せとけって!!」


「やったぁ!ジャンヌさん、よろしくですよ~!」


「志を同じく出来ることに感謝する!頼むぞ、親愛なる同志ジャンヌよッ!!」


(…なあ、キャロルさんよぉ…コイツなんか怪しくねぇ?)


(そうだね、ヤート…何か腹の底に企みがあるかもしれない…用心するに越したことないね)



ヤートとキャロルが訝しがる中、ジャンヌがテリー班に加わった。彩りの義勇軍はマルベリー王国の脅威からフランボワーズ王国を守ることが出来るのだろうか?果たして黒豹の拳闘士ジャンヌの真意とは…?




To Be Continued…

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