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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter2:アルニラム篇
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第19話『魔空間〜海鳴〜』

シリーズ第19話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ〜!

ガンメタル島から雷の神殿に赴き、精霊の試練を乗り越え、トリッシュは更に一回り成長した。汚染海域アオニビ海から無事に帰還した一行はルーフス国から丸一日かけて海を渡り、アマラント国へと戻ったところであった。




「アマラント国…久しぶりですね」


「そやな〜…前に来たときは海賊騒ぎで大変やったからなぁ…」


「エレン、ずっと言ってたアテってどこにあるの?」


「よくぞ聞いてくれたね!クレア、アンタも知ってる人だよ!実はかくかくしかじか…」


『ええぇぇ〜っ!?』


「うおぉっ!それは名案ッス!流石はエレンッス〜!!」



その頃、魔空間〜海鳴〜。水面のような揺らめきが青々と煌めいている。その最奥にアルニラムが佇むところにエンヴィが現れた。



「アルニラム様。近いうちに奴らがこちらに到達する可能性があります」


「慌てることはないわ。ここは人智を超越した世界。そう簡単には到達出来ないわよ」


「はあ…そうだと良いのですが…奴が雷の精霊の加護を受けたという報告もありますし…」


「エンヴィ、貴方は心配性が過ぎるわよ。おもてなしをするのにそんな暗い顔をしては駄目。いいわね?」


「…畏まりました。あ、あの…アルニラム様…」


「ん?どうしたの?」


「…いえ、あの…また大きな動きがあり次第、報告致します…」


「ええ、わかったわ。じゃ、泳ぎに行ってくるわね♪」


(アルニラム様、貴女の理想が実現すれば、私は貴女と…クソッ、何故告げられぬ…不甲斐ない…)



一方、アマラント国。エレンの思いがけぬ提案にテリー以外は戸惑うばかりであったが、以前の海賊騒動に居合わせなかった面々はポカンとした表情だ。



「エレン姉ちゃん…疲れてるんとちゃう?ホンマに本気なん?」


「そうだよ、今日はもう宿屋で休もう?考え直そうよ…」


「2人して失礼だね!私は正気だし本気だよ!」


「あの…その方はどんな方なのですか?」


「ああ、ルーシー達は知らなかったね。7つの海を知り尽くした海のエキスパートなんだよ!ちょっとした知り合いでね♪」


「ほっほう…で、その知り合いはどこにおるんじゃ?」


「ん〜…わかんない!港で聞き込みしよう!」


「なんだい、行き当たりばったりってかい?随分と大雑把だねぇ!」


「ビクトリア…それ、お前が言えたことか?」


「ゼータ、殴るよ!」


「…殴ってから言うな」


「フフフッ…ゼータさん、私達のことよく見てますね」


「そうね、ネイシア。彼女も精霊に導かれし者…自然と仲間意識が芽生えたのかもしれないわ。嬉しいことね♪」



一行は港へと向かう。穏やかでありながらも人々の賑わいが見られ、以前より活気が感じられる。エレンは波止場の船乗りに親しげに語りかけていった。



「ねえ、キャプテン・ロビンっていう海賊、どこにいるか知らない?」


「ああ、あの娘ね。最近心を入れ替えて海上警察みたいな仕事をやってるみたいだよ。義賊とでも言うのかな…あっ、噂をすれば…あの船に乗ってるよ!」



港へロビンの船が迫ってくる。掛けられた帆は以前の真っ黒ではなく、黄色、オレンジ、黄緑といったビタミンカラーで彩られていた。ロビンは港に船を停め、軽快な足取りで姿を現した。



「やあ!ごきげんよう、諸君!今日も海は平和だね〜♪」


「ロビン!」


「あ…あ…エ、エレン姐さん!こんにちはッ!」


「エレンさん…?えっと…すごく、慕われてるんですね…」


「すごいね〜♪さっすがエレン!頼りになるもんね!」


(ああ、そっか…リデルとコレットも知らないんだもんなぁ…エレンのエキサイトぶり…)


(あの時はヤバかったよな…俺、初対面で目の当たりにしたからな…参ったぜ…)



エレンを目の前にした途端、ロビンは急に弱腰になった。前回の一件が余程尾を引いているのだろう。彼女の小柄な体がより一層小さく見えている。



「実は今日はアンタと見込んで頼みがあるんだ。潜水艦、持ってたら貸してくれる?」


「勿論OKです!エレン姐さんの頼みとあらば、なんなりと〜!!」


「あら…ウッフフ♪楽しいお友達ですのね」


「勿体無いお言葉です!貴女様もなんと艶やかでお美しいことでしょう…」


「ああ、この娘、綺麗でしょう?ノワール帝国の皇女様なんだよ!」


「お、お、皇女様!?どおりで気品があると思った…私のような愚民のもとにお越しいただき、ありがとうございます!ありがとうございます!!」


「ふむ、随分と低姿勢だな。エレンの友人…というより主従…なのか?」


「うむぅ…なんじゃ、このへっぴり腰な輩は…こんな奴に任せて大丈夫かのう?」


「では、今すぐに手配します!今からですと…明日の午前中には到着します。今日は宿でゆっくりお休みください!」



その夜、一行はロビンが手配した宿で一夜を過ごす。魔族の巣窟である魔空間への突入を前に神々の彩りは輝きを増す。



「魔空間…恐らく魔族七英雄も待ち構えているでしょう。厳しい戦いになりそうですね」


「ああ、そりゃ相手もそれなりのもてなしをしてくるだろうね。ま、どんな相手だろうが私の力で黒焦げにしてやるよ!」


「ええ。そしてカタリナさんを助けましょう。わたくし達の絆の力で!」


「そうだね、ルーシー。私達、絶対絶対負けないもん!」


「コレットの言う通りッス!正義は勝つッス!!行くぞ〜!!」


『おおお〜〜っ!!』


(姉貴…あと少しだけ待ってて。明日、絶対に助けるから…)



翌朝、遂に突入の時を迎えた。幸いにも天候に恵まれ、魔空間突入へのお膳立ては整った。



「アミィちゃん、少し急いでくださいね〜!」


「ネイシア姉ちゃん、待ってぇな〜!道具買い込んでもうて重いねん!」


「これより出港致します!目的地到着は6時間後を予定しています」


「よっしゃ!では、出発!!ヨーソロー!!」


「ビクトリア姐さん…あたしの台詞取らないでください〜…」



潜水艦は徐々に速度を上げ、テナールズ海を瞬く間に越えていく。気付けば世界最大の海洋、スマルト海の大海原が一行の目の前に広がっていた。



「間もなく目的地に到達。潜水体勢に入ります!」


「えっ…う、うん…」


「エレン…?まあ、いいや。いよいよ突入だぜ!」



潜水艦はどんどん海へと沈み込んでいく。しかし、エレンの様子がおかしい。海の水面のように真っ青だ。



「ふえ…エレン?どうしたの?具合悪いの?」


「確かに、顔色が悪いですね…大丈夫ですか?」


「…怖い…海底って暗いし…変な魔物いるかもしれないし…第一、私カナヅチだし…」


「姐さん、あたしの潜水艦なら大丈夫ですから!安心してくださいって!」


「間もなく座標S57.01、W90.73地点だ。皆、気を引き締めて…!…あれは…」



一行の目の前に黒と紫の渦が現れる。渦に近付く程に周囲を取り巻く禍々しい空気が強まっていった。



「みなさん、しっかりつかまっていてください。突入します!」


「ああ、わかった!…首を洗って待ってろ…アルニラム―――ッ!!」



艦内を激しい揺れが襲う。一行を乗せた潜水艦は瞬く間に悪しき渦の中に吸い込まれていった。一瞬、皆の時が止まる──揺れが収まると目の前に青々と煌めく空間が広がっていた。



「…ここは…?」


「GPSが機能していない…次元の歪みを越えたみたいだね…」


「ふえぇ…ここにカタリナがいるの?」


「恐らくな…とにかく、外に出て確かめてみようぜ」



モニカ達が艦内から出ると、そこは水中であるかのように青々と揺らめいていた。辺りを見たことのない魚達が泳ぎ回っている。



「凄い…まるで水の中みたいだわ。まさに人智を超越した場所なのね」


「そやな、フェリーナ姉ちゃん…見渡す限り真っ青やんなぁ──」


「左前方より敵接近。排除体勢に移行する」



ゼータの右手が収納され、重々しい銃器が姿を現す。紋様が血紅色に煌めく左手を静かに添え、真っ直ぐに飛んでいく光線で撃ち抜いた。撃たれた魔物達は跡形も残っていない。



「これが科学の力…ウフフッ、素敵だわ…」


「へえ、あんたやるねぇ!こりゃ心強いってもんさ!」


「気を抜くな!次が来るぞ!」


「みんな、行きましょう。左手に印された祝福の使命とともに!!」



モニカ達は魔物達を迎撃する陣形をとる。神々によって彩られた力を惜しみ無く振るった。



「ブライトエッジ!」


「スターダストボムや!」


「ヒートアックス!」


「グアァアァ!」


「バブルブラスト!」


「ダークスフィア!」


「アジールゲイル!」


「ギアァアァ!!」



ゼータとロビンも負けじとその力を解き放つ。血紅色、無色透明とそれぞれの彩りがそこにはあるのだ。



「マーシレスバレット!」


「ミラーショット!」


「ギアァアァッ!」


「流石だな、神々の子よ。しかし、何人束になろうと我らは倒せん!」


「ええ、たっぷりとおもてなしして差し上げるわ。この娘もお待ちかねだし…」



魔物達を率いていたアルニラムとエンヴィが姿を現した。その傍らには一行に見せ付けるかのようにカタリナを捕えた水泡の檻が浮かんでいる。



『みんな!来てくれたのね…』


「カタリナ、待っててください。私達の使命のもと、魔を討ち、貴女を救います!」


「姉貴…アタシ、強くなったよ。絶対助けるから!」


『トリッシュ…』


「フッ、悪いが感動の再会はここまでだ。貴様ら全員、魔海の塵となれ!」


「さあ、魔濤隊隊長、蒼波の魔女アルニラムによるショータイムの始まりよ!お姉ちゃんに貴女の最期をしっかり見届けてもらいましょうね…トリッシュちゃん♪」


「テメェ…絶ッッ対にブッ飛ばしてやる!」


「トリッシュ、強くなったお前を見せてやれ!雑魚は俺達に任せろ!」


「あたくし達は負けませんわ。魔族の敗北は祝福の証に定められた運命の行き着く先…闇に鎮めて差し上げますわよ!」



モニカ達は散り散りに魔濤隊へと向かっていく。隊長アルニラムにはトリッシュが真っ先に飛び掛かり、腹心のエンヴィにはモニカが挑み掛かった。



「せいやっ!はあっ!」


「ほう…良い太刀筋だ。あのシリウス様が見込んだだけのことはある…」


「シリウス…?あの二刀流の…」


「敵を目の前にして他人の心配か?随分と余裕だな」


「クッ…!」


「まあ、良い。抗ったところで時間の無駄だ。せいぜいアルニラム様の理想の糧となることを指折り数えて待つことだ──」


「トゥローノ・ランチャ―――ッ!!」



トリッシュは激しい雷撃の一閃をアルニラムへと見舞った。青く揺らめく空間に黄色が割り込み、辺りを碧色に染め上げる。



「あら…少しは腕を上げたのね。見直したわよ」


「当たり前だろ?全てはテメェを潰して姉貴を救うためだ!!」


「まあ…悪い娘ね。いつまで経っても乱暴な物言いが直ってないわ。お仕置きが必要ね!さあ、見ていなさい…貴女の大切なお姉ちゃんの苦しむ姿を!」


『トリッシュ!トリッシュ!助けてッ!!』


「そんな…姉貴ッ!!」



カタリナの足元を水が満たしていく。水泡の檻を埋め尽くしていく激流は程無く腰元まで届いていた。



「なんじゃと!?カタリナが…」


「まずい、あの水量だと…1分も持たない!カタリナが溺死してしまうぞ!」


「そんな…どうにか出来ないんですか!?…神よ、我らに救いを…」




「姉貴いぃいぃッ!!」




遂に魔空間〜海鳴〜に到達した一行。彼女達を待っていたのはアルニラム率いる魔濤隊の手荒い歓迎だった。カタリナは魔海の激流に呑み込まれてしまうのか?カタリナを救う術はあるのだろうか?神々の子の運命やいかに…




To Be Continued…

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