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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
181/330

第181話『色彩武勇~vol.19~』

シリーズ第181話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族四天王の統べる強きを尊ぶ国の真ん中に聳え立つ闘技場のアリーナの真ん中でダスティパープルの毒の戦士アンブラが魔の血を滾らせながら吠え、禍々しい咆哮を響かせる。あまりにも凄絶な毒の魔爪の脅威を目の当たりにし、リモーネ班の面々は驚嘆していた。



「カチュアさん…だ、大丈夫ですか!?」


「いたた…あの人、手加減無しだよ…ヴィオさんの仲間、ヤバいって…」


「ふむ、彼奴(きゃつ)魑魅魍魎(ちみもうりょう)の類か…まこと恐ろしき魔の血族よ…」


「次は私の出番ね。一筋縄ではいかなさそうな相手だけど、持てる全てを出し尽くして挑むわ!」


「まったく…ヴィオったら、とんでもない奴を連れて来たわね…パオラ、頼んだわよ!」



リモーネ班の中堅はアイスグリーンの彩りを持つアーマーナイトのパオラだ。ミントグリーンの髪を長く伸ばし、青緑と白を基調とした鎧に身を包んでいる。鍛え上げた筋肉隆々の肉体に分厚い鎧を纏う氷緑(アイスグリーン)の彩りの重装兵は得物の槍を構えながら堂々たる姿で闘技の舞台を踏み締めた。



「リモーネ傭兵団のパオラ、推して参ります!」


「オ前、敵…叩キノメス!グルルルウゥアアァッ!!」


「ふぅ…やはり話が通じそうな状況ではないわね。では、魔物退治といきますか…!」



パオラは目の前の戦いを“魔物退治”と称し、毅然とした態度でアンブラを迎え撃つ。両軍の中堅同士の正面衝突は開始早々に白熱の様相を呈し、再び闘技場に熱気を呼び込んでいた。



「てやぁ!うおぉああッ!!」


「グウゥ…ガルルルルゥッ!」


「クッ…!つ、強い…カチュアが気圧されたから覚悟してたけど、予想以上だわ…!」



リモーネ班中堅パオラはアンブラの凶襲を得物の槍と分厚い鎧で必死に受け止めるが、ダスティパープルの彩りの禍々しい毒の爪はひっきりなしに襲い掛かる。共に戦うヴィオ班の面々は静かに戦況を見つめていたが、次鋒ザラームだけは無邪気にアンブラに声援を送っていた。



「いけいけ~!アンブラさん、がんばれ~!」


「フフッ…ザラーム、ご機嫌ね…それにしてもアンブラが味方で良かったわ。あの猛攻は敵に回せば脅威よ」


「うむ、ツィガレ殿の申す通り。アンブラ殿の毒の力、恐るべきものよ…戦士としてあれほどの意気があれば如何なる敵にも討ち勝てるであろう」


「ああ…そう上手くいけば良いがな…さて、どう転ぶか…」



一方、客席で見守る仲間達も鬼気迫る戦いぶりに戦々恐々とするばかりである。魔の血に委ねるままに得物の魔爪を降り下ろすダスティパープルの彩りの戦士の姿に息を呑むばかりであった。



「アンブラ姐さん、良い調子ぞなもし!ワイルドな攻め、さすがぞなもし!」


「そうですね、スラッジさん。いつもよりアンブラの気が高まっているように感じます…これも皆様との絆の力ということでしょうか…」


「そうですね、バラキエル。ヴィオは真っ先にアンブラをグループに引き入れていましたけど、きっとヴィオもアンブラとの絆を紡ごうとしていたんですね」


「そやなぁ、モニカ姉ちゃん。アンブラ姉ちゃんって見た目怖そうやし何を考えてるかわからへん時もあるけど、こうして心強い味方になってくれてるもんな!絆を信じればきっとわかり合えるってことなんやな!」


「…アンブラ、負けるなよ…」



ゼータは一度は同士討ちをしてしまったアンブラに向けて静かに呟く。彩りの義勇軍の仲間達に背を押され、ダスティパープルの魔戦士は猛々しく目の前の敵を引き裂かんと妖しい闘気を帯びた爪を剥き出しにする。が、パオラは動じることなく冷静にアンブラの出方を伺っていた。



「さあ、覚悟してもらうわ!…ジャヴェロット・グレイシア!」


「ガウウ…ガルルウゥッ!?」


「フフッ、残念だったわね!私の彩りの力、心して味わうといいわ!!」


「ガフウッ!ヴウウッ…!」



アンブラは自身が沸き起こした毒の沼をパオラの彩りの力で凍らされ、両足を固められて身動きが取れなくなっていた。パオラの彩りの力に動きを封じられたアンブラは瞬く間に守勢に立たされる。爽やかな氷緑(アイスグリーン)の紋様を煌めかせ、得物の槍を一振りして一閃した。



「貫け、氷河の碧!リディニーク・ランサー!!」


「ガアアアァァッ!!」


「そこまで!勝者、パオラ選手!」



彩りの魔戦士アンブラは氷緑(アイスグリーン)の彩りの力に翻弄されるがまま、凍った毒の沼ごと砕かれて敗れ去った。皆が駆け寄る中、大将のヴィオは感情を発することなく歩み寄り、アンブラの健闘を静かに労っていた。



「アンブラさ~ん!あわわわ…だ、だいじょうぶ!?」


「グウ、ウゥ…負ケタ…」


「チッ…アンブラ1人だけで全員叩き潰せると思っていたが、計算が狂ったか…リモーネ傭兵団、予想以上の実力だな…」


「…ツィガレ殿、どうか注意なされよ。武運を祈る」


「…了解。任務開始」



ヴィオ班、選手交代。コーヒー色の鎧に身を包み、得物のダガーを逆手に構えたテラコッタの凶騎士ツィガレが煙草色の紋様を妖しく揺らめかせながら静かに戦いの舞台へと踏み入る。かつてはある盗賊団の一員としてブルーノ国の闇に潜んでいたが、宮廷の宝物庫に盗みに入った際に囮にされた挙げ句捕らえられる。処刑台に立たされ一度は死を覚悟したが、主君ローザによって急遽騎士に推薦されて一命を取り留めた異色の経歴の持ち主である。騎士に推薦されて以降も沈着冷静な性格で任務を遂行し、テラコッタ領の平和を陰日向になって守ってきた。闇に潜み影を断つ煙草色の彩りの騎士はリモーネ班中堅パオラに凛とした闘志を突き刺していった。



「騎士様と戦えるなんて光栄だわ!リモーネ傭兵団のパオラ、お相手致します!」


「…任務開始。テラコッタの騎士ツィガレ、貴女を始末させてもらうわ」


「そうはさせないわ!いざ、尋常に勝負!!」



煙草色の紋様を持つヴィオ班副将ツィガレとアイスグリーンの紋様を持つリモーネ班中堅パオラ――2人の色彩の対比は非常に美しく、瞬く間に観衆の視線を釘付けにする。軽快な動きで懐へと飛び込んでくるツィガレに対し、パオラは動じることなく迎え撃った。



「…とうっ!はあッ!」


「は、速い…!でやああぁッ!!」


「フッ、遅いわ…隙あり!」


「ううっ…!」



テラコッタの凶騎士ツィガレは圧倒的なスピードで翻弄し、自らのペースにパオラを引き込んで撹乱していく。共に歩みを進めるテラコッタの騎士達もツィガレの沸き起こしたスピード感に身を委ね、奇妙な高揚感に浸っていた。



「うおおおッ!親愛なる同志ツィガレよッ!!その武勇をあまねく見せつけてやるのだあああァァァッ!!」


「やれやれ…ランディニ、騒がしいわよ。まあ、確かにツィガレの戦いぶりは相変わらず見事なものね!」


「それにしても…盗賊だったりスナイパーだったり、果ては殺人鬼だったり…テラコッタの騎士って少し変わった人が多いよね…」


「そうですわね、サルビア様。きっとこれも我らが主君ローザ様が紡いでくださった“絆”なんですね…心より感謝致します…」


「ツィガレ、その調子だよ!貴女の彩りのパワーでガンガン燃やしちゃえッ!!」



炎騎士ランタナの熱い声援を背に受け、凶騎士ツィガレは更に疾駆を加速させる。目にも留まらぬスピードで“標的”であるリモーネ班中堅パオラを捉え、優勢を決定的なものとした。



「…失礼。貴女の影を断たせていただくわ…」


「ひえっ!?は、背後に…!?」


「仇為す者は切り裂くまで…覚悟しなさい」


「クッ…!!」



自らの背後に立つ煙草色の彩りの凶騎士にダガーを突き付けられ、パオラは戦慄する。煙草色の闘気を纏った凶騎士に影を踏まれ、為す術なく立ち尽くすばかりであった。



「我が祖国の断影(かげだち)の刃、受けてみなさい…テラコッタ・ダークスラッシャー!」


「うあああぁぁッ…!」


「そこまで!勝者、ツィガレ選手!」


『うおおおぉぉぉッ!!』



氷緑(アイスグリーン)の重装兵を撃ち破った煙草色の凶騎士の疾駆に客席が沸き立つ。ヴィオ班の面々は闘技場を包む歓声にも浮き足立つことなく、目の前の戦いに一心に向き合っていた。



「…よし、さすがの腕だな。ツィガレ、任せたぞ!」


「ツィガレ殿の剣閃、見事也。これも騎士としての修練の賜物ということか…」


「わあ~!つぎのひと、つよそう…ツィガレさん、がんばって~!」



リモーネ班の副将を務めるのは斧の二刀流を駆使する戦士だった。鮮やかな真紅の髪を短く切り揃え、鱗状の細工が施された赤い鎧を着ている。左手の甲には今にも燃え上がりそうなサラマンダーレッドの紋様が爛々と輝く。その主であるリモーネ班副将ミネルバが2本の斧を両手に構えてヴィオ班副将ツィガレに向かい合っていく。両者が無言のまま睨み合う中、客席で見守る彩りの義勇軍の皆も息を呑んだ。



「あの人、強そうだなぁ…大きい斧と小さい斧、斧の二刀流って珍しいよね!」


「そうね、クレア。彼女からも力強い精霊の気を感じるわ…確か彼女はミネルバっていう名前の――」


「マジかよ!?ま、まさかアイツ…双龍斧(そうりゅうふ)のミネルバか!?」


「知ってるのか、ベラハ?副将だからもちろん強い人なんだろうけど、相当手強い人なのか?」


「…ああ…そうだよ、リタ。アタシの故郷ガリバルディ国の戦士でその名を知らない奴はいない。溶岩の上に座って瞑想したり、火山から現れた魔物の大群1000匹をたった1人で全滅させたり、悪漢に噴火口の中に落とされて生還したり…とんでもない奴なんだよ!」


「ええっ、マ、マジッスか!?ミネルバさん、化け物ッスよ!!」


「うん…だいたい噂ってのは尾鰭が着くもんだけど、これも祝福の証の力かもしれないねぇ…こいつぁ厄介な相手だよ!」



ビクトリアの言葉に紅き蛮族ベラハが無言のまま頷き、蒼き蛮族ヤチェも静かに同意を示す。双龍の刃を操るミネルバは猛々しく二刀の斧を振るい、コーヒー色の鎧の凶騎士ツィガレに真正面からぶつかっていく。



「ぬうぅん!ふんッ!」


「クッ…はああッ!」


「ふむ、見事な太刀筋よ。ならば相手に不足無し…でやああぁぁッ!」


「チッ…ううああぁぁっ!」



両軍の副将同士の一戦は鬼気迫る鍔迫り合いとなり、客席の皆が手に汗を握る。凶騎士ツィガレにミネルバの双龍斧が容赦無く牙を剥く。荒々しく降り下ろされる双刃は灼熱の蝎紅(サラマンダーレッド)の焔を纏いながら襲い掛かった。



「受けよ、灼熱の牙!そおぉりゃああぁぁッ!!」


「グッ…ガフッ…!」


「テラコッタの騎士ツィガレ…見事な太刀筋、敬意を表しよう。さあ、灼熱の業火に焼かれる覚悟は良いか!?」



ヴィオ班副将ツィガレはリモーネ班副将ミネルバの双龍牙に捉えられ、じわじわと守勢に陥っていく。ミネルバの左手の甲に印された燃えるようなサラマンダーレッドが闘技場を紅く染め、炎を全身に纏った紅き竜の姿を浮かび上がらせた。



「滅せよ!消し炭にしてくれるわ!ドラグーン・フレイムファング!!」


「クッ…!任務、失敗…」


「…そ、そこまで!勝者、ミネルバ選手!」



テラコッタの凶騎士ツィガレは奮戦及ばず、ミネルバの斧に討たれ敗れてしまった。ヴィオは煤にまみれながら倒れ伏すツィガレに向けて親指を立て、健闘を静かに称えると無言のまま闘技の舞台へと踏み出した。



遂に大将1人を残すのみとなり、ヴィオ班は崖っぷちに立たされる。大将ヴィオは百戦錬磨の猛者である副将ミネルバと好敵手である大将リモーネの2人を1人で討たなければならない。果たして逆境を跳ね除け、勝利を掴むことが出来るのだろうか?




To Be Continued…

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