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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
180/330

第180話『色彩武勇~vol.18~』

シリーズ第180話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

強きを尊ぶ蛮族の国、その真ん中に聳え立つ闘技場は熱気の坩堝と化している。闇に潜みながら仇為す者の影を断ち切るヴィオ班に相対するのはレモンイエローの彩りの戦士リモーネ率いる祝福の証の傭兵団5人組だった。ヴィオ班の栗色の忍者ミノリとリモーネ班のパステルピンクの剣士エスト――両軍の先鋒同士の一戦は白熱の様相を呈していた。



「エスト殿…貴女の洗練された剣閃、敬意を表する…」


「恐れ入ります…ミノリさんこそ、すごい錬度です…それがシノビの剣術の真髄なんですね…」


「有り難き御言葉、謹んで頂戴する。ならば己が真髄を以て語ろうぞ…参る!!」



互いに闘志を燃やすものの、既に両者共に疲弊していた。ミノリは黒褐色の装束に血を滲ませ、対するエストも傷を負って足元がフラついている。彩りの刃を交え合う2人は各々の彩りの闘気を全身に纏い、雌雄を決する一太刀を決めんと意気を高めていた。



古雨夢(ふるうむ)流忍術、必殺奥義!栗刺絶影刃(りつしぜつえいじん)!!」


「わたくしも本気でいきます…マジカルサーベル・スラッシャー!!」


「ミノリ…!」


「エスト…!」



両者は電光石火の俊足で駆け抜け、擦れ違いざまに彩りの剣閃を見舞う。両軍陣営が固唾を呑んで見守る中、刹那に2人の時が静止した――先にミノリが膝から崩れ落ちる。その直後にエストがフラリと斜めによろめき、横向きに倒れた。



「クッ…見事、也…」


「つ、強い…もう、限界です…」


「…そ、そこまで!この勝負、引き分け!!」


『…うおおおぉぉぉ~ッ!!』



闘技場のアリーナに倒れ伏せる両軍の先鋒に惜しみ無い拍手と歓声が送られる。ヴィオ班とリモーネ班両軍が一気に駆け寄り、刺し違えのうちに倒れた先鋒の健闘を労った。



「無念…ヴィオ殿、皆様…すまぬ…」


「ミノリ…シノビとして戦う貴女の誇り高き武勇、敬意を表するわ…」


「グルルル…ウオオオオォ…」


「よ~し、ワタシの出番だね♪ミノリさんの分もガンバりま~す!」


「ザラーム、相手は見てわかる通りの手練れ揃いだ。落ち着いていけ」



大将ヴィオの妹である次鋒ザラームはチョコレート色の紋様が輝く左手に銅製の剣を構え、小躍りしながら闘技の舞台に踏み出す。一度は姉ヴィオと共に盗賊になって一行を離れる。身を隠しながらアランチョ国で傭兵としての訓練を積み重ね、巨大傭兵団から寝返る形で一行に復帰した。訓練が途中だったためにヴィオは戦列に復帰させるのを躊躇っていたが、大切に想う姉の役に立ちたい――彩りの戦士として姉と一緒に戦いたい――という強い志を抱いて彩りの義勇軍の一員となった。チョコレート色の彩りの戦士は無邪気に笑いながら相対する彩りの戦士を待ち受ける――



一方、リモーネ班。相討ちに倒れたパステルピンクの先鋒エストのもとに全員集結し、更に熱気を帯びるであろう目の前の戦いに向けて闘志を昂らせていた。




「ごめん、なさい…相討ちで、精一杯でした…」


「エスト…よく頑張ったわ。あとは任せなさい!」


「これが彩りの義勇軍…リモーネから聞いていた以上だわ。まさに百聞は一見に如かずね!」


「さ~て、アタシの出番か~。勝てるかちょっと心配になってきたけど、最善を尽くすよ!」


「カチュア、心してかかれ!臆することなく汝の武をあまねく示すが良い!!」



リモーネ班次鋒はファウンテンブルーの彩りの戦士カチュア。涼やかな水色の髪を無造作に結び、上下揃いのネイビーブルーのジャージを着ている。両手に得物の籠手を填め、ゆっくりとザラームの待つアリーナに歩み出た。



「ザラームで~す!よろしくおねがいしま~す!」


「ハハハッ、元気一杯だね!リモーネ傭兵団カチュア、全力の本気で相手するよ!」


「ワタシだってぜんりょくでガンバる!よ~し、いっくぞ~!」



両軍次鋒の一戦が幕を開けた。沸き立つ闘志に押されて逸る気持ちを律しながらじっくりと迎え撃とうとするカチュアに対してザラームは素早く懐に飛び込む。得物である銅製の剣を振るい、姉譲りの軽快な動きを見せつけていた。



「今だッ!ええぇぇいッ!!」


「甘い!その程度なら簡単に避けられるわよ!でやあぁ!うおりゃああッ!!」


「よっ!ほいほいっと~!ヘヘンッ、ここまでおいで~!」


「クッ…なんてすばしっこいの…!」



ザラームは小柄な体躯を活かして縦横無尽にアリーナを駆け回り、泉青(ファウンテンブルー)の格闘家カチュアを翻弄する。アミィと並んで一行最年少のチョコレート色の戦士の躍動は客席で見守る仲間達のボルテージを高めていった。



「ザラーム、良い動きです!ヴィオがアランチョ国で相当鍛えたみたいですけど、その成果がしっかり出ていますね」


「そうじゃのう、モニカ。ワシら一門の若い衆はみんな活きが良いもんじゃわい!」


「そやなぁ…ザラームってウチと同い年なんやもんなぁ…ウチは傭兵として訓練するなんて想像出来んから、ホンマ立派やと思うで!」


「ザラームちゃん、その調子なのである!そのままガンガンいくのである!!」



客席の仲間達も昂る中、ザラームは更に熱く闘志を燃やす。彼女の疾駆は比例するようにスピードを増していき、目にも留まらぬ俊足で敵軍次鋒カチュアの懐に迫っていった。



「すきありだよ!えぇいッ!」


「キャッ!いたたたっ…!」


「よ~し!ワタシのぜんりょくパワー、くらうがいい!きりきざんでやる~!」



スライディングでカチュアの足下を掬い、無防備な状況に陥らせた。ザラームが見せる相手の隙を突く形振り構わぬ戦術は大将である姉ヴィオを思わせる。ザラームは全力の一閃を見舞うべく、チョコレート色の闘気を剣に纏わせていた。



「フルパワー!100%ぜんりょくでいくよ!ショコラーデ・シュヴェールト!!」


「クッ…!!」



ザラームの戦う意思の体現であるチョコレート色の剣閃が唸りをあげながらカチュアに襲い掛かる。アリーナに視線を注ぐ皆が雌雄は決したと確信していた。が、泉青(ファウンテンブルー)の格闘家カチュアは籠手を填め直しながらゆっくりと立ち上がった。



「ふうぅ…確かに強いけど…なんとか耐えられたみたいね…!」


「えっ!?そ、そんな…!」


「さ~て、本気には本気でお返ししてあげるよ…つっかまえたッ!!」


「ううっ!…いたいよぉ…!」



カチュアは疾駆を見せていたザラームを捉え、籠手を填めた両の拳で荒々しく打ち据える。守勢が一転して攻勢に切り替わり、リモーネ班は俄に沸き上がった。



「アハハ!ラッキーじゃない!こりゃ勝ちはいただきかもね~♪」


「カチュアさん…あんな大技を耐えられたなんて、すごいです!」


「そうね、エスト。カチュアは仰向けのままでもしっかりと防御体勢をとっていたわ。相手の動きを落ち着いてよく見ていたわね」


「カチュアよ、戦場(いくさば)に遠慮など不要!汝の彩りの力、此処に示せぃッ!!」



カチュアはファウンテンブルーの彩りの闘気を拳に纏わせ、燃える闘魂を昂らせていく。涼やかな泉青(ファウンテンブルー)とは対照的な紅き闘志がカチュアの胸に燃え盛っていた。



「これがアタシの全力だよ!フラッドタイド・アクアナックル!!」


「ふぎゃあああぁぁッ!」


「そこまで!勝者、カチュア選手!」



ザラームはカチュアの水の拳に叩き伏せられ、惜しくも敗れてしまった。暖かい拍手が闘技場を包む中、ヴィオ班の面々はミノリの時と同じようにザラームのもとに駆け寄るが、大将ヴィオは悔しがる妹を優しい表情で慰めた。



「いたた、くやしいなぁ…おねえちゃん…ごめんなさい…」


「ザラーム、お前はよく頑張った。まあ、また一緒に特訓だな。あとは任せろ」


「さすがね…名うての傭兵達、見事な腕前だわ…」


「敵、叩キ潰ス…グルルルウゥオオオッ!!」


「むむ…凄まじい妖気よ…アンブラ殿、お頼み申す」



ヴィオ班、選手交代。中堅を務めるダスティパープルの毒の戦士アンブラが待ちに待った戦いの舞台に嬉々として飛び出していく。かつてポワゾン、ヤート、スラッジと共に毒の戦士のギルド“ヴェレーノ・ノーヴェ”を立ち上げた創設メンバーの1人である。が、薄く魔族の血が入っている影響からか、あまりにも凄絶且つ無慈悲な戦いぶりで仲間からも恐れられ、アザレア王国とペーシュ国の国境付近の廃坑に封印されていた。旅路の途中、一行が反逆者の汚名を着せられた際に封印を解かれ、浄化の神官バラキエルに暴走を抑えられながら一行に加わった。ダスティパープルの魔戦士は毒氣を纏った魔爪を剥き出しにしてカチュアにヒタヒタと歩み寄った。



「あ、貴女が中堅さん?なんかすっごいワイルドだね!互いに全力で良い勝負にしよう!」


「グゥルルルウゥ…ウグルウウゥゥアアアッ!!」


「ひええっ!?ま、魔物…!?怖いけど、頑張らなきゃ…!」



アンブラの妖しい咆哮に気圧されながらも闘志を奮い立たせ、カチュアは籠手を直して迎え撃つ。我流の格闘術を操る両者の戦いは再び闘技場の視線を一点に集束させていった。



「てやああぁぁッ!」


「グウゥ…ガルルルルゥッ!」


「うええっ!?うわわわっ…!」



毒氣を纏った鋭い魔爪に引き裂かれ、カチュアは戦慄する。更に追い討ちをかけるようにアンブラの禍々しい闘気が溢れ出し、ダスティパープルの毒の沼が闘技場の真ん中に広がった。



「ガアアアッ!グルヴウゥオォアァッ!!」


「うわああっ!こ、この沼、変な匂いがする…気持ち悪いよぉ…」


「グルルウゥ…潰ス!吹ッ飛バス!ウオオオオッ!!」



不良格闘術で蹴倒し、毒の沼に仰向けに浸かったカチュアに無慈悲な追撃を仕掛ける。アンブラは魔の血の疼きに委ねるがまま、ダスティパープルの彩りの毒を狂乱させた。



「オ前、消ス!叩キ潰ス!!ザプリエット・デッドリーポイズンッ!!」


「うわああああッ!!」


「…そ、そこまで!勝者、アンブラ選手!」


「グルルルウウ…ヴウオオオオッ!!」



泉青(ファウンテンブルー)の格闘家カチュアを討ち倒したアンブラは魔の血が滾るままに吠え、闘志の猛るままに爪を降り下ろす。先程まで盛り上がっていた客席は一片の慈悲も無いアンブラの鬼気迫る戦いぶりに沈黙するばかりである。ダスティパープルの彩りの魔戦士がもたらした静寂は嵐の前の静けさか?彩りの戦士達の戦いはまだまだ続く!




To Be Continued…

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