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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
177/330

第177話『色彩武勇~vol.15~』

シリーズ第177話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

強きを尊ぶ蛮族の国の真ん中に聳える闘技場――そのアリーナの真ん中で彩りの戦士達が躍動する。自らの理想を現実として体現すべく前向きに突き進むリーベ班の次鋒を務めるナイトグリーンの毒の戦士トックは敵軍中堅ザウアーの一矢を受けて得物の毒氣の催涙スプレーを壊されてしまう。が、諦めることなく我武者羅に食らい付き、貪欲に勝利を掴み取ろうとしていた。



「クッ…なかなかしたたかだね、元気なお嬢ちゃん」


「もっちろん!ウチには一緒に絆で結ばれた大切な仲間がたくさんいるんだもん!みんなのためにも負けられないよ!」


「そうか、キミはとても仲間想いな娘なんだね。だが、仲間のために負けられない…その気持ちはこちらも同じさ!」



ナイトグリーンの紋様が妖しく耀く拳で殴り付け、重々しいブーツを履いた足で蹴りを見舞う。不良時代の荒々しさを帯びた攻撃を見せるトックの勇姿は彩りの戦士として目の前の戦いに臆することなく向かい合う意思を体現していた。



「うりゃあッ!てやああッ!!」


「クソッ、なかなか隙が無いな…こうなったら…えぇいッ!」


「うええっ!?」



思いがけぬ奇襲にトックは怯んでしまう。ザウアーは矢を握り締め、鏃を刃に見立ててトックを薙ぎ払ってきた。手元の缶を射抜ける弓の名手の形振り構わぬ猛攻はトックの不良格闘術が間合いを離す隙さえ見せない苛烈さを帯びていることの証明であった。



「うおらぁ!そぉれッ!」


「ううっ、痛ッ…えぇいッ!!」


「グッ…うおおぉぉッ!」



不良格闘術で我武者羅に攻めるトックと矢を握り締めて振るうザウアー――互いに得物を思うように操れないままだが、試行錯誤しながら各々の武を見せつけ合う。トックは不良格闘術で奮戦していたが、次第にザウアーに押されていった。



「負けるものか…そおぉらっ!」


「キャアアァァッ…!」


「そこまで!勝者、ザウアー選手!」



トックは諦めずに奮戦するも力及ばず敗れてしまった。リーベ班次鋒トックと敵軍中堅ザウアー、両者の健闘を称える大きな拍手がスタンドから沸き起こる中、リーベ班の面々は優しくトックの周りを取り囲みながら健闘を労った。



「トック御姉様!はわわわ…大丈夫ですか?」


「リーベ、みんな、ごめんね~…あ~あ、負けちゃった…」


「トックの身に宿りし毒竜の猛り、しかと見届けたぞ…今は女神の腕に抱かれ、暫しの休息をとるが良い…!」


「トックちゃんの熱い想い、確かに受け取ったのである…あとは私に任せるのである!」


「カシブさん、お願いしま~す!どうか御武運を!」



リーベ班、選手交代。中堅はチリアンパープルの彩りの戦士カシブ。死霊学者として騎士団領の墓地で発生した怪奇現象の調査に赴いていたところで一行と出会い、彩りの義勇軍の一員としては古株と呼べるほどに長く旅路を歩んでいる。大将であるリーベとは加入した当初から仲が良く、夢見がちな彼女の理解者兼保護者的存在である。得物である黒い宝珠の着いた黒樹の杖を携え、敵軍中堅ザウアーに相対していた。



「私はカシブ・ノヴィルニオ。死霊学者なのである!どうぞお見知り置きを♪」


「おや、ご丁寧にどうも。そちらのグループの保護者さんかな?」


「フフッ…まあ、確かに保護者と言っても差し支え無いかもしれないのである…この娘達は私が守ってみせるのである!」


「フフッ、それなら僕も同じですよ。では、始めましょうか!」



カシブとザウアー、両軍の中堅同士、両軍の保護者同士の一戦が始まり、一旦落ち着いたスタンドから再度アリーナに熱い視線が注がれていく。対峙する2人は暫し互いに出方を伺っていたが、カシブは突然ニヤリと笑いながら余裕気に身を翻してみせた。



「おや、どうしたのであるか?私は逃げも隠れもしないのである。どこからでもどうぞ♪」


「ふむ、よろしいのですか?では、遠慮なく…はあッ!」


「おおっと、危ない!さすがの腕前、間一髪だったのである…せえぇいやっ!」


「クッ…まさかと思ってたけど、この方、魔法使いなのか!?」



再び弓を駆って矢を射るザウアーに対し、カシブはチリアンパープルの法力を杖から放つ。互いにじっくりと間合いを見極めながら慎重に一手ずつ詰めていく様相に観衆は手に汗を握る。カシブは自身の後ろに控えるリーベとピカンテを守る決然たる意思を抱きながら彩りの力を解き放った。



「これでもくらうのである…スカルシェイド!」


「うわあっ!こ、これは闇の魔法…!?」


「惜しい!当たらずとも遠からずなのである♪私の属性(モード)は冥、闇とは似て非なる深淵を司る力なのである!」


「冥の魔法…闇とは違う深淵だって…!?」



冥の深淵に戦慄する敵軍中堅ザウアーに対してカシブは得意気に胸を張り、彩りの戦士としての決然たる意思を見せつけていく。骸紫(チリアンパープル)の戦士の躍動に客席で見守る彩りの義勇軍の仲間達もボルテージを高めていた。



「カシブさん、カッコいい~!やっぱりしっかりしてるって言うか、落ち着いてるよね!」


「そうじゃのう、クレア!カシブもワシらの一門に入って長いもんじゃから、戦う姿もサマになっとるわい!」


「うん、確かにね。最初はちょっと胡散臭いかもって思ってたけど、すっかり馴染んでくれたよね!危なっかしいリーベもカシブと一緒なら安心だよ!」


「そうね、エレン。カシブさんも冥の精霊プルートの加護を受けた精霊の戦士、彼女と出会ったのも精霊の導きなのね」


「カシブさん…俺達と同じ、冥の力…!」



自身の彩りと共鳴するカシブの彩りに胸を高鳴らせる冥紫の王子リタの言葉にイオス、ヒーザー、ニュクスの3人は息を呑みながら頷く。カシブは共に戦う仲間達を守るべく、チリアンパープルの紋様を耀かせた。



「隙あり!シェイドパルス!」


「うあッ…!」


「さあ、覚悟は良いであるか?私の色彩の力、心して味わうのである!」



カシブは静かに燃えていた闘志を昂らせ、得物の杖を妖しく煌めかせる。壁一面に敷き詰められた煉瓦の赤茶色が基調の闘技場を冥の彩りの1つであるチリアンパープルに染めた。



「冥き無限の深淵に堕ちよ!スカルシェイド・ダークアビス!!」


「うあああぁぁッ!!」


「そこまで!勝者、カシブ選手!」


『おおおぉぉぉぉッ!』



カシブが紡ぐ骸紫(チリアンパープル)の深淵が闘技場を妖しく染め、敵軍中堅ザウアーを撃ち破った。アリーナを揺さぶるような歓声の中、胸を張って勝利を誇示するカシブの姿は保護者としの凛とした色合いと共に夢見がちなリーベ班の一員であることを窺わせる無邪気さを滲ませていた。



「ヘヘン、私の勝ちなのである!リーベちゃんとピカンテちゃんは必ず守ってみせるのである!」


「カシブさん…貴女様の深き愛、嬉しいですわ!このまま美しい愛の物語を紡いで参りましょう!」


「フッ、なかなかやるな!仇為す者を冥府へ誘う宵闇の竜の咆哮が響き渡っているぞ…!」


「カシブさん、お見事です!残るは副将と大将、ここからが正念場ですね…」


「2人とも祝福の証の戦士だもんね~…超ドキドキって感じ!」



一方、敵軍は敗れた中堅ザウアーを助け起こし、先鋒ベニェと次鋒ミエーレが両肩を担いで陣営に引き戻す。カスタードイエローとマッカレルブルー――2つの彩りの闘気が交差して混ざり合い、奇妙な高揚感を醸し出していた。



「クソッ…みんな、すまない…」


「ザウアーさん、大丈夫かよ!?この娘達、予想以上の腕前だな…」


「ん、強いッスね。あとは副将と大将、私とズッケロだけッスか…」


「大丈夫だって!ザルツィヒの分もアタシが頑張っちゃうよ!それじゃ、行ってきま~す!」


「おう!任せたぜ、ズッケロ!怪しい魔法使いをボコボコにしてやれ!」



遂に敵軍の副将――カスタードイエローの彩りの戦士ズッケロが戦いの舞台に踏み出す。鮮やかな黄色の髪を肩辺りまで伸ばし、ベージュとクリーム色を基調とした衣装を着ている。無邪気に笑いながらカシブに歩み寄る敵軍副将は得物の杖を構え、嬉々として戦いの舞台に踏み出した。



「改めてこんちは~!ズッケロで~す!」


「はいはい、カシブなのである。いざ、尋常に勝負!」


「イエーイ!ノリノリですね~!アタシもバリバリのフルパワーでお相手しちゃいますよ~!」


「フフッ、それなら相手に不足無しなのである!絶対に負けないのである!」



勇んで飛び込んでくるズッケロに対し、カシブは動じることなく静かに闘志を燃やしながら迎え撃つ。妖しいチリアンパープルとキュートなカスタードイエロー、相反する2つの彩りが真っ向からぶつかり合った。



「先手必勝なのである…スカルシェイド!」


「キャハハ!ザバイオーネ・シューター!」


「な、なんと!?これはいったい…!?」



カシブは唖然呆然。一方のズッケロは子供のようにケラケラと笑っている。可愛らしいカスタードイエローのエネルギー弾が辺りに弾け、カシブのチリアンパープルの闘気を打ち消した。カスタードイエローの彩りの力を目の当たりにしたカシブが驚嘆する中、ズッケロは勢いに任せるがまま矢継ぎ早に連射してみせた。



「それそれ、もう1発!ザバイオーネ・シューター!!」


「クッ…うわわっ…!」


「イエーイ!ガンガン行け行けぇ~!ザバイオーネ・シュータァァァァッ!!」



リーベ班中堅カシブと敵軍副将ズッケロの一戦の幕が開くや否や、瞬く間に妖しいチリアンパープルの闘気は影を潜め、キュートなカスタードイエローの闘気が闘技場を染め上げていく。一方のカシブも守勢を打開すべく、黒樹の杖を妖しく煌めかせていった。



「私は…負けない、負けられないのである!シェイドパルス!!」


「おおっと、危ない!ザバイオーネ・シールド!」


「げえっ!?な、なんてこと…!」


「ヘッヘ~ン!カスタードクリームは見た目以上に固くなるんだよ~!攻守共にバッチリであります♪」


「ううう…まさかこれほどとは…恐れ入ったのである…!」



杖の先端で練り上げた骸紫の波動がカスタードイエローの盾に飲み込まれ、カシブは愕然とするばかりである。その後も一方的に間合いを掴まれ、防戦一方という状況に陥っていた。



「これで終わりだよ~!ザバイオーネ・ポップガン!」


「うああああッ…!」


「そこまで!勝者、ズッケロ選手!」



カシブはカスタードイエローの炸裂に弾き飛ばされ、健闘虚しく敗れてしまった。自らを称える拍手が沸き起こり、ズッケロが気を良くしてピースサインで応えてみせる中、リーベ班の面々が中堅カシブのもとに駆け寄っていた。



「はわわわ…なんてことですの…カシブさん、お気を確かに!」


「リーベちゃん、みんな、すまないのである…力及ばずなのである…」


「ズッケロの力、ヤバくない?攻撃も超ガンガンだし、防御も超カチカチじゃん…」


「うん、やっぱり一筋縄ではいかないみたいだね…ピカンテ、お願い!」


「…任せろ、誉れ高き騎士ハイビスよ。我が身に宿る邪竜の炎で奴の緩みきった顔を苦痛に歪ませてくれる…!」



リーベ班副将でありリーベの双子の妹でもあるピカンテがペッパーレッドの紋様を燻らせ、自らの手で“神器デビルズファング”と銘を刻んだ剣を携えて戦いの舞台に踏み入る。共に双子の姉妹が副将と大将を務める両軍、果たして勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか?




To Be Continued…

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