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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
166/330

第166話『色彩武勇~vol.4~』

シリーズ第166話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族四天王の統べるビンニー国の闘技大会に挑む彩りの義勇軍一行。得物の蛇腹剣を巧みに操りながら舞い踊る敵軍大将のベルベットは織紫(ベルベットパープル)の紋様を持つ彩りの戦士だった。月の神と毒の精霊の気高き意思を体現するビアリー班の副将を務めるポワゾンは鞭のようにしなる奇妙な剣に驚きを隠せず、翻弄されるばかりであった。



「とうっ!せいやッ!!」


「チッ…オラオラァッ!」


「フフッ、甘いわ…えいやッ!」



しなやかな刃を纏いながら舞うベルベットの華麗な連続攻撃をまともに食らい、ポワゾンは守勢に立たされていく。客席で見守る仲間達も戦々恐々としていた。



「精霊の刻印…まさか彼女にもあったなんて…」


「ああ…ベルベットさんは剣を使っているけど、戦い方がニュクスに似てるような気がするぜ。もしかしたらビアリーとベルベットさんは…」


「祝福の証に惹かれ合う彩りの戦士…まさかベルベットさんの力って…!?」



クレアが飲み込んだ言葉は容易に想像出来るものであり、仲間達は物言わずに頷く。当のポワゾンは妖しく煌めく織紫(ベルベットパープル)の彩りが紡ぐ力の正体がわからぬまま、守勢を打開すべく試行錯誤していた。



「うおおっ!ポイズンラッシュッ!」


「フッ、ええぇいッ!」


「クソッ…うおおああッ!」



ポワゾンは不良格闘術でベルベットを蹴倒そうとする。が、簡単には転ばない。織紫の彩りの戦士は蛇腹剣の刃を地面に突き刺す。蛇腹剣の刃をバネのように伸び縮みさせて跳び上がると、空中で反転しながらすぐに体勢を整えて我流の格闘術でポワゾンに飛び掛かり、拳と蹴りを素早く叩き込む。蹴倒した後に思い描いていた絵とは違う光景が目に飛び込み、ポワゾンは錯乱するばかりであった。



「フランネルが受けたのを見ていたから解っていたわ…残念だったわね♪」


「チッ…同じ轍は踏まねぇってことか…!」


「フフッ、そういうことよ。さあ、次は私の番よ…ヴェネーノスパイク!」


「何ぃッ!?こ、これは…!?」



ベルベットパープルの妖しい彩りの力が牙を剥き、ポワゾンに襲い掛かった。その実態を悟ったポワゾンは戦慄するが、主君である闇の皇女を守る決意に背を押され、闘志を奮い立たせて食らい付いていくが相変わらず守勢のままである。客席で見守る毒の戦士達も“リーダー”であるポワゾンの劣勢におののくばかりであった。



「リーダー、超苦戦してるじゃん…これって激ヤバいんじゃない?」


「そうですね、トックさん…彼女の術、“ヴェネーノ”という名を冠していましたが…やはり彼女は…!」


「ベルベットさんも私達と同じようにビアリー様の祝福の証に導かれた闇の戦士ってわけ…!?あわわわ…」


「ポワゾン…グルルゥ…オ゛オ゛オ゛オオオッ!!」



創設期から共に歩んだダスティパープルの毒の魔戦士アンブラのポワゾンを案ずる想いを込めた咆哮が闘技場に木霊する。禍々しさと憂いを帯びた叫びはポワゾンの耳にも確かに届いており、皆の想いに応えたいという想いが熱い心を秘めた胸に沸き上がっていた。



しかし、アリーナと客席で見守る仲間達の願いも虚しく、ビアリー班副将ポワゾンの詰みは目前だった。織紫(ベルベットパープル)の華麗なる艶舞に瞬く間に主導権を握られ、濃厚になった敗色の淵に翳っていた。



「我が闇夜の舞い、心して受けなさい!ダンツァー・エスパーダ・ヴェネーノ!」


「グッ…ちくしょおおぉぉ…!」


「そこまで!勝者、ベルベット選手!」



毒の彩りの親衛隊長ポワゾンはベルベットの妖しい彩りを纏った闇夜の艶舞に切り刻まれ、奮戦及ばず敗れてしまった。ビアリー班の面々は心配そうにポワゾンのもとに駆け寄るが、パンジー、ナハト、アヌビスは続いて大将である皇女がベルベットと相対することに焦りを滲ませていた。



「ポワゾン!殺られちゃったの…大丈夫?」


「ああ…悪りぃな、パンジー…クソッ…ビアリー様に、回る前に…終わらせるはず…だったのに…!」


「うむ…この事態はなるべく避けたかったが、やむを得んな…ビアリー様、無事を祈ります…」


「…ビアリー様…御武運を…」


「…ええ。ありがとう、アヌビス、ナハト。あたくし自身の力で運命を切り拓く…切り拓いてみせますわ!」



大将ビアリーは得物の大きな鎌を携え、臣下の4人に見送られながら敵将ベルベットに対峙する。妖しい薫りを醸し出す彩りの戦士2人が闘志を胸に携えて向かい合う情景からは落ち着いた雰囲気が漂っているが、それはさながら嵐の前の静けさという様相だった。



「ごきげんよう。あたくしはノワール帝国より参りましたビアリー・フォン・ノワール。謹んでお相手致しますわ」


「あら…帝国皇女様と戦うことになるなんて、なんだか畏れ多いわ…わざと負けてしまおうかしら?」


「あらまあ、そんな遠慮はなさらないでくださいな。楽しい遊びを前にしてお預けだなんて、物足りないわ…」


「フフッ、冗談よ。ルラキ国より参りましたベルベット、共に戦う仲間のためにも全力を以てお相手します!」


「ええ、その言葉を待っていましたわ♪さあ、一緒にイきましょう…」


「あら…帝国皇女様は朝早くだと言うのに随分とお盛んなのね。私で良ければ喜んでお相手するわ!」



妖しい雰囲気を醸し出す両軍大将の雌雄を決する一戦の火蓋が切られる。匂い立つような妖気がアリーナに充ち満ちる中、先手を打ったのはビアリーだった。



「さあ、いきますわよ…ダークスフィア!」


「クッ…それではこちらも…ヴェネーノスパイク!」


「ああッ…激しいのね…情熱的なのは嫌いじゃないわ…さあ、もっと昂らせて…」


「フッ…皇女様の仰せのままに。まだまだ楽しみましょうか!」



ビアリーとベルベットは共に初手を打ち合い、お互いの彩りの力を感じ取った。客席で見守る彩りの義勇軍一行は新たな戦士ベルベットの彩りの力を目の当たりにし、固唾を呑んで戦況に見入っていた。



「ベルベットさん…やっぱりビアリーと同じ闇の戦士、毒の戦士だったんだね…」


「うん、確かにクレアちゃんの読み通りだったのである。しかも蛇腹剣とは、また珍しい武器を使う人なのである…」


「あの、フェリーナさん…私、先ほどから妙な気を感じるのですが…気のせいでしょうか?」


「…いいえ…気のせいじゃないわ、フェトル。2人の精霊の気が互いに呼応して高まっているわ。闇の精霊である月神ヴァレノと毒の精霊ウェネーヌの気が2人の周りに集まっている…!」



毒の戦士フェトルと疾風の巫女フェリーナが気付いた頃には既に毒氣が砂と土で固められた闘技場のアリーナを紫に染めていた。2人の彩りが紡ぐ妖しい光景に試合を取り仕切る審判が当惑してしまっていた。



「あら…やっぱりベルベットさんとの出会いも運命だったのね…」


「ええ、私もそう思う。これほどに力が高まっているのですから…!」


「こ、こ、これはいったい!?ど、どうなっているのだ…!?」



両軍大将は審判の混乱も何処吹く風とばかりに笑みを浮かべ、昂る闘志の委ねるままに闇の彩りを纏った刃を交える。ベルベットの得物の蛇腹剣が絡み付くようにビアリーを捉える。闇の皇女ビアリーは傷を負いながらもベルベットの彩りの気を感じ取り、後方で焦燥を滲ませながら見守る臣下達の心配を尻目に妖しい微笑みを浮かべていた。



「受けよ、妖魔の毒牙…ヴェネーノスパイクッ!!」


「ウフフフフ…貴女、素敵だわ♪もっと激しくあたくしを壊すくらいに悦ばせて…」


「ええ、皇女様の御期待に応えられるよう、本気でいくわ…ヴェネーノスパイク・ダークドレイク!」



ベルベットは錐揉み回転をしながら宙に舞い上がり、蛇腹剣の刃を身体に纏わり付かせながらビアリーに向けて猛烈な突進を見舞う。ベルベットの凶襲は獲物を丸飲みにしようと大きく口を開く毒蛇のように一片の慈悲も感じさせない。が、矢面に立たされたビアリーは動じる様子もなく口元に笑みを湛えたまま、もう1つの武器である鞭を構えて迎撃体勢を整えていた。



「あらあら…随分と激しいわね。それならあたくしも激しくヤってしまうわ…」


「ノワール帝国皇女ビアリー…覚悟!」


「今だわ…ムーンライトバインド!」



濃紫の鞭がベルベットを空中で捕らえた。身体に纏っていた蛇腹剣の刃は力無くダラリと下がり、重石のようにベルベットの疾駆を鈍らせてしまっている。敵将を捕らえたビアリーの表情からは先ほどまでの妖しい笑みが跡形もなく消え、彩りの戦士としての使命感を帯びた凛とした表情に変わっていた。



「ベルベットさん、残念だったわね。これが貴女の運命よ…」


「グッ…そんな…!これはまさか…!?」


「あたくしには…彩りの戦士としての務めがある。可愛い臣下達のためにも、あたくしを待っていてくださる帝国の民のためにも、共に運命を切り拓く仲間達のためにも、あたくしは負けられないのです!!」



ビアリーは仇為す者を縛り付ける鞭を介して禍々しい毒氣を流し込む。ベルベットは闇の彩りの毒氣が自分の身体に注がれるのを感じ取りながらも同時に毒氣が自身に異様なほど自然に馴染んでいく感覚もあり、奇妙な高揚感に浸っていた。



「闇夜に狂える妖しき毒よ、我に仇為す贄を喰らい尽くせ!オスクリタ・モルテ・ヴェレーノ!!」


「うああッ…参り、ました…」


「…そ、そこまで!勝者、ビアリー選手!この試合、ビアリー軍の勝利!!」


『おおおおおぉぉぉ~ッ!!』



闇の皇女ビアリーが織紫(ベルベットパープル)の毒の彩りの敵将ベルベットを打ち倒し、一際大きな歓声がスタンドからアリーナに降り注ぐ。勝敗が決するや否や後方で戦況を見守っていた4人の臣下達が一目散に駆け寄り、深い安堵に浸った。



「やったやった~!ビアリーが勝ったのよ~!!」


「良かった…ふぅ…5年分くらい寿命が縮んだわ…」


「まったくだ、ナハト。やれやれ、我が主君ながら御無理をなさる御方だ…」


「まあまあ、勝ったんだし硬いこと言いっこなしだぜ!ビアリー様、さすがッス!!」


「ありがとう、みんな。そんなに心配してくれてたのね…運命はあたくし達に美しい勝利と…新しい絆をもたらしてくださったわ。さあ、ベルベットさん、こちらへ…!」


「ビアリー様…ありがとう…」



ビアリーは敵将ベルベットを助け起こし、優しく自軍の輪に引き入れる。妖しくも美しい闇の彩りの輪が新たな色彩を加え、ビアリー班が掴んだ勝利の喜びはより一層美しい煌めきを増していた。




To Be Continued…

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