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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
164/330

第164話『色彩武勇~vol.2~』

シリーズ第164話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国の闘技大会に挑み続ける彩りの義勇軍一行。月の神と毒の精霊の気高き意思を体現するビアリー班の次鋒を務めるマジカルパープルの毒の戦士ナハトが敵軍中堅の寡黙な重装兵シャンブレーに相対し、静かに闘志を燃やしていた。



「……」


「……」


「え、えっと…両者、よろしいでしょうか…始め!」



互いに無言のまま睨み合っており、審判の合図で戦いの火蓋が切られる。ビアリー班次鋒のナハトと敵軍中堅シャンブレーは物言わずに真っ向から衝突する。言葉を交わさずとも己の武を交わすことで語り、戦士としての自身を体現していた。



「……むぅん!!」


「クッ、強い…バイオバースト!」


「むぅ、ぬうぅ…!」


「負けない…はああッ!」



ナハトはマジカルパープルの毒氣を手足に纏わせ、ポワゾンに習った不良格闘術を以て迎え撃つ。他の毒の戦士よりも非力なナハトは自身で一工夫加えている。毒の戦士達が操る不良格闘術は相手の腹部への肘打ちで怯んだところを蹴倒し、各々の得物を使って無防備な相手を追撃――というコンビネーションであるが、ナハトは肘打ちから蹴倒す一連の連続攻撃の際にも毒氣を体に纏わせて威力を増大させ、非力を補っている。が、華奢なナハトが重厚な鎧を着たシャンブレーを蹴倒すのは容易ではなかった。



「くらいなさい…それッ!」


「フン…むうぅおおぉぉ!!」


「クッ、さすがに重いわ…このままじゃ…」



筋骨隆々のシャンブレーと小柄で痩身のナハト――体格差は歴然、火を見るより明らかだ。シャンブレーの優勢は誰の目にも一目瞭然であり、彼の剛力を見せつけられたビアリー班の面々は戦々恐々としていた。



「むむ~…あの鎧のおじさん、ゴリラみたいなの!」


「パンジー、アンタさっきから敵をゴキブリだのゴリラだの、動物に例え過ぎだよ…まあ、確かにそれぞれ一芸に秀でた連中であることは間違いないようだね」


「そうだな、ポワゾン。やれやれ、どうも一筋縄ではいかないらしいな…私の出番も近そうだな…」


「ナハト…きっと運命は貴女を救ってくださるわ。あたくしはいつだって貴女の幸運を願っている…あたくしはいつだって貴女を見ているわ…!」



ビアリーの願いも虚しく、ナハトは瞬く間に気圧され、追い詰められていく。敵軍中堅の重装兵シャンブレーの胆力は凄まじく、1発の突進でナハトを吹き飛ばし、雌雄を決する一手を叩き込もうとしていた。



「覚悟…むぅん!」


「クッ…!あ、あれ…?当たってない…?」


「……!?」



剛力を携えた矛先が迫り、ナハトは敗北を覚悟した。が、鎗はナハトの寸前で止まっている。マジカルゴールドの闘気を纏った双子の姉リヒトが杖で組み止め、共に生を受けた妹ナハトを守る盾となっていた。



「ふいぃ~、間に合った!」


「……!!」


「リヒト!?貴女って人は…!」


「ナハト、助けに来たよ!まあ、前の借りを返しに来たって言った方が正しいかな?でも、それ以前にナハトがピンチなのに黙って見てられないし、やっぱりナハトはアタシにとって誰よりも大切な人だから、アタシがこの手で守ってみせる!って感じ?あんなシーン見せられたら体が勝手に――」



ピピピピッ!



「第三者の介入により、ナハト選手を反則負けとします!勝者、シャンブレー選手!」


「あっ…ゴ、ゴメン!ナハト、反則負けだって…ど、どうしよう…」


「もう遅いわよ…それに貴女のことだから、私を心配してくれたんでしょ?ありがとう…」


「エヘヘ、こっちこそありがと。それにこの前アタシがピンチだった時にもナハトが助けてくれたから、これでおあいこだよね!」


「フフッ…まったく仕方無い人ね。でも、貴女に想われることが何より嬉しいわ」



ナハトがリヒトに感謝を伝える中、ビアリーとアヌビスが静かに割って入る。2人を視野に捉えた刹那、ナハトの表情に後ろめたさが滲むが、ビアリーとアヌビスは優しく微笑んでいた。



「…ビ、ビアリー様…申し訳ございません…」


「ウフフッ、気にしなくて大丈夫よ。貴女達姉妹の美しい愛を見せてもらったんですもの…それによく頑張ったわ。お疲れ様」


「まあ、起きてしまったことは仕方無いな。ビアリー様、あとはこのアヌビスにお任せを!」



ビアリー班、選手交代。中堅はアヌビスブラックの彩りを持つ毒の彩りの戦士アヌビス。腕利きの傭兵であり、かつてはノワール帝国近衛軍の一員としてビアリーとも古くから近しい間柄であった。ポワゾン達がビアリーの臣下として帝国を訪れ、顔を合わせた際に祝福の証が毒の力を帯びて真の力が覚醒――毒の彩りの戦士として一行に加わった。昔も今も変わらぬ主君である闇の皇女を守る強く硬き意思を抱いた冥黒(アヌビスブラック)の近衛騎士は敵軍中堅シャンブレーに静かに刃を向けた。



「ノワール帝国のアヌビス、ここに推参。いざ、尋常に勝負!」


「……」


「…フッ、だんまりか。ならば刃で語ろうか!」



百戦錬磨の猛者である両軍中堅は己が武を互いに見せつけ、闘技場の舞台に熱気を立ち上らせる。アヌビスは冥府より来たる毒の彩りで刃を黒く染め、禍々しさを帯びた妖しい闇の力を紡ぎ出した。



「くらえ、魔狼(ケルベロス)の牙…ヘルファング!」


「ぬう…グフッ…!」


「うおおらああッ!」


「ぐうぅ…むむぅッ…!」



アヌビスは得物である毒の矛を振るい、不良格闘術を織り混ぜて荒々しくシャンブレーを打ち据える。元々白兵戦の実力は非常に高く、ノワール帝国でも一目置かれる存在であったが、手練れの集う闘技大会の舞台でも黒き帝国で培われた力を遺憾無く発揮していた。



「アヌビス、さすがですね。彼女の克己的な姿勢は見習うべきだと常々思います」


「ああ、モニカの言う通りだな。前に皆を裏切って盗賊になった時にアヌビスと少し刃を交えたが、相当な腕前だ…並大抵の訓練ではあのレベルには達しない。よほど厳しい鍛練を積んでいるのだろうな」


「うっへぇ~…ししょーがそこまで言うなんて…アヌビスさんって相当強い人なんですね~!」


「そうだよ~、ラッテ。アヌビスならきっと大丈夫だよ!リーダーとビアリー様の出番はなさそうだね~♪」



仲間達がアヌビスへの信頼を口にする中、両軍の中堅を務める猛者同士の激しい鍔迫り合いが続く。並々ならぬ鍛練を以て磨きあげた武勇を誇る両雄が激しく猛々しく火花を散らしていた。



「むおおぉぉッ!」


「うおおああッ!」


『おおおぉぉぉ~…!』



観衆の視線がアヌビスとシャンブレーの2人に集束する中、舞台の真ん中に妖しく薫る毒の彩り――アヌビスブラックが耀く。無慈悲な冥府の狂犬が容赦なくシャンブレーに牙を剥いた。



「冥府の刃の錆となれ!フェイタル・ヘルスクリーム!」


「ぬう、うぅっ…!」


「そこまで!勝者、アヌビス選手!」


『うおおおおおぉぉぉッ!!』



アヌビスとシャンブレー――真っ向から真剣でぶつかり合った両者の武勇を称える歓声と拍手が沸き上がる。冥黒の近衛騎士アヌビスは大きく息を吐いた後、次なる猛者を迎え撃つべく闘志をみなぎらせていた。



「アヌビス…素敵よ♪そのまま残る2人もイかせてしまいなさい…」


「はっ、ビアリー様の仰せのままに!さあ、次は誰だ!?」


「はぁ…見事という他に無いわね…フランネル、任せたわ」


「ああ…アイツ、シャンブレーを倒すとはかなりの腕前だな…やってやるぜ!」



敵軍副将フランネルは身の丈ほどもある巨斧を振り回し、堂々たる姿でアヌビスに向かい合う。彼はアヌビスに対して臆することなく、猛者であるシャンブレーを討った強者と相対することへの高揚感を全身に纏っていた。



「よう!悪りぃけど、ベルベットには手出しさせねぇからな!」


「…生憎だな。私にも守るべき人がいる。そう簡単には負けん」


「おっ、言ったな?そんじゃ、どっちの想いが強いか、戦って確かめようぜ!」


「…臨むところだ!」



アヌビスとフランネル――大切な人を守るための戦いの火蓋が切られる。果たしてビアリー班は勝利を掴めるのだろうか?そして敵軍の大将ベルベットは何者なのか?観衆のボルテージが高まる一方の闘技場の舞台の真ん中でアヌビスとフランネルは熱く滾る闘志に委ねるままに刃を交えていった。




To Be Continued…

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