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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
163/330

第163話『色彩武勇~vol.1~』

シリーズ第163話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

強きを尊ぶビンニー国の闘技大会に挑む彩りの義勇軍一行。一行の実力を認めた蛮族四天王の厚意により馬小屋同然の汚い宿から綺麗なホテルに拠点を移し、皆の士気は自然と高まっている。ヴィオを師匠と仰ぐ醍白(ミルキーホワイト)の少女ラッテと酒場で出会った沌色(カオスヴァリー)の艷女アルキヴァを加え、総勢110人となった彩りの義勇軍は次なる戦いに挑まんとしていた。



「みんな、おはようございます。やはり宿が変わると休息の質も変わりますね!」


「そやなぁ、モニカ姉ちゃん!ホンマぐっすり眠れたわぁ♪ん…?リタ姉ちゃん、なんや疲れた顔してるで?大丈夫なん?」


「あ、ああ…俺は大丈夫だから、気にしないで…」


「うむ…それに引き換え、リタ殿の軍の面々はやたら血色が良い気がするのだが…何があったというのだ?」


「ウフフッ…きっと素敵な夜を過ごしたのね…あたくし達もこの舞台を楽しませていただくわ♪」


「うおお!ビアリー様、闘魂燃えてるッスね!ファイトッス~!!」



かくして闘技大会3日目が幕を開ける。月の神と毒の精霊の意思を体現するビアリー班が戦いの舞台に立っており、抑えきれぬ5人の毒氣が僅かに滲んで仄かに妖しい薫りを漂わせていた。



「Gランク勝ち抜き戦を開始します!両軍先鋒、前へ!」


「は~い!パンジーの出番なの!」


「ウフフッ…貴女はいつも元気一杯で可愛いわ。遠慮しないでイかせてしまいなさい…」


「はいっ、パンジー、頑張るの!ビアリー様のために頑張って殺っちゃうのよ!」



ビアリー班の先鋒は濃紫の鎧に身を包んだテラコッタの毒騎士パンジー。かつてはとある国で“死神”と恐れられたシリアルキラーだったが、放浪者としてテラコッタ領を訪れた際に主君ローザのお眼鏡に敵い、騎士に推薦された前代未聞の人物である。謂わば反社会的勢力とも言えるパンジーを騎士に推薦することに対して非難の声も少なくなかったが、矢面に立たされたローザは“アタシの好みの娘だからいいのよ!”と気にも留めず、パンジー自身も奔放ながらも騎士の勤めには真摯に向き合っており、実力で信頼を勝ち取ってきた。一行に加わってからは闇の皇女ビアリーの寵愛を受けて毒の彩りの戦士として覚醒し、武器である斧は毒氣を纏っていた。



「さて、始めるか…っと、最初の相手は騎士の方か?」


「は~い!テラコッタの騎士パンジー、ただいま参上なのよ!」


「…見た目は騎士だけど、なんかガキみたいな喋り方だな…そんなんで戦えるのか?」


「もちろんなのよ!パンジー、誰が相手でもこの斧でバリバリ切り刻んじゃうのよ!嘗めてかかったら死んじゃうのよ~!」


「ううっ…わけがわからんが…来るなら来い!」



敵軍の5人組は華美な服装が目を引く。その先鋒を務めるのはシフォンという名の青年だ。パンジーの無邪気さに表裏一体で潜む残酷さが見え隠れすることに怯むものの、闘志を奮い立たせて手斧を振るい、毒騎士パンジーに立ち向かっていった。



「てやあぁ!ええぇいッ!!」


「くっ…見た目以上のパワーだ…コイツ、強い…!」


「隙だらけなの!トキシックスラッシュ!」


「グッ…こ、これは…!?」



禍々しい毒氣を纏った斧の一撃はパンジーの猟奇性を体現しており、敵軍先鋒の斧使いシフォンに荒々しく牙を剥く。毒が燻り妖しく疼く傷痕はシフォンの体を蝕み、パンジーを攻勢へと導いていった。



「親愛なる同志パンジー、見事なものよッ!その調子で己が闘志を見せつけるのだッ!!」


「パンジー、前より斧を振る力が強くなった気がするよ…これもこの軍に入ったからかな?」


「そうね、ランタナ。きっとビアリー様と出会って毒の力に目覚めたからだと思う…やはり同じ力を司る精霊同士が惹かれ合うのね」


「パンジー、イケイケじゃ~ん!そのまんま超アゲアゲでよろよろ~!」



パンジーの猛攻に客席で見守る仲間達も自ずと盛り上がる。一方、対するシフォンを黙ってはいない。同じ斧を得物とする両者が激しく火花を散らし、真っ向からぶつかり合っていた。



「うりゃああッ!!」


「キャッ!乙女に傷付けたの…許さないのよ!!」


「がふっ…!!」


「キャハハッ!パンジー、楽しくなってきたのよ~!キャハハハハッ!!」



赤黒い憤りを帯びた復讐の刃でシフォンを薙ぎ払い、ポワゾンから習った不良格闘術で蹴倒して追い討ちを見舞う。萠紫(パンジーパープル)の紋様が妖しく揺らめき、毒の力を解き放った。



「我が祖国の闇夜の刃、元気一杯で殺っちゃうのよ!テラコッタ・トキシックスラッシュ!!」


「うあああぁぁッ…!」


「そこまで!勝者、パンジー選手!」


『うおおおおぉぉぉッ!!』



猟奇性を剥き出しにしたパンジーの戦いは武勇を尊ぶビンニー国の人々の心にも火を点け、大きな歓声が沸き上がる。自身に降りかかる歓声に気を良くしたパンジーは更に意気を高め、次なる相手を今か今かと待ち受けていた。



「早~い、もうイっちゃったの?パンジー、まだまだ物足りないのよ!」


「フフッ、その調子よ♪貴女の刃があたくし達の運命を切り拓いてくれるのね…」


「強い…さすがは一国の騎士様ね…気を付けて、ベロア」


「任せな、ベルベット。当たらなければどうということはない。殺られる前にやるだけさ!」



敵軍の大将を務めるベルベットという女性に背を押されたベロアという男が素早く闘技の舞台に躍り出る。シフォンよりも小柄な敵軍次鋒は得物を手槍を携え、パンジーに向かって猪突猛進の勢いで飛び込んできた。



「いくぜええぇぇ!」


「臨むところなの!ええぇいッ!!」


「遅せぇよ!そんなんじゃハエが止まるぜぇ!!」


「キャッ!?す、すごい…ゴキブリみたいに速いの!」



ベロアは軽やかな動きでパンジーを翻弄していき、ペースに持ち込んでいく。一方のパンジーはベロアに猛攻を軽々と避けられ、次第に焦りと苛立ちを募らせていった。



「よっ、ほいほいっと~!」


「うう…すばしっこいの…チョロチョロしないでパンジーに殺られちゃいなさいなのよ!」


「ヘヘッ、そうは問屋が卸さねぇよ!うりゃあッ!!」


「きゃああっ!?」



パンジーはベロアの疾駆に足下を掬われ、仰向けに倒されてしまう。パンジーは砂埃にまみれながら体勢を直そうとするが、鎧の重味が仇となって立ち上がるのに時間を要する。抜け目の無いベロアはその隙を見逃すはずも無い。



「おおっと、手頃な足場発見♪そぉらよっと!」


「うううっ!」


「よっしゃ、いただきぃ!騎士様からの殊勲の星はもらったぁ!」



鎧越しに踏みつけられ、踏み台代わりにされてしまう。ベロアは宙を舞いながら手槍を構え、アクロバティックな動きで槍を突き立てていった。



「騎士様、覚悟しな!そぉらよぉぉッ!」


「いやああぁぁッ!」


「そこまで!勝者、ベロア選手!」



毒騎士パンジーは敵軍次鋒ベロアに翻弄されるがまま、惜しくも敗れてしまった。共に戦う4人がパンジーのもとに駆け寄る。主君ビアリーは傷を負ったパンジーのもとに寄り添い、優しく愛でながら奮戦を労った。



「ああ…パンジー、可哀想に…よく頑張ってくれたわ…」


「キイィッ!悔しい~ッ!アイツ、次に会ったら絶対に殺ってやるの~!」


「ふむ…手練れの集うこの舞台、やはりただでは転ばんか…ナハト、頼むぞ」


「ええ、パンジーを倒すくらいだから手強いと思うけど…ビアリー様のため、力を尽くすわ」


「よっしゃ、しっかり気合い入れて行けよ!頼りにしてるからな!」



ポワゾンに背を押され、マジカルパープルの紋様を耀かせる闇の魔道士ナハトがビアリー班次鋒として戦いの舞台に踏み出す。リモーネ率いる巨大傭兵団の一員として一行に立ちはだかったが、ビアリーの色仕掛けに堕とされ、双子の姉リヒトと共に一行に加わった。彩りの戦士として戦う覚悟と決意を抱いた毒の魔道士は得物の毒氣の杖を構え、敵軍次鋒ベロアに相対した。



「ヘイヘイ、嬢ちゃん!そんな辛気臭い顔してないで、かかって来いよ!」


「……」


「おいおい、来ないのか?それならこっちから――」


「…バイオバースト!」



マジカルパープルの紋様が紡ぐ毒の力が球状の形になり、ベロアに襲い掛かる。ナハトの彩りの毒はヒタヒタとしたたかにベロアを蝕み、じわじわと疾駆を鈍らせていった。



「クソッ、こりゃヤバそうな奴だ…ちょいと1回逃げるかな――」


「させない…バイオバーストヒッター!」


「うおぉ!?なんてコントロールだ…!」



間合いを取ったベロアに対して動じることなく、野球のノックの要領で毒の球を杖で打って飛ばす。毒の魔道士ナハトの奮戦を誰よりも喜んでいたのはマジカルゴールドの彩り――双子の姉である光の魔道士リヒトだった。



「ナハト~!その調子その調子~!やっぱり闇の魔法ってクールな感じだよね~。ウチってお父さんもお母さんも魔道士だったけど、アタシともナハトとも違う魔法を使ってたな~。もしかしたら遺伝とかって関係無いのかな?それはやっぱり1人1人が持ち合わせてる才能とか素質ってものが――」


「リヒト、喋り過ぎだ。それに客席からそんなに身を乗り出したら危ないぞ」


「フフッ…同じ血を分けた双子の姉妹ですものね。リヒトにとってナハトはとても大切な人なんでしょう?」


「そりゃもちろんですよ~、アルキヴァさん!ナハトってたまに口うるさい時もあるんですけど、困った時や辛い時はいっつも助けてくれるんですよ~!察しが良いって言うか、よく気が付くって言うんですかね?やっぱり助け合いって――」


「やれやれ、随分とお喋りなこったねぇ…ナハト、そのまま押しきっちゃえ!ボコボコにしちまいな!」



ヤートの呼び掛けを皮切りに仲間達がナハトへ次々に声援を送る。闘志を昂らせたナハトはマジカルパープルの彩りの闘気を全身に纏い、毒氣の杖を力一杯に振り切った。



「私の毒の力、くらいなさい…バイオバースト・スラッガー!」


「ぐええぇぇっ!」


「そこまで!勝者、ナハト選手!」


『おおおぉぉぉ~ッ!』



マジカルパープルの毒氣を纏った杖のフルスイングで一閃――敵軍次鋒ベロアをジャストミートで捉え、荒々しく吹き飛ばした。普段は内気なナハトが胸の内に秘めた熱い心を体現する毒の闘技は熱戦を期待するビンニー国の人々にも好感を持って受け入れられ、再び歓声が沸き上がった。



「ナハト…!貴女の彩り、素敵だわ…もっと皆に見せてあげなさい♪」


「ありがとうございます、ビアリー様…私の彩りの力、ゆっくりご覧になってください…」


「魔道士も控えているなんて、抜け目の無い人達だわ。シャンブレー、お願いね」


「……!」



大将ベルベットの呼び掛けに無言で頷いた敵軍中堅は厚い鎧に身を包んだシャンブレーという男だった。岩に鉈で彫ったようなゴツゴツした顔立ちとどっしりとした武人たる佇まいは朴訥で武骨な印象を受ける。無言のまま得物の鎗を突き立て、ビアリー班次鋒ナハトに対峙していた。



「……」


「……」


「え、えっと…両者、よろしいでしょうか…始め!」



ナハトとシャンブレー――双方ともに寡黙な人物であり、審判の合図で臨戦態勢に入る。僅かに客席から失笑が漏れる中、相対する2人は静かに闘志を燃やしていた。果たしてこれは嵐の前の静けさなのであろうか?彩りの義勇軍の戦いはまだまだ続く!




To Be Continued…

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