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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
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第160話『彩りの争闘~vol.15~』

シリーズ第160話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族四天王が統べるビンニー国の闘技大会に挑む彩りの義勇軍一行。自らに祝福をもたらす精霊の力を信じるフェリーナ班の中堅を務める碧緑の科学者シェリーが静かに闘志を燃やしながら敵軍中堅のキヅタ族の青年パラムに相対していた。



「ふむふむ…貴方達がアイビー国の狩猟民キヅタ族…髪の色はフェリーナと同じなのね。これもキヅタ族の特徴の1つなのかしら…」


「な、なんだよ?物珍しそうにジロジロ見やがって…俺達は見世物じゃねぇんだぞ!」


「あら、失礼しました。では、キヅタ族の力、貴方と戦って確かめます…キエエェェッ!」


「うおわっ!?ヤ、ヤバそうな奴だな…来るなら来い!」



シェリーは戦闘時のみ装備する防護ゴーグルを着用し、狂気に駆られるがままに彩りの力を振るう。煌めくシェリーシャルドネの彩りに呼応するように武器のスタンガンが唸りをあげた。



「そぉれ、当たれッ!!」


「フッ、大振り過ぎるわ!レスタースパーク!」


「ぐうぅわッ!?」


「ヒヒヒッ!!たっぷり味わわせてやるわ!フヒヒヒヒィッ!」



艷碧(シェリーシャルドネ)の彩りの電撃が猛スピードで駆け抜け、キヅタ族の戦士を捉える。パラムはシェリーの狂気に少し気圧されながらも狩猟武器のロープを手繰り寄せて構えを直し、闘志を奮い立たせてシェリーの懐に飛び込んだ。



「クソッ、ぶっ飛ばしてやる…うおおらッ!」


「甘いわね!インヴァネス・サンダーナックル!」


「グッ…!」



艷碧(シェリーシャルドネ)の電撃を拳に纏わせ、懐に飛び込んだパラムを痺れさせて動きを封じる。普段の落ち着いた印象を良い意味で裏切るしたたかな攻めは仲間達のボルテージも高まらせていった。



「シェリー、ナイスだぜ!まさか格闘も出来るなんて、驚きだな!」


「フフッ、実はこっそり練習していたんだよ♪うん、僕が教えた通りだ!」


「キャロル、いつの間に…ですが、思った以上にサマになっていますね。美しい攻めです!」


「そうね、オール。シェリーはシェリーの形で私達アザレアの戦士の誇りを体現しているわ!」


「シェリー、遠慮は要りません!我らが祖国アザレアで培った貴女の力をこの舞台で見せつけるのです!!」



爽青(ソーダブルー)の戦士ジーリョの声を皮切りに仲間達の声援が次々に沸き上がる。祖国愛に満ち溢れたアザレアの貴公子達や共に歩む仲間達の声援がシェリーの胸に燃ゆる闘志を更に昂らせていった。



「ク、クソッ…体がビリビリする…!」


「さあ、覚悟してもらうわよ!出力上昇ッ…!!」


「うわああ!?こ、これは…!?」



理知と狂気を併せ持つアザレアの貴公子シェリーの全身を艶やかなシェリーシャルドネのオーラが包む。彼女の闘志が高鳴ると同時に青緑の電光が弾け、バチバチと音をたてながら闘技の舞台を駆け抜けていった。



「私の力、最大出力で喰らわせてやるわ!プレストウィック・ギガボルト!!」


「ウガアアアァァァッ…!」


「…そこまで!勝者、シェリー選手!」



艷碧(シェリーシャルドネ)の電光に揺さぶられた観衆から大きな拍手が沸き上がる。シェリーは澄ました顔をして勝ち誇るがすぐに表情を引き締め、次の相手を迎え撃とうと意気を高めていた。



「凄い…シェリーの力はトリッシュやミモザ、ヘンドリックス、ズィヒールと同じ雷の精霊ヴォルトの御加護を受けた力…恐ろしい力だわ…」


「そうね。シェリーの彩りの力、私も痺れるくらいだわ!とっても素敵!」


「マスター、お見事です。次の標的を確認、お気を付けて!」


「さあ、次はこのアネモス様が相手だ!フェリーナの仲間だからって手加減しないぜ!」


「ええ、手加減なんて不要よ。互いに全力で戦いましょうか!」



続いてフェリーナ班の前に立ちはだかる敵軍副将はアネモス。フェリーナが“手強い”と評するほどの腕前を誇る蛮勇の戦士であり、集落を襲う害獣や破落戸をフェリーナ、ヴェルデと共に度々退ける勇者でもある人物だ。筋骨隆々の体躯を誇るキヅタ族の大剣士は荒々しい武を誇示しながらシェリーに襲い掛かった。



「うおおおッ!どぉりゃああッ!!」


「フフッ、確かにパワーは申し分無いけど、さっきのパラムさん以上の大振りだわ。これなら――」


「隙だらけだぜ!うぅらああぁぁ!!」


「クッ…!!」



敵軍副将アネモスは大剣を振るい、畳み掛けるようにシェリーを薙いで打ち据える。一方のシェリーも相手の攻勢を前にして黙ってはいなかった。



「レスタースパーク!」


「うぐっ…!よくもやりやがったなぁ!!」


「来る…ならば、インヴァネス・サンダーナックル――」


「ウハハハ!甘い甘い!俺は力比べなら誰にも負けねぇよぉ!!」



剛力と蛮勇を誇るアネモスに捉えられ、シェリーは瞬く間に劣勢に立たされる。涼緑の狩猟民族を守る勇者の堂々たる姿は対峙するフェリーナ班の面々も畏怖を感じていた。



「シェリーさん、苦戦しているわね…あの大剣で薙がれたらひとたまりも無いわ…」


「そうね、バジル。アネモスはキヅタ族の中でも戦いに秀でているのよ。きっとこの闘技大会でも十分通用すると思っていたわ」


「ええ、アネモスさん、とても素晴らしい戦士です。フェリーナさんや彼を始めキヅタ族の皆様は大自然に鍛えられた強い心身をお持ちなのですね…」


「マスター…どうか御武運を…」



主人を案じるプロトを始め、フェリーナ班の4人は固唾を呑んで見守る。が、シェリーは有利な間合いを掴めないままジリジリと追い詰められていく。艷碧の科学者は明らかな劣勢に歯痒さを感じるばかりだ。



一方、アネモスの戦いは堂々たる蛮勇に裏打ちされた荒々しさを持っており、観衆は次第に熱気を帯びていく。数多の武勇を挙げる涼緑の勇者は闘技の舞台で躍動していた。



「叩き潰してやるぜ…そらよぉ!」


「うああッ…予想以上、だわ…!」


「そこまで!勝者、アネモス選手!」


『おおおぉぉ~!!』



蛮勇を誇るキヅタ族の戦士アネモスの荒々しい猛攻に圧倒され、シェリーは力及ばず敗れてしまった。アネモスの勝利を称える歓声の中、フェリーナ班の仲間達が静かに駆け寄っていた。



「負けたわ…ごめん、なさい…退かせてもらうわね…」


「シェリー、あとは任せてゆっくり休んで。プロト、シェリーの治療をお願いするわね」


「承知しました、フェリーナ様。マスター…大丈夫ですか…?」


「さて…私の出番ね。手強い相手だけど、テラコッタの騎士として全力を尽くすまで!」


「バジル、お願いするわね。アネモスは強い人だから厳しい戦いになると思うけど、貴女なら大丈夫。信じているわ」



フェリーナ班の副将を務めるのはミントグリーンの鎧に身を包んだテラコッタの風騎士バジル。かつては隣国スプルース国の緑豊かな山間の村で用心棒の仕事をしながら農業に携わって暮らしていたが、スプルース国の木材資源の視察に訪れた主君ローザが彼女の弓の腕前に惚れ込み、彼によって直々に騎士に推薦された経歴の持ち主である。凛とした佇まいに違わぬ規律正しい性格で、エーデルやミュゲら後輩騎士の指導役も務めている風騎士はハーブグリーンの紋様を瑞々しく煌めかせ、得物の弓矢を携えて敵軍副将アネモスに向かい合っていた。



「ブルーノ国テラコッタ領より参りました、バジルと申します。いざ、尋常に勝負!」


「ふ~ん、弓か…キヅタ族は弓使いが多いから、弓の腕を見る目は肥えてるぜ?あんたの腕前、見せてみな!」


「望むところよ!テラコッタの騎士として、全身全霊を賭けてお相手するわ!」



バジルは臆することなく弓を構え、敵軍副将アネモスに向けて素早く放つ。ハーブグリーンの紋様が印された左手で弦を引き絞り、放たれた矢はバジルの性格を表すように凛と真っ直ぐに駆けていく。更に速射にも長けており、息着く暇さえ与えない連射を見舞った。



「てやぁ!はああッ!」


「グッ…は、速い…!コイツの弓、フェリーナやヴェルデに引けを取らない…!」


「どこを見てるの?こっちにいるわよ!」


「ぐえっ…ちくしょう…!」



バジルは俊足を生かしてアネモスの至近距離に素早く切り込み、携えた盾を駆使した体術で畳み掛ける。弓矢を得物とするバジルが大剣士であるアネモスに対して間合いを詰める行為は傍目には無謀にも思えるが、ハーブグリーンの風騎士には一点の迷いも無かった。



「少し本気を出すわよ…ウインドアロー!」


「うがっ…!この技、フェリーナと同じ風の精霊シルフの力…!?」


「…ええ、きっとそうね。心してくらいなさい!」



涼緑の鎧の騎士バジルは薫緑(ハーブグリーン)の彩りを凛と煌めかせ、涼緑の勇者に毅然と相対していく。闘技の舞台で躍動する風騎士の勇姿は客席で見守る仲間達の心を揺さぶっていた。



「キャ~ッ!バジル様、カッコいい~ッ!!」


「ハァ…カッコいいなぁ…バジル様っていつも凛としてて素敵だよね~!」


「ハイビス、エーデル、ノリノリだな…。バジルって面倒見が良いし自分もしっかり持ってて“出来る女”って感じだよな!」


「はい、ヒーザー様!私もテラコッタの騎士になってからバジル様にはお世話になりっぱなしで…バジル様は私の目標なのです!」


「よ~し!イケてるよ、バジル!その調子でガンガン燃やしてしまえッ!!」



テラコッタの騎士達の後押しを受け、バジルは全身に薫緑(ハーブグリーン)の闘気を纏う。弓を構える風騎士の勇姿からは騎士としての覚悟と決意が滲んでいた。



「我が祖国の疾風の刃、仇為す者を切り裂け!テラコッタ・サイクロンアロー!!」


「うっぎゃああぁぁッ!!」


「そこまで!勝者、バジル選手!」


『うおおおおぉぉぉ~ッ!!』



バジルの堂々たる戦いが観衆を一気に沸き上がらせる。当のバジルは凛々しい闘気を纏ったまま静かに佇んでいたが、フェリーナと目を合わせるや否やゆっくりと歩み寄る。一方のフェリーナも物言いたげな様子でバジルを待っていた。



「バジル…やっぱり貴女の力は私と同じ…」


「…そうね。私も貴女とは何か深い繋がりがあるって思っていたけど、今の戦いで確信したわ。貴女と私は同じ風の精霊の祝福を受けた彩りの戦士なのね」


「ええ。間違いなく貴女にも風の精霊シルフの御加護があるわ。その力、ヴェルデにも見せてあげて!」


「クソッ…さすがは、騎士様だ…ヴェルデ、あとは頼んだ…」


「ああ、任せとけ!さっきからウズウズしてたんだ!騎士様と戦える機会なんて滅多にないからな!」



遂に敵軍大将ヴェルデが闘技の舞台に踏み入る。フェリーナ、アネモスと並ぶキヅタ族の勇者であり、此度の武者修行の発起人でもある。キヅタ族を背負う覚悟を燃やす敵軍大将は堂々とした姿で風騎士バジルに向かい合っていた。



「よう、騎士さん。アネモスに勝ったってことは間違いなく相当の手練れだな…手加減無しでいくぜ?」


「…ええ。私もテラコッタの騎士として、全力でお相手するわ!本気でいくわよ!」


「おう、始めるか!そんじゃ、行くぜッ!」



バジルとヴェルデ――対峙する2人は弓を構え、静かに火花を散らす。佳境を迎えたキヅタ族との一戦、果たしてフェリーナ班は涼緑の勇者ヴェルデに打ち勝ち、勝利を掴むことは出来るのであろうか!?




To Be Continued…

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