第158話『彩りの争闘~vol.13~』
シリーズ第158話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!
蛮族の国ビンニー国の闘技大会に挑む彩りの義勇軍一行。仲間を守り戦うことを美徳とするビクトリア班がハンターグリーンの彩りの戦士マチルダ率いる破落戸5人組を堂々たる戦いを以て退け、その勇姿に皆が戦いへの意気を高めていた。
「いやぁ、今日の勝ちは気分が良いねぇ!ビールの味も格別ってもんさ!」
「結局マチルダ達には逃げられてしまったな。まあ、ただじゃ転ばなさそうな奴だし、恐らくそのうちまたひょっこり現れるだろ」
「そうですね、グラジオ。それにしても…闘技の舞台でお酒を飲むのはいかがなものかと思うのですが…」
「やれやれ、モニカは相変わらずお堅いこったねぇ!審判からお咎めも無かったんだし、無礼講ってことでいいじゃないのさ!」
「フフッ、ビクトリアらしいから良いと思うわ。さて、次は私達の出番ね。精霊の導くままに、力を尽くすわ!」
「まあ!フェリーナお姉様、溢れる闘志が輝いていますわ!どうか御武運を!」
ビクトリア達の熱い戦いで意気を高め、続いて闘技の舞台に挑むのはフェリーナ班の5人。先鋒プロト、次鋒フェトル、中堅シェリー、副将バジル、大将フェリーナ――祝福の証の根源たる精霊の力を信ずる5人は凛と煌めく闘志を静かに燃やしていた。
「戦闘モード、スタンバイ――いつでも戦闘体勢に移行出来ます!」
「毒の精霊ウェネーヌが司る私の毒がどこまで通ずるか…最善を尽くします」
「科学の力と祝福の証の力、2つの融和をこの舞台で見せつけてやるわ!」
「精霊の力…正直実感は沸かないけど、この軍の皆を見ていると私にも確かに精霊の加護があるかもしれないって思えるわ。テラコッタの騎士として、精霊の戦士として全力で戦う!」
「そうね。精霊が私達に勝利をもたらしてくださると信じて、私達の出来る限りの力を尽くしましょう!」
仲間達と共に闘技場のアリーナに踏み入るや否や、フェリーナは驚きに眼を見開く。敵軍として相対するのはミントグリーンの頭髪と露出の多い民族衣装が特徴的な5人組――故郷アイビー国の狩猟民族キヅタ族の旧友だった。更に言うと5人全員がフェリーナの見知った顔であるらしく、思いがけない再会にただ驚くばかりであった。
「よう、フェリーナ!まさかこんなところで会うとはな!」
「ヴェルデ!?それに後ろにいるのは…アネモス、パラム、アイレ、ヴェント…!どうしてここに!?」
「まあ、なんだ…魔物を狩りながら修行の旅ってところかな。フェリーナが頑張ってるから、俺達もじっとしていられなくてよ…修行の成果、巫女であるフェリーナに見せてやるからな!」
「ヴェルデ…わかったわ。それなら私も精霊の力と仲間達との絆の力、貴方達にお見せするわ!」
フェリーナは旧友との再会に心を高鳴らせ、勇んで戦いに挑まんと意気を高める。疾風の狩人である大将と共に戦うフェリーナ班の面々も驚きを隠さなかった。
「キヅタ族…フェリーナの部族の方々と戦うのね。大自然の中で生きる狩猟民族の生命力を感じられるのはとても楽しみだわ!」
「…フェリーナ様のご友人5名、生体認証完了。警戒レベル…警戒、レベル…設定不能…困りました…」
「プロト、迷うことはないわ。この場では戦う相手なんだから、暫定的でも戦う相手として認識しなさい」
「フフフッ…シェリーさんとプロトさん、親子のようですね。これも1つの絆の在り方ということでしょうか――」
「これよりGランク勝ち抜き戦を開始します!両軍先鋒、前へ!」
「――標的確認、戦闘モードに移行――フェリーナ様、行って参ります」
「ええ。頑張ってね、プロト。貴女の精霊の力、頼りにしているわ」
「よ~し、俺達も張り切っていくぞ!ヴェント、頼むぜ!」
「あ、ああ…えっと…機械の人形か…頑張ってみるよ!」
フェリーナ班の先鋒はグレーの彩りの機械戦士プロト。かつては邪教戦士ポールポラの配下として立ちはだかり、一行をあと一歩で全滅というところまで追い込むも、プログラムの容量オーバーで機能停止してメモリーも初期化、シェリーの保護下で一行に仲間として加わった。普段は感情の発露が少なく、愚直なほど真面目に一行のサポートを務めているが、蛮族の国の闘技の熱気にほだされたのか、斧を振るって飛びかかる敵軍先鋒のヴェントを前にして秘めた闘志を剥き出しにして迎え撃った。
「うおおりゃああッ!」
「…!!」
「うわっ!?と、飛び上がった…!?」
「標的位置確認…プロトバスター!」
「うえぇっ!?」
プロトは自らの右手に装備された銃器を素早く抜き、少し気弱な敵軍先鋒ヴェントに向けて躊躇いなく乱射――グレーの彩りの気が闘技の舞台にぶつかり、次々に炸裂する。グレーの彩りを持つ機械少女が“標的”であるヴェントに対して突き刺す敵意は蒼く冷たいが、同時に赤い熱気を併せ持っていた。
「風術式展開――」
「うわああっ!カメレオンみたいに色が変わった!?な、何をするつもりだ…!?」
「標的位置確認――ウインドカッター!」
「ぐわぁッ!」
プロトの体が黒からミントグリーンに染まり、フェリーナと同じ彩りの風を放つ。赤茶色の闘技場に爽やかに映える涼緑の疾風は普段は落ち着いたフェリーナとバジルを昂らせていた。
「プロト…貴女の紡ぐ精霊の力、私の精霊の刻印も高鳴っているわ!間違いなく風の精霊の力を体現しているのね!」
「フェリーナ、実は…私の左手もすごく疼いているの。やっぱり私もフェリーナと同じ風の精霊の戦士なんだわ!」
「ふむふむ…フェリーナさんとバジルさんの彩りは同じ風の力をルーツとして共に惹かれ合い、共鳴するのですね…色彩同士が惹かれ合い、共に輝きを増す…とても興味深いです」
「さあ、プロト!遠慮は要らないわよ!フルパワーで打ってしまいなさい!!」
自らの“マスター”であるシェリーの指示を受け、プロトは彩りの気を右手の主砲に集束させる。邪教戦士ポールポラの配下であった頃は作り主と同じ悪の力が込められていたが、彩りの義勇軍の一員となってからは平和に向けて真っ直ぐに伸び行く善の力を込めていた。
「エネルギー充填率100%…プロトブラスター・フルチャージショット!!」
「うあああぁぁッ…!」
「そこまで!勝者、プロト選手!」
『うおおおぉぉぉ~ッ!!』
歓声と拍手が沸き起こる中、プロトは静かにお辞儀をして応える。表情は穏やかでありながらも瞳には確かな闘志を燻らせたまま、“一行の手伝い役”の姿ではなく、““戦士”の姿で佇んでいた。
「プロト、その調子よ!貴女の彩りの力、キヅタ族の皆にもっと見せてあげて!」
「ありがとうございます、フェリーナ様。戦闘モード、継続します――」
「なんのまだまだ!次は僕が相手だ!いくぞ!」
「よっしゃ!アイレ、頼んだぞ!ヴェントの敵討ちだぜ!」
敵軍は選手交代。ヴェントに代わって槍を携えた次鋒のアイレが勇んで前に踏み出してくる。彼は穏やかな口調とは裏腹に胸中には確かな闘志を燃やしていた。
「うおおッ!でやあぁッ!」
「標的接近…プロトバスター!」
「クッ…ま、負けるものか!うおおりゃあッ!!」
「星術式展開――スターダストボム!」
「うわッ!?」
グレーの彩りの銃弾に怯むことなく我武者羅に突っ込むアイレに対し、プロトは静かに闘志を燃やしながら自らの体をマゼンタに染める。煌めく星々の力を紡ぎ、輝きの礫を“標的”に叩き付けていった。
「隙あり!うおおりゃあッ!!」
「炎術式展開――ファイアボール!」
「な、何ぃッ!?」
『おおおぉぉ~…!!』
プロトの体色がマゼンタから赤に移ろい、紡ぎ出した炎の力を解き放つ。しかし、プロトが狙ったのはアイレではなく、自身の足下だった。歓声が沸き上がる中、プロトは赤き火球の暴発を駆使して空中に飛び上がり、アイレの攻撃を避けながら頭上で構えを取る。様々な彩りに染まるグレーの機械少女はしたたかに標的を強襲する体勢に入っていた。
「うわあぁ!?し、仕掛けてくる…!」
「標的位置確認、玄術式展開!――」
「クッ…来るなら来い!」
コーヒー色に染まったプロトが空中から奇襲を仕掛け、アイレは得物の槍をしっかりと握り締めて迎え撃つ体勢を取る。彩りの義勇軍と涼緑の狩猟民族キヅタ族が真っ向からぶつかり合い、清々しい闘気が満ち溢れる中、フェリーナ班は勝利を掴むことが出来るのだろうか?祝福の戦士達の絆が紡ぎ合う彩りの争闘はまだまだ続く!
To Be Continued…