第154話『彩りの争闘~vol.9~』
シリーズ第154話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!
蛮族の国ビンニー国の闘技大会に挑み、各々の色彩の力を体現していく彩りの義勇軍一行。闘技の舞台で堂々と己の武を見せつけたステラ班が相対した東方から修行に訪れた彩りの戦士一団と相対し、見事勝利を掴んだ。茜色の紋様を持つユキムラ率いる東方より来たる彩りの戦士5人は一行のもとに改めて挨拶に訪れ、戦いの際とは違う穏やかな表情で向かい合っていた。
「ほれ、この軍がワシらの一門だぞ!みんなワシの誇れる仲間じゃわい!」
「おお…これほどの方々が集っていらっしゃるとは…某、大変に驚いております」
「オレっちも超ビックリ!うっひゃ~、すっげぇすっげぇ~!」
東方の戦士達は百数人規模に膨れ上がった彩りの義勇軍に驚きながらも、清々しい表情で向かい合っていた。皆が自分の誇れる仲間――ステラの言葉に一片の偽りもないことは5人全員が容易に汲み取っていた。
「テメェら、今の強さに傲って修行を怠けるんじゃねぇぞ!まあ、どれだけ修行しようが次こそはこのキヨマサ様が勝つけどな!」
「フッ、お前じゃないんだから修行を怠ることなどあるまい、戦馬鹿。皆々様と次に相まみえる機会を私も楽しみに待つとしよう」
「では、我々はまた旅に出て修行に励みます。必ずまたお会いし、再び戦いましょう!」
「おう、楽しみにしとるぞ!その時までしっかり稽古するんじゃぞい!良い旅を!!」
再会と再戦を約束し、ユキムラ率いる5人組と別れた一行は次なる戦いへと踏み出す。続いて挑むのはビクトリア班――先鋒ヴァネッサ、次鋒ポソニャ、中堅アルフォンゾ、副将グラジオ、大将ビクトリア――仲間を守り戦うことに本分を見出だす熱き5人組は目の前に待ち受ける戦いに向けて闘志を燃やしていた。
「やっぱり戦いって燃えるよね~!まあ、誰が来ようと叩き割ってやるけどね!」
「おう!ウチの毒の力もガンガンぶち込むんで、そこんとこ夜露死苦ゥ!」
「や~れやれ、揃いも揃って随分と熱いこった。ま、たまには悪かないかねぇ…!」
「その意気だぜ、アルフォンゾ!アタシもテラコッタの騎士として、手加減無しの全力で叩きのめしてやる!」
「よっしゃ!猛者揃いの闘技場と来りゃ腕が鳴るねぇ!みんな、気合い入れてやってやろうじゃないのさ!!」
5人は戦いが待ちきれぬとばかりに勇んで闘技場の舞台へと飛び出していった――が、ビクトリアは敵軍を見るや否や苦虫を噛み潰す。ビクトリア班に相対する敵軍を率いていたのはハンターグリーンの彩りの戦士マチルダだった。かつては邪教戦士ジャッロの復讐のためにリベラ、ジェンシア、グラーノ、セレアルと共に一行に刃を向ける破落戸5人組の1人だった。リモーネ率いる巨大傭兵団にも加担しており、彼女以外の4人は巨大傭兵団から彩りの義勇軍に加わったが、マチルダはただ1人頑なに拒み、4人と袂を分かつ。以降は巨大傭兵団の残党を新たな仲間として徒党を組み、戦場漁りと傭兵稼業で生計を立てながらも毎日酒浸りであり、破落戸同然の荒んだ生活を送っていた。
「ヒャヒャヒャッ!どんな奴が出て来るかと思ったら、見目麗しいビクトリアちゃんの登場ってかい!」
「チッ…よりによって…なんだって相手があんたなんだい!」
「んなもん知るかってんだ!甘ちゃんビクトリアと戦うなんざ、こっちから願い下げだっての!」
「確かコイツ、傭兵団にいた奴だな…大丈夫だ、ビクトリア。このグラジオ様がぶっ潰す!」
「ケッ、おっかねぇ騎士さんだこと!まあ、あたしゃテメェらを返り討ちにするまでよ!」
試合開始前から両軍が火花を散らし、緊迫した空気が闘技場に満ちる。一触即発の雰囲気の中、戦いの火蓋が切られようとしていた。
「Gランク勝ち抜き戦を開始します!両軍先鋒、前へ!」
「ヴァネッサ、あんたに任せた!1番手しっかり頼むよ!」
「うん、任せて!山賊仕込みのパワーで全員叩き割ってやるよ!」
「ヒャヒャヒャッ!その威勢がいつまで続くか見ものだねぇ!ガザック、ブッ飛ばしちまいな!」
「おうよ!このガキ潰して、アイツらの出鼻を挫いてやらぁ!」
ビクトリア班先鋒を務めるクロムイエローの彩りの戦士ヴァネッサとマチルダ班先鋒の荒くれ者ガザック――荒々しい闘気を熱く滾らせる2人が勇んで対峙する。火花を散らす両軍の先鋒は得物の手斧を構え、真っ向からぶつかり合っていった。
「そぉらぁ!うりゃあ!!」
「クッ…負けるもんか…砕けろッ!!」
「な、何ぃッ!?」
クロムイエローの闘気を纏ったヴァネッサの戦斧が闘技場の舞台を砕き、沸き上がった武骨な石礫がガザックに襲い掛かる。ガザックが怯んだ隙に懐に飛び込み、荒々しい猛攻を仕掛けていった。
「うぅらああッ!ぶっ飛びな!!」
「ガフッ…ぐああっ!!」
「うおおああッ!オラオラオラオラァ!!」
『おおおぉぉ~…!!』
ヴァネッサが攻勢に立つに連れて闘技の舞台がじわじわと熱気を帯びていく。一触即発の雰囲気に沈黙していた観衆も次第に沸き上がり、瞬く間にスタンド全体へと飛び火していった。
「ヴァネッサ、カッコいい!トップバッターらしい勢いのある攻撃だよね!」
「アイラちゃんの言う通りね。彼女の鬼気迫る戦いぶりも私達の祖国スプルースの緑が育てたのね…素敵だわ!」
「そうだね、ミリアムさん。私もそうだけど、ヴァネッサも山賊として暴れていた頃より生き生きしてるよ。素敵な仲間もたくさんいるし、この軍に入って本当に良かった!」
「…ウン!コノ軍、友達、タクサン!ワタシモ、コノ軍、大好キ!!」
「ヴァネッサ、その調子でどんどん前に出ろ!敵に休む暇を与えるな!」
スプルース国で暴れていた蛮族ルーヴの声援を受けたヴァネッサはクロムイエローの闘気を全身に纏い、戦斧を思い切り降り下ろしていく。山賊として鍛えたパワーと左手に印されたクロムイエローの彩りの力が見事に融合していた。
「さ~て、覚悟しな!ヴァネッサ・アックス!」
「うっぐああぁぁッ!」
「そこまで!勝者、ヴァネッサ選手!」
『うおおおぉぉぉッ!!』
山賊仕込みの荒々しさを備えたヴァネッサの勇猛果敢な戦いぶりは戦いに目の肥えた観衆にも快く受け入れられた。熱い声援を味方に着けたビクトリア班は否応なしに意気を高めていた。
「ヴァネッサ、やるじゃないのさ!その調子でマチルダに一泡吹かせてやりな!」
「サンキュー!このままガンガン叩き割ってやるよ!さあ、次は誰!?」
「ケッ、さすがにただじゃ転ばねぇってかい…ハイマン、頼んだ!」
「はいよ。まあ、たぶんなんとかなる。安心して見てな!」
マチルダ班次鋒のハイマンが棍棒を携え、ヴァネッサに挑みかかる。クロムイエローの闘気を纏ったヴァネッサは意気揚々と迎え撃つ。力と力の正面衝突――かと思われたが――
「よっ、そぉらよっ!」
「フン…負けるもんかぁッ!」
「おおっと、隙あり…ほいっと!」
「うわわっ!?す、砂が…!」
不意に間合いを取るや否や、砂埃を巻き上げてヴァネッサの視界を遮る。マチルダの仲間である荒くれ者ハイマンは得物の棍棒だけでなく、ありとあらゆる手を使ってヴァネッサを翻弄してみせた。
「ほ~れ、足元がお留守だぜっと!」
「グッ…!この野郎…!」
「お前、良いもん持ってんな…ちょっと俺に貸してくんねぇかなぁ!?」
「何ッ!?か、返せ!返しやがれッ!!」
「まあ、そんなにカリカリすんなって。あとできっちり返してやるからよぉ!」
「グッ…うううっ…!」
続けざま不意討ちを見舞われ、得物の手斧も強奪されて丸腰にされたヴァネッサには為す術がない。先ほどの攻勢が嘘のように静まり、一方的に嬲られていった。
「そんじゃ、約束通り返してやるぜ…あらよっと!」
「グッ…クッソォォッ…!」
「そこまで!勝者、ハイマン選手!」
ヴァネッサは奮戦するものの、形振り構わぬハイマンの戦法に力及ばず、自身の得物である手斧を投げつけられて敗れた。仰向けに倒れたヴァネッサのもとに得物の手斧が転がり込み、寄り添うように持ち主の傍らに帰り着いた。
「ヒャヒャヒャッ!いい気味だねぇ!このまま一気に蹴散らしちまうよ!」
「クソッ、負けかぁ…ビクトリア、ゴメンね…イタタ…」
「チッ、やってくれるじゃないか…ヴァネッサ、お疲れさん。ポソニャ、気合い入れて行きなよ!」
「おう!ウチの毒をたっぷり味わわせてやるんで、そこんとこ、夜露死苦ゥ!」
ビクトリア班、選手交代。アマランスパープルの彩りを持つ毒の戦士ポソニャが闘技の舞台へと軽やかな足取りで飛び出していく。果たしてビクトリア班はマチルダ率いる破落戸軍団を退け、勝利を掴めるのか?一触即発の戦いは続く!
To Be Continued…