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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
153/330

第153話『彩りの争闘~vol.8~』

シリーズ第153話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国の真ん中に聳え立つ闘技場――その舞台の真ん中で朽葉色と茜色、2つの彩りの力が正面衝突していた。ステラ班の副将を務めるテラコッタの重騎士ガーベラは堂々たる様相で東方より来たる敵軍の大将ユキムラを迎え撃とうとしていた。



「よ~し、いよいよ大将さんの登場か!腕が鳴るな!」


「…このユキムラ、全身全霊をかけて貴女と戦い、そして勝つ!覚悟!!」


「おお、熱いねぇ!そんじゃ、こっちも本気以上の本気、200%の本気でいくぜぇ!!」



橙色の分厚い鎧に身を包み、朽葉色の紋様を耀かせて躍動するテラコッタの重騎士ガーベラ――かつては歓楽街の酒場で用心棒として勤めており、己の持つ力を持て余していたが、偶然にも勤め先の酒場に飲みに訪れたローザの目に留まり、直々のラブコールによって騎士に推薦された経歴の持ち主である。偶然の重なりによって騎士に成り上がったことに対して苦言を呈する者も少なからずいたが、ガーベラは己の武を以て騎士としての在るべき姿を示し、周囲の雑音を一掃してみせた。



一方、黒髪を短く切り、赤と白を基調とした甲冑に身を包み、得物の刀を構えたユキムラは敵軍を率いる東方の彩りの刀剣士だ。愚直なほど真面目な性格で普段は冷静でありながら、内に秘める熱意は凄まじく、ガーベラに対しても確かな闘志を向けていた。



「そぉら!くらえッ!!」


「それっ!はあッ!!」


「ぬうおおおっ!なんのこれしきぃぃッ!!」


「うわっ!?これがミツナリの術を破った胆力…ガーベラ殿、心身共に鍛えられている…!」



ガーベラの底知れぬ胆力に裏打ちされた堂々たる戦いは百戦錬磨の猛者であるユキムラを感嘆させ、同時に闘志に火を点ける。朽葉色と茜色、2つの彩りが交わる闘技の舞台は熱く煮え滾る闘気の坩堝と化していた。



「くらえ、ドラゴンファング!」


「クッ…次は我の番です…紅蓮斬!」


「うおっ!?クソッ、やはり大将さんは簡単には勝たせてくれないか…どうしたものか――」



ガーベラが距離を取ろうとした刹那、ユキムラの紅き甲冑が茜色の彩りを纏った火を吹く。ユキムラが懐から素早く取り出していたのは丹塗りの小さな銃だった。ガーベラは遠距離からの奇襲に錯乱するが、ユキムラは表情を全く変えていない。冷静沈着でありながらしたたかな戦術はガーベラを追い詰めていた。



「…隙あり!」


「何ッ!?し、しまった…!」


「そこだ!斬るッ!」


「がふっ…!!」


「力が、湧き出て来る…覚悟!」



不意を突かれたガーベラが精神を乱したのに合わせて防御体勢が崩れ、紅き甲冑の東方剣士ユキムラの左手に印された茜色の紋様が昂る彼女の闘志を体現するように赤々と燃え盛る。得物の刀が灼熱の炎を纏い、銃が爆炎を吹き上げる。ユキムラの2つの得物がガーベラに荒々しく牙を剥いた。



「受けよ、猛り狂う紅蓮の刃!朱雀爆炎剣(すざくばくえんけん)!!」


「うぐあああぁぁぁッ…!」


ガシャン!ガシャン!!


「…そこまで!勝者、ユキムラ選手!」



ガーベラはユキムラの振るう業火の剣に切り裂かれ、煤だらけになりながら仰向けに倒れた。ステラ班の仲間達が心配そうな様子で駆け寄るが、ガーベラは清々しい表情で天を仰いでいた。



「ガーベラ!あのユキムラとかいう奴、まっとえらい強さだがや…大丈夫か!?」


「ああ…すっかり燃え尽きたぜ…ユキムラの奴、予想以上の強さだった…ステラ、気を付けろ…」


「うむ…いよいよワシの出番じゃな。大将として、部屋頭として、横綱相撲を見せんといかんのう!」


「ステラ、頼むぞ。お前の闘魂で黒焦げにしてやりな!」


「ユキムラさん…近付けば剣、離れれば銃…厄介な相手ね。ステラ、どうか武運を…!」



仲間達が緊迫した表情で見送る中、大将ステラが闘技場の舞台という名の土俵へと踏み入る。一行の中核の1人として橙色の紋様を耀かせる角力格闘家は落ち着いたゆったりとした重々しい足取りでユキムラに歩み寄っていったが、その胸中には“大将”としての誇りと“横綱”としての闘志が確かに燃え盛っていた。



「よう、ユキムラさん…さすが見事な腕前じゃのう!」


「勿体無き御言葉、謹んで頂戴する。仲間との修行で鍛え上げたこの腕、貴女にも篤とお見せしよう!」


「おう!結びの一番、互いに全力でぶつかり合うとするかのう!気合い入れてかかって来んしゃい!!」


「承知した…ユキムラ、いざ参る!」



遂に雌雄を決する両軍の大将同士の一戦が幕を開ける。一際大きな緊張感が闘技場を支配する中、先に仕掛けたのはユキムラだった。ステラは動じることなくどっしりと構え、橙色の彩りの力を掌で練り上げ、一気に解き放った。



「でやああぁぁッ!」


「むうぅ…!龍鱗砕きじゃい!」


「ううっ!これは素晴らしい腕力ですね…ならば肉を斬らせて骨を断つまで…えいやああぁぁッ!!」


「グッ…ぬ、うぅ…うおおああぁぁぁッ!!」


「な、なんですって!?うわああっ!?」



ステラの筋肉の鎧がユキムラの刃を弾き飛ばし、彼女の体を後方へと吹き飛ばす。横綱ステラの猛々しい攻めは客席の仲間達を熱く燃え上がらせた。



「ステラ姉ちゃん、その調子や!ガンガンいったれ~!」


「アミィ、燃えてるじゃない!ステラの戦いってケレン味がないから見ていて気持ち良いよね!」


「エレンの言う通りッス!ステラの格闘技は豪快で剛胆、闘魂がメラメラ燃えてるッス~!」


「フッ、そうだな。ステラの愚直なほどに我武者羅な戦いぶりは前向きな気持ちにさせてくれる。どんなに劣勢でも打開出来るという想いを沸かせてくれるな」


「そうですわね、ヴィオお姉様♪ステラお姉様の戦う姿はとっても素敵ですもの!きっと私達の歩む道に光を灯してくださいますわ!!」



リーベの前向きな言葉にコレットは無邪気に頷き、リタは優しく微笑みながら親指を突き立てて同意を示す。仲間達の前向きな後押しを受けたステラは雄々しく己の武を見せつけていた。



「クッ…つ、強い…これほどの相手とは…!」


「ちゃんこ鍋と鉄砲柱で鍛えたワシの立ち合い、受け止めてみぃ!どっせえぇい!」


「来る…ならば迎え撃つまで!当たれ!!」



ユキムラはステラの熱い突進に対して冷静に構えを取り、躊躇う間も無く引き金を引く。茜色の彩りを纏った弾丸はステラの左肩を捉える。が、隆々に盛り上がった分厚い筋肉の鎧は弾丸を軽々と跳ね除けており、ステラは痛みさえ感じていない様子だった。



「ほっほう…お前さん、弾きとはなかなか粋じゃのう…だが、ワシの燃える闘魂はそんな鉄の塊1つでは止まらんわいッ!!」


「なっ!?そ、そんな馬鹿な…!」


「脇が甘ぁい!覚悟せぃ!どすこいどすこいどすこいどすこおおぉぉいッ!!」


「うっがああぁぁっ…!」


『うおおおおおお~ッ!!』



ユキムラに襲い掛かるステラの猛々しい張り手の応酬に比例するように客席のボルテージが上がっていく。ステラの背後に橙色の龍の像が浮かび上がり、彼女の闘志の象徴として荒々しい咆哮をあげていた。



「これが…ワシの全身全霊じゃ!龍王金剛力じゃ~いッ!!」


「うああぁぁぁッ!!!」


「…そこまで!勝者、ステラ選手!この試合、ステラ軍の勝利!!」


『うおおおぉぉぉ~ッ!!』



ステラは橙色の龍王の力を纏った両掌を叩き込み、刀剣と銃を得物とする紅き敵将ユキムラを討ち倒した。角力格闘術の真髄である心技体の融合は強きを尊ぶ蛮族の国の人々をも熱狂させる。ステラは天を仰いだユキムラのもとにゆっくりと歩み寄り、穏やかな表情で助け起こした。



「…ステラ殿…」


「ユキムラ…実に清々しい一番だったわい!ごっつぁんです!!」


「こちらこそ、ありがとうございます。勝ち負けという概念を越えた素晴らしい戦いでした…ステラ殿…今一度、握手を!」


「…おう!」


『おおおぉぉぉ~ッ!!』



ステラとユキムラ――彩りの戦士である両軍の大将が拍手と歓声に包まれながら握手を交わす。彩りの義勇軍の橙色、朽葉色、ウォーターメロンレッド、赤錆色、カーディナルレッド――東方の茜色、藤色、煤竹色、胆礬色、柳色――両軍合わせて10色の彩りがぶつかり合った一戦は2人の握手で始まり、2人の握手で終わった。清々しい一戦に惜しみ無い拍手が暫し送られていた。




To Be Continued…

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