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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
152/330

第152話『彩りの争闘~vol.7~』

シリーズ第152話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

強きを尊ぶ蛮族の国ビンニー国――その真ん中で2つの彩りの力が真っ向からぶつかり合っている。ステラ班の中堅サンディアは胸中に闘志を赤々と燃やしながら東方より来たる彩りの闘士である敵軍中堅――煤竹色の彩りの戦士キヨマサに対峙していた。



「くらえ!お前の鎧ごと粉々にしてやる!どりゃああぁぁッ!!」


「させないわ!この鎧には大切な仲間達の想い、フルウム国の人々の想い、そして私の彩りの力が詰まっているのよ!!」


「な、何ぃッ!?」


「相手が誰だろうと、断じて負けはしないわ…はああぁぁッ!!」


「ごふぅっ…!!」



サンディアは深緑と赤を基調にした分厚い鎧でキヨマサの荒々しい刃を受け止め、得物の槍を猛々しく振るって迎え撃つ。ウォーターメロンレッドの彩りを瑞々しく煌めかせ、己の誇りを体現する勇ましき武を振るうサンディアの姿を客席の仲間達も真摯な眼差しで見つめていた。



「うおお!サンディア、素晴らしき武勇でごわす!血沸き肉躍るでごわす!!」


「や~れやれ、相ッ変わらず熱いねぇ…こっちが火傷しちまいそうだよ…」


「アルフォンゾ、そりゃ当たり前よ。サンディアはこの闘技大会への参加をフルウムを発った時からすごく楽しみにしていたもの。思えば自警団の時から一番熱心に訓練していたのもサンディアだったわね…」


「うむ、エレナの申す通りよ。サンディアの武人たる姿、忍の者でもそうは居ない。真に有り難きこと也」


「行けぇ、サンディアアァァッ!頑張れぇ!負けないでぇぇッ!!」



自警団のリーダーを務めるドルチェが高らかに張り上げる声が闘技場全体に響く。フルウム国の平和を守ってきた自警団の仲間達の熱い声援を背に受け、サンディアは待ち焦がれていた闘技の舞台で力強く躍動する。ウォーターメロンレッドの重装兵サンディアは滾る闘志の赴くまま、得物の槍で猛々しくキヨマサを打ち据えていった。



「隙あり!そこだッ!」


「ぐぉわっ!よくもやりやがったなぁぁッ!!」


「クッ…うあああぁぁぁッ!!」



サンディアの猛攻に負けじとキヨマサも荒々しく戦斧を振り回し、煤竹色の彩りの気をサンディアに叩き付ける。互いに全力と全力をぶつけ合う戦いに闘技場は緊迫感に包まれていき、両軍の面々も客席の観衆も息を呑む――



その後、両者一歩も譲らないまま、暫し鍔迫り合いは続いた。サンディアもキヨマサも互いの彩りの力を一身に、一心に受け止め、傷だらけになりながらも闘志だけで立ち続けていた。



「ハァ、ハァ…ちくしょう…お前、やるじゃ、ねぇか…」


「貴女、こそ…ハァ、ハァ…」


「サンディア、とか言ったな…お前のような、武人と…これだけ本気で、戦えりゃ…ここまで来た甲斐が、あるってもんだ!!」


「武人、だなんて…私には…勿体ないわ…私も…貴女の武に、敬意を表するわ…キヨマサ!」


「ハァ、ハァ…そいつぁ、光栄なこった…まだ、勝負で語ろうぜ…もっと、もっと全力で来やがれってんだ!」



キヨマサの挑発に自ら乗ったサンディアは無言で食らい付いていく。突き動かされる両者の鬼気迫る一進一退の攻防を仲間達と観衆は固唾を呑んで見守る。サンディアは紅き闘気を全身に纏い、雌雄を決する一閃を叩き込もうとしていた。



「この一撃で、決める…!サンディア・リアマ・フルウムランサー!!」


「ウガアアアァァァッ…!!」


「そこまで!勝者、サンディア選手!」


『…うおおおぉぉぉ~ッ!!』


『サンディア、良いぞ良いぞ~!』


『キヨマサ、ナイスファイト~ッ!!』



沈黙していた観衆が封を切ったように声を発し、一際大きな拍手と歓声が闘技場を包む。サンディアとキヨマサ、両軍の中堅同士が己の武を遺憾無く見せつけ、全力を以て闘技の舞台で示したことを讃える拍手と歓声は暫し続いた。



「ぃよっしゃああぁぁッ!!サンディア、よくやったぞッ!!」


「おう、見事な一番だったぞ!サンディア、こいつは大金星じゃぞい!!」


「ガーベラ、ステラ、ありがとう…ハァ、ハァ…東方の戦士、強いわ…これほどの、相手だなんて…」


「ユキムラ、みんな、悪りぃな…クソッ、悔しいなぁ…」


「キヨマサ、素晴らしい戦いでした。敗れはしましたが、垣根無しに良い勝負だったと思いますよ。キヨマサもそう思うでしょう?」


「ハァ、ハァ…そうだな…負けたけど、気持ち良い勝負、だったぜ…っ!?す、砂が…誰だ!?」



倒れるキヨマサに地を蹴って砂埃を浴びせる者が後方から現れる。藤色の紋様を持つ敵軍副将ミツナリだった。キヨマサとは犬猿の仲であり、互いに“戦馬鹿”、“頭でっかち”と呼び合い、憎まれ口を叩き合っている。彼女は呆れたような表情で闘技の舞台に倒れたキヨマサを見下ろしていた。



「やれやれ、仕方ないな。私が直々にお前の尻拭いをしてやるからありがたく思え、戦馬鹿」


「この、頭でっかちが…テメェ、覚えてろよ…」


「ミツナリ…お、お願いします…」



戦いの舞台に踏み出す敵軍副将ミツナリはこれまでの3人とは異なる佇まいである。雪のように白い肌に漆黒の長い髪、薄紫の生地に淡い桃色の花柄が一面に描かれた着物を着用し、不可思議な文字が記された札を得物として携えている。およそ戦いの舞台には似つかわしくないように見えるが、妖しく煌めく藤色の紋様はミツナリの確かな闘志を体現していた。



「サンディア殿…貴女、あの戦馬鹿を倒したということは相当の手練れとお見受けした。このミツナリ、たとえ疲弊した相手であろうと全力でお相手致す!」


「…ええ、手加減は不要よ。貴女の全力、見せてください…ミツナリ!」


「その言葉を待っておりました。いざ、尋常に勝負!」



戦いの火蓋が切られるも、敵軍副将ミツナリは静かに闘志を燻らせながらじっくりと有利な間合いを探る。一方のサンディアは疲弊しているとは思えない躍動を見せていた。



「でやああぁぁッ!」


「クッ…やはりあの戦馬鹿を倒しただけのことはある…ミツナリ、いざ参る!」


「ええ、ここは強さで語る場所よ!来るなら来なさい!」



勇猛な口上で己を奮い立たせてミツナリを迎え撃つが、キヨマサとの熱戦で消耗していたサンディアは次第に劣勢に立たされる。キヨマサの振るっていた荒々しい剛の彩りとは対照的なミツナリの妖しい柔の彩りはじわじわとサンディアを苦しめていった。



「我が彩りの護符、受けてみよ…怨毒符!」


「ううっ…こ、この術は!?体が重い…!」


「隙あり!幽玄符!」


「クッ…ううっ…!!」



ミツナリは藤色の彩りを纏った妖しい護符術を以て攻勢に立っていく。次第に全身を包んでいく藤色の彩りの力は妖気が混じっていた。



「…御覚悟願おう。玄武煉獄符(げんぶれんごくふ)!!」


「うあああッ…不覚、だわ…!」


「そこまで!勝者、ミツナリ選手!」



ミツナリは華麗に舞うように得物の護符を操り、ステラ班の中堅サンディアを退けた。強さと美しさを併せ持ったミツナリの戦いは観衆を魅了しており、僅かな時間差を置いて拍手が沸き起こった。



「サンディア、お疲れさん……大丈夫かい?」


「リベラ、さん…ごめんなさい…今の私は、ここまでだった…もっと、腕を磨かないと…」


「サンディア、素晴らしい戦いだったぞ!あとはこのガーベラに任せておけ!どっせえぇい!!」


「よぉし!さすがはワシら一門の大関、四股の踏み方も様になってきたのう!しっかり頼むぞい!」



橙色の分厚い鎧に身を包んだテラコッタの重騎士ガーベラは地をドスンと踏み鳴らす。テラコッタ領ローザ廷にてステラと相対し、角力格闘術の真髄である“心技体の融合”を身を以て味わい、自身も我流の角力格闘術を得物とするようになった。大関と称されるステラ班副将――朽葉色の紋様を持つ重装の騎士は勇んでミツナリに向かい合った。



「我が名はテラコッタの騎士ガーベラ!ここに参上ッ!!」


「騎士…以前読んだ文献によると、西方の国々に於いて主君に仕えて戦う者達、だったか…?」


「ん~、まあ、間違いではないな。だがよぉ、“信じ合う仲間達のために戦う”っていう文言が抜けてるぜぇ!?」


「信じ合う仲間、か…では、騎士の力とは如何ほどか…このミツナリが拝見致す!!」



両軍の副将同士が真っ向からぶつかり合い、赤茶色の煉瓦と薄茶色の舞台の闘技場を鮮やかな彩りに染める。互いに昂る闘志に委ねるままに己の武を見せつけていった。



「いくぞ、怨毒符!」


「ぐおっ…これがサンディアを蝕んだ妖術か…ぬうっ…なんのこれしきぃぃッ!!」


「な、何ッ!?」


「これくらいの妖術なら…気合いと根性でなんとかなる…うおらああぁぁッ!!」


「ぐああっ…な、なんという剛力…あの戦馬鹿に引けを取らないとは…!」



ガーベラはミツナリがキヨマサに匹敵すると太鼓判を押すほどの剛力を見せつけ、一気呵成とばかりに畳み掛けていく。テラコッタの騎士達もガーベラの攻勢に自ずと沸き立っていた。



「見事だ、ガーベラ!まさかサンディア殿を蝕んだ術を破ってみせるとは…」


「…ガーベラ様の胆力と精神力は並ではない。心身共に打たれ強さは随一だと思うわ…」


「そうね、ツィガレ。元々ガーベラ様はお強い方だけど、ステラ様との出会いで更に強くなったように見えるわ。きっとこれもベガ様が望まれたことなのね」


「ガーベラ様、行け行け~ぇ!」



菓騎士ハイビスの声援に続き、仲間達も次々に熱い声援でガーベラの背を押していく。左手に印された朽葉色の紋様が耀き、猛々しい彩りの力を紡いでいった。



「我が祖国の闘志の猛り、その身に焼き付けろ!テラコッタ・ドラゴンレイジ!!」


「クッ…!み、見事…」


「そこまで!勝者、ガーベラ選手!」



ガーベラは無言のまま拳を振り上げ、ステラ班の面々と客席の仲間達に堂々と勝利を誇示する。一方、敵陣ではガーベラに敗れ、倒れたミツナリに対し、キヨマサが憎まれ口を叩いていた。



「や~いや~い!負けてやんの~!頭でっかち~!」


「その、下品な言い草は、なんだ…この、腐れ戦馬鹿が…」


「お2人とも、仲違いはそこまでにしてください……我こそはユキムラ!いざ参るッ!!」



遂に敵軍の大将ユキムラが戦いの舞台へと駆けていった。茜色の紋様はユキムラの胸に燃える闘志を体現するように爛々と耀いている。果たしてステラ班は紅き東方の戦士ユキムラを打ち倒し、勝利を掴むことが出来るのだろうか?




To Be Continued…

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