第151話『彩りの争闘~vol.6~』
シリーズ第151話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!
ビンニー国の闘技大会の舞台で彩りの力を振るい、躍動する一行。己の武を誇り前へ前へと突き進むステラ班が相対するのは茜色の彩りを持つユキムラ率いる東方より来たる彩りの戦士5人組だった。焔紅の彩りの戦士であるステラ班の先鋒リベラは柳色の戦士である敵軍先鋒テルモトを退けたものの、1戦交えた時点で既に多くの傷を負い、敵軍次鋒との一戦を前に疲れ果てていた。
「チッ、揃いも揃って手強そうな奴だ…だが、この力で燃え尽きさせてやる…!」
「ありゃ、どうしたんスか~?そんな調子じゃオレっちが勝っちゃうッスよ!」
「チッ、クソガキが…やれるもんならやってみやがれ!!」
青緑の髪を無造作に伸ばし、水色の甲冑を身に纏い、胆礬色の紋様を左手の甲に煌めかせる敵軍次鋒マサノリが薙刀を振り回しながらリベラの懐に飛び込んでいく。好戦的な様相からは無邪気さと表裏一体になった残酷さが滲み出ていた。
「てやぁ!それそれぇッ!!」
「クソッ…うおぉら!」
「ほいほい~♪あらよっと!」
「ウガッ…!このガキィィッ!!」
マサノリは軽快に飛び上がり、リベラの背中に蹴りを見舞う。対するリベラも即座に立ち上がって奮戦するものの、柳色の戦士テルモトとの一戦での疲労は隠せない。焔の彩りの戦士の動きは明らかに重くなっており、じわじわと守勢に立たされていた。
「燃えろっ!ヒートストローク!!」
「甘いね~♪波濤循!」
「何ッ!?か、かき消された…だと!?」
「エヘヘ~♪こりゃ勝ちは決まりかな?このままガンガンいっちゃうよ~!」
マサノリは蒼き盾で焔の一閃をかき消し、胸を張って優位を誇示してみせる。勝利を確信した東方の闘士が紡ぐ胆礬色の閃光が闘技の舞台を蒼く染め、蒼き龍となってリベラに容赦なく襲い掛かった。
「オレっち本気出すよ~ん!蒼龍波濤刃!!」
「グハッ…ちくしょおおぉぉ…!」
「そこまで!勝者、マサノリ選手!」
リベラは東方で培われた蒼き刃に切り裂かれ、奮戦虚しく敗れてしまった。倒れ伏したリベラに駆け寄るステラ班の面々は東方育ちの彩りの力を目の当たりにし、闘志を昂らせると同時に気を引き締めていた。
「リベラ、惜しかったのう…だが、良い勝負だったわい!」
「ステラ、みんな、悪りぃな…アイツら、間違いなく全員手強い…気を付けろよ…」
「ふぅ…次はわっちの出番けぇ…アイツにわっちの毒をたっぷり喰らわしてやるがや!」
「おう、その意気じゃ!ドゥイヤオ、頼むぞい!」
ステラ班の次鋒を務めるのは赤錆色の毒の戦士ドゥイヤオ。毒の戦士、ビアリーの家臣として一行に加わったが、ドゥイヤオの蹴り技に角力格闘術の資質を見出だしたステラと稽古を通して親しくなり、互いの格闘術を磨き合う“同志”として絆を紡いでいた。赤錆色の戦士は毒氣を帯びたレガースを両脚に装備し、マサノリに対峙していた。
「へぇ、蹴りで戦う格闘家さんかい?それに見たところ強そうじゃん!」
「ケッ、それだけじゃねぇがや!わっちには毒の力がある…この毒でギタギタにしてやるがや!!」
「おお、怖い怖い!でも、オレっちだって負けないからね~!」
ドゥイヤオとマサノリ、紅き毒と蒼き刃が正面衝突し、妖しい紫の閃光が紡がれる。軽快な動きで魅せる両軍の次鋒は彩りの力を闘技の舞台の上で嬉々として解き放った。
「そぉら、くらえっ!波濤衝!」
「ケッ、隙ありだぎゃ!ロトンレッグだがや!」
「うおっと!?危な~…さっきはなんとか勝てたけど、あんまり馬鹿やってる暇はないかも…」
マサノリは一瞬の不意を突かれたものの、間一髪で直撃は免れた。ドゥイヤオは後方へと跳んで一度マサノリから距離を置いていたが、顔には不敵な笑みを浮かべていた。
「ん…?な、なんか気持ち悪くなってきた…オレっち、酒飲み過ぎたか…?いや、修行中だから酒を飲んだ覚えも無いし…でも、酒は百薬の長っていう言葉があるし――」
「ケケケケッ、そりゃ酒じゃなくてわっちの毒だがや!百薬の長なんてチャチなもんじゃねぇ、テメェをズタボロにする闇の牙だがや!」
「マ、マジか!?そういや、体が動かなくなってきたかも…!」
「ケケケッ、覚悟しやがれ!うおぉらああ!」
「あがががっ…!!」
ドゥイヤオは自らの毒の彩りである赤錆色の気を昂らせ、好機とばかりに一気に畳み掛ける。鈍くなっていた足元を払い、仰向けに倒れたマサノリを不良格闘術を織り混ぜて乱暴に踏みつける。端から見ると粗雑で洗練を欠いているように見えるが、当のドゥイヤオは全く意に介さない。共に歩む毒の戦士達もドゥイヤオの闘志を感じ取り、紅き熱気を帯びながら歓声を送っていた。
「ドゥイヤオ、超イケてる~!超ノリノリじゃ~ん!!」
「フフフッ、トックさん、ご機嫌ですね。これもステラさんと紡ぐ絆の力、ということでしょうか…」
「そうですね、フェトルさん。毒の精霊ウェネーヌよ、我らにもたらしてくださる御加護に感謝致します…」
「ドゥイヤオ…貴女の彩り、美しく輝いてるわ。そのままイかせてしまいなさい…」
主君である妖艶な闇の皇女ビアリーの言葉に背を押され、ドゥイヤオは赤錆色の彩りを昂らせる。彩りの毒を纏わせた両脚を弧を描くように蹴り上げ、続けて渦を巻くように軽やかに振り抜いていった。
「オラァ!ボッコボコにしてやるがや!ロトンレッグ・コンビネーション!!」
「ぎにゃああああッ!!」
「そこまで!勝者、ドゥイヤオ選手!」
『おおおおぉぉぉ~!!』
「ケケケッ!わっちを甘く見るとこうなるんだがや!毒の力、思い知ったか!ケケケケケッッ!!」
ドゥイヤオは赤錆色の彩りを昂らせ、彩りの毒でマサノリを蝕み、退けた。赤錆色の戦士は歓声に包まれながら己の武を誇り、次なる相手を迎え撃つ意気を高めていた。
「ドゥイヤオ、見事なもんじゃのう!蹴手繰りに内掛けに蹴り返し、良い足技じゃい!」
「おう、任せとけ!わっちの毒の力、奴らの骨身に染み込ませてやるがや!ケケケケケッ!!」
「よっしゃ、待ってました!このキヨマサ様の出番だぜぇ!」
「フン、血気盛んなことだな。せいぜい私の手を煩わせるなよ、戦馬鹿!」
「うるせぇ、頭でっかち!どうせお前に出番はねぇんだから、そこで指でも咥えてろ!」
「まあまあ、2人とも仲違いせずに…キヨマサ、抜かり無く頼みますよ!」
煤竹色の彩りを燻らせる敵軍中堅キヨマサは副将ミツナリと悪態を吐き合いながら戦いの舞台に勇んで踏み入る。武器である巨斧を荒々しく降り下ろし、地鳴りを巻き起こしてドゥイヤオを威嚇してきた。
「そんじゃ、挨拶代わりに…そぉらよっとぉ!」
「うおぉ!?たいした怪力だがや…まあ、その方が挑み甲斐があるってもんだがや!」
「そう来なくっちゃなあ!早く始めようじゃねぇか!」
ドゥイヤオとキヨマサは互いに闘志を燃やし、真っ向からぶつかり合う。赤々と燃え盛る2人の闘志を体現する彩りの力が戦いの舞台で荒々しく衝突した。
「でやぁ!うおりゃああッ!!」
「ケケッ、そりゃあ!ロトンレッグだがや――」
「させるかよぉ!吹っ飛びなッ!!」
煤竹色の戦士キヨマサは闘技の舞台で堂々と怪力を見せつける。明るい茶色の短髪、着崩した銀色の甲冑の上に毛皮を羽織って巨大な戦斧を振るう姿はさながら蛮族か荒くれ者のようだ。
「クソッ、この怪力、絶対ヤバいがや…どうしたもんか――」
「ヘヘッ、隙だらけだぜ!うおぉらぁぁ!!」
「うぐぅッ…!」
キヨマサは猛烈な突進で乱暴にドゥイヤオを撥ね飛ばし、無防備な状態に追い込む。煤竹色の気を戦斧の刃に集束させ、闘志に委ねるままに思い切り降り下ろしていった。
「この刃で粉々に砕いてやるぜぇ!白虎震撃破!!」
「うっぎゃああぁぁッ!!」
「そこまで!勝者、キヨマサ選手!」
『うおおおぉぉぉッ!!』
ステラ班次鋒ドゥイヤオは敵軍中堅キヨマサの怪力に屈し、吹き飛ばされて倒れ伏した。あまりに荒々しい猛攻で撥ね飛ばされたため、駆け寄るステラ班の面々の表情には少なからず不安が滲んでいた。
「ドゥイヤオ、大丈夫か!?しっかりせぇ!」
「な、なんとか…大丈夫だがや…アイツ、すげぇ怪力、だがや…」
「テルモトもマサノリもキヨマサも手練れだし、残る2人も間違いなく強いだろうな…ヤバいかもな…」
「その方が絶対燃えるわよ!自警団とこの軍で鍛えた成果を見せつけてやるわ!」
「サンディア、頼むぞ!お前の熱い闘志、アイツに見せてやれ!」
フルウム国の重装兵サンディアはウォーターメロンレッドの彩りを爛々と煌めかせ、胸中に燻っていた闘志を一気に暴発させる。得物の槍を構え、戦士として堂々と胸を張って闘技の舞台を踏み締めていた。
「私はサンディア!我が武をその身に焼き付けてみせるわ!覚悟しなさい!」
「ほう、たいした自信だな。それなら言葉じゃなくて戦いで語ろうぜ!」
「望むところよ!いざ勝負!!」
ウォーターメロンレッドの戦士サンディアと煤竹色の戦士キヨマサ、両軍の中堅同士が熱き闘志を爛々と昂らせ、闘技場全体を夥しい熱気が包む。果たしてステラ班は手練れ揃いのユキムラ班に打ち勝てるのか?彩りの力が真っ向から衝突する熱き戦いはまだまだ続く!
To Be Continued…