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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter2:アルニラム篇
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第15話『裂かれた愛』

シリーズ第15話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

アズーロ合衆国ブルー州にてブルー・ストリート・フェスに参加し、小さな武勇伝を残したモニカ達一行は改めてブルー州郊外の国際海洋管理機構へと赴いた。



「すみません。ガンメタル島に行きたいのですが…」


「畏まりました。では、こちらの申請書に必要事項を記入し、捺印の上、ご提出ください」


「な、捺印!?印鑑なんて持ってないです…どうしましょう?」


「では、私に任せてくださいませ。少々お待ちください…」



ルーシーがインテリフォンを何度か操作すると黒服にサングラスのSPがどこからともなく現れ、印鑑を差し出す。ルーシーはサラサラと記入を済ませると捺印した申請書を持って颯爽と受け付けへ向かって行った。



「済みましたよ♪許可証はお昼過ぎ頃に発行されるので、それを持って隣接する港から出る船に乗ることになりますわ」


「ルーシー…ありがとうございます。助かりました」


「よし、じゃあまだ時間あるな。この辺りで昼でも食べて時間潰そうぜ」


「賛成!私、ハンバーガーが食べたいな〜!アズーロ合衆国は本場だから、きっと美味しいね♪」


「そうですね。では、コレットの提案通りハンバーガーにしましょう。行きましょうか!」


「……」


「姉貴…大丈夫?具合でも悪い?それともやっぱり…」


「大丈夫だよ♪私にはトリッシュがいてくれるから…」


「姉貴…(そうだ…姉貴はあのときからずっと不安で…アタシが守らなきゃ…)」



その同じ頃、魔空間──何処かの異次元に在る、闇と暗黒が支配する世界──その暗き闇に深い紫の影を帯びて浮かぶ不思議な水晶にモニカ達の姿が映し出されている。その周りには丈の長いローブを着た男達が立っていた。



「ふむ…奴等は海へ出ようとしているか…」


「グウゥ……アルニラム…祝福ノ証…手ニスルカ…?」


「そうだねぇ…アルニラムのことだし、勝手にやっちゃうんじゃないの〜?」


「それもあり得る話だな…せいぜい私の楽しみを取らないようにして欲しいものだ」



一行は昼食を摂り、管理機構に隣接する港に用意された船に乗り込む。魔族の研究をする者──実際に存在するか否かさえもわからない救いの手に魔の糸口を捜し求め、機械仕掛けの孤島へと臨むところだ。



「じゃあ、出港するよ。一度南部のルーフス国で停泊して、ガンメタル島には明日午前に到着するからね」


「わかりました。では、ガンメタル島へ向かいしましょう!」



青々と広がるミロリー海の大海原をやや無機質な灰色の船体が切り裂いていく。停泊地である南国ルーフス国を目指し、穏やかな潮風の中を歩くような速度でゆったりと進んでいった。



「わあ〜!ミロリー海や!潮風が気持ちええなぁ〜♪」


「凄い…海の神々と精霊が私達を守ってくださるよう…大自然の力強い息吹を感じるわ」


「ねえ、トリッシュ…肩に寄りかかってもいい?」


「ん?ああ、いいよ…ほら」


「あら…ウフフッ♪お二人はすごく仲良しですわね。互いに愛し合い、身も心も寄り添い合う…エレンさんも素敵だと思いません?」


「そうだね…あんなに露骨にイチャイチャされるとちょっと目のやり場に困るけど、だいぶ慣れてきたよ。まったく、あの娘達は…」


「トリッシュ、私…2人でこうしていられて幸せだよ♪」


「ヘヘヘッ、姉貴…アタシ達、ずっと一緒だよな。いつまでだって2人でこうしていよう…」



ところが、ブルー州の姿が見えなくなりしばらく経った頃、穏やかだったミロリー海が少し荒れ始める。気付けば鈍色の雨雲が空を覆い隠していた。



「天候が悪くなってきましたね。ルーフス国に着くまでに止むといいのですが…」


「チェッ…俺、海見ながら船旅するの楽しみにしてたのになぁ…雨だなんてついてないぜ…」


「うむ…こればかりは仕方なかろう。お天道様が見えんことには──」


「うわあぁあっ!」



船乗りの悲鳴を聞き付け、モニカ達は飛び出す。甲板に駆けると雨が音もなく降り続く中、透き通った青が彼女達の眼に飛び込む。アルニラムだった。



「ごきげんよう。祝福の証の戦士さん♪」


「貴女は!アルニラム!」


「あら、覚えて頂けてたなんて光栄だわ♪今日は機嫌が良いから私の望みを叶えてくれたらすぐに帰ってあげるわね♪」


「望みですって…それは何かしら?返答如何によっては容赦致しませんわよ!」


「簡単なことよ。神々の生み出した“水”と“氷”の力…譲って頂けるかしら?私の理想を叶えるためには絶対に必要なの」


「ハッ!そう言われて“はい、どうぞ♪”なんて言うと思ってンのかい!思い上がりもたいがいにしときな!」


「ビクトリアの言う通りッス!魔族なんぞ闘魂燃ゆる正義の拳で打ちのめしてやるッス〜!」


「そう…残念ね。あまり手荒な真似はしたくなかったんだけど…仕方ないわね。力尽くで頂くとしましょう!」


「みんな、来ますよ!ルーシーとカタリナを守るのです!!」



皆は散り散りになって甲板に陣形をとる。アルニラムの標的であるルーシーとカタリナを囲むような格好だ。アイボリー国で遭遇した魚人の魔物の群れが次々と海から船へ這い出る。モニカ達は次々にその力を以て立ち向かっていった。



「ブライトエッジ!」


「ストーンフォールズ!」


「バグズバンプス!」


「ヌヴアァアッ!」


「ハドウガッツッス〜!」


「龍尾返しじゃ〜い!」


「ヴオォオォッ!」


「フォトン!」


「メタルスピナー!」


「ダークスフィア!」


「ギアァアァッ!」


「ふ〜ん、やっぱり一筋縄ではいかないようね。特別に直々に相手して差し上げるわ!」


「させませんわ!貴女達はわたくし達の使命には抗えない!」


「ルーシー!前に出ちゃダメだ!俺達に任せろ──」


「オラアァアァッ!!」



アルニラムが三ツ又の銛を握り、飛び掛かってくる。仲間と敵の交戦の波を掻き分け、彼女に真っ先に挑みかかるのはトリッシュだった。トリッシュの槍とアルニラムの銛がぶつかり合い、甲高い金属音が鳴り響く。



「でぇいや!オオラァァッ!!」


「フフン…勢いと力はあるけど…粗いわね。それじゃ無理よ。私には勝てない…」


「クッ…こンの野郎おぉッ!!」



トリッシュは祝福の使命に突き動かされるがまま、やや乱暴にアルニラムに向かって槍を振るう。左手に印された紋様が黄色い煌めきを放ち、猛々しい雷の力を炸裂させた。



「サンダーストリーム!!」



雷撃がアルニラムの青い体を捉える。バチバチと音を立て、黄色い閃光を辺りに撒き散らした。閃光が消えるとそこにアルニラムの姿は無くなっている。



「よっしゃあ!どうだ!これがアタシの力…アタシの覚悟だ!!」


「トリッシュさん…愛と友情を以て悪を討つ…勇ましくて素敵でしたわ」


「フッ、アンタって奴は…カタリナが絡むとすぐこれなんだから──」


「あら…まだ誰も帰るなんて言ってないわよ?」



甲板に落ちた雨粒と海水がたちまち集束し、真っ青な人型を形作る。気付くとアルニラムが甲板の中央、カタリナの真正面に立っていた。予期せぬ状況にモニカ達は驚きを隠せない。



「そんな…カタリナッ!」


「フフフ…観念なさい。捕らえよ!ハイドラルケージ!!」


「スプラッシュガン!」



ルーシーの紋様が水色に煌めき、アルニラムが放った水泡へ向けて水流の束が放たれる。勢い良く水泡を捉えるも、虚しく打ち消され──水泡は無情にもカタリナを捉えてしまった──



「きゃあああぁぁぁッ!!」


「あっ…!!姉貴いぃッ!!」



カタリナの体を水泡が包み込んだ。彼女を包む水泡は檻となり、青き紋様の煌めきを捕えた。



「クソッ…カタリナ、今助けるからな!シャドウバレット!」


「ウインドカッター!」


「ファイアボール!」


「リーフエッジ!」



カタリナを救うべく、皆が彩られた力を振るい、青々とした檻を撃ち破ろうとする。が、水泡の檻はその力を全て受け止め吸収してしまい、傷1つ付かない。



「何をしても無駄よ。我が魔の水泡は決して破れることはないわ。フフフ…」


『イヤッ…そんな…助けてッ!!』


「さて…“水”を獲り損なったのは残念だけど、“氷”は頂いたから今日のところは良しとするわ」


「テメェ…!姉貴を返せ!ブッ飛ばされてぇのかコラァ!!」


「あらあら…そんな乱暴な物言いをしていると、愛するお姉ちゃんの命が保証出来なくなるわよ?」


「クッ…!ダメだ!姉貴を見捨てるなんて出来るもんか!オラァアァアッ!!」


「無駄よ!メイルシュトローム!」



アルニラムの足元に群青色の魔方陣が現れ、彼女の力を解き放つ。激しい渦潮が巻き上がり、トリッシュの体を怒濤が包み込む。



「あぁあぁあッ!!」


『トリッシュ!!止めて…私の大切な人が…』



最愛の妹トリッシュが怒濤に討たれる姿を目の当たりにさせられたカタリナが哀しみの涙を流す。しかし、その涙も流れ落ちることはない。ただ、水泡に溶けていくばかりである。



「フフフ…美しき姉妹愛ね。可愛いお姉ちゃんに免じて命は取らないであげる。もうお別れは済んだかしら?」


「グウッ…渡す…もんか…姉貴…姉、貴…」


「あら…もう言葉が見つからないのね。では、今日はこれで失礼するわ。ごきげんよう。じゃあ…大好きなお姉ちゃんともお別れね。私が頂いていくわ。フフフ…」


『トリッシュ!トリッシュ!!助けて〜ッ!!!』


「姉貴いぃいぃいぃいッ!!!」



怒濤に討たれ、甲板に伏していたトリッシュの眼前でカタリナを捕えた水泡の檻がアルニラムと共に海へと沈む。青黒い海底へ消えていく光景にモニカ達は呆然と立ち尽くしていた。彼女達の耳には強くなった雨が甲板に打ち付ける音だけが虚しく響く。



「グッ…ワシらが束になってかすり傷すら付けられんとは…」


「カ…カタリナ姉ちゃんが…なんでや…」


「救えなかった…カタリナさん…そんな…」


「トリッシュ…きっとカタリナは──」




「姉貴…姉貴ッ!!うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」




鈍色の曇り空に愛を引き裂かれたトリッシュの悲痛な叫びだけがこだまする。神々に託された青き彩りの力が魔濤隊隊長アルニラムの魔の手に堕ちてしまった。最愛の姉カタリナが海へと沈み、絶望の淵へと堕ちたトリッシュ。1人欠けた一行を一路ルーフス国へ、そしてその先に待つガンメタル島へと誘うミロリー海の潮風が俯くトリッシュの頬を撫でる。そこに伝うは雨粒か、涙か……




To Be Continued…

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