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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
149/330

第149話『彩りの争闘~vol.4~』

シリーズ第149話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族四天王が統べるビンニー国の闘技場で躍動する彩りの義勇軍一行。リデル班の前にライムグリーンの紋様を持つ少女タンガが敵軍大将として立ちはだかり、ひた隠しにしていた牙を容赦無く剥いていた。相対するリデル班の副将ミリアムは動じることなく、テラコッタの葉騎士ミュゲの彩りが生み出した森の草むらを踏み締め、凛とした表情で闘技の舞台に立っていた。



「…どうも。悪いけど、ミュゲの敵を討たせてもらうわ!」


「はい。でも、私だって簡単に負けはしませんよ!必ずやお兄様方の戦いに報いてみせます!」


「フフッ、たいした自信ね。それならこれは挨拶代わりよ…アルヴェージャ・スプラッシュ!」



リデル班の副将ミリアムはエメラルドグリーンの彩りを耀かせ、敵軍大将タンガを毅然とした態度で迎え撃つ。タンガは先制攻撃にも慌てることなくヒラリと身をかわし、空中で彩りの気を集束させて解き放った。



「ベスティヨル・バースト!」


「クッ…!こ、こうなったら…!」


「隠れちゃいましたか…でも、逃がしませんよ!」


(この地形、スプルース国の保全林に似てる…これならきっと、出来るはず…!)



ミリアムはミュゲの彩りの力で生い茂った樹の陰に身を潜め、策を巡らせる。ミリアムを彩りの森の奥へ奥へと追走し、じわじわと追い詰めていくタンガのしたたかな姿は皆を驚嘆させた。



「タ、タンガたん…強えぇ…」


「俺達が知らない間に立派になってたんだな…昔はあんなに泣き虫だったのにな…」


「ああ…成長を知らずに小さいままだって勘違いしていた…俺達は過保護だったのかもしれないな…」


「そうだな、グリヨン。頑張れ…負けるな、タンガ!!」



黒茶色の装束を着た四つ子の兄弟は“戦士”として堂々と躍動する末妹に驚きを隠せない。確かな成長を悟った四つ子の兄達は自軍の大将として、彩りの戦士として、生き生きと躍動する妹の姿に声援を送った。



「ハァ、ハァ…クッ、近付いてくる…!」


「逃げ回っていられるのも今のうちですよ!逃がしませんッ!」


(まだ…まだ早いわ。まだ仕掛け時ではない…まだ、耐えないと…!)



ミリアムは更に深くへと逃げ込み、タンガは追従して彩りの森の深淵へと踏み入っていく。リデル班の仲間達は瞬く間に守勢に立たされる一方のミリアムを案じるばかりであった。



「ミリアムさん、追いかけ回されてるじゃん…ちょっとピンチだよ~…」


「あれだな~…チビッ子なのに強敵なんだな、うん…」


「あ、あれ…?タンガさんの様子がおかしいです…」


「ええっ!?こ、これはいったい…!?」



葉騎士ミュゲは目の前の光景に眼を見開く。仲間達の心配を尻目にエメラルドグリーンの彩りの結界が辺り一面に張り巡らされ、闘技の舞台で凛と煌めいていた。ミリアムがニヤリと笑みを含ませた表情になり、人差し指を前に突き出して勝ち誇った。



「動けない…こ、これは…!?」


「フフッ、逃げるフリをして結界を張っていたのに気付かなかったみたいね…さあ、覚悟は良いかしら?私の力、たっぷり味わわせて差し上げるわよ!」


「う、ううっ…!」



ミュゲの彩りの力が生み出した春緑(スプリンググリーン)の森林がミリアムの彩りをより一層輝かせる。緑に潜む触脚を伸ばして仇為す者を捕らえ、両掌で練り上げた彩りのエネルギーを一気に叩き付けた。



「半径20メートル、貴女の動きは手に取るように探知出来る…アルヴェージャ・スプラッシュウウウッ!!」


「ううああっ…!!」



エメラルドグリーンの閃光がタンガを捉え、彩りの気弾が降り注ぐ。葉騎士ミュゲの彩りが紡ぐ森の木々の葉の隙間から炸裂の衝撃波が溢れる様相は木漏れ日と表現するにはあまりに激しすぎる。ミリアムは勝利を確信し、リデル達に向けて振り返って親指を突き立てる。



が――仲間達の表情は引きつり、戦慄に歪んでいた。仲間の様相を見て怪訝な表情に変わったミリアムが気付いた頃には既に遅く、タンガは全身にライムグリーンのオーラを纏い、狂気さえ感じられる高揚感に爛々と昂り、沸々と沸き立つ闘志を滾らせていた。



「すごい…私の中にこんなに力が眠っていたなんて…」


「えっ!?そ、そんなバカな…!?」


「貴女の大自然の力、私の蛹を破ってくださった…感謝します…フフフッ…!」


「そんな…嘘でしょう…!?」



エメラルドグリーンの彩りを糧として食らったタンガの背にはパステルグリーンの蝶のような羽が生えていた。軽やかな疾駆で翻弄し、両掌に構えた小盾の格闘で叩き伏せた。



「本気で行きますよ!ハシャラート・コンビネーション!!」


「うああぁぁッ…!」


「や、やっと見つけた…そこまで!勝者、タンガ選手!」



緑を糧として蛹を突き破り、檬緑(ライムグリーン)の羽で華麗に舞い飛ぶタンガは審判が追い付くのもやっとというほどの駿足を見せつけ、リデル班の副将ミリアムを退けた。駆け寄るリデル班の面々はミリアムの勝利を確信した矢先の敵将タンガの逆襲に驚きを禁じ得なかった。



「ごめんなさい…1発で仕留められるって思ってた…油断したわ…」


「ミリアムさんがオイラ達を倒した技、簡単に跳ね返したんだな…うん…」


「いよいよ大将同士だね…!リデル、頑張って~!」


「リデルさん…御武運を…」


「…はい。グィフトさん、セレアルさん、ミュゲさん…ミリアムさんのためにも、勝ちます…!」



大将リデルが共に戦う4人の想いを小さな体に背負い込み、雌雄を決する戦いに挑む。泣いても笑っても自分の戦いで勝敗が決まる――リデルの胸には若草色の“彩りの戦士”としての覚悟が確かに燃えていた。



「……」


「貴女が大将さんね?お兄様方のためにも勝たせていただきますわ!」


「私も…仲間達のため、待ってるみんなのために…貴女に勝ちます!」


「フフッ、互いに悔い無き勝負にしましょう♪では、参ります!」



リデルとタンガ――両軍の大将は共に小柄な黄緑色の髪の少女であり、知らない人が見ると双子の姉妹と錯覚するのではというほどよく似た容貌だ。互いの彩りに惹かれ合う2人は左手に印された瑞々しい色彩を煌めかせた。



「行きますよ!ベスティヨル・バースト!」


「バグズバンプス!」


「うっ…こ、これは…!」



後手に回ったリデルはライムグリーンの少女の果敢な猛攻に翻弄され、次第に守勢に立たされていく。一方のタンガは眼を耀かせ、戦いを楽しんでいるような印象を与えていた。



「リデルさん…貴女と向かい合っていると私の力が高まるのを感じるんです。遠慮なさらず、もっと全力でいらしてくださいな!」


「うう…ど、どうしよう…」


「来ないなら私から参りますよ…先手必勝ッ…!」


(来る…ミュゲさんとミリアムさんを負かせた技が…!)



瑞々しい彩りの気がタンガの周りを取り巻いていく。檬緑(ライムグリーン)の力に討たれたミュゲとミリアムの姿が脳裏に過り、リデルは戦慄する。若草色の少女の胸中には否応なしに恐怖心が芽生えており、客席で見守る仲間達もリデルに襲い掛かるタンガの彩りの力をひしひしと感じ取り、戦々恐々という様相で見つめていた。



「はわわわ…リデルちゃん…」


「コイツも一筋縄じゃいかない相手だねぇ…戦う相手の力を使って進化するってかい…」


「やはりこの舞台のサバイバルは熾烈ッス!ここは猛者達の集う戦士のパラダイスッス!」


「なあ…俺、見てて思ったんだけど…エレンとベラハ、トリッシュとヘンドリックス、カタリナとヤチェ、俺とニュクス…この闘技場で何度も同じ彩りの戦士と惹かれ合っているけど…まさかリデルとタンガも…」


「ええ、間違いないわ。リデルとタンガ、そしてミュゲは同じ虫の彩りの戦士、樹の精霊ユグドラシルの祝福を受けた彩りの戦士よ!」



リデル、ミュゲ、タンガ――同じ舞台に立つ3人は樹の精霊ユグドラシルの祝福を受けた戦士だった。スプリンググリーンの少女ミュゲが紡いだ樹々が生い茂る舞台上ではライムグリーンの少女タンガがじわじわと若草色の少女リデルを追い込んでいた。



「覚悟!ベスティヨル・バーストォォッ!!」


「嫌ッ…!」



ライムグリーンの気弾が襲い掛かり、脳裏に敗色が滲んだ刹那――リデルの眼前にタンガではない何者かが突如として姿を現す。綺麗に整えた深緑の髪と髭を生やし、茶色を基調とした衣装を着た老人だった。彼はリデルに穏やかに微笑みながら語りかける。



『やあ、ワシの彩りを受け継ぐ者よ…聞こえるかい?』


「あ…貴方は…!?」


『ワシはユグドラシル。君の力を司る者さ。まあ、精霊と言った方がわかりやすいかな?』


「精霊…私の力の…あ、あの…いつもお世話になっております!」


『フフッ、礼儀正しい良い娘だね。さて、君には為すべき使命がある。ワシの力…樹の力の旗印になってほしいんじゃ。君にはその資格があるし、君にしか出来ないことなんだよ』


「私にしか出来ないこと…それって…私を待ってる人がまだいるということ、ですか?」


『そうだね。その力は君にまだまだたくさんの出会いをもたらしてくれるよ。そして、ワシの力のもとに集まる仲間達の中心に君が立つだろう』


「中心!?私が…!?」


『ああ、そうだよ。君と共に戦うミュゲという騎士の少女はもちろんだが、目の前にいるタンガという娘…彼女も君を待っている。迎えに行っておいで…リデル!』


「…はい!」



リデルは閉じていた眼を見開き、毅然とした意思でタンガに立ち向かう。気弾をまともに受けたはずだったにも関わらず体には傷1つ付いていない。タンガは無傷で対峙する敵将の姿に阿鼻叫喚という様相で錯乱していた。



「なんですって!?倒れていない…!?」


「私は樹の精霊ユグドラシルさんの力を…ミュゲさんと貴女と分かち合います!覚悟して受けてください!」



リデルの全身を若草色のオーラが包み込む。樹の精霊ユグドラシルは自らの力を現世で体現する小さな戦士の背を優しく押していた。



「芽生えよ、命の息吹!仇為す者を討て!プリマヴェーラ・スウォーム!!」


「キャアァッ!参り、ました…!」


「そこまで!勝者、リデル選手!この試合、リデル軍の勝利!!」


『うおおおぉぉぉ~ッ!!』



リデルの意志が若草色の彩りのもとに形となり、見事に敵将タンガを退けた。リデル班の仲間達は安堵しながらも樹の精霊ユグドラシルの祝福を受けた大将リデルを囲み、祝福と歓喜の輪を作ろうとするが、リデルはライムグリーンの彩りの戦士である敵軍大将タンガを優しく輪に引き入れ、若草色の輪を闘技の舞台に紡いでいった。




To Be Continued…

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