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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
142/330

第142話『蛮勇闘技~vol.32~』

シリーズ第142話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国の闘技場――赤茶色の煉瓦の壁に薄茶色の土のフロアーには異質な雰囲気を醸し出す銀灰色の金属の身体を持つ機械戦士が佇んでいる。対するコレット班の草騎士エーデルが身に纏う鎧の鮮やかな緑は闘技場の茶色に美しく映え、銀灰色の機械戦士とは対比的な色合いを醸し出していた。



『戦闘プログラム、遂行中断。スタンバイモードに移行――』


「あ、ありゃ?さっきまで破壊するとか言ってたのに…って、うわわっ!?ズィヒールさん、いつの間に!?」


「んふふ~♪キミもコレットちゃんと同じくらいかわゆいですな~!いや~、緑の美少女騎士をこんなに間近で見られるとは、眼福!眼福!萌え~♪」


「ええ~…褒められてるんだろうけど、あんまり嬉しくない…とにかく、ビアーの敵は討たせてもらうからね!」


「むほぅ~!緑の美少女騎士ちゃんは血気盛んですな!シグマ、お相手してさしあげなさい!」


『戦闘プログラム、再起動――破壊します』



テラコッタの草騎士エーデルは得物である草緑の法力を纏った指輪を携え、敵軍中堅である機械戦士シグマに立ち向かっていく。かつてはバジル率いる弓騎士隊の一員だったが、コレットとの絆を紡ぎ合ううちに装飾品だった指輪がグラスランドグリーンの彩りに覚醒し、術具としてエーデルの彩りを体現している。草緑のエネルギーを集束させ、シグマに向けて一気に放った。



「これでもくらえ~ッ!えいやっ!」


『左脚部、被弾。攻撃対象の装飾品より非科学的エネルギー体を感知――警戒レベル、CからB+へ移行――』


「ふむぅ、エーデルちゃんは術使いなのですな!こちらは科学パワー全力全開で参りますぞ~!」


「テラコッタの騎士の力、見せてあげるよ!絶対に負けないんだから!くらえッ!!」


『胸部被弾――装甲損傷率、21.8%――』


『うおおぉぉ~!!』


『いいぞいいぞ~!』



エーデルの果敢な攻撃は若々しい活力に満ち溢れており、客席を沸かせる。テラコッタの騎士としての堂々たる姿は仲間達の心も揺さぶっていた。



「その調子だ、エーデル!あの指輪を武器にしてからというもの、良い動きだな」


「一介の装飾品である指輪が術具として武器になるなんて…彩りの力は未知なる深淵なのね」


「そうですわね、バジル様。こうしてわたくし達の力を強くするのは絆…ひいては人の心。エーデルさんはそれを伸び伸びと体現していらっしゃるわ!」


「エーデル、ぶちかませ!機械の人形なんかぶっ壊してやれ~!!」



深紅の鎧を着た剛騎士グラジオの熱い一声を皮切りに仲間達は次々に声援を送る。テラコッタの騎士達と彩りの戦士達の声援を受けたエーデルは戦いの舞台で溌剌と躍動する。とある国の近衛騎士だった両親に憧れ、15歳という若年にして騎士を志して単身武者修行の旅路を歩み、テラコッタ領で主君ローザの目に留まったことで騎士に推薦された経歴の持ち主である。自らの意思で夢への1歩を踏み出し、自らの意思で実現させた若き草騎士は真っ直ぐに伸び行く草花のように生き生きと戦いの舞台を謳歌しながら彩りの力を解き放った。



「我が祖国の大自然パワー、ドカンと弾けろ!テラコッタ・ブルームフラッシュ!」


『機体ダメージ、甚大――戦闘プログラム…動作、続行…不、能…』


「そこまで!勝者、エーデル選手!」


『うおおおぉぉ~ッ!!』


『いいぞいいぞ~!』


『エーデルちゃん、可愛い~ッ!!』


『エーデルちゃ~ん!結婚してくれ~!!』



コレットと同じように荒くれ者達の琴線に触れるのだろうか、エーデルの活躍にビンニー国育ちの屈強な男達が一気に沸き上がる。矢面に立たされたエーデルは表面的には声援に応えながらも苦笑いを浮かべていた。



「アハハ…なんか盛り上がってるけど、喜んでいいものか…」


「いいじゃねぇかよ!お客さんがこっちの味方になってくれたってことなんだから、歓声はありがたくいただいておこうぜ!」


「すっご~い!エーデル、人気者だね!カッコいい!」


「あっ…つ、次のが来るよ!気を付けて!」


『標的確認――起動!!』


「うえぇっ!?」


「なんだアイツは…動きが見えなかったぞ!?」



機体が風を斬る轟音が響き、直後に水を差したような静寂が支配する。敵軍副将である機械戦士オメガはエンジンに火が点くや否や目にも留まらぬ速さで縦横無尽に闘技場を駆け抜け、凄まじいスピードでエーデルに迫ってきた。



「エーデル、危ない!」


「うわわっ!?は、速すぎるよ!ゼータが教えてくれなきゃ正面衝突だった…」


「その通~り!オメガはチーターよりも速い、音速の防衛マシーンなのだよ!かわゆい萌え萌え騎士のエーデルちゃんはこのスピードに着いて来られるかな~?ドゥフ、ドゥフフフ…」


『エンジン出力上昇、発進!!』


「ひえぇっ…怖い…う、動けない…!!」



テラコッタの草騎士はオメガの駿足の前に立ち尽くすばかりである。対峙しているエーデルは言うに及ばず、コレット班の仲間達はおろか客席で見守るテラコッタの騎士達さえも戦慄させた。



「エーデル、怯んでる場合じゃねぇ!どうにかして攻撃しろ!」


「い、行けッ…!あわわわ…あ、当たらないよ…!」


『標的位置確認――突進!!』


「うああぁぁッ…!」


「エーデルッ!あわわわ…めっちゃ痛そう…」



ビアーの率直な言葉にコレット、ゼータ、ルーヴの3人も無言のまま頷く。オメガの突進の衝撃は筆舌に尽くし難く、想像するだけで全身が引き裂かれそうだ。



『エンジン出力上昇――殲滅します!』


「うわああぁぁッ!!」


「そこまで!勝者、オメガ選手!」


『Boo~!Boo~!!』


『引っ込め、ポンコツ~!』


『よくもエーデルちゃんを~!』



エーデルを贔屓する男達の罵声が飛び交う中、ラムダ博士とズィヒールは涼しい顔で佇んでいる。コレット班の4人は大慌てでエーデルに駆け寄っていった。



「エーデル、しっかり!ちょっとちょっと、大丈夫!?」


「な、なんとか…鎧がなかったら、たぶん死んでたよ…」


「ふえぇ…エーデル、痛そう…ゼータ…」


「チッ、なかなか手強そうだな…だが、この軍の仲間達のため、コレットのため、負けはしない!」


「ゼータ、気を付けろよ。魔物とは違う意味で厄介な化け物だ…」



血紅色の彩りの零血闘士ゼータは熱い想いを携え、コレット班副将として戦いの舞台に踏み出す。自らの肉親であるラムダ博士、分厚いレンズの眼鏡を怪しく光らせる科学者ズィヒールに対し、躊躇うことなく銃口を向けた。



「…博士、悪いが勝たせてもらう。ズィヒール、ヘラヘラしていられるのも今のうちだぞ!」


「ぬうぅ…相も変わらずつれないなぁゼータ氏!ゼータ氏の戦闘スペックも楽しみに拝見させていただくぞよ~!ねえ、博士?」


「ええ。ゼータが戦うのを見る機会もなかなかありませんからね。それにエーデルさんがお好きなお客様はそちら側に味方していらっしゃるようですので、こちらは悪役らしくいきますよ。オメガ、手加減は不要です!ゼータを蹂躙してしまいなさい!!」


『グランドマスターの御指示を受信――標的撃破、任務遂行します』


「来るか…コレットに手出しはさせん!」



両軍の副将同士、ラムダ博士によって造られた機械戦士同士が赤茶色の闘技場の真ん中でぶつかり合う。突進を受けて弾き飛ばされたエーデルの姿が否応なしに思い浮かび、焦る気持ちを抑えながら照準を合わせ、引き金を引いた。



「くらうがいい!マーシレスバレット!」


「んふふふ~、遅い遅~い!そんなノロい弾ではハエが止まりますな!」


「…貴様ッ!!」


「おお、怖い怖い!オメガ、手加減無しで行くのですぞ~!」


『マスターの御指示を受信、殲滅します!!』



ズィヒールの挑発的な態度と言葉にゼータは苛立ちを募らせていく。オメガとゼータが機械戦士としての武を交える中、ズィヒールは自らの体に起こる“変化”に気付いていた。



「んん…やはり何か…」


「ズィヒール…?どうしたのですか?」


「えっと…ビアーさんがベータと戦っていた辺りから左手がザワザワするんですよね…どうしたものか…」


(左手?ま、まさか…!?これは面白いことになりそうですね…!)



荒々しく飛びかかる機械戦士オメガに対し、蛍光色の刀身が煌めくビームソードを抜く。コレットを守るという決意を胸に向かい合うゼータの脳裏には一手のみが過っていた。



(チャンスは一度きりだ…かなりのリスクを伴うが、こうするしかない…!)


『標的位置確認、エンジン出力最大――突進!!』


「リミッター解除…はああぁぁッ!!」



血紅色の彩りを纏ったゼータは音速の機械戦士オメガに真正面から飛び込んでいく。2人が音速の疾駆で交差し、時間が静止したかのような一瞬の“無”の後、観衆が視界に2人の機械戦士を捉えた刹那、オメガは全身を微塵切りにされて散り散りに崩れ落ちていった。



『き、の、う…て、い……し――』


「な、ななな、なんですとおおぉぉッ!?」


「フッ、上手くいったか…間一髪だったな」


「…そ、そこまで!勝者、ゼータ選手!」


『……うおおおおぉぉ~ッ!!』



ゼータの勝利が衆目のもとに飛び込んだ刹那、観衆は一気に沸き上がる。ゼータはコレットに優しく目配せをするが、すぐにビームソードを構えて向き直った。



「ゼータ!すごいすご~い!!そのまんま頑張って~!!」


「博士…ズィヒール…とんでもない科学力だ。我が身内ながら見上げたものだな」


「ゼータ氏…オメガを一瞬で切り捨てるとは…戦闘スペックは予想以上ですな。このズィヒールが直々に相手しますぞ…グフフフフ…ドゥフフフ…!」



副将オメガを一閃のもとに切り払ったゼータに零血の闘士としての可能性を確信した敵軍大将の科学者ズィヒールが奇妙な笑い声をあげ、眼鏡を妖しく光らせながら対峙する。ゼータはズィヒールを打ち倒し、誰よりも愛しく想うコレットを守ることが出来るのだろうか?




To Be Continued…

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