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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
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第139話『蛮勇闘技~vol.29~』

シリーズ第139話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国の闘技大会に挑む一行。冥紫の王子の旗印のもとに想いを紡ぎ合うリタ班は闇に閉ざされた夜の領域アーテル国より来たる一団の大将である紫玉の彩りの戦士ニュクスと相対していた。



「ウフフ、なんだか本当に踊るようですわね♪」


「ええ、私は貴女とこの舞台で踊り明かしたいわ。さあ、もっと私の近くに…」


「…ニュクス様…」



アメジストパープルの彩りの戦士ニュクスに手を引かれ、戦いの舞台へと踏み出す麗騎士ラナンの姿はさながらダンスパーティーのように華やかだ。が、紫玉の紋様が左手に煌めく敵軍大将の胸中には確かな闘志が妖しく燻っていた。



「あの、ニュクス様…?わたくし達、これから踊るのではなくて闘技を交えるのではありませんか…?」


「ええ、もちろんよ。でも、焦ることはないわ。貴女の彩りの力、この手から痛いほど感じているもの…」


「キャッ!こ、これは…!?」



ニュクスの両掌から妖しく揺らめく紫のオーラが迸る。ラナンは咄嗟に手を離すものの、瞳に敵意を燃やして鋭い視線を突き刺した。



「あら、どうしたの?私はまだ踊り足りないわ。怖がらないで、こちらに来て…」


「ええ、参りますわ…セイントセイヴァー!」


「…フフッ…」



誇り高き戦意を表したピーチコーラルの彩り――麗騎士ラナンの力が具現化した聖なる剣をニュクスは微動だにせず受け止める。傷1つ負わずに妖しい微笑みを絶やさぬアメジストパープルの戦士の姿にラナンは驚きを隠せない。



「フフフフッ…貴女、優しさと柔らかさを感じていたけど…やはり聖なる力の使い手だったのね」


「そ、そんな…!?」


「私が生まれ育った夜の領域は永久(とわ)の闇に閉ざされた世界。夜の領域の無限の闇は聖なる光を包み込み、愛でるものなのよ…」


「ああ…なんてことですの…!」


「ラナンさん…貴女、可愛い人ね。貴女の優しくて暖かい光、私が大切に愛でて差し上げるわ…ミッドナイト・シャドーヴェール!」


「あ、あ…ぁぁ…」



ニュクスの妖しい紫玉の彩りの淵に堕ち、ラナンの瞳から闘志が跡形もなく消える。漆黒の帷が心に降ろされ、為す術もなくその場に崩れ落ちる。アメジストパープルの彩りの戦士はピーチコーラルの麗騎士に対し舞い踊るように華麗な連撃を見舞っていた。



「シャドーアサルト!」


「うぅあっ…!!」


「フフッ…泣き声も可愛い人…たっぷり可愛がってあげるわ…」


「キャッ!あっ、ああッ…!」



夜の領域より来たる彩りの戦士ニュクスはラナンに対して妖しい闘志を剥き出しにし、甚振るように畳み掛けていく。アメジストパープルの妖しい彩りは、観衆を静まり返らせていた。



「漆黒の刃となるは闇夜の舞い!ミッドナイト・シャドーダンス!」


「あ、ぁ…リタ、様…」


「そこまで!勝者、ニュクス選手!」


「ラナン様ッ!!夜の領域の彩り、なんて恐ろしいの…!」


「バジルの言う通りね…筆舌に尽くし難いおぞましい力…ラナンが何も出来ずに負けるなんて…」



紫玉の彩りに踊らされ、常夜の闇に酔わされたラナンは妖しい影の縄に縛り付けられながら敗れた。大将であるリタは妖しい紫玉の彩りを前に表情を変えることなく静かに立っていたが、退くことの許されぬ戦いに挑む決意を固めていた。



「なんかヤバそうな人…リタ様、気を付けて…」


「あわわわ…こ、怖い…」


「イオス、セレナ、大丈夫だよ。ラナンを助けるために俺がやらないと…な、何ッ!?」


「ハァ…ん、んん…」


「ニュクス、さ、ま…んぅぅ…」



目の前の光景にリタは驚愕し、絶句する。ニュクスは躊躇うことなくラナンの口元に唇を重ねる。ニュクスの闇夜の帷に堕ち、アメジストパープルの淵に酔いしれるラナンは嫌がることも拒むこともせず、ニュクスは貪るように時間をかけて味わっていた。



「んっ、んぅ…ハァ、可愛い唇…桃のように甘くて、珊瑚のように繊細で…ウフフ…幸せだわ…」


「やれやれ、随分と大胆な人だな…おい、満足したか?次は俺の彩りの力をお前に撃ち込んでやるぜ!」


「もう、荒っぽい人ね…でも、激しいのがお好みなら受けてたつわ!」



ニュクスはラナンを離れた位置に優しく寝かせ、リタに向かって妖しく微笑む。アメジストパープルの敵軍大将に対し、リタは冷たい銃口を向けて戦意を示す。大将として立ち向かおうとした刹那、右手の薬指が冥の紫に彩られ、冥の精霊プルートが姿を現した。



『夜の領域、か…厳しい戦いになるかもしれんぞ』


「プルート…知ってるのか?」


『ああ、夜の領域はクローマ大陸の北西部の最果ての一帯、常に日が差さずに漆黒の闇に閉ざされている領域だ。闇の精霊でありながら我ら精霊を統べる神の1柱、月神ヴァレノ様の膝元とも呼ばれている』


「闇の精霊である月神ヴァレノか…つまりニュクスは筋金入りの闇の戦士っていうわけだな…」


『ご明察。ヴァレノ様の御加護を直に受けているビアリー殿とは異なる形の闇を司る戦士だ。夜の領域で生まれ育ち、常夜(とこよ)の闇を操る彼女は真に闇の力に魅入られし彩りの戦士と言えるだろう。私はお前を信じているが、心してかかれ』


「…了解。プルート、俺のこと見守っててくれ!」


『ああ、任せろ。私はお前を信じているからな!』


「やっとやる気になったみたいね…大将同士、心を合わせて踊りましょうか!」



リタは銃身に戦意を込め、冥紫の彩りを解き放つ。対するニュクスは左手を眼前に翳し、紫玉の彩りを静かに昂らせていった。



「シャドウバレット!」


「効かないわ…シャドーヴェール!」


「何ッ!?」


「もっと…もっと近付いて…貴女の手の温もりを感じたいわ。さあ、離れていないでこっちへいらっしゃい…」


(ダメだ…挑発に乗ったら文字通り踊らされる…さっきのラナンと同じように…!)


「あら、恥ずかしがり屋さんなのかしら…?それじゃ、私から行くわよ!」



ニュクスは身を翻しながら飛び掛かり、闇夜の艷舞を舞う。対する冥紫の王子リタは待っていたとばかりにニヤリと笑い、足元の一点に全神経を傾注し、彩りの力を集束していった。



「シャドーアサルト!」


「今だ!デスサイス・サマーソルト!!」


「うっ!?」


「そこだ、シャドウバレット!おまけにもう1発!!」


「クッ…!」


『おおぉぉぉ~!!』



リタはニュクスを懐へと呼び込み、冥の彩りを纏った閃空蹴りを見舞う。ニュクスを強襲する冥紫の爆風が闘技の舞台を包み込むと、静まり返っていた観衆は一気に沸き上がっていた。



「リタ、さすがです!恐ろしい相手なのに落ち着いていますね」


「はい!でも、ラナン様を虜にした方ですから、油断は出来ませんね…天よ、我が愛する御人をお守りください…」


「ネイシアさん、大丈夫です。リタさんは聡明な御方ですから、必ず打ち勝てますわ!」


「そうそう!あたいらは手ぇ貸せないんだから、とにかく信じてやろうじゃないのさ!」


「そやそや!リタ姉ちゃんならきっと大丈夫や!負けへん、負けへんで!」



仲間達が次々にリタへの信頼を口にする中、冥紫の連撃と闇夜の艷舞が赤茶色の煉瓦が囲む闘技の舞台に妖しい紫の華を咲かせる。傍目には守勢に立たされているように見えるニュクスだったが、余裕気な表情を崩さずに微笑みを湛えていた。



「貴女、素敵な踊りね…アーテル国からここに来た甲斐があったわ…」


「そりゃどうも。でも、俺の戦いは踊りじゃない。大切な人を救うため、守るためのものだ!」


「そう…私の戦いは生まれ育った夜の領域の精霊達に捧げるためのものなの。精霊と心を合わせて舞い踊ることが私の戦いよ」


「それなら俺もさ。俺には冥の精霊プルートが着いてる!絶対に負けないぜ!」


「やっぱり…そんな予感はしていたわ。冥の精霊が貴女を取り巻いているもの…私の胸をこんなにも熱くさせているんですもの!」



リタに彩りの力を振るうニュクスは荒々しく燃ゆる熱を帯びており、副将ラナンと対峙した際よりも明らかに昂っている。リタはどうにか平静を保っていたが、冥の精霊プルートは戦慄していた。



『まさか、そんなことが…すまん、リタ…見誤ったようだ…』


「プルート!?どういうことだ…?」


『夜の領域の戦士ニュクス…ビアリー殿と同じ闇の彩りの戦士と思っていたが、違った…ニュクスはお前と同じ、冥の彩りの戦士だ…!』


「そうだったのか…!ニュクスは俺と同じ…!!」


『ヴァレノ様の闇の力と我が冥の力は似て非なるもの…それを見誤るとは不覚…リタ、すまない…』


「謝ることなんて無いさ!プルートが俺を信じてくれているように、俺もプルートを信じ――」


「シャドーアサルトッ!!」



ニュクスはリタとプルートの間へ割って入るように飛び込み、妖しい冥の艷舞を見せつける。リタも負けじと冥紫の刃を纏った蹴りを続けざまに見舞い、熱く闘志を滾らせた。



「もっと…もっと激しく!シャドーアサルトォォッ!」


「オラァ!デスサイス・サマーソルト!!」


「ああッ…なんだかドキドキしてきたわ…こんなに心が高鳴るなんて…!!」


(俺も、力が高まるのを感じるぜ…俺も心を合わせる…この戦いをプルートに捧げるんだ…!)



リタは冥の気を全身に纏いながら精神を右手薬指の指輪に集中する。傍らで見守るプルートに自ら呼び掛け、彼の心に歩み寄っていく。



「この1発で決めてやるぜ…プルート、力を貸してくれ!」


『ああ、共に行こう。リタ…私を信じてくれるか?』


「ハハッ、そんなの言われるまでも無いって。信じてるぜ…プルート!!」



冥の少女と冥の精霊、2つの冥を司る心が再び重なる。妖しくも凛と煌めく薄紫の彩りの気が銃口に集束し、一気に暴発した。



「冥府より来たる叫び、闇夜の彩り、炸裂せよ!シャドウバレット・エクスプロージョン!!」


「ああぁッ…!!」


「…そこまで!勝者、リタ選手!この試合、リタ軍の勝利!!」


『うおおおぉぉぉ~ッ!!!』



冥紫の王子リタがアメジストパープルの大将ニュクスを討ち倒し、2人が踊る冥の艷舞に見入っていた観衆が一気に沸き立つ。歓声の中、リタは優しく気遣いながらラナンを助け起こし、穏やかに微笑みながらニュクスを助け起こす。冥紫の王子は右手でラナンの手を、左手でニュクスの手を引き、歓喜に沸く仲間達のもとへと引き入れていった。




To Be Continued…

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