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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
131/330

第131話『蛮勇闘技~vol.21~』

シリーズ第131話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国の闘技大会の舞台はさながらロックバンドのライブステージのような奇妙な高揚感が充ち満ちている。痺れるほどのボルテージで一行を華やかに彩るトリッシュ班の前に立ちはだかるエレクトリックパープルの彩りを持つ敵軍大将ヘンドリックスは不敵な笑みを浮かべながら、ゆったりとエレクトリックギターを爪弾き始めた。



「祝福の証…我らと同じ、彩りの戦士…!!」


「まあまあ、そんな不景気な顔するなよ。これから楽しい楽しいライブの始まりなんだぜ?もっと力抜いてさあ、一緒に楽しもうじゃねぇかよぉ!?」


「な、なんだよコイツは…クレイジーな奴だ…!」



ヘンドリックスはエレクトリックパープルの紋様が煌めく左手でギターを奏で、彩りの力を解き放つ。激しく熱く響く音色に合わせて紫電の鎚がミモザに襲い掛かった。



「ウララララァッ!!」


「うあああッ!?な、なんだ!?体がビリビリする…!!」


「おいおい、ビビってる場合か?今はライブ中だぜぇ!!」



祝福の彩りが紡ぐ狂気を見せつけられ、ミモザは紫電の旋律に戦慄する。なんとか己を奮い立たせて立ち向かうが、思うように体が動いていない。得物の槍を振るう手も明らかに勢いが弱くなっていた。



「でやああぁぁッ!!」


「おおっと?戦いはするけど、このギターだけは傷付けさせないぜ?コイツはアタシの大切な相棒、アタシの誇りなんだからなぁ!」


「うわっ…!クソッ、いつまでも好きにやらせるかよ!」



乱暴に蹴倒され、ミモザの闘志に再び火が点く。紫電の狂える詩人に負けじと左手のミモザイエローの彩りを耀かせ、彩りの轟雷を紡いでいた。



「我が祖国の迅雷の猛り!轟けぇッ!!テラコッタ・サンダーファング!!」


「フン…!!」


「…よし、まともにくらったな…これならどうだ!?」



ミモザの騎士の誇りを携えた轟雷が牙を剥くが、ヘンドリックスは避けることすらせずに受け止める。誰もが雌雄は決したと確信したが、その確信は見事に裏切られる。戦いの舞台に粉塵が舞う中、ヘンドリックスは微動だにせず、不敵な笑みを崩さないまま妖しく佇んでいた。



「フッ…フフフッ…アハハハハハッ!!」


「そ、そんな!?傷1つ付いてない…マジかよ…!?」


「その様子だと気付いてねぇな…お前の電撃はなぁ…ぜぇ~んぶアタシのギターのパワーに変わるんだよぉぉッ!!」


「クソッ!!ど、どうすれば良いんだ…!!」



渾身の一撃が無に帰し、ミモザは瞬く間に苦境に立たされる。テラコッタの騎士達は不安を滲ませながらミモザの戦局を見守っていた。



「ミモザ…苦戦してるわね…」


「そうだな、親愛なる同志バジル…親愛なる同志ミモザの雷撃を吸収し、己が力に変えてしまうとは…なんとおぞましい能力よ…」


「ミモザと同じ雷の力、か…いや、つまりトリッシュ殿とも同じということか…!?」


「ビアリー様とパンジーも同じ闇の力だし、きっと我々が知らないだけで、同じルーツを持つ彩りの戦士はたくさんいるのかもしれないわね…」



テラコッタの騎士達も息を呑む中、ヘンドリックスは妖しい彩りの力を昂らせていく。得物であるギターの弦はバチバチと電光を弾けさせ、静かに狂気を燻らせていた。



「さ~て、良い感じのグルーヴだ…とっておきのギターソロを聴かせてやるぜええぇぇぇッ!!」


「クッ…で、電流が…!!」


「ミモザとか言ったな!お前のおかげでフルパワーで最高の音色が奏でられるってもんだ!!礼を言うぜええぇぇッ!!!」



狂気に昂るヘンドリックスは電光を纏ったギターを激しく掻き鳴らしていく。エレクトリックパープルの妖しい狂気に彩られていた。



「ヒャハハハハッ!!トドメのワンフレーズだ!エレキテル・ヘブンズステアァァァッ!!!」


「うわあああああッ!!!!」


「いやああぁぁッ!!ミモザアアァァッ!!」


「サルビア、しっかりしろ!なんて破壊力だ…」


「…そこまで!勝者、ヘンドリックス選手!」



紫電の爆音と氷騎士サルビアの悲鳴に包まれながらミモザは力なくその場に崩れ落ちた。トリッシュ達は慌てて駆け寄るが、幸い呼吸はしている。ミモザの無事を確かめた4人は胸を撫で下ろすが、自軍に立ちはだかる脅威を否応なしに目の当たりにさせられ、再び背筋を凍らせていた。



「ミモザ…ミモザ、大丈夫かよ!?」


「…ああ…生きてはいるさ…トリッシュ…気を付けろ、よ…」


「…ああ、任せろ。みんな、ミモザのこと頼むぜ」


「…トリッシュ…」


「なんかヤバそうな相手だけど…トリッシュ、大丈夫かな?」


「メリッサ、ペソシャ、今はトリッシュを信じるしかないぞ。大将ならきっとなんとかしてくれるさ」


「テレーズさん…そんな精神論だけでなんとかなる相手なの?トリッシュも雷の力だから、アイツに吸収されちゃうんじゃ――」


「それは絶対に言うな!!トリッシュ自身が一番理解してることだろうが!!これから大将が戦うっていうのに身も蓋もねぇこと言ってんじゃねぇぞコラァ!!」


「うう…ご、ごめんなさい…そうだね、トリッシュを信じなきゃ…」


「…いや、アタシこそ怒鳴って悪かった。さて、トリッシュは何か考えがあるってのか?なあ、大将さん…どうするよ?」



トリッシュとヘンドリックス、両軍の大将同士が向かい合い、電光混じりの火花を散らす。右手の薬指に輝く雷のトパーズからトリッシュの眼前に像が浮かび上がる。姿を現した雷の精霊ヴォルトは様々な感情が入り交じった複雑な顔をしていた。



『ふ~む…これはこれは…トリッシュにも“この時”が来ましたか…』


「ヴォルト!?いきなり“この時”ってなんだよ…?」


『見ててわかりませんか?彼女は貴女と同じ、私の雷の力を共有し、貴女とは惹かれ合う存在です。まあ、既にミモザ様やシェリー様も同じ雷の戦士でありながら仲間におりますがね』


「…そうか!ビアリーとポワゾン達が闇の力、毒の力で呼び合ったように、アタシとヘンドリックスも雷の力同士が呼び合っているのか…!」


『その通り。貴女にも今、“その時”が訪れたのです。いわば貴女は彼女の根源たる存在…根源たる威信を見せつけるのです。心してかかりなさい』


「おいおい、指輪に向かって何をブツブツ言ってるんだよ?早く始めようじゃないか!」


「OK!いつでもイケるぜ!痺れるほどのライブ、始めようじゃん!!」


『やれやれ、相も変わらず落ち着きの無い方だ。まあ、だからこそ面倒を見る楽しみがある、ということにしておきましょう…』



トリッシュは雷の彩りの戦士としての、大将としての務めを全うすべく勇んで戦いへと踏み出していく。ヴォルトは無鉄砲なトリッシュに苦笑いを浮かべながらも、指輪を介してトリッシュを見守る。動のトリッシュと静のヴォルト――2人は互いに補い合い、力を交わす存在となっていた。



「Hey,Come On!お前の痺れるグルーヴ、見せてくれよなぁ!!」


「よっしゃ!先手必勝、ギターを弾き始める前に懐に飛び込んで――」


『なりません!ミモザ様を一蹴した相手に無策で突っ込むなど、不用意過ぎます!少しは考えて行動なさい!』


「うるっせぇな!人のやることにいちいち文句ばっかり言いやがって!いつもいつも細かいことチクチク言って、ウぜぇんだよコラァ!!」



荒々しくも勇猛な躍動に水を差されたトリッシュは口汚くヴォルトを罵る。罵詈雑言を受けたヴォルトは表情こそ崩さないものの、続ける言葉には怒気を帯びさせていた。



『トリッシュ…よろしいですか?貴女は腐っても大将、貴女が負ければメリッサ様、ペソシャ様、テレーズ様…そして、身を以て貴女に彼女の脅威を教えてくださったミモザ様の奮戦が水の泡となるのですよ!?それでもいいと言うのですか!?』


「なっ!?そ、それは…」


『4人の奮戦に報いたい、応えたいという貴女の気持ちは痛いほど理解してるつもりです。だからこそ、貴女が無闇に火中に飛び込み、ミモザ様の二の舞を舞うことになってもらいたくはないのですよ』


「そっか…ヴォルトはアタシを、アタシの仲間達を気遣って…」


『どうも言葉足らずで誤解させてしまったようですね。素直に飾らずに伝えられない、私の悪い癖です…申し訳ありません』


「いや…悪いのはアタシの方だよ。ウザいなんて言って、悪かったよ…ごめん…」


『気にしていません。それに謝るなら私にではなく、共に戦う仲間達に、ですよ』


「そうだよな…アタシはこのユニットの大将なんだよな…共に歩むみんなに、この“絆”に絶対に報いてみせるさ!」


『…強くなりましたね、トリッシュ』


「ん?ヴォルト、何か言ったか?」


『いいえ、何でもありません。さあ、お喋りはおしまいです。貴女の彩り、我が雷の力、彼女に見せつける時ですよ!』



トリッシュはヴォルトと心を合わせ、改めてヘンドリックスに立ち向かう。狂気の詩人に相対して躍動するトリッシュの姿は客席で見守る仲間達を張り詰めた緊張の坩堝に引き入れた。



「トリッシュ…負けないで…」


「カタリナ、大丈夫だよ。トリッシュはいつも頼りになる奴だ。俺は絶対勝つって信じてるぜ!」


「しかし…あのヘンドリックスという女、なかなかに狂った目をしてるな…さすがのトリッシュでも一筋縄ではいかないだろう」


「アイツ、自分から攻めて来んのう…何か腹の底に企みがあるんか?」


「ステラ、違うわ!彼女のギター、周りの精霊の気を同調させている…自分の気の中に引きずり込もうとしてるわ!既にもう術中に填められているのよ!!」



フェリーナが気付くよりも遥かに先に策謀の包囲網がトリッシュを囲んでいた。敵軍大将ヘンドリックスは自分のペースを乱さずにゆっくりと自らの世界へとトリッシュを誘っていく。当のトリッシュは策謀の淵に立たされていることに気付く由もなかった。



「チッ、この野郎…来るなら来いよ!」


「そう焦るなよ…まずはビシッとコードを決めなきゃなぁ…そぉらッ!!」


「し、しまった…!!」


「ヒャハハッ!!もらったぁ!ここからギターソロで一気にフィニッシュだああぁぁッ!!」



トリッシュはヘンドリックスの紡ぐリズムに乗らされて踊らされ、紫電の旋律に呑み込まれてしまった。ヴォルトは呆れながらも然もありなんという表情を浮かべていた。



「クソッ…ちくしょおおぉぉッ…!!」


『やれやれ、仕方ありませんね…まあ、遅かれ早かれこうなりましたか…』


「ヴォルト、テメェ…他人事みたいに言うなよ!クソッ、このままじゃ…!!」


『まだ手はあります。この年寄りが入れ知恵をして差し上げますので、心して聞きなさい』



ヴォルトはトリッシュに“入れ知恵”を授ける。耳打ちではなく、トリッシュの心に直接語りかける。ヴォルトの声を心で受け取ったトリッシュは僅かに首を傾げるが、既に他に策はなかった。



「ヴォルト…信じて、いいのか…?」


『信じなさい…いや、どうか信じてください。貴女の持ち味である若さゆえの勢いも結構ですが、たまには年寄りの言うことに素直に耳を傾けるものですよ?』


「…OK。わかった、なんとかしてみるよ!」


『素直でよろしい!その答えを待っていましたよ。さあ、もうあまり時間がありません。私の話した通り、恙無くお願い致します』



トリッシュは小さく頷くと、紫電の旋律に呑まれながら必死に彩りの力を解き放つ。が、ヘンドリックスは得物のギターを以て吸収し、己の彩りを昂らせていた。



「エレキテルショット!」


「はぁ?もっと激しくやって欲しいってか?なんだよ、随分と物好きな奴だな!?」


「くらえッ!サンダーストリームッ!!」


「クククッ…なんのつもりか知らねぇけど、命知らずな奴だな…ヒヒヒヒッ…!」



一見すると無謀とも言える策を目の当たりにし、ヘンドリックスは嘲るように笑う。が、トリッシュはヴォルトを信じ、ヴォルトもまたトリッシュを信じていた。



「ヴォルト…まだか?」


『まだです。まだありったけ注ぎ込むのです!』


「…わかった…いっけえぇ!サンダーストリィィム!!」



トリッシュの電撃を受け、ヘンドリックスのギター全体がエレクトリックパープルの電光を纏い始める。充ち満ちていく力を感じ取った敵軍大将は狂気に酔いしれ、高らかに妖しい笑い声を響かせた。



「ヒャッハハハハ!こんなにたくさん電気が溜まったのは初めてだ!力を感じる…感じるぞぉ…MAXボルテージでブッ飛ばしてやるぜぇぇぇぇぇッ!!!!」


「へえ~、そいつは面白そうじゃん…聞かせてくれよ…ギターが壊れないうちにな!」


「はぁ?お前、一体何を…って、うおわあぁ!?ア、アタシのギターが…!!」



突如ヘンドリックスのギターが黒煙をあげ、中の回路が爆発して部品が四散した。狼狽えるヘンドリックスの眼前にヴォルトが姿を現し、理知に満ちた眼差しを得意気に突き刺してみせた。



「ひえぇ…!ど、どどど、どうして…!?」


『フッ、読み通りです。人の子の造る器には限界があるのですよ!我が雷の力を分かちし彩りの戦士、ヘンドリックス!!』


「うえぇ!?な、何も無い場所からいきなり現れた!?なんなんだよ、このおっさんは…!?」


「コイツは雷の精霊ヴォルト!アタシやお前の雷の力はヴォルトのおかげでビリビリ痺れるボルテージでブッ飛ばせるんだぜ!」


『その通り!いやはや、自分の力の源である精霊に対して“おっさん”とは御挨拶ですねぇ…口の利き方のなってない悪い子には、お仕置きです!』


「クソッ…どうにかしないと!でも、ギターが…!」


「よっしゃ、形勢逆転だ!いくぜぇ、ヴォルトォォッ!!」


『…フッ、荒仕事は苦手ですが、仕方ありませんね』



トリッシュとヴォルト、雷の力の根源たる存在である2人が力を1つに、心を1つに立ち向かう。黄雷の少女と紫電の精霊が力強く昇華した彩りの轟雷を紡いでいった。



「轟け、彩りの迅雷!唸れ、裁きの鉄槌!!サンダーストリーム・ギガボルテージッ!!!」


「ぎゃああああッ!!」


「…そこまで!勝者、トリッシュ選手!この試合、トリッシュ軍の勝利!!」


『うおおおぉぉぉ~ッ!!』


「よっしゃああぁぁ!!アタシとヴォルトの雷の力、MAXボルテージでくらわせてやったぜええぇぇッ!!」



狂気に満ちた紫電の詩人を撃ち破り、トリッシュは歓声に包まれながら歓喜の叫び声をあげる。共に戦った4人の仲間達だけではなく、右手の薬指の指輪――雷のトパーズに宿る雷の精霊ヴォルトとも勝利の喜びを分かち合っていた。




To Be Continued…

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