第129話『蛮勇闘技~vol.19~』
シリーズ第129話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!
ビンニー国の闘技大会に挑む一行。熟練の冒険者であり憧れの存在でもある父チャールズに打ち勝ち、彩りの戦士の一員として大きな一歩を踏み出したクレアはより一層明るく一行を盛り上げていた。
「お父さんに勝つなんて凄いよな…クレア、良い戦いだったぜ!」
「ありがとう、リタ!あたしもパパみたいに強くてカッコいい人になるから、見ていてよね!!」
「おう、頼もしいのう!これからもワシら一門、共に突き進むぞい!」
「まだまだこれからだ!次はアタシらの出番、どんどん戦っていこうじゃん!!」
「そっか、もうすぐ試合が始まるんだね…頑張ってね、トリッシュ♪」
「サンキュー、姉貴!さあ、クレアの勢いに乗ってガンガンいくぜ!!」
続いてはトリッシュ班――先鋒メリッサ、次鋒ペソシャ、中堅テレーズ、副将ミモザ、大将トリッシュ――持ち前の快活さとボルテージで一行を華やかに彩る5人は目の前に迫る戦いへの意気を高めていた。
「よ~し、燃えてきた!誰だろうと搗ち割ってやる!!」
「イエーイ!私の毒の力もバリバリでぶちかますんで夜露死苦ゥ!」
「オッケー!アリーナもスタンドも、フルパワーのビートで揺さぶってやろうぜ!!」
「やっぱり戦いってのは気合いが入るな!テラコッタの騎士の力、皆に見せつけてやるぜ!!」
「みんなバリバリのボルテージだな!気合い入れてブッ飛ばしてやろうじゃん!」
5人がバチバチと電光が散るほどの闘志をみなぎらせながら戦いの舞台へと踏み出していく。熱き戦いを今か今かと待ちわびる観衆が熱気と共にトリッシュ班の面々を出迎えた。
「うっひゃ~!大歓声だ~!」
「こりゃ盛り上がってるね~♪ウチらの戦いでもっともっと沸かせてやろう!」
「やっぱり歓声が降り注ぐアリーナは格別だな!テンション上がるぜ~!!」
「相手はみんな楽器を持っているな…戦いに使うっていうわけじゃなさそうだけどね…」
「なんか妙な気配を感じるけど…たぶん気のせいだよな!よっしゃ、バリバリのボルテージでシビレさせてやろう!!」
トリッシュ班の5人は観衆の熱気を一身に受け、更に闘志を昂らせていく。敵軍は楽器を携えた吟遊詩人風の男達で、どこか浮世離れした雰囲気を醸し出している。およそ戦いとは離れた場所に居そうな印象だが、対戦相手として向かい合うトリッシュ班に対して確かに闘志を燻らせていた。
「Gランク勝ち抜き戦を開始します!両軍先鋒、前へ!」
「よっしゃ、いっくぞ〜!かかって来い!」
「頼むぞ、メリッサ!ガンガンやっつけてやろうじゃん!!」
「よっしゃ、ライブスタートだ!ベック、ノリノリでいこうぜ!」
「…はいよ。さて、いっちょやりますか」
トリッシュ班の先鋒を務めるのはスプルース国でクロムグリーンの彩りを持つ山賊姉妹の姉メリッサ。荒々しく手斧を振るい、武器の短刀を携えた敵軍先鋒ベックに立ち向かっていった。
「うおらぁ!でやぁ!」
「チッ、やるな…そら、挨拶代わりだ!」
「おおっと!?それぐらいじゃ私は傷付かないよ!山賊ナメんなぁ!!」
「な、何っ…!?」
『おおおお~っ!!』
筋力と胆力を以てベックの反撃を跳ね除けてみせ、観衆を沸き上がらせた。メリッサは持ち前のパワーで攻防共に力強く躍動する。観客は勿論、共に歩む仲間達も沸き上がっていた。
「メリッサ、燃えてるね~!その調子だよ!」
「そうだな、エレンのお嬢。ヴァネッサと一緒にアタシとロビンのコンビと戦ったときも良い戦いを見せてくれたよ。熱い奴だよな!」
「うん…メリッサ、この軍に入ってからすごくイキイキしてるよ。山の中の世界でも山の外の世界でもメリッサと一緒にいたけど、メリッサは戦うことが好きっていうか、こうして力を合わせることが好きだからね…2人で山賊からこの軍の仲間になれて、ホントに良かったよ!」
「ヴァネッサちゃん…これからもイキイキしたメリッサちゃんを見ていられますよ!エレン姐さんと同じ熱い心の戦士ッスからね!」
「いけいけぇ!畳み掛けろ、メリッサ!燃え尽きさせてやりな!!」
「メリッサ、山賊仕込みのパワー、見せてやれ!頑張れぇぇッ!!」
仲間達の声援を背に受け、メリッサは猛攻を仕掛ける。矢継ぎ早に荒々しく畳み掛ける様相は山で暴れ回る荒くれ者であった山賊時代の姿を彷彿させた。
「でやああぁぁッ!!」
「うがっ…!」
「よ~し、チャンス!これで決めてやる…力が湧いてきた…!」
メリッサの怪力に突き飛ばされ、ベックの体が宙に浮かび上がる。無防備な敵軍先鋒を討つべく心のボルテージを一気に昂らせていく。構える手斧にはクロムグリーンの彩りの闘気を纏わせていた。
「くらえええぇぇッ!!メリッサ・トマホーク!!」
「ぐあああッ…!!」
「そこまで!勝者、メリッサ選手!」
『うおおお~ッ!!』
メリッサの鬼気迫る攻防に闘技場のボルテージも右肩上がりだ。当のメリッサも自らに向けられた熱い歓声に闘志を昂らせていく。トリッシュ班の面々も仲間の勇姿にボルテージを高めていった。
「Yeah!いいぞ、メリッサ!!すげぇRockだぜ!」
「サンキュー!よっしゃ、次は誰だ!?叩き割ってやるから、かかって来いよ!」
「さ~てと、そんじゃオレの出番だな~っと。どれどれ、気合いはぼちぼち入れていくかねぇ~」
トリッシュ班の面々と観衆が一気に沸き立つ中、敵軍次鋒のディランがどこ吹く風とばかりに飄々と前へ歩み出る。得物の棍棒を肩に担ぎながら気だるそうな様子でメリッサに向かい合っていた。
「うりゃあ!せいやぁ!!」
「お~っと、熱いねぇ…こりゃベックも面喰らうわけだな…」
「ボサッと突っ立ってるなよ!そぉれッ!!」
「うげっ…!?」
メリッサは荒ぶり昂る闘志に委ねるがまま、得物の手斧をディランに向けて投げつける。クロムグリーンの彩りを帯びた手斧はブーメランのように弧を描いてメリッサの手元へ戻る。青写真通りの奇襲を決めたメリッサは得意気にニヤリと笑いながら立て続けに仕掛けていく。
「ヘヘン、どうよ!?そぉら、もう1発!」
「ん、同じ手は食わねぇなぁ…ほいっと、ジャストミ~ト!ってなもんだ!」
「あっ!?そ、そんな!?」
ディランは表情を変えることなく、メリッサが続けざまに放り投げた手斧を棍棒の一振りで叩き落とした。一気呵成の攻勢が一転、得物が遠くに墜落し、素手になったメリッサの表情に焦燥の色が滲み始めた。
「んん~…丸腰の奴をいたぶるのは性に合わねぇんだけど…どうよ、降参しとく?」
「NO!そう言われてホイホイ従ってたら山賊名乗れないっての!降参なんてするもんかよぉ!!」
「そうかい…んじゃ、遠慮なくいくぜっと!」
「グッ…なら棍棒をへし折ってやる!オラァ!」
「おいおい、んなことしちゃせっかくの拳に傷が付くだろうが…無茶すんなよぉ!!」
「ぐああっ…!」
勢いに任せた一手を読まれてしまい、メリッサは守勢どころか一方的にいたぶられてしまう。沸き上がっていた観衆は水を差したように静まり返り、真っ青な静寂が影を落としていた。
「悪く思うなよ~…ほいっと!」
「グッ…クソッ…!!」
「そこまで!勝者、ディラン選手!」
疎らな拍手の中、ディランは表情を変えることなく淡々とした様子で次なる相手を待ち構えている。余裕さえ感じさせる様相は熱い心同士がぶつかり合う熱戦を期待した観衆を唖然とさせていた。
「悪りぃ、負けちゃった…まだまだ世の中には強い人がいるね…」
「メリッサ…ナイスファイトだったよ!ゆっくり休んでくれ」
「あとは任せときな!このペソシャが敵を討ってやる!」
トリッシュ班次鋒はアーセニックグリーンの彩りを持つ毒の戦士ペソシャ。毒氣を帯びた弓矢を得物とする毒の弓兵だ。普段は他の毒の戦士達よりも少し控えめな印象を受けるが、AKロックを中心にロック音楽を好み、トリッシュとは密かに親睦を深めていた。トリッシュと確かな絆を紡ぐ毒の戦士は勇んで敵軍次鋒ディランに対峙し、彩りの力を惜しみ無く振るった。
「ピトフーイスラッシュ!」
「ぐおわっ!?お次は弓使いか…それなら懐に飛び込みゃなんとかなるかねぇ…」
「させないよ!ピトフーイフェザー!」
「くう~…やっぱり向こうも承知の上ってところか…さっきの斧使いの姉ちゃんみたいに投げつけるか…?いや、う~む…」
「何をブツブツ言ってるんだよぉ!?ガンガンいくぞオラァ!!」
劣勢に立たされているにも関わらず相も変わらずぼんやりとしたディランに対し、ペソシャは容赦なく休みなく毒の矢を放つ。客席で見守る毒の戦士達はペソシャの躍動を嬉々として見つめていた。
「うおおお~!いいぞいいぞ!その調子だ、相棒!」
「ペソシャさん、トリッシュさんと仲がよろしいですからね。此度の闘技大会でもトリッシュさんと組めることを喜んでいましたから、きっとトリッシュさんと共に戦うことがペソシャさんの力を更に引き出しているのでしょう」
「フェトルの言う通りだがや!今回の闘技大会でわっちら毒の戦士達もいろんな仲間と一緒に戦えて、良い経験になるがや!」
「ええ。そうね、ドゥイヤオ。あたくし達の彩りは友愛のもとに様々な色と交わることでより一層美しくなる…素敵なことね。ウフフッ…」
紡がれる絆のもとに毒の彩りが深みを増していくことを皆が歓迎していた。その頃、攻勢に立っているペソシャの毒の力が守勢に立たされているディランに更に追い討ちをかける。
「んん?な、なんだ…?体が、重いなぁ…立ってらんねぇぜ…」
「よっしゃ、効いてきたね!どうよ、ウチの彩りの力、ウチの毒の味は!?」
「そうかい…全部あんたの手の内か…若いのに強かな奴だねぇ…」
ペソシャはメリッサの敵を討たんという意思を再び燃やし、達観した物言いのディランに向けて弓矢を構える。迷うことなく、躊躇うことなく、昂る毒の彩りの力を思い切り解き放った。
「コイツでフィニッシュだ!ピトフーイスラッシュ・サイクロン!!」
「チッ…仕方、ないな…」
「そこまで!勝者、ペソシャ選手!」
静まり返っていた観衆に再び火が点き始め、暖かい拍手が自然に沸き起こる。ペソシャは得物の弓を掲げ、笑顔で拍手に応えてみせる。次なる相手は敵軍中堅、果たしてトリッシュ班は痺れるほどのボルテージを闘技の舞台で魅せつけ、勝利を掴むことが出来るのだろうか?
To Be Continued…