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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
127/330

第127話『蛮勇闘技~vol.17~』

シリーズ第127話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国の闘技大会の舞台にて各々の彩りを煌めかせる一行。持ち前の明るさを以て一行を盛り上げるクレア班の中堅を務めるアーマーナイトのグラーノは熱い闘志を胸に燃やしながらクレアの父チャールズ率いる敵軍の中堅エドワードに対峙していた。



「お前…鎧を着てるってことは、ただのガキじゃないって思って良いんだな?」


「大正解!こう見えてもキチンと鍛練してるんだから、甘く見ないでよね!アーマーナイトの底力、見せてやるんだから!」


「ほう…その言葉に期待させてもらうとするか。少しは楽しませてくれよぉ!」



血気盛んな敵軍中堅エドワードは手斧を携え、荒々しく降り下ろしていく。相対するグラーノも負けじとエドワードの猛攻を鎧で受け止め、得物の槍で迎え撃つ。かつては敵対者だった彩りの戦士はクレア班の一員として共に戦っていた。



「でやぁ!そぉらぁ!!」


「ぬるいぬるい!そんな攻撃じゃ鎧に掠り傷も付かないよ!」


「クソッ、どんな硬さしてんだ!ホントにただのガキじゃねぇ…!」


「ヘヘン、戦いの年季が違うんだよ~!ほらほら、押し切っちゃうぞ~♪」



グラーノは得意気に笑いながら、ジリジリと間合いを詰めて追い込んでいく。かつては邪教戦士ジャッロの無念を晴らすべく、ならず者として一行に刃を向けた敵だったが、リモーネ率いる巨大傭兵団との戦いの後、祝福の証の彩りが紡ぎ合う絆のもとに一行に加わった。ポテトイエローの彩りを持つ重装兵は彩りの戦士の一員として惜しみ無く己の力を振るっていた。



「グラーノ、良い調子だな。前に傭兵団にいたときよりも強くなった気がするよ!」


「そうだね、リベラ。やはり正しき道を歩めば彩りの力は強くなるってことか…!」


「あれだな~、グラーノはいつだって頼りになる相棒なんだな。きっと勝てるんだな、うん」


「グラーノ、その調子!ドルチェ自警団アーマーナイト部、ガンガン突き進め~!!」



仲間の声援を受けたグラーノは全身に闘志をみなぎらせ、胸の内の炎を赤々と燃やす。ポテトイエローの彩りの闘気を纏う槍を思い切り良く前に突き出しながら猛烈な突進を見舞った。



「これで倒れちゃえ!ラポムドゥテール・タックル!!」


「がはああッ!」


「そこまで!勝者、グラーノ選手!」



観衆の暖かな拍手に包まれる中、グラーノは得物の槍を地に突き立て、ニカッと笑う。屈託の無い明るい笑顔は共に戦うクレア班の面々はもちろん、客席で見守る一行の心をも明るく照らした。



「やっほ~い!勝ったよ~!やったやった~!!」


「やったね、グラーノ!その調子だよ!行け行けぇ~!」


「ほう、クレアの仲間達、やはり強いな…ルイさん、お願いします」


「うむ、任せたまえ。さて…久しぶりに本気を出すとしよう。まだまだ若い者には負けていられないからね」



敵軍副将は白髪交じりの頭髪と口髭を綺麗に整え、手入れの行き届いたカーキ色の探検服を身に纏うルイという老紳士風の男だった。右手に杖を携え、ゆったりとグラーノに歩み寄る。穏やかに微笑む姿は敵対する者とは到底思えない。グラーノは対峙する敵軍副将を呆気にとられた様子で迎えていた。



「お、おじいさん…?アタシ強いんだからあまり無理しないで、客席で見てた方が良いんじゃないの~?」


「おやおや、あまり相手を嘗めてかかるのは関心しないな。私も黙って負けるつもりはないから、そのつもりでかかって来なさい」


「うっ…確かに副将さんだから油断大敵だね…はいっ!よろしくお願いします!」


「うむ、良い返事だ。では、始めるとしようか!」



ルイは穏やかな物腰のまま、得物の杖を振るう。対するグラーノは再び闘志を昂らせ、堂々たる姿勢で迎え撃っていた。



「とうっ!せいっ!!」


「うりゃあッ!てぇいッ!!」


「むうっ…なかなかやるな。エドワードに勝った実力は確かなものということか…」


「そりゃもちろん!アタシはアーマーナイトとして、たくさん仲間達を守ってきたんだから!この鎧は飾りじゃないよ!!」


「ほう…ならばこれならどうかな?…せいやっ!」


「うえぇっ!?」


「グ、グラーノ!?」


「あわわわ…杖の中から剣が…!!」



杖の柄を振り抜くように構え、一瞬のうちに切り払う。ルイの得物は杖ではなく細身の剣――仕込み杖だった。グラーノは隠し武器による奇襲に怯み、瞬く間に守勢に立たされていった。



「うう…あわわわ…」


「どうした?動きが止まっているぞ?君の戦いの誇りが染み込んだ鎧がただの的になってしまっているのは口惜しいな…だが、手加減は無しだ!」


「クッ…このまま負けるわけには…!」


「これは見切れまい!せいやあぁッ!!」



ルイは穏和な物腰という名の仮面に隠していた牙を剥き、美しい刺突の応酬を見舞う。敵軍副将ルイは戦慄したグラーノに対し僅かに慈悲を滲ませながらも、敵対する者として非情な色も見せていた。



「君に恨みはないが、悪く思わないでくれ…覚悟!!」


「うわああぁぁッ!!」


ガシャン!ガシャン!!


「…そこまで!勝者、ルイ選手!」



ルイが目にも留まらぬ疾駆で払い抜けるや否や、グラーノは鎧の重々しい金属音を立てながら倒れた。仰向けに倒れたグラーノは悔しさを滲ませながらも、清々しい表情で天を仰いでいた。



「ふう…どうにか勝てたか。亀の甲より年の功とはよく言ったものだね」


「ごめ~ん…負けちゃったよ…イタタ…」


「グラーノ、お疲れ様!あのルイさん、おじいさんだと思ってたけど、すごい速さだなぁ…ラミウム、お願いね!」


「うん、任せて!手強そうな人だけど、全力を尽くすよ!」



クレア班の副将は銀色の鎧を身に纏うテラコッタの鉱騎士ラミウム。かつてはブルーノ国と隣り合う鉱山の国であるズオンソー国の辺境警備兵だったが、鉱物資源の視察に訪れたローザに魅入られ、彼から直々にラブコールを受けてテラコッタの騎士となった。明朗で礼儀正しく、テラコッタ領の人々からも愛される人物である。意気揚々と戦いに挑まんとする鉱騎士の左手には金属光沢を湛えたアルミニウムグレーの紋様がキラキラと輝いていた。



「むむ…騎士の方かな?」


「はいっ!ブルーノ国テラコッタ領の騎士、ラミウムと申します!全力を以てお相手しますゆえ、よろしくお願い致します!」


「うむ、良い心がけだ。先ほどのグラーノさんも良い腕前だったが、君とも良い戦いが出来そうだよ…手合わせ願おうか!」


「謹んでお受け致します!いざ、尋常に勝負!!」



清々しい挨拶が交わされ、副将同士の戦いの火蓋が切られる。テラコッタの鉱騎士ラミウムはライフルの大きな銃身を槍のように構え、猛々しく振るっていた。



「えいやっ!とうっ!」


「はあっ!てやあぁッ!」


「むむ…さすがは騎士…無駄の無い動きに隙の無い構え…誉れ高き騎士のたゆまぬ鍛練の賜物か…」



ラミウムの力強くも洗練された戦いぶりは美しく、腕利きの敵軍副将ルイも舌を巻くほどの練度を見せる。共に主君ベガに遣えるテラコッタの騎士達も同志であるラミウムの健闘に目を細めていた。



「うむ、見事だ。ラミウムはここ最近、どんどん腕を上げているな!」


「そうだな、マリー様。ラミウムはいつだって前向きだから、この機会も喜んでいたもんな~!やっぱり人と人とが手を取り合うって美しいぜ!」


「ヒーザーの言う通りだな!これもこの彩りがもたらす絆の力、っていうことか …」


「そうね、ミモザ。ベガ様がこの軍の一員として一緒に戦うことを薦めてくださったのは、たくさんの仲間と共に歩むこと、たくさんの絆を大切にすることを伝えたかったのかな?」


「その通りだな、サルビア!我等の力は間違いなく更なる高みに至らんとしているッ!!ベガ様の御心はかくも美しいぃッ!!!」


「…ランディニ、周りの人が見てる…騒がしいわ…」



ラミウムは素早く間合いを離し、迷いなく引き金を引く。赤々と燃えながら駆ける弾丸はラミウム自身の闘志を体現しているようだ。



「行けっ!当たれッ!!」


「ふむ、銃使いか…ならば間合いを詰めて一気に――」


「させるかッ!!」


「むううっ!?」



ルイが一気に懐に詰め寄ろうとした刹那、ラミウムは銃身に取り付けていた銃剣を逆手に構え、素早く振り抜く。ルイが一歩後ろへと下がり、ラミウムの有利な間合いになっていた。騎士の誇り、仲間への想い、主君への忠義――銃身に彩りの力と共にありったけの“心”を詰め込んだ。



「我が祖国の鋼の煌めき、受けてみよ!テラコッタ・ラスターキャノン!!」


「グッ…!!み、見事…君に敗れるならば、本望だ…」


「そこまで!勝者、ラミウム選手!」


『おおおぉぉぉ~ッ!!』



両者共に真摯に向かい合った堂々たる戦いを祝福する歓声が包み込む。ラミウムは相手への礼節と畏敬の念を忘れることなく、最敬礼を以て敵軍副将ルイに敬意を表した。



「ふう…良い戦いでした。ルイ様、感謝致します…」


「…ああ、負けて悔い無しだよ。すまない、チャールズくん…あとは頼んだよ…」


「はい、任せてください。さて、いよいよ私の出番か…娘と共に歩む仲間と相対するのは楽しみなような、気後れするような…」


「クレアの御父上…!」



遂に敵軍大将であり、クレアの父であるチャールズが戦いの舞台へと踏み入る。ラミウムの瞳の一点に視線を突き刺すと、瞳に闘志を燃やしたまま表情だけを緩めていた。



「ルイさんを倒すとは、相当な腕前なのだろうね。だが、私も大将として簡単に負けるわけにはいかない。互いに本気でいこう!」


「はいっ!いざ、勝負!テラコッタの騎士ラミウム、参ります!」



敵軍大将チャールズはメイスを得物として構え、背には使い込まれた風合いのリュックを背負っている。大将としての確かな闘志を昂らせ、ラミウムの懐に飛び込んでいった。



「うおおっ!どりゃああッ!!」


「クッ…つ、強い…!」


「どうしたんだい?ルイさんに勝ったなら、その程度ではないはず。さあ、かかって来るんだ!遠慮するな!!」



チャールズの闘気と勢いに気圧され、ラミウムも組み止めるのが精一杯だ。ルイとの戦いが嘘のような劣勢に仲間達も心配そうに見つめていた。



「ん~…チャールズさん、大将だから簡単には勝たせてくれないだろうね…」


「そうですわね、エーデルさん。もしラミウムさんが負けてしまったら、クレアさんは御自分のお父様と戦うのですわね…お察しすると、胸が痛みますわ…」


「そうね、ラナン。出来ればラミウムが決めてくれた ら良いんだけど…」


「俺はさっきからリュックが気になるな…アミィみたいにいろんなものを取り出して戦うかもしれないぜ…」


「ああ、一理あるな。何を仕掛けてくるかわからないのは厄介なものだ…」



ラミウムは勇気を振り絞り、彩りの力を解き放つ。有利な間合いと攻勢を保つべく、アルミニウムグレーの彩りを纏った銃口を向けた。



「メタルバレット!」


「うおっ!やはり間合いが遠いと強いな…さて、どうするか…」


(よ~し、なんとか離せた…このまま間合いを詰められないように――)


「隙あり!そこだっ!!」


「うわっ!?」



チャールズの手元から長い縄が放たれ、ラミウムの足下を掬う。先端に三つ股の鈎爪が取り付けられたロープだった。リュックに潜んでいたロープは脚を縛るだけではなく、鈎爪で切りつけ、足を奪っていた。



「クッ…痛い…!」


「そぉら、今だ!」


「し、しまった…!!」



一気に間合いを詰められ、畳み掛けられてしまう。更にチャールズの探検服のポケットから鋭い白銀が姿を現し、ラミウムは戦慄した。



「逃がさないよ。離れたらコイツが飛んで来るからね…?」


「ひいぃっ!?ナ、ナイフ…!?」


「おっと、騎士様は意外と臆病なんだね?なら遠慮なく…そぉれっと!」


「クッ…クソッ…!!」



白銀に輝く切っ先が喉元に近付けられ、ラミウムの表情が恐怖に翳る。チャールズがポケットから取り出したのはサバイバルナイフだった。敵軍大将チャールズの手段を選ばぬ強かな戦法に怯まされ、ラミウムはほぼ棒立ち状態に陥り、為されるがままだ。



「そらそらぁ!」


「クッ…ううっ…!」


「さあ、覚悟!くらうがいい!」


「うわあっ!み、見事…!」


「そこまで!勝者、チャールズ選手!」


「ラミウム、お疲れ様…大丈夫?」


「うん、大丈夫だよ。クレア…貴女の御父上、強い御方だね…でも、貴女なら大丈夫!皆と一緒に応援してるからね!」


「ラミウム…ありがとう…」



副将ラミウムが敗れ、遂に大将クレアの出番となった。クレアは自らの出番が訪れたが、実の父親であるチャールズに得物を向けることに対して不安感を抱いていた。娘の表情からその心中を察したチャールズは“敵軍大将”ではなく“父親”の顔になっていた。



「…パパ…」


「クレア、遠慮することはない。互いに敵として向かい合っているんだ。パパに旅で仲間達と一緒に得たものを示し、勝ってみせなさい!」


「…はいっ!!」



クレアは決意を固め、父チャールズへと立ち向かっていく。親子でありながら敵軍大将同士――数奇な運命の巡り合わせは奇妙な戦いの物語を紡いでいく。果たしてクレアは父チャールズに打ち勝つことが出来るのだろうか?




To Be Continued…

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