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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
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第120話『蛮勇闘技~vol.10~』

シリーズ第120話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国の闘技大会の舞台にて熱き戦いを繰り広げる彩りの戦士一行。カラフルな彩りが鮮やかに華やぐアミィ班の中堅を務めるキウイグリーンの弓兵ヤンタオが食欲に突き動かされてオトロヴァを蹴散らした敵軍中堅カブレラと対峙していた。



「てぇやぁぁッ!!」


「グフッ!鬱陶しい奴だぜ…うらぁ!!」


「それっ!はぁッ!!」



ヤンタオはカブレラの猛攻を必死に避けながら自慢の速射で応戦する。フルウム国の平和を守る自警団で培われた巧みな弓術は洗練された技巧を伴っており、ヤンタオ自身の凛とした意思を体現していた。



「行けッ!当たれッ!!」


「うおおぉらああぁぁッ!!」


「ゆ、床を壊すなんて…それっ!てぇやッ!!」


『おおぉぉ~…!』



カブレラが降り下ろす剛腕が荒々しく唸りをあげる。闘技場の舞台が砕け、いくつもの岩の塊になって舞い上がる。自身に襲い掛かる岩雪崩をヤンタオは自慢の速射で次々に撃ち落とし、観衆の視線と心を一点に集めた。



「ヤンタオ、すごいね!昔から速射が売りだったけど、前より更に速くなってる気がするよ!」


「そうだな~。ま、ヤンタオはアタシと違って真面目も真面目、クソ真面目だからなぁ~…」


「ヤンタオさん…カッコいい…」


「セレナ…顔が紅いわよ?熱でもある?」


「だ、大丈夫だよ、エレナ…ヤンタオさん、頑張って…!」



ドルチェ自警団の仲間達が見守る中、ヤンタオは磨きあげた自身の闘技を以て毅然とした意思で立ち向かう。瑞々しいキウイグリーンの彩りが戦いの舞台で躍動していた。



「グウヒヒィッ!」


「くらいなさい!ヤンタオ・リューフェン!」


「どぉりゃああぁぁッ!グヒヒヒヒイィッ!!」


(この腕力…!凄まじい威力だわ…間合いに気を付けないと…な、何かしら?様子がおかしいような…?)



間一髪だった。被弾は免れたものの、直撃を受ければ大打撃――カブレラの圧倒的な腕力を目の当たりにし、ヤンタオの表情に焦りが滲み始める――それと同時にカブレラの動作が鈍り始めた。顔からは血の気が引いて真っ青に染まり、元々鈍重だった動きが輪をかけて鈍くなっている。手に汗を握りながら見守る観衆が俄にざわめき始めた。



「グヒヒイィッ…!?」


「な、なんや!?あの大巨人、いきなり苦しみだしたで!?」


「あれは…恐らく毒でごわす!オトロヴァの毒が回ったのでごわす!」


「超大チャンスじゃ~ん!ヤンタオさん、アゲアゲでやっちゃえ~!」


「私の力が奴に通じたのね…ヤンタオ、お願い…!」


「オトロヴァ…みんな…ありがとう。さあ、覚悟なさい!」


「ウゲッ!?ゲヒヒィッ…!」



共にアミィ班の一員である次鋒オトロヴァが戦った証であるケミカルブルーの色彩の恵みを受けたヤンタオは好機とばかりに電光石火の勢いで次々に矢を放つ。休み無く畳み掛ける連射はキウイグリーンの閃光となって駆け抜けていき、一矢も外れることなくカブレラの体に突き刺さっていた。



「これで仕留めるわ!ヤンタオ・ジーフェン・グォンフージェン!!」


「グヒヒイィッ…!!」


「そこまで!勝者、ヤンタオ選手!」


『うおおぉぉ~ッ!!』



華麗に闘技の舞台を舞うヤンタオの華麗な連撃に観客も沸き上がる。戦いの中で絆を紡ぎ合うオトロヴァの彩りの恵みに背を押されたヤンタオは得物の弓をキウイグリーンの紋様が凛と煌めく左手で掲げ、仲間達と観衆の声援に応えていた。



「よっしゃああ!!ヤンタオ、見事でごわす!!」


「ヤンタオさん超イケイケじゃ~ん!アゲアゲでブッ飛ばしちゃって~!」


「良かった…私の毒がヤンタオの力になれたわ…」


「ヤンタオ姉ちゃん、ナイスファイトやで~!その調子で頑張ってや~!」


「グヒィ…メヒアの兄貴…すまねぇ…」


「ったく、手負いの相手を襲おうとするわ毒を食って自滅するわ何やってんだよ…リーダー、俺に任せておきな」


「……」



味方であるカブレラに呆れながらも前に躍り出た敵軍副将は筋骨隆々のメヒアという男だった。肉弾戦を得意とする彼は試合が始まるや否や一気に間合いを詰め、ヤンタオを瞬く間に追い詰めていく。攻める暇も与えずに荒々しいラッシュを休み無く浴びせた。



「オラァ!オラオラァッ!!」


「クッ…速い…!」


「おっと、簡単に撃たせねぇぜ!?そぉらあぁ!!」


「うあぁッ…!!」



ヤンタオは弓を構える余裕も無く矢を叩き落とされ、瞬く間に劣勢に立たされた。優位に立てる距離を保ち攻勢を掴めば滅法強いが、間合いを誤れば一気に守勢に立たされてしまう――様々な得物を扱うアミィ班ならではの泣き所である。ヤンタオはメヒアに有利な間合いを掴まれてしまい、カブレラとの一戦が嘘のように劣勢を強いられていた。



「うおぉりゃああぁぁ!」


「クッ…当たれ、ヤンタオ・リューフェン!」


「ケッ、当たるかよぉ!どりゃああぁぁ!!」


「うあぁッ!強い…参り、ました…」


「そこまで!勝者、メヒア選手!」



ヤンタオは一矢報いる猶予さえ与えられないまま呆気なく倒されてしまった。先程のカブレラとの一戦でヤンタオの闘技に魅せられていた観衆は一気に凍り付く。水を差したような静寂が青々と広がっていた。



「アミィちゃん、みんな…ごめんなさい、負けてしまったわ…」


「ヤンタオさん、ドンマイドンマイ!とりまウチがリベンジしちゃうから、任せといてよ~!」


「カメリア姉ちゃん、頼むで!手強そうな人が出て来たし、正念場や~!」



アミィ班副将を務めるテラコッタの華騎士カメリアが闘志を燃やしながら戦いの舞台へと飛び出す。鮮やかな金髪にマゼンタの鎧を身に纏った姿は闘技場の舞台には一際目立つ。かつてはノリの軽い今時の若者だったが、暇潰しに参加した闘技大会でローザの目に留まったことと、カメリア自身が気乗りしたことによる所謂“気まぐれ”で騎士に推薦された異色の経歴の持ち主だ。やる気にムラがあり、任務へ取り組む意欲にも波があるものの、強い仲間意識と持ち前の明るさによってテラコッタ・ソシアルナイツのムードメーカーの役割を果たしている。マゼンタの鎧に身を包む華騎士の左手にはカメリアピンクの紋様が華やかに彩られていた。



「なんだぁ?鎧着てるくせにチャラチャラしたガキだな…ここは遊び場じゃねぇんだぞ?」


「はあ!?そんなことわかってるし!マジナメんなって感じ~!」


「チッ、面倒臭そうな奴だな…来るなら来い!少しだけなら遊んでやる!」



カメリアは得物の杖を構え、敵軍副将メヒアに向かい合う。彩りの力を媒介する武器でありながらカメリアが独自の装飾を施したオリジナルの一品だ。華やかな得物を振るい、テラコッタの地で養った騎士の誇りと彩りの力を以て戦いの舞台で躍動していた。



「うおおぉらッ!!」


「よ~っと!そぉれ、ジャストミイイィィト!」


「何ぃ!?このガキ、強い…!ちょっと間合いを取るか――」


「マジで逃がさないし~!いっけぇ~ッ!!」


「うげっ!?バ、バカな…!?」



カメリアの彩りの力が杖から具現化し、メヒアを捉えていく。逸速く有利な間合いを掴み、メヒアの御株を奪っていく戦法はしたたかささえ感じられる。カメリアピンクの彩りが杖を煌めかせ、鮮やかに耀いていた。



「ウチの彩り、超キラキラじゃ~ん!コメットシュート!」


「うぉわっ!クソッ、こうなったら…そらよぉ!!」


「ちょっ、マジ~!?前が見えないとかヤバくな~い!?」


(よし、今だ…砂埃が晴れるまでに畳み掛ける!)



メヒアは足下を蹴り上げてカメリアの視界を砂埃で遮り、優勢を取れる間合いへと駆けていく。カメリアは杖で払おうとするが、なかなか砂埃は晴れない。勝機を悟ったメヒアは得意気に笑みを浮かべながら一気に懐へと詰め寄っていった。



「あ、足音…近付いてんじゃん!?」


「うおおああぁぁッ!!」


「そこにいるって感じ?コメットシュート!」


「ぐおわっ!?し、しまった…!!」


「超ラッキー!パリピでノリノリ、超アゲアゲだよ~!!」



幸運の女神がカメリアに微笑み、カメリアピンクの紋様が華やかに煌めく。昂る闘志を得物の杖に収束させ、一気に爆裂させた。



「我が祖国のキラキラパワー、アゲアゲで炸裂しちゃえ!テラコッタ・ポッピングメテオール!!」


「何だとおおぉぉッ!?」


「そこまで!勝者、カメリア選手!」



メヒアは華やかに煌めく爆風に呑まれ、天高く吹き飛ばされる。数秒宙を舞った後、地面に全身を叩き付けるように倒れた。カメリアは勝利を喜び、無邪気に跳び跳ねながら勝利の舞いを踊る。が、敗れたメヒアは悪戯な笑みを浮かべていた。



「イエーイ!超ブッ飛んだじゃ~ん!このままイケイケで余裕で勝ちっしょ!」


「フフッ…そいつはどうかな?ウチのリーダーを見て泣くんじゃねぇぞ…リーダー、頼んだぜ!」


「あ~、やっとフード取ったじゃ~ん…って…そんな!?ど、どういうこと…!?」


「こ、これは!?彼女の体はいったい…!?」


「や、やはり貴女は…!」



客席で見守る獅子座のミノアが抱いていた予感は的中していた。無言のまま立ち上がり、ベールを脱いだ敵軍大将の姿に相対するカメリアはおろか正体を知っていた敵軍の4人以外全員が驚愕する。敵軍大将は女性であることだけは明らかだが、正中線を境目にして左右の髪と肌の色が全く違っている。燃えるような赤い髪と大地のような褐色の肌の左半身――冷ややかな青の髪と雪のように白い肌の右半身――相反する2つの彩りが1つの肉体に同居しており、極めて異質な雰囲気を醸し出している。対峙するカメリアは絶句し、立ち尽くしていた。



「あ…あ、あ…」


『あらあら、言葉も出ないみたいね…私達から自己紹介して差し上げましょうか』


『おうよ。おい、派手な鎧の嬢ちゃん、耳の穴かっぽじってよく聞いてろよ!』


《我が名は双子座のツヴァイ!いざ勝負!!》



更に奇妙な事態は続く。喋っているのは同一人物であるにも関わらず口調と声色が明らかに変わっている。別々の声色が同じ名前を名乗っているが、凍り付いたカメリアの耳には全く聞こえていない。客席で見守る仲間達も騒然としていた。



「ミノア…彼女を知っていたのですか?」


「ええ。双子座のツヴァイ…私達と同じ天駆ける星座の戦士です。普段は単独で傭兵業をしながら大陸各地の探査をしている探検家なのですが、まさかこんなところで会うなんて…!」


「…彼女は戦士としても優秀。気の抜けない相手よ」



水瓶座のヴィボルグが“優秀な戦士”と形容する双子座のツヴァイと名乗る女性は2人の人格が1つの肉体を共有しており、左半身と右半身で人格が異なっているらしい。褐色の肌の左手には赤と青、相反する彩りが隣り合わせに共存するツインヴァリーの紋様――2つの色彩が共存する祝福の証が彩られていた。



『あ~りゃりゃ、派手な鎧の嬢ちゃん、固まっちゃってるよ…でもぼちぼち始めなきゃなぁ!』


『ええ、そうしましょう。騎士のお嬢ちゃん、すぐに終わらせてあげるわ。悪く思わないで!』


「クッ…!!」



敵軍大将である突如として立ちはだかる異端の存在を前に石になったように動けないカメリア。双子座のツヴァイはどのような彩りの力を操るのか?彼女を討ち倒す術はあるのだろうか?アミィ班よ、鮮やかな絆を紡ぎ、鮮やかな勝利を掴め!!




To Be Continued…

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