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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter2:アルニラム篇
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第12話『青き魔女』

シリーズ第12話目です。どうぞごゆっくりお楽しみください!

ブラン教皇国にて共同墓地に眠る亡骸を傀儡としていた魔族七英雄カストルと対峙した一行。心優しきシスターの少女ネイシアを新たな仲間に加え、ブラン教皇国の宿屋から発とうとしていた。



「さて…これからどうしましょうか?」


「そうね…帝国からいきなり放り出されちゃったからね…どうしよう、トリッシュ?」


「なんでだよ!う〜ん、どうするかな〜…この人数で飛行機じゃ金がかかるよなぁ…」


「そうでしたか…では、隣国のアイボリー国から船に乗りましょう。ここから南西の方角です。」


「決まりですわね。では、アイボリー国に向かいましょう。この使命の向かう先へ…」



一行がアイボリー国に向けて歩き始めたところに見覚えのある人影が浮かぶ。モニカ達をコバルト岬へ案内した吟遊詩人だった。コレットが無邪気な笑顔を浮かべながら駆けていく。



「わあ、詩人さん!また会ったね!こんにちは〜♪」


「お久しぶりです。おや、新しいお仲間がたくさん増えたのですね。とても賑やかになったものです。」


「なんだい?あんた、モニカ達の知り合いかい?なかなか男前じゃないのさ!」


「おや、これはこれは…ありがとうございます。モニカ様方とは一度シャルドネ侯国でお会いして以来ですね。」


「はい。それにしても、詩人さん…大変ではありませんか?旅をするにも魔物が蔓延っていますから…」


「心配には及びませんよ。そもそも私には…いや、なんでもありません。ところで、みなさんはこれからどちらへ?」


「アイボリー国へ行って船に乗んねん!でもそこからどないしよかがまだ決まってへんのや…魔族なんちゃらとかいう変な人らも出てきたし…」


「そうでしたか。では、こちらのタロットで占って差し上げましょう。ただ、そんなに大層なものではないので、ヒント程度ですが…いかがでしょうか?」


「はい。お願いします。」



詩人はタロットの束を切ると虹色の宝石の首飾りを外し、束の上にかざして念じ始めた。虹色の宝石は太陽の光を浴びて美しい彩りで輝いている。しばしの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。



「南東の最果て。機械が支配する忘れ去られし孤島…魔の根源を知り尽くす者在り…そして、このカード…“戦車”。“戦車”は“援軍”に通ず…」



モニカ達は息を飲んで詩人を見つめる。詩人は首飾りを着け直し、再び穏やかな表情を見せた。



「遥か南東の最果てに、機械に閉ざされた島があるはずです。そこに行き、皆様の道標を示す方に会ってみてください。必ずやみなさんの力となってくれるでしょう。」


「魔族の手掛かりが南東の果てにあるのですね…探してみましょう。」


「南東の…機械に閉ざされた、島…ガンメタル島のこと!?」


「クレア、知ってるのですか?」


「うん…パパから話を聞いたことがある。島中が機械やコンクリートで自然が息づけないし、暴走したコンピューターやロボットが氾濫していて、とても人間が住めるような場所じゃないって…危険過ぎるよ!」


「四の五の言うてる場合か!ワシらの使命を果たすためなら藁にでもすがるんじゃい!遮二無二前に進むしかないじゃろうが!!」


「そうね。クレアの言うことも事実として念頭に置くべきだと思うけど、ステラの言うことも間違ってない。可能性がある限り、それに賭けてみましょう?」


「ステラ…フェリーナ…」


「クレアさん…えっと…1人じゃない、ですよ…怖い…かもしれない、ですけど…」


「その通りッス!熱き絆で結ばれた自分らがついてるッス!ガンガン突き進んで行くッス〜!」


「みんな…うん、頑張る!アイボリー国からすぐ行けるかな?」


「すみませんが、それは解りかねます。どうか道中お気を付けて。」


「ありがとうございました。手掛かりを探しに、ガンメタル島に向かいましょう!」



ガンメタル島へ向けて進むことを決めた一行はアイボリー国を目指す。穏やかで柔らかな空気が一行の心を和ませる。



「ネイシアさん、アイボリー国はどのような国なのですか?」


「ブラン教皇国一帯の玄関口です。ブラン教の宣教師達によって作られた煉瓦造りの町が中心となっていますよ。」


「海沿いの町も久しぶりだよな…俺、実はけっこう海が好きなんだよね。」


「あら…リタさん、海がお好きなの?マリン州にある私の別荘は海沿いで、透き通った青い海を望むことが出来ますわ。よろしかったらご一緒しません?」


「ルーシーの別荘か…行ってみたいけど、俺には敷居が高そうだなぁ…」


「ウフフ…そんな遠慮なさらないで。大切な友達であるみなさんなら大歓迎ですわよ?」


「そっか…ならいつか一緒に行こうな。俺も楽しみにしてるぜ!」



一行はアイボリー国に到着した。古典的な雰囲気の煉瓦造りの建物が建ち並び、海が穏やかに波打っている。が、そんな街の色合いに反して慌ただしく緊張した空気が走っている。



「旅の方々、助けてくれ!魚の化け物が出たんだ!何人か逃げ遅れて、襲われてしまった…」


「なんだって!?そりゃまた聞き捨てならないねぇ!あたいらに任せときな!」


「ほな行こか!任務開始や〜!」



船着き場に駆けていくと、手足の生えた魚の魔物達が武器を持って暴れ回っていた。湿り気を帯びた足音が不規則に響く中、モニカとエレンが先陣を切り、魔物達へ向かっていく。



「せいやぁっ!」


「そおれっ、くらえ!」


「ヴオォオォ…」



皆も次々と続き、畳み掛けていく。祝福の証の使命に突き動かされるまま、少女達の彩りが魔物達を駆逐する。



「龍尾返しじゃ〜い!」


「サンダーストリーム!」


「ヌヴヴヴアァ!」


「ストーンフォールズ!」


「ウインドカッター!」


「グヴゥアァアッ!」


「ダークスフィア!」


「熱き闘魂のストレートッス〜!」


「ヴオォオォ!」



魔物を蹴散らし奥へ進むと、数名の船乗りが傷を受けて横たわっている。カタリナとネイシアが声を揃え、その優しき力を解き放つ。



『ファーストエイド!』



柔らかなピンクの光が包み込み、船乗り達の傷が瞬く間に癒えていく。モニカ達の活躍によって船着き場は徐々に穏やかな空気を取り戻しつつあった。



「うう…ありがとう、助かったよ。」


「大丈夫か?いったいどうしてこんなことになったんだ?」


「いきなり海から青い顔した女が出てきて…途端に魚の化け物達で占拠されちまって─」


「あら…私の楽しみを邪魔しに来たのは貴女達ね?」



声のする方を向く。が、誰もいない。ただ静かに波が寄せるだけであったが、再び声が響く。



「怖がることはないわよ…私はちゃんと、ここにいるわ。」



激しいうねりを見せる水面から1人の女が姿を現した。船乗りの話した通り真っ青な顔をしている。彼女は涼しげな表情を崩さぬまま、一行に近付いてきた。



「はじめまして。私はアルニラム。魔濤隊隊長、魔族七英雄の1人として通っているわ。」


「貴女も魔族…人々の安寧を乱して何になるというのです!」


「野暮な質問ね。私は私個人の楽しみでやってるだけよ。魔族としての理想なんて、あんまり興味ないし…ただ…貴女達2人の“水”を司る力と“氷”を司る力…それは興味深いわね…」



アルニラムはルーシーとカタリナの眼前まで歩み寄り、2人の顔をジッと見つめた。ルーシーの水色とカタリナの青が美しく煌めく。カタリナの眼鏡の奥の瞳は鋭い光を帯び、ルーシーも毅然とした表情でアルニラムに向き合う。



「私達には…守るべき人、大切な仲間がいる。魔族には絶対に負けない!」


「この力は…私に託されたものです。貴女方の思い通りにはさせませんわ!」


「フフフ…でも今日はもういいわ。邪魔されちゃって気分が乗らないもの。じゃ、また会いましょ♪」



アルニラムはルーシーとカタリナを翻弄するかのように身を翻し、水面に巻き上げられた渦の中へと消えていった。一行は無言のまま渦がゆっくりと消えるのを見つめていた。



「また魔族七英雄…私達の使命を果たすため、彼らを討たねばなりませんね…」


「あの方、カタリナさんとルーシーさんの力を求めているようでしたわね…祝福の証を魔族の好きにさせてはいけませんわ!」


「うん!でも…あの人、顔が真っ青だったね。具合悪かったのかなぁ?」


「そんなわけないでしょ!まったくコレットは気が抜けるねぇ…ま、和むからいいけど。」


「ハハハ…そう言えば、ここからガンメタル島って行けるのか?俺ら、ちょっと用事があるんだけど…」



“ガンメタル島”と聞いた途端、船乗りの男が怪訝な表情を浮かべる。一度口を真一文字に結んだ後、頭をかきながら問い掛けた。



「えっ?君達、ガンメタル島って…本当に行くのかい?」


「あの…私達、どうしても…ガンメタル島に…行きたいんです…えっと…何か、不都合なんですか…?」


「う〜ん…何せガンメタル島へ直通の便は航行していないんだ。しかも海域が極めて危険だから、アズーロ合衆国ブルー州にある国際海洋管理機構の許可がないと行けないよ。行きたいならまずアズーロ合衆国へ行くことだね。」


「わかりました。ご丁寧にありがとうございます。」


「いいってことよ。君達には借りがあるからね。それにしても…若い女の子達が珍しいなぁ。ガンメタル島なんて廃墟マニアが興味本位で行く程度だよ?」


「まあ、堅ッ苦しいこたぁいいじゃないのさ!うら若き乙女には色々とあるわけよ!」


「アズーロ合衆国か…アタシ、一度行ってみたかったんだよな──って…どうしたんだよ…?」



トリッシュの腕に人影が重なる。カタリナだった。先程アルニラムに向けていた強い眼差しはどこにも無く、その瞳には涙が溜まり、今にも零れ落ちそうだ。



「トリッシュ…私…怖い…」


「姉貴…大丈夫。アタシが守るから。絶対に守ってみせるから…」


「トリッシュ……グスッ、うっ、ううっ…」


「ふえ…カタリナ…どうしたの…?」


「なんや…カタリナ姉ちゃん…な、泣いてんの…?」


「カタリナ…ルーシーと共にあのアルニラムに狙われていますからね。私達の力で、魔族を討ちましょう。皆で、守りましょう…」



突如泣き出したカタリナに誰もかける言葉が見つからなかった。カタリナはトリッシュの胸に抱かれながら静かに涙を流した。ガンメタル島に向け、アズーロ合衆国を目指す一行を遠巻きに見つめるのは──



(…!…このカード…“塔”…しかし、私は彼女達を…彼女達の力を信じたい。いや、信じなければ…)



To Be Continued…

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