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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
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第119話『蛮勇闘技〜vol.9〜』

シリーズ第119話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族四天王に挑むべくビンニー国の闘技大会の舞台で躍動する一行。カラフルな彩りが戦いの中で絆を紡ぐアミィ班の次鋒を務める毒の戦士オトロヴァが毒氣を纏った水瓶を携え、敵軍次鋒のボカチカと相対していた。



「さ~て、仲間の敵はこのオトロヴァがきっちり討たせてもらうよ!」


「なんだなんだぁ?洒落た水瓶なんて持ち出して…まさかソイツで戦うってのか?」


「大正解♪これが私の毒の力だよ…スライムウェーブ!」



得意気に笑うオトロヴァの紋様が妖しく煌めくと同時に水瓶からケミカルブルーのゼリー状の物体が溢れ出た。明らかに水瓶の容量を超えた夥しい量の毒氣を帯びたゼリーが闘技場のアリーナを真っ青に染める。止めどなく溢れるケミカルブルーのゼリーはボカチカの全身に絡み付き、持ち味のスピードを瞬く間に奪っていった。



「おわわわ…な、なんだよコイツは!?」


「驚いた?これが私の彩りの力、毒の力だよ!」


「クソッ、体に纏わりついてベタベタしやがる!これじゃ動けねぇ…!」


「ヘヘン、これでいただき!そぉれッ!!」


「うおっ!?うがあぁッ!!」


「オラオラァ!コイツもくらえぇッ!!」


「あぎゃああぁぁ!?」


「ちょっ、アカンアカン!オトロヴァ姉ちゃん、やり過ぎや!」


「あ、ある意味不良時代の名残かもしれないわね…さすがに乱暴過ぎるけど…」



オトロヴァは彩りの力で拘束したボカチカに軽快且つ乱暴な動きの不良格闘術で畳み掛ける。拳や脚だけでなく得物である毒の水瓶さえも躊躇い無く振るい、荒々しく殴り付ける。祝福の証のもとに集いし彩りの戦士の1人として、闘技大会の舞台で共に絆を紡ぎ合うアミィ班の次鋒として、ビアリーの臣下である毒の戦士の第1番手として、負けられないという熱い想いがオトロヴァを揺り動かす。アミィ班の仲間達が思わず慌てふためくほどに形振り構わぬ戦いでボカチカを追い詰めていった。



「おっとっと、ちょ~っとやり過ぎちゃったかな~?」


「ウググ…よくも、やりやがったな…」


「こりゃ失礼♪それよりもさあ…私の力、そろそろ効いてきたんじゃない?」


「な、なんだ!?このゼリー…か、体が痺れてきた…!」


「フフ~ン♪今更気が付いたの?ゼリーはゼリーでも毒のゼリーだよ!無料サービスの特盛で用意しているから、たっぷりと味わってよね!」


「クソッ…そうは問屋が卸さねぇよ!ぐぬぬぬぅ~ッ!!」



ボカチカは自らの全身に纏わりついたケミカルブルーのゼリーを引きずりながら無理矢理駆け回ろうとする。が、その果敢な試みは失敗に終わり、寧ろ自らの首を絞める結果となってしまった。逃げようとすればするほど毒のゼリーは体に絡み付き、蒼々とした毒が体を蝕み、どんどん自由を奪っていく。勝利が自身に歩み寄ってきたことを悟ったオトロヴァはボカチカの前に仁王立ちし、得物である毒の水瓶の口を仇なす者に向けていた。



「やれやれ、諦めの悪い人だね…さ~て、覚悟してよ~!」


「クソッ、マ、マジかよ…!」


「我が毒の力、狂乱し、仇なす者を呑み込め!ゼラチナス・バイオスプラッシュ!」


「うがああぁぁッ!た、助けて…ゴボゴボゴボッ!」


「そこまで!勝者、オトロヴァ選手!」


「ふぅ~…なんとか勝てた…ビアリー様、リーダー、みんな、勝ったよ~!」



ボカチカはケミカルブルーのゼリーの海に溺れて気を失い、目を回して倒れた。オトロヴァの勝利に客席で見守る一行――その中でも不良時代からの旧知の仲であり今は同じビアリーの臣下である毒の戦士達は強く喜びを爆発させた。



「よっしゃあ!オトロヴァが勝ったぞ!」


「イエーイ!いいぞオトロヴァ!ヴェレーノ・ノーヴェ万歳!ビアリー様万歳!!」


「ああ、あたくしの可愛い家臣…美しく輝いてるわ…素敵よ♪」


「よし、ビアリー様もお喜びだな…オトロヴァ、よくやった!」


「だ、大丈夫かボカチカ!?しっかりしろ!」


「こりゃ厄介な相手だな…カブレラ、頼むぞ!」


「あいよ…オレの出番なんだな…面倒臭いんだな…」



敵軍中堅は2メートルを優に超える長身でありながら丸々と太った体躯のカブレラという男だった。肥満体の体を揺らしながら闘争心の欠けた気怠そうな表情で闘技の舞台に踏み入る。およそ戦士とは程遠い無気力な様相は相対するオトロヴァを当惑させた。



「んん~…姉ちゃんと戦うのか…面倒臭いんだな…」


「な、なんか調子狂っちゃうけど…一気にカタを付けるよ!スライムウェーブ!」


「ゼ、ゼリー…お菓子、なんだな…むうおおぉぉッ!!」


「な、ななな!?なんてことを!?」



予想外の光景に対峙するオトロヴァはもちろん、観衆も皆が驚愕する。カブレラはオトロヴァの彩りの力である毒々しい蒼のゼリーを迷わずに口に運び、躊躇いも無く食べ始めたのだ。先程までの無気力そうな姿は影を潜め、闘技の相手であるオトロヴァを一顧だにせず一心不乱に毒のゼリーを貪り食っていた。



「コイツは驚いたねぇ…オトロヴァの毒のゼリーって食べられるのか…?」


「いや…ヤート、それはないだろう。私らの力で例外無く毒氣を帯びてるから食ったら大変なことになるんじゃないかい?最悪死んじまうか、いいとこ腹を壊すだろ」


「いやいや、諦めるのはまだ早いぞなもし。抗体を持っているあっしらなら食えるかもしれないぞなもし!物は試しぞなもし!!」


「スラッジ…ウチら不良時代に色々無茶やってきたけどさ、命は大事にしようよ…」


「ねえねえ、さっきのボカチカっていう人もだんだん体が痺れてきたから、カブレラにオトロヴァの毒が効くまでちょっと時間がかかるんじゃないのかな?」


「う~ん、イオスの言う通りならちょっとヤバくない?あんな図体で攻撃されたらひとたまりもないんじゃないの~?」


「大丈夫ですよ、トックさん。彼のような体格の人ならば循環器の機能によって毒が回るのも速いはずです。彼が倒れるのも時間の問題でしょう」


「フェトル、効いてないみたいだがや!アイツ、残さず食っちまったがや!」



カブレラは毒のゼリーを顔色1つ変えずにペロリと平らげてしまった。胃袋が満たされたカブレラはうっとりした満足気な表情を浮かべている。オトロヴァは自らの彩りの力を食い尽くされ、危地に陥っていた。



「ムフフゥ~…美味しかったんだなぁ~…グフフフ…」


「そ、そんなバカな!?毒が全然効かないなんて…!」


「なあ、姉ちゃん…もっとゼリー出してくれよ…なあ、食いてぇよぉ…!」


(クッ、これはマズい…いや、毒のゼリーを胃袋に入れたからそのうちに毒が全身に回るはず…それまでなんとか持ちこたえられれば…!)



オトロヴァはゼリーの毒が回る時間を稼ぐべく不良格闘術で迎え撃つ。が、体格の差がそのまま攻撃力の差に直結してしまい、オトロヴァは苦戦を強いられる。巨大な体躯を活かしたカブレラのパワー戦術に圧されるばかりであった。



「グヒヒヒヒィッ!ゼリー食わせろおおぉぉッ!!」


「てやあッ!はあっ!」


「ゼリイイイィィィッ!!ゼリー食わせろおおおぉぉぉッ!!!」


「ううっ…ヤ、ヤバい…コイツ、ゼリーのことしか考えてない…!」


「ゼリーゼリーゼリーゼリーゼリイイイイィィィィッ!!!!」


「クッ!ウグッ…仕方、ないな…」


「そこまで!勝者、カブレラ選手!」



オトロヴァは並々ならぬ食欲に突き動かされたカブレラの怪力に圧倒され、健闘虚しく敗れてしまった。カブレラは倒れたオトロヴァから得物の水瓶を取り上げ、中を必死に覗き込むが、目当ての蒼いゼリーは見当たらない。カブレラは全身に赤黒い怒気を纏いながらオトロヴァに詰め寄っていった。



「んんん~?このビンにゼリー入ってんのかと思ったら空っぽじゃねぇかよ…どうなってんだよ、姉ちゃんよぉ!?」


「そ…それは…」


「実はもう売り切れ、なん て言い訳は通じねぇぜ…持ってねぇなら体で払ってもらうしかねぇなぁ!」


「そ、そんな…!」


「カブレラ選手、やめなさい!失格にしますよ!?」


「そんなもん知ったことかよぉ!ゼリーを食わせねぇ姉ちゃんが悪いんだぜ!?それによく見ると美人じゃねぇか…グヒヒヒヒッ!」


「い、いやッ…!や、やめ て…!」


「ギギギッ!あのデブ、手負いのオトロヴァを襲う気ぞなもし!」


「絶対に許さねぇ!いくぞ、ペソシャ!夜露死苦ッ!!」


「おうよ、相棒!ウチらヴェレーノ・ノーヴェにケンカを売るとは良い度胸だ…袋叩きでボッコボコに――」



怒りに燃える毒の戦士達が客席と闘技の舞台を隔てる高い塀を飛び越えようとした刹那、仲間を想う真摯な一矢が真っ直ぐに放たれる。アミィ班の中堅を務めるキウイグリーンの弓兵ヤンタオだった。左手のキウイグリーンの彩りを凛々と煌めかせ、仲間を守る想いを込めた一矢はカブレラの膝頭に一直線に突き刺さった。


「い、痛てぇ…!テメェ、何しやがる…!!」


「オトロヴァはもう貴方に負けたわ。次はこの私が相手よ!かかってきなさい!」


「ケッ、オメェは食いもんは持ってなさそうだな…まあ、せいぜい退屈しのぎにはなってくれよなぁ!グフフフッ!!」


「臨むところよ!私の仲間を汚そうとしたこと、後悔させてあげるわ!覚悟なさい、食欲の亡者!!」



ヤンタオがカブレラと火花を散らす中、敵軍の大将がアミィ班の面々と審判に対して無言で深々と頭を下げる。彼らなりの謝意の表れかもしれないが、無言の謝罪に違和感を覚える者も決して少なくはなかった。



「むむ…敵将の御方が小生らに頭を下げてくださったでごわす…」


「そやなぁ…向こうのリーダーさん、やっぱ気にしとったんやなぁ…」


「でもさ~、ごめんなさいの一言も無いし~、上着のフード被ったままとかマジありえなくな~い!?マジ超失礼じゃ~ん!」


「まあまあ、形だけやけど一応謝ってもらえたんやし、フード被ってるのも顔を見せられへん理由でもあるんとちゃう?カメリア姉ちゃんの言うことも間違ってへんけど、ここは気持ちだけでも受け取っておこうや!」


「ん~…ぶっちゃけあんま納得いかないけど~、アミィがそう言うならウチもそれでいいや。ウチとアミィは心からの親友、マブダチだもんね~!」


「マブ、ダチ…?い、いつの間にそんなんになってたん?」


「さあね~、こういうのってさ、気付いたらなってるもんじゃないの~?現にこうしてウチとアミィは一緒にチーム組んでるんだし、堅いことは言いっこなしっしょ!」


「フフッ、カメリア姉ちゃんはおもろい人やなぁ…さあ、おしゃべりはこの辺にして、ヤンタオ姉ちゃんを応援しようや!」


「オッケー♪ヤンタオさん、とりま気合い入れてよろしく~!」


「ヤンタオなら絶対勝てるでごわす。武運を祈るでごわす!」


「ヤンタオさん…助けてくれてありがとう…気を付けてね…」


「アミィ、カメリア、ヴァイン、オトロヴァ、ありがとう。私は彩りの戦士として、このグループの一員として、信念を持って戦い、勝ちます!」


「グヒヒッ、捻り潰してハンバーグにしてやるぜ!グヒヒヒヒイィッ!」



アミィ班中堅ヤンタオは弓を構え直し、凛とした眼差しを敵軍中堅カブレラに突き刺す。彩りの力をも食い尽くす大男を相手にキウイグリーンの弓兵ヤンタオはどのような戦いを見せるのだろうか?そして、妖しいベールに包まれた敵軍大将は果たして何者なのか?カラフルな絆を紡ぐアミィ班の、彩りの戦士達の戦いはまだまだ続く!




To Be Continued…

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