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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
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第116話『蛮勇闘技〜vol.6〜』

シリーズ第116話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国にて闘技大会に挑む彩りの戦士一行。荒くれ者の揃うエレン班の副将を務める紅の炎騎士ランタナは敵軍副将のガルベスと相対していた。



「さあ、覚悟しな!このガルベス様が本気で相手してやるぜ!」


「ええ、手抜き無し、手加減無しの全力で勝負しましょう!燃やし尽くしてやるわ!」


「ムワッハッハ!お前も戦士っていうならそう来なくちゃなぁ!お互い灰になるまで燃えようじゃねぇか!」



両軍の副将同士が戦いの舞台で激しくぶつかり合う。荒くれ者として培った熱い心に火が点いた紅蓮の騎士ランタナは得物の斧を振るって我武者羅に突き進み、畳み掛けるような連撃を仕掛けていった。



「せいやぁッ!でやああッ!」


「うおらあぁッ!!」


「ふぅ…さすがの凄まじい馬力ね…こちらも腕の振るい甲斐があるってもんだわ!どんどんかかって来なさい!」


「おいおい、おしゃべりしてる場合か?俺達は戦士なんだから、戦いで語ろうぜ!それとも“私、か弱い女の子なんだから手加減して~”なんて言うんじゃねぇだろうなぁ!?なあ、真っ赤な鎧の騎士ちゃんよぉ!?」


「フフッ…私が今更そんなことを言うって本気で思ったの?随分と見くびられたものね!」


「よ~し、その答えを待っていたぜ!それじゃ、この闘技場の舞台で一緒にひと暴れするかい!?」


「お望みならば喜んで!戦いで語りましょうか!」



ランタナはガルベスの煽るような挑発を受けて頭に血を昇らせるどころか、むしろ待っていたと言わんばかりに笑みを浮かべる。荒くれ者としての熱い心を昂らせながらも、騎士としての凛とした心で向かい合う。胸の内に宿す2つの心を巧みに調和させながら戦うファイアレッドの彩りの騎士の姿を皇騎士マリーは意外に思いながらも嬉々として見つめていた。



「ほう…これは驚いたな。ランタナもこの旅で変わったということか…」


「そうなのですか?私にはとても落ち着いているように見えるのですが…」


「ええ、マリー様はそれが驚きなのよ。ランタナは元来血の気の多い人だから、ああいう口汚い言葉を投げ掛けられると黙っていないはずだもの」


「うむ、バジルの言う通りだ。さっきモニカ殿に話した通りランタナはローザ様によって騎士に推薦される前は荒くれ者だった。騎士になったばかりの頃は戦う仕事は真面目にやるんだが、それ以外の仕事はサボってばかりの戦馬鹿で、果ては守るべきテラコッタの民と殴り合いの大喧嘩をしたこともあったからな…」


「な、なんと!?騎士様が大喧嘩とは一大事ッス!よほど腹が立つことがあったッスか…?」


「う~ん、酔っぱらい同士の喧嘩を止めようとしたら因縁つけられて、一緒になって喧嘩しちゃったんだよね…しかもランタナは腕っぷしが強いから、酔っぱらいを怪我させちゃったんだよ…」


「そうだったね、ヒーザー。騎士なのに裁判沙汰になりかけて大変だったなぁ…ローザ様がなんとか頼み込んで示談で済んだんだけどね」


「あちゃ~…そんな非常事態、察するに余りあるぜ…それなのにローザはどうしてランタナを騎士に推薦したんだ?」


「う~ん…ローザ様のお眼鏡にかなったから、としか言えないよね…パンジーだって昔は殺人鬼だったし、私とミモザは宮廷の門番の兵士だったのにある日突然騎士に推薦されたんだもの」


「そうだったな、サルビア。懐かしいな~…あの時は周りから“2人でローザ様に賄賂を送った”とか、色々根も葉もないこと言われたよな…」


「ええ。心無い輩のせいで辛い思いもしたけど、いつもミモザが助けてくれたわね。いつも私を守ってくれるミモザは“真の騎士”だと思うわ」


「そんな、買い被り過ぎだよ。いつも隣でサルビアが支えてくれるからさ。アタシの騎士の誇りはサルビアと共にあるんだよ」


「ハッ、お2人さん、随分とお熱い仲じゃないのさ!…と、冗談は置いといて、ランタナは確かに強いねぇ…それにただ力任せに斧を振ってるだけじゃない、騎士として戦う心意気みたいなものを感じるよ」


「ええ、とても情熱的な戦いね…精霊の力の裏に秘めた戦いへの真摯な気持ちがローザの心を惹き付けたのね」


「そうね、フェリーナ。ローザ様は“生まれも身分も関係無い、意欲と力の有る者に平等に機会を与えたい”と仰っていた。魔に染まり邪教戦士に堕ちる前…私達の知る主君ローザ様はそういう御方だったわ」


「ふむ…マリーが部屋頭を務めるテラコッタの騎士一門は完全な実力主義っちゅうことか…星取勘定で番付が決まるスモウ・レスリングによう似とるわい!」


「ステラ姉ちゃん、なんやちょっと違う気ぃすんねんけど…ランタナ姉ちゃん、頑張ってや~!!」



観客席から見守る仲間達が語らう中、荒くれ者の騎士ランタナは荒々しくも熱い闘技を魅せ、観衆の心を惹き付けていく。熱を帯びた会場の空気に後押しされながら猛々しく討ち据えていった。



「どぉりゃああぁぁッ!!」


「うげっ…!こ、こいつはヤバい…!!」


「さ~て、メラメラ燃えてきた…覚悟なさいよ!」



目の前の戦いに勝利するため、理想への歩みを進めるため――ランタナは勇猛果敢に立ち向かい、荒々しく前を薙ぎ払う。斧を振る回数に比例するように胸の内に赤々と燃える火種が紅き熱を帯びた闘志で膨れ上がり、一気に弾けていた。



「我が祖国の正義の炎を受けよ!テラコッタ・ブレイズバースト!!」


「うぎゃああぁぁッ!!」


「そこまで!勝者、ランタナ選手!!」


『うおおおぉぉぉ~ッ!!!』



ランタナの熱い心を具現化した紅蓮の炎が赤々と燃え上がり、敵軍副将ガルベスを焦がす。熱戦の末にランタナの勝利が決し、闘技場は惜しみ無い歓声と拍手に包まれる。ランタナとガルベス――熱い心を燃やす両軍の副将同士の正面衝突は観衆の心にも否応なしに飛び火していた。



「親分、すまねぇ…あとは頼んだ…!」


「ああ、アタシに任せときな。まさかウォーレンとガルベスをこれほど圧倒するなんて…久しぶりに楽しめそうだね!」


「エレン、見て!大将の人の左手…!!」


「うん…祝福の証…!!」



エイリアの言葉を受けて左手に視線を移すや否やエレンは息を呑む。敵軍の大将は蛮族らしき風貌の女性だった。ダークブラウンの髪を無造作に伸ばし、所々煤で黒く汚れた赤い晒を胸元に巻き、黒いデニムのショートパンツを穿いている。得物の棍棒を携える左手にはコチニールレッドの紋様が彩られていた。



「ふぅ〜ん、アンタがテラコッタの赤き騎士様ってかい…」


「ええ、そうだけど…それが何か?」


「いや…なんとな〜くなんだけどさ、アンタ、アタシと同じ匂いがするんだよねぇ…」


「なッ!?い、いったい何を…!?」


「隠すことはないさ。戦いに飢えた生粋の戦士の眼をしている…アンタの眼を見りゃ解る。このベラハ様には一目瞭然だよ?」


「同じ匂いがする、か…そんな人に隠し事は出来ないね。ご明察よ!」


「へぇ〜…ウォーレンとガルベスとあれだけ激しく戦ったのに、まだ物足りないってのかい?持って生まれた性ってもんかもしれないけど、アンタも騎士にしては卑しい奴だねぇ…」


「フッ、卑しくて結構だよ。私はこの戦いの舞台で魂さえも燃やし尽くすまで!いざ勝負!!」


「よっしゃ!ウォーレンとガルベスを倒したその腕前、見せてもらうよ!」



エレン班副将ランタナはコチニールレッドの彩りの戦士である敵軍大将ベラハと激しくぶつかり合う。隠せない熱い心を見透され、最早気兼ねすることは一切無い。騎士の心の裏に隠していた荒くれ者の心を揺り起こし、熱い想いを携えて立ち向かっていた。



「せいッ!オラッ!」


「でやあぁッ!どりゃああぁぁッ!!」


「ふぅ~ん、良い腕前だ!やっぱりウチの2人に勝つだけのことはあるねぇ!それじゃ、コイツはどうかな?」



ベラハが得物の棍棒を真上に向けてかざすと、赤紫の体色をした奇妙な飛翔体が何処からともなく現れ、ベラハのもとへ次々に寄り集まっていく。飛翔体の群れは騒がしく羽音を立てながらコチニールレッドの塊を空中に蠢かせていた。



「これは!?む、虫…!?」


「アタシのペットさ。可愛いだろう?左手にこの印が着いてから、この子達を自在に操れるようになったんだよ。さあ、鎧ごと食い破っちまいな!」


「クッ…!うああッ…!!」


「ランタナ…!!」



ベラハはコチニールレッドの紋様を妖しく燃やしながら赤紫の虫達をランタナにけしかける。主の命を受けた彩りの蟲達は仇なす者に躊躇無く噛み付き、容赦無く追い詰めていった。



「ラ、ランタナさん…あわわわ…どうなってるの⁉ただの棍棒なのに…」


「クレアちゃん、あれはただの棍棒じゃないのである…操虫棍という全く違う武器なのである!」


「ああ、間違いない。私も噂では聞いたことがあったが、まさか実在する武器だったとはな…」


「そうか…名うての傭兵であるヴィオもよく知らない武器を使うなんて、厄介な相手だね…」


「そうね、アンジュ。残りはランタナとエレンの2人だけど、勝ち目はあるかしら…?」


「あっ、虫達が離れた…!?そ、そんな…ランタナ様が…!」


「ランタナ様…なんてこと…!!」



コチニールの彩りの蟲に喰らい尽くされ、戦いの舞台に這いつくばったランタナの姿に一行は絶句する。ランタナの真っ赤な鎧は焦げ着いたように黒く煤けており、肌には痛々しく爛れた火傷の痕が着けられていた。



「動けない…そんな馬鹿な…!」


「ウチのウォーレンが言ってたように、前に出るばかりが戦いではないってわけ。自分が有利な展開を知るのも立派な戦いなんだよ!」


「クッ…負けたく、ない…!」


「悪いねぇ、コイツでおしまいさ!ブルチャーラ・スウォーム!!」


「がはッ……!!」


「そこまで!勝者、ベラハ選手!!」



彩りの蟲に蝕まれ、力尽きたランタナは俯せに倒れた。蛮勇を誇る荒くれ者が集うエレン班の面々は目の前に立ちはだかる新たな脅威に戦慄していた。



「ランタナ様!しっかり!!」


「その声は、ジーリョだね……ごめんね、不覚を取ったよ……」


「ランタナ……ナイスファイトだったよ。あとは任せて!」


「エレン…気を付けてね…」


「ヤバそうな相手ですよ…エレン姐さん…」


「もう!これから戦うのにエイリアもロビンもシケた顔しないでよね!どんな相手でも逃げるわけにはいかない…やるしかないんだよ!虫ごと燃やしてやる!!」



紅の騎士ランタナが討たれ、遂に大将エレンが敵軍大将のベラハと相対する。紅蓮の戦士エレンは奇妙な彩りの力を操るコチニールレッドの蛮族に打ち勝つことは出来るだろうか?雌雄を決する戦いの火蓋が間もなく切られようとしていた。




To Be Continued…

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