第114話『蛮勇闘技〜Vol.4〜』
シリーズ第114話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!
ビンニー国の闘技大会に挑む一行。彩りの戦士一団の先陣を切って闘技大会に挑んだモニカ班が見事勝利を収め、一団の士気も俄に高まっていた。
「モニカ姉ちゃん、やったやん!さすがはウチらのリーダーやな!」
「アミィ、ありがとう。皆の力で掴み取った勝利、とても嬉しいですね!」
「5人の戦い、とても熱い戦いだったッス!血沸き肉踊るッス〜!」
「大将のウルフ、手強かったね…まだまだ僕達の知らない強者がたくさんいるということだね!」
「よし、次は私達の出番だね!ガンガン燃えていこう!」
「ああ、熱さ比べなら絶対に負けないよ!テラコッタの騎士として完全燃焼してみせるからね!」
エレンと共に意気を高めるのは赤い鎧に身を包むテラコッタの騎士ランタナだった。かつては荒々しく斧を振るって幾多の戦果を挙げる一介の戦士だったが、武勇を評価されテラコッタの騎士となった経歴を持つ。誉れ高き騎士としての顔と蛮勇を誇る荒くれ者としての顔、2つの相反する顔を持つ赤き騎士の左手にはファイアレッドの紋様が印されていた。
「戦いを前にすると血が騒ぐねぇ…相手が誰だろうと全員蹴散らしてやるよ!」
「うん、その調子で頼むよ!ランタナ、アンタとはウマが合いそうだね!張り切っていこうか!」
「おう!任せとけって!」
「フフッ、エレンと気が合って良かったです。ランタナは戦いが好きなんですね…」
「ああ、ランタナは騎士になる前は荒くれ者だったからな。道を誤ってならず者にでもなっていたら私達の敵になっていたかもしれない。今となっては仮定の話だが、ランタナの実力を考えると想像するだけで恐ろしいな…」
「そうですか…やはりエレンの周りには荒くれ者達が集まるようですね…」
真摯に戦いに向き合うモニカ班に続くのは蛮勇を誇る荒くれ者の集うエレン班──先鋒エイリア、次鋒ロビン、中堅ジーリョ、副将ランタナ、大将エレン──血気盛んな彩りの戦士5人は戦いの火蓋が切られる時を今か今かと待っていた。
「ふぃ〜…相変わらずの超満員だね!こっちが圧倒されそう…」
「エレン姐さんのためにも、海賊として7つの海で培った力、闘技として見せつけてやります!」
「アザレアの戦士として、彩りの戦士として、このジーリョも共に参ります!頑張りましょう!」
「燃えてきたね…私もテラコッタの騎士として、負けるわけにはいかない!」
「さて、もうそろそろ試合開始だね…みんな、気合い入れていくよ!」
大将エレンを先頭に5人が列を成して闘技場へと踏み入る。荒々しい熱気が立ち上る中、エレン班は戦いに臨まんとしていた。
「これよりGランク勝ち抜き戦を開始します!両軍先鋒、前へ!」
「よ〜し、出番だね!それじゃ、いっちょ頑張ってくるよ!」
「うん、よろしく!エイリア、頼りにしてるからね!」
エレン班の先鋒を務めるのは空色の彩りを持つエイリアだ。エレンの幼馴染みであり、旅路を歩む前から故郷ロアッソ共和国で絆を紡いでいた。離れている間に何人もの荒くれ者達を従えるようになった旧友の姿に多少の驚きを禁じ得なかったが、己の信念を貫くエレンを心から信頼している。大将エレンとの絆と信頼を携え、戦いの舞台へと踏み出していった。
「オラッ!オラァッ!」
「遅い!そ〜れっと!」
「何ッ!?と、飛んだ!?」
『おおぉぉ〜ッ!!』
「そこだああぁぁッ!!」
「チッ…!」
アクロバティックな跳躍に魅了された観衆の声援を一身に受ける中、エイリアは宙を舞いながら得物である警棒を振るって臆することなく敵軍の戦士に挑んでいく。腕力は他のチームメンバーに一歩及ばないものの、持ち前の素早さを生かした手数の多さで攻め立てる。
「えいやっ!でやあっ!てぃやああッ!!」
「ヘヘッ…姉ちゃん、そんな攻撃効かねぇよ!」
「ん〜…やっぱり相当鍛えてるってわけね…それじゃ、これならどうかな?」
エイリアは宙に飛び上がるや否や空色の気流を身に纏い、風を切りながら飛ぶ燕のように滑空する。空中で得物を敵に向け、急降下しながら力一杯に一閃した。
「スワローテイル!」
「うげっ!?」
「もう一発!はああッ!!」
「うぐッ!は、速い…!」
エイリアは素早さを攻撃の勢いに転じ、一気に畳み掛ける。軽々と空を舞う燕のような華麗な連撃は敵軍先鋒の男を翻弄していった。
「でやぁッ!せいやぁぁッ!!」
「クソッ、ラチがあかないぜ…うおおぉぉッ!!」
ドンッ!
「ううっ!?」
「エイリア!そんな…!」
「撃ち落とされた…だいぶ勢いが着いてたから痛そうだね…」
敵軍先鋒の男が業を煮やして振り回した腕が鈍い音と共にエイリアを捉え、空色の電光石火に待ったをかける。半ばヤケクソ気味に振るった、殆ど当たる余地のない攻撃が不運にもエイリアの攻勢を遮ってしまった。
「ヒヒヒッ、これはラッキーだ…捕まえたぜ、姉ちゃん!うおおらあッ!」
「クッ…!」
「覚悟しな!ブッ飛ばしてやるぜぇ!!」
「ううッ!こ、このままだと不利ね…それならもう一度空中攻撃──」
「おっと、そうはいかないぜ…同じ手は食わねぇよ!」
エイリアは再び宙に舞おうとした刹那、脚を掴まれて捕えられてしまった。両脚を掴んで大きく振り回され、所謂ジャイアントスイングの要領で投げ飛ばされた。
「どおりゃああぁぁッ!」
「ううああッ…!」
「そこまで!勝者、ペドラザ選手!」
『うおおぉぉ〜ッ!!』
雌雄が決し、熱気を帯びた歓声が木霊する。エイリアは力負けし、健闘も虚しく敗れてしまった。旧友エレンは真っ先にエイリアに駆け寄り、友の奮戦を労った。
「イタタ…ごめんね、エレン…負けちゃったよ…」
「エイリア、ドンマイ。ナイスファイトだったよ!」
「よし、エイリアさんの分も私が頑張りますよ!エレン姐さん、見ていてください!」
「ロビン、頼んだよ!ちゃんと見てるからね!」
選手交代となり、次鋒のロビンが勇んで飛び出していく。一行の旅の始め──海賊としてアマラント国の港を襲い、強奪する荒くれ者だったが、エレンに成敗されて舎弟となった。左手に耀く無色透明の彩りはロビンの胸中に燃える闘志のように爛々と煌めいていた。
「よう、お嬢ちゃん!迷子になっちゃったのかい?お兄さんがお母さんの所まで連れてってあげるからね〜♪」
「チッ、甘く見るなっての!こう見えて私は7つの海で鍛えてきたんだ!海賊ナメんなよ、おっさん!!」
「お、おっさんだと!?このクソガキ、ボコボコにしてやる…泣くんじゃねぇぞ!」
「上等じゃないかよ!ボコボコにされて泣くのはお前だ、おっさん!!」
ロビンの胸の内に秘めた滾る闘志が赤々と燃えている。自身を舐めてかかる敵軍先鋒ペドラザに罵詈雑言で対抗するロビンの姿はかつての荒くれ者の面影が見られる。7つの海を好き放題に暴れ回る荒くれ者だった自分に熱い心で向き合い、彩りの戦士としての正しき道へと導いてくれたエレンへの想いがロビンの背を前へと強く押していた。
「てぇいや!」
「ぐおわっ!」
「くらえええぇぇッ!!」
海賊として、彩りの戦士として、真っ直ぐな想いを込めた刃を一心不乱に振るう。荒くれ者の熱い心と彩りの戦士の直向きな心──2つの心を踊らせながら戦いの舞台で躍動した。
「うげえぇっ!?クソッ、ただのチビじゃなかったか…こりゃマズいな…」
「そぉら、間合い取ってんじゃねぇぞ!おっさん!」
「何いいぃぃッ!?」
怯んで後方へ下がったペドラザに得物のサーベルをブーメランのように投げつけ、休み無く畳み掛ける。無色透明の彩りが万華鏡のように煌めく耀きの刃で一閃した。
「勝たせてもらう!ミラースラッシャー!!」
「うがああぁぁッ!」
「そこまで!勝者、ロビン選手!」
『うおおぉぉ〜ッ!!』
敵軍先鋒ペドラザは海賊として、彩りの戦士としての誇りを携えて戦うロビンの意思と彩りの力に屈した。ロビンは歓声を全身に受けながらも次なる相手に闘志を燃やし続けていた。
「よっしゃあ!ロビンの勝ちだ!燃えてきた〜!!」
「ロビン、すごいじゃない!その調子でガンガン勝っていこう!!」
「ヘッヘ〜ン♪天下の大海賊キャプテン・ロビン様をナメんなよ!次、かかって来い!」
「フン、威勢のいいことだな!このミンチー様が叩き潰してやるぜ!」
「デカいだけの奴に負けるもんか!栄養過多のデクの棒め!!」
敵軍次鋒のミンチーという大柄な男がロビンの前に立ちはだかる。勢いに乗るロビンは再び罵詈雑言をぶつけながら臆することなく挑んでいった。
「ほれほれ、俺に傷1つでも付けられるかな〜?やってみな、海賊の嬢ちゃん!ヒャハハハ!!」
「チッ、甘く見るなよ…うおおぉぉッ!」
「おわっと!ヘヘッ、さすがは海賊さんだなぁ…おらよぉ!!」
「うえぇッ!?お前も図体だけじゃないな…強い…」
ミンチーの剛腕が唸りをあげながらロビンに襲い掛かる。明らかに体格差のある相手だが、ロビンは彩りの戦士としての真っ直ぐな心の裏に潜み、胸の奥底に眠っていた荒くれ者としての熱い心を燃やしながら立ち向かっていく。
「ミラースラッシャー!!」
「うおぉッ!?マ、マジか…これがペドラザを倒した技かよ…!」
「よし、ダメ押ししてやる…これならどうだ!そぉれッ!」
「ほいっと〜♪残念でした!」
「なっ…そんな!?」
勝負を決するべく打った一手は失敗に終わり、ロビンは逆に危地に陥ってしまう。ミンチーは丸太のように太い腕で眼前を薙ぎ払い、ブーメランのように飛ぶサーベルを羽虫を払うように払い除けた。得物のサーベルはロビンの立ち位置から遠く離れており、取りに行くこともままならない。優勢が一気に転じ、瞬く間に劣勢に立たされてしまった。
「ペドラザがくらったのを見てたからバレバレだったぜ…さあ、どうするよ?降参するか?」
「…そんなことは絶対にしない!一緒に戦う仲間達のためにも、アマラント国で待ってる海賊団のみんなのためにも、途中で投げ出すなんてするものか!」
「意地っ張りなガキだ!作戦が思い付くまで待っててやろうか?それとも武器を拾いに行かせてやろうか?ワッハッハ!!」
「どちらも要らない!お前に情けをかけられるほど私は落ちぶれてないよ〜だ!」
「言ってくれるじゃねぇか!その元気がいつまで持つか見物だなぁ!ガハハハ!!」
「ロビン…どうするんだ!?武器がないと何も打つ手がないじゃないか!?」
「大丈夫だよ、ランタナ。ロビンはこれくらいでへこたれる娘じゃない。私はロビンを信じてる!」
(サーベルがない…この状況で出来ることは1つ…これに賭けるしかない!)
得物を弾き飛ばされて丸腰になり、窮地に立たされたロビン。ロビンは敗色濃厚の状況を打開出来るのか?ロビンは無色透明の彩りが煌めく祝福の証が印された左手を強く握り、ミンチーを迎え撃とうとしていた。
To Be Continued…