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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter6:闘技大会篇
112/330

第112話『蛮勇闘技〜Vol.2〜』

シリーズ第112話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

蛮族の国ビンニー国──更なる高みを目指して挑む闘技大会の戦いの火蓋が切って落とされた。モニカ班の先鋒を務めるバナナイエローの剣士ドルチェが荒くれ者の男と対峙し、果敢に戦いに挑んでいった。



「オラオラァ!」


「よっ、ほいっと!」


「クソッ、すばしっこいガキめ!逃がさねぇぞ!」


「ちょっとちょっと!誰がガキだって〜!?甘く見ないでよね!それそれッ!!」


「何ッ!?うぐぅッ…!」


「すごい…今だけでも2、3発は当たってる…斬撃が見えなかったわ!」


「速い!ドルチェ殿、見事な攻めです!」


「そうね、シュシュ。我流だけど洗練されてる…フルウム国を想う気持ちが溢れてるわ!」



ドルチェは自らを子供と見下す男が荒々しく振り降ろす斧を軽やかなフットワークでかわしながら有利な間合いへと一気に詰めていく。左手に印されたバナナイエローの彩りが曲刀を煌めかせ、精一杯に振り抜いた。



「ドルチェサーベル!!」


「ぐえっ!コイツ、ガキのくせに強えぇ…!」


「ヘヘン!あたしはお隣フルウム国の自警団で平和のために戦ってるんだよ!子供扱いしないでよね!そ〜れ、もういっちょ!」


「グッ…!」


「見事也!さすがは我らが自警団の首領よ…」


「ドルチェ、その調子でごわす!闘魂燃やすでごわす!」


「ドルチェさん…が、頑張ってください…!」



仲間達の声援を背に受け、畳み掛けるような連撃で押し切っていくドルチェの凄まじい攻勢に敵軍先鋒は防戦一方だ。祖国フルウムの地の安息を守り、共に歩む仲間を守っていく決意が込められた駿足の剣閃はバナナイエローの彩りを帯びながら駆け抜けていった。



「これで終わりだよ!ダンツァート・ドルチェ・ヴィータ!!」


「うぎゃああぁぁッ!」


「そこまで!勝者、ドルチェ選手!!」


『うおおおぉぉぉぉ〜ッ!!』



審判の声が響くと同時に、闘技場の空間をドルチェへの賞賛と熱き戦いへの興奮に満ちた歓声が包む。ドルチェは大波のように押し寄せる歓声に驚きながらも、手を振りながら応えていた。



「や、やった!勝った勝った〜!イエーイ!ありがと〜!!」


「素晴らしい…幸先の良い展開ね!」


「そうね、ティファ。この勢いのままで押し切ってくれると良いけど…ドルチェ、頑張って!次が来るわ!」



ルーティの呼びかけが耳に飛び込み、束の間の歓喜に浸っていたドルチェは現実へと引き戻される。休む間も無く敵軍の次鋒がドルチェに刃を向けており、否応無しに戦いに飛び込んでいった。



「うおらぁ!」


「ううっ、イタタ…」


「調子乗ってんなよ!このガキがぁ!」


「うああッ!!」



先鋒との戦いの疲れも癒えぬまま、ドルチェは一転して防戦を強いられる。次鋒の男は得物の棍棒を後方へと投げ捨てて素手でドルチェを殴り、容赦なく甚振っていた。



「そぉらぁ!オラオラァ!!」


「あうッ!うううっ…!」


「ギャハハ!こんなガキ、武器を使うまでもねぇぜ!ほ〜れ、高い高〜い!」


「キャッ!は、離して…!」


「まあ、そう焦るなって…ちゃんと望み通り離してやるからよぉ!!」


「キャアアァァッ!」


「ドルチェさん…!いやああぁぁッ!!」


「セレナ、しっかり!やはり一筋縄ではいかないわね…」


「あいたたた〜…ドルチェでもこりゃ一溜まりもないんじゃないか…?」



ドルチェは奮戦するも最後は抱えられて投げ飛ばされ、背中から床に叩き付けられて敗れてしまった。ビリビリとした痛みが全身を駆け抜ける中、ドルチェは苦悶と悔しさに顔を歪めた。



「そこまで!勝者、ベア選手!」


『おおぉぉ〜ッ!』


「ドルチェ!大丈夫ですか!?」


「立てるかしら?ほら、私達の肩を使って!」


「モニカ…みんな…お父ちゃん…ごめん…」



モニカとルーティに両肩を担がれて退くドルチェは大粒の涙を流していた。フルウムの安寧を守る自警団として誇りを持って戦ってきたが、踏みにじられて敗れた悔しさが一気に溢れた。



「ドルチェ…悔しいのね?」


「うん…グスッ…ずっとガキだガキだって…バカにされて…悔しいよぉ…」


「ドルチェ…貴女はフルウム国の自警団の団長として、私達の仲間として、堂々と戦ってくれましたよ。ゆっくり休んでください…」


「ボクがドルチェ殿の無念、晴らしてみせます!このシュシュにお任せを!」



選手交代し、次鋒はシュシュ。ベビーブルーの彩りを持つ妖精軍の騎士だ。ドルチェを破ったベアはドルチェよりも小柄なシュシュの体躯を嘲り笑うが、ドルチェの想いを受け取ったシュシュは一切動じる様子はない。



「なんだなんだぁ!?さっきの黄色いガキよりもチビじゃねぇか!?そんなんで戦えんのかよ!ギャッハハハハ!」


「相手より勝る自分の体格に傲るような輩に負けるような鍛練は積んでいません!このシュシュ、妖精族として、騎士として、全力を以て貴方と戦います!」


「ほほう…そんじゃ、騎士様のお手並み拝見といこうか。かかって来やがれ、妖精ちゃん!」



シュシュは羽をはためかせながら飛び込み、槍で高速の突きを立て続けに見舞う。ベビーブルーの彩りを纏った槍はシュシュの意思のように鋭く研ぎ澄まされていた。



「うげっ!ぐわあぁッ!」


「“柔よく剛を制す”とはよく言ったものです。徒に誇り無き力を振りかざすなど、魔物と変わりません!」


「ほ〜う…それじゃ魔物っぽく戦わせてもらうぜ!オラァ!!」


「クッ、しまった!間合いを詰めすぎた…!」


「妖精の騎士さんよぉ…ギタギタにしてやるぜ!どうだオラァ!?」


「グッ…ああぁぁッ!!」


「ヒヒヒヒ…そぉら、地獄へご案内っと〜!」


「うわああぁぁッ!」



荒くれ者のベアはシュシュを乱暴に鷲掴みにして握り潰し、踏み潰した後、内壁に向けて投げつける。本能のままに暴れる魔物のようなあまりに暴力的且つ凄惨な戦いぶりに仲間達は戦慄し、凍り付き、青ざめた。



「そこまで!勝者──」


「まだです!!まだ、ボクは…戦えますッ!!」



シュシュは声を絞り出し、よろめきながらも立ち上がる。荒々しい強襲に傷付き、立っていられるのもやっとの状態でありながら、彩りの戦士としての使命を胸に燃やしながら槍を構えた。



「シュシュ…!!」


「バ、バカな…!どこにそんな力が残っていたんだ!?」


「ボクは…このまま負けるわけにはいかないのです…。こんな不様な敗北を喫しては、妖精王様に合わせる顔がありません!!せいやぁ!!」


「ぐえっ!マ、マジか…!」



シュシュは我武者羅にベアに食らいつき、起死回生の猛攻をしかける。ベビーブルーの彩りを纏った突進は得物として携えた槍と一体になったように鋭く、揺るぎ無い気迫はベアを後退りさせた。



「グググ…この生意気なチビがあぁ!」


「覚悟はいいですか!?これで終わりです!」


「テメェこそ覚悟しやがれ!骨まで砕いてやらあぁ!!」


「でやああぁぁッ!!」



シュシュとベアが互いに突進して正面衝突し、辺りに土埃が舞い上がった。次第に土埃が晴れ、大勢が明らかになる──ベアが俯せに倒れており、シュシュの逆転劇に観衆が沸き上がる──と、思われたが──



「う…うう…」


「シュシュ!そ、そんな…!」


「リボンちゃん、大丈夫だよ。シュシュは一生懸命戦ってたもん。傷は私達が治すから安心してね…」


「…そこまで!この勝負、引き分け!!」


『…うおおおぉぉぉぉ〜ッ!!』



一瞬の静寂の後、両者の健闘を称える歓声が轟く。傷付き疲れ果てたシュシュは仰向けに倒れ、虚ろな瞳で天を仰いでいた。



「シュシュ…」


「モニカ殿、ルーティ殿、ティファ殿…申し訳ない…面目次第もございません…」


「シュシュ、何も恥じることはないわ。貴女の意思が伝わる素晴らしい戦いだった…見事です」


「…シュシュの誇り高き意思、確かに受け取ったわ。私もアザレア近衛兵として、悔い無き戦いをして勝ってみせる!」


「…試合を再開します。両軍中堅、前へ!」



シュシュの意思を引き継いだモニカ班の中堅ルーティが銃を携えて向かい合う。華やかなオペラピンクの彩りを爛々と輝かせ、臆することなく戦いの舞台へと踏み出していった。



「姉ちゃん、ハジキが武器か!可愛い顔してなかなか過激だねぇ!」


「お望みなら好きなだけ味わわせてあげるわ。アザレア近衛兵ルーティ・スアレス、参ります!」


「ルーティか…良いねぇ、顔も体も好みのタイプだ…俺が勝ったら宿で会おうぜ…グヒヒ…」


「クッ、なんて下品な人なの…貴方なんかには絶対に負けないわ!」


「へぇ、なかなか意地っ張りだねぇ…もっと力を抜けよ…このゴート様がたっぷり愛してやるからな…」



アザレアの紅き貴公子ルーティは、銃を構える。仲間の想いを受け取ったオペラピンクの彩りの戦士はいつも以上に凛と引き締まった表情を見せ、飢えた目で自身を見つめる敵軍の中堅ゴートと相対していた。



「カンタベリーバレット!」


「うおっと、なかなかやるじゃねぇか…綺麗な花にはトゲがあるってか?」


「まだまだこれからよ!ベルファストブレイズ!」


「アチチッ!火遊びが好きとは、危ない女だな…んん!?な、なんだこりゃ!?」



ルーティの彩りの焔が赤々と燃え上がり、闘技の舞台に陽炎が揺らめく。ゴートが気付くと何人ものルーティが自身に銃口を向ける像が映る。熱き幻に包まれたゴートは熱波の眩惑に微睡んでいった。



「おお…おおぉぉ…ど、どうなってやがるんだ…!?」


「ヒュ〜♪ルーティの奴、考えたな!」


「陽炎の幻を見せて身を守るなんて…ルーティの炎の力を巧く活かしてるわね」


「ただ攻めるだけではない戦いの妙技か…さすがはルーティ、美しいね…」


「クソッ、こりゃ参ったな…どいつが本物なんだ──」


「くらえ、カンタベリーバレット!!」



幻と(うつつ)の狭間から爆炎が強襲する。ゴートは間合いを詰めようと懐に飛び込むが、ルーティはオペラピンクの焔を手足に纏わせ、白兵戦にも慌てることなく順応していた。



「銃を使うから近付けば良いと思った?残念だったわね!」


「クソッ、こんな良い女を逃すわけには…!」


「しつこい男にはそろそろお引き取り願おうかしら…カンタベリーバレット・フルスロットル!!」


「あぎゃああぁぁッ!」



闘技場の真ん中に巨大な火柱が上がり、飢えた目の中堅ゴートを焦がす。勝負ありと悟ったルーティは少しだけ表情を緩めるが、控える副将戦に向けて気持ちを切り替え、すぐにキリリと引き締めていた。



「…そこまで!勝者、ルーティ選手!」


『うおおぉぉ〜!』


「私は相手が誰だろうと、アザレア近衛兵として信念と誇りを持って戦うだけよ!次はどなた?」


「このボア様が相手だ。ゲヒヒ、確かに綺麗な姉ちゃんだな…ゲヒヒヒ!」


「ひ、酷い臭い…貴方、本当に人間なの?豚の魔物ではない…わよね…?」



息つく間もないままルーティは敵軍の副将と対峙する。丸々と太った大柄な体躯のボアという男だった。汗の臭いと体臭が混じった明らかに不潔な臭いを放っており、向かい合うルーティは眉を潜めていた。



「おいおい、随分な言い方してくれるじゃねぇかよ…ゲヒ、ゲヒヒヒ!」


「下品な笑いもお喋りも終わりよ。こんがりと焼いてポークソテーにしてあげるわ!」



敵軍の副将を前にルーティは臆することなく臨戦態勢を整える。蛮族四天王へ挑むために高みへと駆け上がる彩りの戦士達の戦いはまだまだ続く!




To Be Continued…

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