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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
110/330

第110話『野望の花萌ゆる緑』

シリーズ第110話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

フルウムの山々を越え、蛮族の蔓延るビンニー国に辿り着いた一行。紅蓮の炎の戦士エレン率いる荒くれ者軍団の奮戦で蛮族達に囚われたコレットとエーデルを救い出し、都市部へと繰り出していった。



「やれやれ、入って早々とんでもないご挨拶してくれたね…」


「でも、蛮族をあっという間にやっつけちゃうなんてすごいよね!エレン、カッコよかったよ!」


「ありがと、クレア。なんか私、荒くれ者退治が板に着いてきちゃったなぁ…」


「まあ、今は荒くれ者を従えてるくらいだからね。しばらく見ない間に何があったんだか…」


「そやなぁ…幼馴染みのエイリア姉ちゃんにしてみれば驚きやろなぁ…ホンマにいろいろあったで〜」


「ハァ…今回はなんとかなったが…あんな奴らが跋扈していることを考えると、安心してはいられないな…」


「やはりビンニー国は治安が悪いみたいですね…みんな、今一度注意しましょう」


「ええ。あたくし達の歩む道を阻む輩が現れるかもしれない…力を1つに歩みましょう」


「さて、宿を探しましょうか…あまり外に長居すべきではない気がしますわね…急ぎましょう」



荒くれ者が行き交う蛮族の国に踏み入り、宿を探して練り歩く。客人である一行に物珍しそうな奇異の目を向ける者、手練れの雰囲気を察したのか好奇の目で見る者、女性ばかりの一行を飢えた目で見つめる者──様々な色合いの眼差しが一行に向けられていた。



「やれやれ、みんなしてウチらを見とるわ…買い物しづらいねん…」


「ケッ、アイツらビアリー様を嫌らしい目で見てやがったがや!ごが沸く奴らだがや!」


「本当に随分と粗野な国風なのね。隣同士なのにフルウムとは全然違うわ…」



一方、魔族七英雄ベガの居城。薔薇の貴公子と邪淫の貴公子が2人だけで佇む妖しい空間は魔の彩りである黒紫の瘴気が満ち、赤黒い野望の焔と共に渦巻いていた。



「ベガ様、あの娘達は予定通りビンニー国に到達しました」


「ふむ…これも彼女達の歩む道程の1つ、必然の過程であることは間違いないが、あまり歓迎すべき事態ではないな…」


「ええ、先程もエーデルとコレット様があわや蛮族の奴隷に…エレン様達の奮戦で事無きを得ましたが、危ないところでした…」


「コレット…私がリールとして生きた間の記憶が正しければ、緑色の彩りを持つ天真爛漫な少女だったかな?」


「は、はい。その認識で間違いございませんが…コレット様がベガ様の理想の鍵を握る人物である、と?」


「ご明察、さすがは私の頼れる右腕だ。彼女の司る属性は草、植物を操る力を持つ彼女の彩りは我らの理想を実現させるために非常に重要な存在なのだよ」


「はい…しかしながら、コレット様はこれまでの旅路でも度々賊に狙われており、ビンニー国は危険が大きいことと存じます」


「そうだな…コレットに危険が及ばぬように注意する必要がある。ラスト、頼りにしているよ」


「…畏まりました。ベガ様の理想のため、最善を尽くします」



自らの理想を体現すべくベガが狙うのは緑の彩り、コレットだった──魔の策謀が動き始める中、一行は格安の宿に辿り着く。が、客人を泊める場としてはあまりにも簡素な造りであり、整備も殆ど行き届いていない。雨風をしのげるだけマシという程度の粗雑な宿は一行の士気を否応無しに削ぎ落としていった。



「なんということだ…何を取っても洗練には程遠い…」


「そこら中から獣みたいな匂いがするし、部屋も水回りも汚いのである…馬小屋みたいなところなのである…」


「うへぇ〜…こんな宿を拠点にするのか〜…お父ちゃんの宿の方が何億倍も快適だよ…」


「うむ…しかし、ここしか空いてなかったでごわす。致し方ないでごわす…」


「ほれほれ、みんなして不景気な顔をするな!住めば都じゃい!」


「こんなところ都にしたくないぜ…やれやれ、あまりビンニー国には長居したくないな…」



あまりに粗雑な佇まいの拠点に一行は驚嘆するが、貸し切りの大部屋でそのまま行程の会議が全員が一堂に介した中で執り行われた。



「さて、ビンニー国に到着したが…とりあえず、直近の目標を決めることにしよう」


「ルーヴの言ってた蛮族四天王という4人組が気になりますね。闘技場での腕試しや鍛練を中心にして個々の能力の向上を目指しながら蛮族四天王に挑む準備を行いましょう」


「ああ、アイツらは相当手強いからね。いくら手練れ揃いのこの軍でも生半可な準備じゃ返り討ちにされるかもしれないよ」


「それほどの強者がいるなんて嬉しい!勝利に向けて鍛練が出来るならなお嬉しいわ!」


「サンディアは熱血だね〜!あたし達も頑張って蛮族四天王に挑むよ〜!」


「ああ、頑張ろう!誰が相手だろうとバリバリでブッ飛ばしてやろうじゃん!」


「そうだ、言い忘れてたけど、蛮族四天王とすぐには戦えないから、みんなそのつもりでいてくれよ」


「何ッ!?まさか闘技場で別の者と戦って挑戦権を得るのか?」


「ああ、闘技場はランク制で最初はGランク、毎日開かれる大会で勝ち抜いてF、E、D、C、B、Aとランクを上げて、蛮族四天王は一番上のSランクにならないと戦えないから、けっこう大変だよ。上位のランクは強者揃いだから気合い入れて臨もうな!」


「うむ…この国の闘技には序列があったのだな…むむむ…」


「つまりビンニー国にはそれだけ長居することになるのね…気が滅入りそうだわ…」


「要するに強けりゃ良いんだろ!パッパと勝ち抜いて、こんな辛気臭いところからは早くおさらばしようじゃないのさ!」


「ビクトリアの言う通り!誰が来ようが蹴散らしちまえば──」



コンコンッ──ノックの音で、全員の視線が扉の一点に集まる。ゼータが得物を携えながら扉に歩み寄り、静かに構えを取った。



「貴様、何者だ!」


「失礼致します。お飲み物をお持ち致しました」


「飲み物…?頼んだ覚えはないんだけど…」


「はい、こちら皆様に当館からのサービスとなっております」


「頼んでない飲み物がいきなり来るなんて…なんだか胡散臭いわ…」


「いいじゃね〜か、ヤンタオ。もらえるもんは貰っておこうじゃないか!ゼータ、通してやりな!」


「アルフォンゾ、了解した。よし、入れ。ちなみに我々は武装しているから、くれぐれもバカな真似はするなよ」



ゼータに促され、従業員らしき男が大きな箱を抱えて入ってくる。目深に被ったキャップで顔が隠れているが、長めに伸びた頭髪のピンク色が覗く。男が最初に飲み物を渡したのは何故かコレットだった。



「こちら、ビンニー国の力強い大地で育まれた原材料のみ使用した穀物茶でございます。どうぞご賞味くださいませ」


「ありがとうございま〜す!…美味しい!みんなも飲んでみて!」


「うむ、コレットがそう言うなら…うん、美味いな」



一行は次々に茶を口にするが、フェリーナの表情が急に曇る。従業員らしき男に懐疑心に満ちた視線を突き刺し、敵氣心さえも芽生えていた。



(こ、この男の人…まさか…!?)


(フェリーナ、どうした!?まさか茶に毒でも入っていたか!?)


(違うわ、ヴィオ…悟られたら困るから、彼が出て行ってから話すわ…)


(…わかった。この男、用心するに越したことないな)


「では、失礼致します。ごゆっくりお過ごしくださいませ」


「…よし、奴は去ったようだな。さて、フェリーナ、種明かしをしてもらおうか」


「た、種明かし?フェリーナ姉ちゃん、どういうことなん?」


「アミィ、落ち着いて。とりあえずフェリーナの“種明かし”とやらを聞こうぜ」



一行の視線が扉からフェリーナへと一斉に移ろう。ヴィオに促されて皆の前に立つフェリーナの瞳には従業員の男に抱いた懐疑心が燻っていた。



「実は…あの従業員の男性から邪気を感じたわ」


「邪気ですって!?まさか何者かが我々を狙って…!」


「ええ、恐らくベガが仕向けたんだと思うわ。ラストはベガの理想郷を実現させるには私達に万一のことがあってはいけないと言っていたから…」


「ここに来てベガ達が手を打ってきたのですね…彼ら自身の理想を目指すために…」


「ビンニー国は治安が悪いし、先程の一件もあったばかり…私達の動向を注視すべきと考えたってことね」


「つまり、アタシらはそのベガ様とやらに監視されてるってわけか…チッ、胸糞わりぃ話だぜ…」


「そうだね、テレーズ…ところで、気分転換に闘技場を見に行ってみないかい?僕はもっと間近で見てみたいな」


「キャロル先輩に賛成ッス!自分も行きたいッス〜!」


「では、みんなで行きましょう。戦いに向けて士気を高める良い機会です!」



一行は街の中心部に聳え立つ闘技場へと足を運ぶ。赤茶色の巨大なコロシアムは染み付いた熱気と共に奇妙な高揚感を醸し出していた。



「これが闘技場…街の出入口からも見えていましたが、近くで見るとより迫力がありますね」


「そうだな、モニカ。街のどこからでも見えるなんて、相当大きい建物だよな…」


「ルーヴさん、ちなみに闘技場のルールってどんなものですか?」


「いい質問だな、ロビン。闘技場のルールは5人1組のチーム対抗勝ち抜き戦だよ。先鋒から順に次鋒、中堅、副将、大将と1対1で戦って、先に相手の大将を倒したら勝ちさ」


「あ、あの…5人のチームで戦うのに、どうして蛮族四天王さんは4人組なんですか…?」


「…ああ、よく気付いたね、リデルちゃん。アイツらは先鋒、次鋒、副将、大将の4人で戦うんだよ。中堅がいないんだ」


「1人分の戦力差も吹き飛ばすッスか…蛮族四天王はよほどの実力の持ち主ということッスね!」


「そういうこと。蛮族四天王は油断してたら先鋒にも勝てないからな!」


「それはよほどの手練れね!この怪傑カンタループも気合い入れていかないと…!」


「ええ、とても挑みがいがあるわね。でも私達なら負けないわ!」


「しかし…つまりは戦いに出る5人をこの中から選抜しなければならないということだな…」



皇騎士マリーの一言を受け、一行を包んでいた空気が一気に張り詰める。僅か5枚の切符を賭けた熾烈なサバイバルが待ち受けている──それを全員が悟り、心に陰りを生み出していた。



「そっか、これだけの大所帯だけど、闘技場の試合に出られるのは5人だけだもんね…」


「うぐぐ…そうだったッス…自分、なんとかして戦いたいッス!」


「テリー殿、どう足掻いても5人しか出られぬ。まずはこの軍内での競争を勝ち抜かねばな…」


「ねえねえ、いくつかのチームに分かれてみんなで出るのはどうかな?みんなで力を合わせたら蛮族四天王さんにも早く会えるかもしれないよ!」


「それだ!コレット、いいアイデアだぜ!」


「傭兵団との戦いの時のように5人ずつのスクラムを組んで戦うということですわね…わたくしも賛成です!その案でいきましょう!」


「うむ、それなら皆に公平にチャンスが巡ってくるし互いの切磋琢磨にもなる。良いことずくめだ!」


「コレット…お前のおかげで皆が元気になったぞ。よしよし、コレットは優しいな…」


「エヘヘ…みんなニコニコ笑顔になってよかった♪」




コレットの機転によって張り詰めていた空気が和らぎ、和気藹々とした空気が一行を包んだ。ゼータは心から愛しく想いながらコレットの緑色の髪を優しく撫で、優しく微笑んでいた。蛮族四天王と相対する──同じ目標へ向けて皆が想いを1つに、蛮族の国の闘技へと立ち向かう決意を固めていった。




To Be Continued.The Story Goes To Next Chapter…

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