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Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
103/330

第103話『伸び行く若き緑』

シリーズ第103話目です。どうぞお気軽にご覧くださいませ!

フルウム国郊外の村を病魔として脅かす魔物達を打ち祓った一行。聖なる祝福を以て魔の脅威を退け、護り抜くことに成功した。



「貴女達にはどれほど感謝したら良いか…ありがとうございます」


「どういたしまして。我ら一同、村の皆様が壮健であるように願っています」


「シスターさんとピンクの騎士さんが危険なところに飛び込んで頑張ってくれたんだよな…助けてくれて、ありがとう!」


「恐れ入りますわ。わたくしは騎士として常に誇り高く在りたいと想い、それを実践しているだけです」


「この村の平穏、必ずや天もお喜びになります。皆様のもとに天の祝福がありますように…」


「この平穏が永く続くことを願っています。さあ、みんな、ビンニー国に向けて再び参りましょう!」


「はい、ミノア様。では、我々はこれにて失礼致します」


「もう行っちゃうのか…気を付けて、良い旅を!」



一行は蛮族の国であるビンニー国へと再び歩みを進める。都市部から離れるにつれ、フルウムの景色には次第に緑が深まり始めていた。



「ここからは山林地区に入っていくよ。険しい山岳地帯を越えたらビンニー国だから、頑張っていこうね!」


「よ〜し!山岳地帯ならあたしに任せて!張り切って頑張っちゃうよ〜!」


「おお、クレアは元気だな〜!名うての傭兵ヴィオさんも楽しくいこうぜ!」


「フッ、宮廷騎士と共に戦えるとは光栄だな。たしかお前はヒーザーと言ったか…こちらこそ、よろしく頼む」



敵対するベガの配下でありながら一行の仲間として加入したテラコッタ・ソシアルナイツも彩りの軍の一員として、仲間達との“絆”を確かに紡ぐ。歩む道を同じくした彩りが惹き合い、共に惹かれ合う不思議な摂理は奇妙なほど美しい絆を形作っていた。



「マリー、宮廷騎士の皆もだいぶ打ち解けてきましたね」


「ああ。こうして親睦を深めることが出来て我々も嬉しく思う。特にエーデルとミュゲがすごく楽しそうだ…必ずやベガ様もお喜びになるだろう」



コレット、リデルの2人は緑の幼騎士エーデル、若草色の若騎士ミュゲの2人と“仲間”として、“友人”として親しくなっていた。緑の鎧を着たエーデルは年頃の少女らしく表情豊かで天真爛漫な性格だ。純粋で無垢なコレットと親しくなり、無邪気にじゃれ合う姿は仲良しの姉妹のようだ。



「へぇ〜!このお菓子、コレットが作ったんだ!すごい美味しいね〜!」


「エヘヘ…よかった♪今度一緒に作ろうね!」


「やったぁ!2人で一緒なら絶対楽しいよ〜!ベガ様にも献上したいから、作り方教えてね!」



若草色の鎧を身に纏うミュゲは少し控えめだが、凛とした雰囲気を持つしっかり者だ。若草色の少女リデルと意気投合し、確かな絆を紡いでいった。



「あ…あれ、グレンアゲハ…」


「そうなんですか?見たことはありましたけど、名前は知りませんでした」


「はい…私、図鑑を読むのが趣味なんです。図鑑で見た生植物を見つけるの、旅の楽しみなんですよ…」


「そうですか…リデルさんは動植物に詳しいんですね。勉強になります!今度ゆっくり教えてください!」


「…はい!宿に着いたら一緒に図鑑を読みましょうね♪」



賊騎士ブライアはテラコッタ・ソシアルナイツの皆と仲間達が絆を紡いでいくのを複雑な想いで見つめていた。家族である騎士達の──ひいては自分自身の主君が討つべき魔族七英雄ベガであることを未だに受け入れられず、板挟みの感情の中で疎外感さえ抱き始めていた。



「なんだなんだ?ブライア、随分と不景気な顔してるなぁ…」


「ミモザ…私は…」


「言わなくても解るわ。きっとおおかたベガ様のことを気にしてるんじゃないの?」


「サルビア…やはり貴女の前では誤魔化せないわ。相変わらず気が付く人ね」


「気が付くも何も、一目瞭然じゃない。ブライアさん、私達が来てからずっと暗い顔しているもの…」


「やれやれ、せっかく再会したのにそんな顔するなよ!もう少し肩の力抜いて、楽しくいこうじゃないか!」


「……」



様々な想いが交差しながら一行は山林地帯に突入する。山に精通したクレアを先頭に、一路ビンニー国へと歩を進めていった。山林の中で自然のままに育つ緑は活き活きとしており、有りのままの姿で伸び伸びとしていた。



「あの…エルヴァさん、この辺りは薬草は採れますか…?」


「そうね〜…こんなにたくさん緑があるから、探してみましょうか〜」


「イエーイ!頑張って薬草探すぞ──」


「キャッ!モガモガ…!」



不意に繁みに擬態していた賊達が大勢現れ、緑の少女4人を力任せに捕えて荒縄で縛り付ける。クレアとエルヴァが介入する余地も無いまま囚われてしまった。



「ヘヘヘ…この緑の嬢ちゃん達、いただいていくぜ!」


「そうはさせないよ!あたし達の仲間を返して!」


「もう、乱暴な人ね…止めなさい!」


「邪魔すんなオラァ!この嬢ちゃん達は俺らの好きにさせてもらうぜ!」



賊達は助けに入ったクレアとエルヴァを乱暴に突き飛ばし、山林の奥地へと逃げ去っていった。



「クレア、エルヴァ、大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫…イタタ…」


「私も大丈夫よ。でも…4人が連れて行かれちゃったわ…」


「よくもエーデルとミュゲを…彼奴ら、許さん!」


「チッ、よりによってウチの危なっかしい娘2人が拐われちまったなぁ…」


「あたいらの方もさ。あの娘達はどうも危なっかしいと思っていたけど…やれやれ…」


「早ク助ケル!ミンナノ匂イ、追イカケル!」


「リンド、頼むぞ。標的群、全員殲滅する!」



賊に拐われた4人の行方を追い、フルウムの林道を駆ける。リンドの嗅覚を頼りに追跡するが、辺りは見渡す限りの緑、碧、翠、翆──目印も無い単色の景色が延々と続いていた。



「代わり映えしない景色が続くわね…どこに潜んでいるのかしら──」


「ひえぇっ!お、狼が死んでる…!」


「ケイト、慌てんな。こりゃ血糊を着けた剥製だぜ。ったく、とんでもねぇイタズラしやがる…」


「テレーズさん、平気で触ってる…リンドちゃん、大丈夫ですか?」


「ウン、血ノ匂イ、シナイ。ダイジョウブ!」


「攪乱しようとしたか、ただ驚かすだけが目的だったのか…いずれにせよ、面倒な相手だ。さっさと見つけて片付けるぞ」


「そうですね、ヴィオ。4人が心配です。急ぎましょう!」



荒れ放題の地に足を取られながら山林地帯の獣道を掻き分けて進む。急くばかりの気持ちとは裏腹に足取りは重く、皆が気を揉むばかりであった。



「リンド!何をグズグズしている!?真面目に探索しろ!!」


「ガウ…ゴ、ゴメン…」


「ゼータ、冷静にならんかい!心配なのは解るが、リンドを責めるのは筋違いじゃろうが!」


「…すまん、リンド…」


「ウウン…ダイジョウブ…」


「コレット…みんな…待ってろよ…」


「なあ、前から気になってたけど、ゼータはどうしてコレットちゃんに執着してるのさ?確かにコレットちゃん可愛いけど…」


「執着、か…私自身はそんなつもりはないのだが、ルーヴの目にはそう映っているのだな…」


「まあ、その話はあとでゆっくり聞くよ。今は4人を助けるのが先決だからね!」


「了解した。任務を続行する」



ゼータはルーヴの言葉を心に留め、思索を巡らせる。己の心に沸き上がるコレットを想う気持ちは何がもたらすのか──答えは容易には見つからない。



(執着…私はコレットに執着しているのか…私にとってコレットの存在は…何だ?どんな言葉でも足りない、この気持ちは何だ…?)



一方、拐われた4人は賊の巣窟に連れ込まれた。荒くれの男達が口々に騒ぎ立てて喧しい巣窟は粗雑な空気が充ち満ちていた。



「見ろ!上玉の女が4人も入ったぜ!」


「ヒヒヒ…揃いも揃って食べ頃じゃねぇか…!」


「まあ、焦んな。この嬢ちゃん達なら奴隷としても良い値が付くだろうよ…」



賊達は口々に囃し立てる。猿轡を噛まされた4人は恐怖に怯えるしか出来ない。荒くれの男達は緑の少女4人を飢えた狼のような目で見つめていた。



「ありゃ〜?この娘、生意気に鎧なんて着やがって…」


「ほ〜う、騎士の嬢ちゃんなんて代物、相当高値で売れるぜ!」


「じゃあ騎士の嬢ちゃん2人を売っ払って、あとの2人は俺らの奴隷に──」


「カンタベリーバレット!」


「ぐわあぁッ!」



真紅の爆炎が乾いた土を焦がす。ルーティ、ゼータ、リンドが門番を蹴散らし、先鋒として飛び込むと、皆が続いて次々に雪崩れ込んだ。



「な、何者だ!?」


「残念だったわね!うまく隠れてたつもりかもしれないけど、お見通しよ!」


「ガルル…許サナイ!」


「よくもやってくれたな…貴様ら全員、殲滅する!灰も残さん!」


「4人とも今助けますよ。グィフト、お願いします!」


「はいよ!そ〜れッ!」



グィフトのブーメランが縛り付ける荒縄を断ち切り、4人を解放した。囚われていた4人はすぐに助け出され、一行は即座に臨戦態勢に入った。



「クソッ!この娘達、高く売れるはずだったのに!」


「世に蔓延る悪の根は断ち切るまで!覚悟!」


「よし、4人は下がれ。あとは私達が片付ける!」


「マリー様…!」



4人を後衛に下げ、両軍入り乱れての大乱闘。荒々しくぶつかり合いながら激しい火花を散らした。



「ブライトエッジ!」


「せいやぁ!くらえッ!」


「グッ…強えぇ…」


「怯むな!まとめてブッ壊してやれ!」



彩りの戦士達の統制のとれた戦いを屈強な賊達は力で捩じ伏せにかかる。緑の少女4人の胸の内に燃える想いは全く同じだった。



「ピエージェ・ド・リエール!」


「スパイダーネット!」


「何いぃッ!?こ、このガキ…!」



コレットとリデルが賊長を彩りの縄で縛り付ける。後衛に控える少女達の奇襲に味方である一行も驚きを隠せなかった。



「コレット、リデル!?」


「私達が引き受けると言っただろう!?お前達は後に下がるんだ!」


「イヤだ!みんな頑張ってるのに見てるだけなんてイヤだもん!」


「私達だって…ずっと、守られてばかりは…嫌です!」


「そうだよ!ここで逃げてたら、ベガ様に合わせる顔がないよ!」


「マリー様、どうかお許しください…私達の力を1つに、立派に戦ってみせます!」



エーデルの紋様がグラスランドグリーン、ミュゲの紋様がスプリンググリーンに煌めき、コレットとリデルの彩りに同調する。左手の甲に印された鮮やかな緑は彩りの戦士として戦う4人の覚悟を体現していた。



「わたしだって一緒に頑張るもん!怖くなんかないよ〜!」


「怖いけど、私も…一緒に戦うんです!」


「くらえ〜!あたしの大自然パワー!!」


「私の生命の力は…負けません!!」


『草木の緑、命の翠、自然の碧、生の翆!炸裂せよ!!』


「うぐわああぁぁッ!」


「ボス…!に、逃げろ〜!」



大自然と生命の緑、若き宮廷騎士の彩りのエネルギーが緑の彩りの綱を介して爆裂する。我が物顔で暴れていた賊達は将を倒されて大慌てで敗走し、一行は安堵に包まれた。



「制圧しましたね。4人とも無事でよかった…」


「やれやれ…勝ったから良いけど、あまりヒヤヒヤさせんなよなぁ…」


「いや、見事だったぞ。4人とも、よく頑張ったな」


「エヘヘ…ありがと、ゼータ♪」



彩りの戦士として戦う緑の少女達の覚悟を目の当たりにし、皆が快くその意思を受け入れた。4人の無事の帰還に安堵した一行は改めてビンニー国へと歩を進めていった。




To Be Continued…

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