表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rainbow God Bless  作者: 色彩天宙
Chapter5:彩りの義勇軍篇
100/330

第100話『傭兵戦争〜Vol.10〜』

記念すべきシリーズ第100話目です!これからもどんどん執筆して参ります!どうぞご覧くださいませ〜!!

ブルーノ国バーント平原。巨大傭兵団との戦いも遂に佳境に差し掛かり、彩りの軍を率いる大将モニカは傭兵達を束ねる敵将リモーネ──そして、突如として乱入した孤高の獅子王フレアとの三つ巴の戦いに身を投じていた。



「ぬうぅん!!」


「せいやッ!はあッ!!」


「てやぁ!でええぃッ!」


(…フレア、さすがの太刀筋…リモーネもヴィオと互角、それに我流とは思えない錬度…!)


「陽光の剣聖モニカ…この(とき)、心待ちにしていたぞ!我が剣に屈せよ!灰塵に帰すべし!!」


「アンタを倒せば私達の勝ちってことよね!傭兵の誇りに賭けて、アンタをギタギタにしてやるんだから!」


(フレア…リモーネ…どちらも目が離せない…どうすれば…)



3人は激しく刃を交え、息着く間もない応酬を繰り広げるが、モニカの剣勢が少々鈍い。曾祖父の代から続く剣術道場にて免許皆伝に至るほどに鍛練と稽古を重ね、1対1で剣を交える様式美を重んじていたモニカにとって同時に2人と刃を交えるのは不慣れな状況であった。普段とは違う戦いの様相に迷いや戸惑いが拭いきれていないのは明らかだ。フレアに向かえばリモーネが見えず、リモーネに集中すればフレアに注意が行き届かない。モニカが2人に遅れを取っているのは誰の目にも明らかであった。



(この2人に少しでも隙を見せてはならない…フレアの俊足に追い付かないと──)


「どこ見てるの〜?そぉれッ♪」


「クッ…しまった!」


「そんな…モニカ殿!」


「酷いわ…砂で目潰しするなんて…卑怯な真似を…!」


「ヘヘン♪あんまり趣味じゃないけど、ヴィオの真似させてもらったわよ!これだけの傭兵達を世界中から呼んでおいて負けられないわ!」


(…ヴィオ…私達との絆を断ち切り、賊に堕ちた貴女は今どこに…)



一方、一行の仲間達も果敢に敵将に挑む大将モニカの姿に鼓舞され、仇為す傭兵団に立ち向かう。1人1人を結び合う皆が。自ら傭兵団に加担した彩りの戦士──ジャンヌ、コーネリア、シンディ、ポルポの4人と対峙するテリー、アミィ、クレア、ロビンの4人──それぞれのライバルとして真摯に向かい合い、己を奮い立たせて戦っていた。



「チェストッ!」


「ヘッ、さすがにいいパンチしてるじゃねぇか…けど、このジャンヌ・パンサー様をいつまでもナメるなよ…ドラァ!」


「キャハハッ♪ちんちくりんアミィちゃんともっと遊びたいな〜♪」


「ふうぅ…ホンマにアンタと接してるだけでストレス溜まるわ…退けやアホ!」



その同じ頃──リベラ、ジェンシア、マチルダ、グラーノ、セレアルの破落戸5人組にエレン、リタ、ビクトリア、ステラ、リーベの5人が立ち向かう。一行の中核を担う一員である毅然とした意思を持ち、戦いの先に待つ運命を切り拓くため、臆する気持ちは微塵も無い。しかし、少しばかり陰り始める転機が崩れた天気と共に訪れた。



「燃え尽きろ!ロアッソフレイム!!…あ、あれ…?」


「あっちゃ〜…雨かよ…こんな時に参ったぜ…」


「ああ、なんてこと…天空の涙が私達を濡らしていますわ…」


「むうぅ…ここでお天道様が陰ってしもうたか…ちぃと景気が悪いのう…」


「なンだい!天気くらいでショボくれてンじゃないよ!ガンガンいこうじゃないのさ!」



鈍色の空から蒼き水滴が降り出した。空模様は今にも降り出さんとしていたが、意気が高まってきた状況に文字通り水を差す。一方、破落戸5人組はさして慌てた様子も無かった。



「雨、か…私の力は焔だからちょいと都合が悪いね。ここからはみんなを援護させてもらう。頼むよ!」


「ああ。任せときな、リベラ!周りの傭兵達もいるから前は任せて、後から援護してくれ!」


「おうよ!何事も要領よく立ち回らなきゃなぁ!がさつで大雑把じゃイカンよなぁ…ビクトリアちゃ〜ん?ヒャヒャヒャッ!!」


「クッ…!あんた、減らず口叩けンのも今のうちだよ!ボコボコにしてやるから、覚悟してな!」


「ああ…モニカお姉様、大丈夫でしょうか…?」


「フレアとリモーネ、手強い2人を同時に相手してるから心配だよな…でも、俺は信じるぜ!」



リタは力強く信頼を言葉にして紡いでいるが、モニカは依然として苦戦を強いられる。リモーネは雨で足下に出来た泥濘を蹴り、2人の視界に向かって泥を跳ね上げた。



「よ〜し、雨降りも好都合♪そぉらッ!」


「ど、泥が…!」


「惰弱也!滅ッ!!」


「うああッ…!!」



雨に濡れ、泥にまみれながら我武者羅に追従していたモニカが2人にどんどん遅れを取っていく。フレアの圧倒的な剣捌きとリモーネの形振り構わぬ戦いに苦しめられ、モニカは一気に劣勢に立たされる。大将が追い込まれる様相を見せつけられ、モニカの勇猛な背を励みに戦う一行にも焦燥の色が滲んでいた。



「チッ、モニカが押されてる…ちょっとヤバいかもしれないじゃん…?」


「トリッシュ、弱気にならないで!私達ならきっと大丈夫、大丈夫だから!」


「カタリナの言う通りだぜ。ピンチの時こそ、アタシらが燃えないと──」


「ぐわあぁッ!」


「みんな、見るのである!あれは…!!」


「ど、どうして…!?」



山吹色の剣閃が目にも止まらぬ速さで駆け抜け、傭兵団の一端を捉える。目の前に現れたのはモニカ率いる彩りの一団でもリモーネ率いる傭兵団でもない第3勢力──増援として駆け付けた遊軍にブライアは驚嘆する。一行の中核を担う18人の紋様と同じ18色──色とりどりの鎧に身を包んだ騎士──魔族七英雄ベガに囚われていたはずのテラコッタ・ソシアルナイツの面々だった。



「我が名はマリー。我らテラコッタ・ソシアルナイツ、救援致す!」


「みんな…」


「ブライアさん…無事だったんだね〜!!」


「たしかローザ様に処刑されそうになったところを逃亡して行方不明に…ご無事でよかったです!」


「エーデル、ミュゲ…私はローザに逆賊と罵られ、一度は死を覚悟した…こうしてまた貴女達と会えるなんて…この日を待ちわびていたわ」


「ブライア様、また共に戦いましょう!我らが主君…ベガ様の理想の実現のため!」


「そんな…ベガですって!?我らの主君が、魔族七英雄…!?」


「ブライア、今は受け入れるしかないわ。精霊が彼女達を正しき道へと導く時がきっと来るから…」


「…そうね、フェリーナ。私も信じたい…ソシアルナイツの皆を…私の家族を!」



ミントグリーンの弓騎士バジルの言葉にブライアの心が一瞬揺らぐ。彩りの騎士達が主君と呼ぶのは魔の1柱を担う薔薇の貴公子だった。身も心も邪に染まった主君ローザが亡き者となっていたが、ソシアルナイツの皆が新たな主君という依り代を魔族に見出だし、ベガとラストの甘い罠に堕ち、魔の虜となっていた。ベガを“主君”と呼び、彼への忠義のもとに遣える彩りの騎士達を加え、傭兵団を迎え撃つが、戦局は簡単には変わらない。



「せぃやぁ!」


「…見事!ブライア殿、腕は落ちてないようで何より!」


「ありがとう。ランディニこそ腕を上げたわね!」


「うん、それは良いことだけどさ〜…全然敵減らないじゃん?ヤバくない…?」


「そうね、カメリア。今の戦況を打破するためにも皆で協力しましょう」



苦戦を強いられる彩りの戦士達だが、いつまでも黙ってはいない。軍師として牽引してきたルーシーが毒の戦士スラッジを引き連れて躍り出る。スラッジはルーシーの調律に合わせ、彩りの力を美しくシンクロさせる。水色とケミカルパープル、2人の彩りは虚空を舞って降り注ぐ雨粒さえも糧にしていた。



「スプラッシュロンド!」


「ヘドロウェーブぞなもし!」


「な、なんだ!?いつもよりヘドロウェーブの威力が増してるような…気のせいかな?」


「ヤートさん、気のせいではないと思います。きっとお2人は雨の水分を術に利用しているんですよ!」


「ケイト、それマジ!?超スゴいじゃ〜ん!」


「そりゃ見事な技だがや!わっちらも続いて一気に──」



ヒュンッ!



一瞬、全員の時間が静止する。時間が静止した空間の中、2本の短刀が何処からともなく投げ込まれ、リモーネの右肩とフレアの左脛に突き刺さった。時間が再び刻み始め、右肩を裂くような痛みに気付いたリモーネは事態が飲み込めないまま痛みと混乱で激しく動揺し、フレアは静かに赤黒い怒りの炎と青白い恨みの炎を燃やしていた。



「うう、い、痛い…痛い痛い痛いッ!!…ど、どこから…!」


「クッ、死角から来るとは姑息な…何者だ!?斬り捨ててくれるわ!」


「…フッ、チェックメイトだ!リモーネ!」


「モニカさ〜ん!おてつだいするよ〜!」


「なっ、なんですって…!?ブラック、グレイ!?まさか、アンタ達…!」


「ヴィオ!ザラーム!」



短刀を投げ込んだ2人の盗賊──ブラックとグレイがフードを目深に被った上着を脱ぎ捨てる。それぞれブラック、グレイという偽名を名乗り傭兵団に潜んでいた盗賊は裏切りの玄黒ヴィオとその妹ザラームだった。かつて切り込み隊長として貢献しながら契約を棄てて反旗を翻した彩りの戦士は苦笑いを浮かべたような顔に少しばかりの後ろめたさを滲ませながら、一行のもとへと戻ってきた。



「ふわぁ〜!ヴィオだヴィオだ〜!みんな、ヴィオが帰ってきたよ〜!」


「ヴィオ、さん…よかった…おかえりなさい…」


「コレット、リデル…ただいま…みんな、待たせたな!」


「ヴィオ…盗賊なんかになって裏切ったりして…アンタって奴は…!」


「エレン…すまないな。だが、一領主であるローザに刃を向け、皆が反逆者となったあの状況…あれが私の役割だった。盗賊に落ち延びて裏切るしかなかったんだ…」


「ええ、私はなんとなく感付いていたわ。リモーネ傭兵団しか追っ手らしい追っ手はいなかったもの。貴女が盗賊としてローザの追っ手の注意を引き付けて、私達から反逆者の汚名を拭う汚れ役を果たした…そうでしょう?」


「さすがはフェリーナ、察しが良いな。これだけの人数が集まったこの軍でも、私にしか出来ないことがきっとあると思った…つまりはそういうことだ」


「ク〜ッ!ヴィオ、やってくれたわね…絶対に許さない!反逆罪で処刑してやる〜!」


「どれほどの者が束になろうと力無き烏合の衆など無用。ただ我が刃の贄となり、滅するのみ!」


「フン…貴様、誰だか知らんが随分と御大層な能書きだな。私達を繋ぐ“絆”の力がどれほどか、貴様の骨身に刻み込んでやろう!」


「うん!ワタシだって傭兵ギルドでくんれんしたもん!負けないぞ〜!」


「よっしゃ!これで役者がみんな揃ったねぇ!さあ、やってやろうじゃないのさ!」


「そうですね、ビクトリア。この軍の1人1人が絆の力を信じてる…ヴィオ、ザラーム、共に戦いましょう!」


「は〜い!がんばろうね、お姉ちゃん!」


「…ああ。一度裏切った私が言えたものではないが…どうか私を…信じてくれ!」



盗賊の仮面を外し、再び仲間達との絆を紡ぎ始めたコーヒー色の彩りの戦士ヴィオ──傭兵として訓練を積み、確かに成長したチョコレート色の彩りの戦士ザラーム──帰り着いた2人の仲間を加え、一行は一気呵成の猛攻を仕掛ける。冷たい雨が降り頻る中、。精鋭部隊として選抜されるに相応しい実力を誇る手練れの傭兵達も数多の彩りの戦士達が戦場を華やかに飾る戦況に次第に押され始めていた。


「くらえ!メタルスピナーッ!!」


「ぶるわああぁぁッ!」


「シンディ!チクショウ、そんなはずは…!」


「さ、寒気がする…この気配はまさか──」


「ぐわあああぁぁッ!」



フェリーナが寒気を感じたのはあまりに強い邪気──手薄になっていた一端を一気に追い詰めるのは漆黒の彩り──妖精王の城で一行に加担した強大な邪気を纏った謎の戦士フィーネだった。蒼白の肌は赤々とした鮮血が際立っており、皆を戦慄させる。フィーネは周囲を一顧だにせず、巨大な刃を荒々しく振り回した。



「……フン!」


「ぬうっ!?この刃…修羅の如し…!!」


「ひぃええぇっ…!ま、待ってよ…まだ死にたくない…!」



フレアはフィーネの刃に確かな力を感じ取り、リモーネは死が脳裏を過って怯んだ。モニカは2人に遅れを取っていたが、思わぬ形の援護を受け、ヴィオに支えられながら体勢を立て直すことに成功した。



「…よし、今がチャンスだ。モニカ、援護を頼むぞ」


「…はい!もう一度貴女と絆を紡ぎたい…ヴィオ!!」



モニカとヴィオの紋様が呼応するように煌めく。一度は無情にも断ち切られた絆が再び紡がれる彩りに満ちた未来を金色とコーヒー色が織り成す魔方陣が予知していた。



『甦れ、断ち切られし絆!紡がれよ、新たなる絆!サンライト・ビリーヴァー!!』


「……!!」


「ぬぅおおッ!!」


「うわああぁぁッ!!!」


「…勝ち、ましたね…ううっ…!」


「モニカ、大丈夫か!?かなり厳しい戦いだったな…ネイシア、治療を頼む」


「はい。モニカさんだけでなくフレアさんや傭兵団のみなさんも治療しましょう。私達救護班にお任せください!」



モニカとヴィオの連係で将であるリモーネが倒された傭兵団は瞬く間に制圧された。モニカらと共にネイシア達救護班の治療を受けたリモーネは自軍の敗北に不服そうな表情を見せていたが、辟易したような様子で戦意は微塵も残っていなかった。



「…リモーネ、私達の勝ちです」


「…もうそれでいいわよ。私達の負け。ハァ…誰かの先頭に立って戦うなんて、やっぱり面倒臭いわ…もう疲れた…」


「…リモーネ、それが貴女の敗因です!」


「な、なんですって!?」


「貴女は最後の最後になるまで前線に出て戦おうとしなかった。共に戦う仲間達の声に耳を貸そうとしなかった。ヴィオから聞いただけなので、詳しくはわかりませんが…強い意思と広い寛容を持たないなんて、軍を統べる将の態度ではありません!」


「モニカ…」


「世界中からこれだけたくさんの傭兵達が集まったのは貴女に賛同する想いがたくさんあったということではないですか?そんな1人1人の想いに応えるのも将の為すべき務めです」


「想いに応える、か…モニカ…私、また一から頑張ってみる!大切なことを教えてくれて、ありがとう!」



モニカとリモーネが握手を交わし、彩りの戦士達と巨大傭兵団の戦いは大団円のうちに幕を下ろした。左手に甲に印された色彩によって導かれ合い、惹かれ合い、味方軍と敵軍合わせて総勢107人の祝福の証がバーント平原で躍動し、煌めいていた──大いなる勝利を掴み取った一行は戦いの先に待っている新たな地への一歩を踏み出す羽休めのためにフルウム国へ戻ろうとしていた。戦いの舞台バーント平原に降り頻っていた雨が上がり、皆が見上げる天には大きな虹の橋が架かり、祝福に満ちた数多の色が地を優しく彩っていた。




To Be Continued…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ