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第一話「ワイバーンの祠」


第一話です、どうぞ!!


「ここが……ワイバーンの祠」



入り口から広がる空洞。ここはローエングリン家の地下に存在するワイバーンの祠。ローエングリン家は後継者が代々ワイバーンを使役してきた一族であり、ヴァイスもワイバーンを目的で此処にやってきたのだ。ヴァイスの隣にいるメイド服を着た女性が剣を渡す。



「ここから先はヴァイス様お一人で行くことになります。御健闘をお祈りしています、ヴァイス様」


「うん、無事に戻ってくるから安心して、ミーシャさん。それじゃ」



ミーシャは笑顔で一礼し、ヴァイスは「よし」と意気込み、祠の内部へ入って行った。





それから十分後……





「……此処どこだろう?」



ヴァイスは入ってから早くも迷っていたのだ。此処は祠というよりは、一種の洞窟のようなものだ。ヴァイスは地図を広げ、何度も首を傾げる。



「僕ってこんなに方向音痴だっけ……う~む、こっちだ!」



そのまま進むが、全くワイバーンの居る場所には着かなかった。代わりに来たのは



「何だ……これ?」



眼前にそびえ立つ、竜を模った巨大な像だ。ヴァイスは「お~!」驚嘆の声を上げる。もっと側で見ようと、石像に近づく。



「結構足元が悪いな、ここ……うわぁ!!」



足を滑らせそのまま前に倒れこみ、目の前まで来た石像に手をつくと



「あ!!」



そのままゆっくりと石像は倒れ、粉々に砕け散った。ヴァイスは青ざめ



「や、やっちゃった……」



「うわわ」と慌てるヴァイス。すると耳を劈くような雄たけびが聞こえる。紛れも無いワイバーンの鳴き声だ。ヴァイスは声のする方へ急いだ。





/※/





声のする場所へやって来たヴァイスは、辺りを見渡すが何も居ない。



「おかしいな……確か此処のはず……」


『貴様は誰だ?』


「!?」



正面にある岩山の頂上に、巨大な影が。大きな翼を持ち、黄色い鋭い眼光、人の身体なら容易く引き裂けそうなその鋭爪。



「わ、ワイバーン……ぼ、僕はヴァイス・ローエングリンと言います!」


『ローエングリン……つまりこの我を使役しようとする者か』


「えっと、そうなるんですよね……」


『ふむ……気に入らんな』


「え?」


『貴様のような者は気に入らぬ。貴様はまるでそこらに転がっている、小石のような小僧だ』


「うぐっ!?」



容赦のないワイバーンの言葉が突き刺さるヴァイス。



『今まで我が仕えてきた者達は勇敢で、我に挑もうとする気がある者であったが……貴様にはそれがない。不愉快極まりない……早急に我が前から失せよ!!』



ワイバーンは飛び、紅蓮の炎をその口から吐き出す。



「うわぁあ!?」



頭を手で覆い体を伏せ、炎をやり過ごす。ワイバーンはそのままヴァイスに向かって飛翔してくる。



「に、逃げきゃ…っ!」



恐怖で足が完全に竦み、全く動かない。どんなに逃げようと頭で思っても、体が言う事を聞かないのだ。



「(このままじゃ……死ぬ……お父さん、お母さん……僕は直ぐにお父さん達の下に行きます。ブラン…ゴメンね、お兄ちゃんは先に行きます)」



目を瞑り、恐怖しながら死を覚悟した。今まさにワイバーンの爪がヴァイスを引き裂こうとする。




だが




『グァアア!!!!』



鈍い音と共に、ワイバーンの叫び声が聞こえる。ヴァイスは何事かと恐る恐る目を開ける。すると、自分の体を覆っている、ワイバーン以上はある巨大な影。そして、ヴァイスは顔を上げる。



「う、うわぁ……」



彼の上に居るのは、美しく輝く白銀の甲殻。その巨大な体を覆いつくせるほどの大きさを持つ翼。ほの暗い空洞の中でも光るように煌く紅の眼光。



『き、貴様は……!?何故此処に!封印されたのではなかったか!?』


『吼えるな。我は今し方起きたばかりでな、気分が優れぬ……失せろ』


「何……?ふざけるなぁ!!」



ワイバーンは再び飛翔し、白銀の竜に襲い掛かる。



『雑魚が……我に適うと思うな!!グォオオオオ!!!!」


『グッ!?ガアアアアアアアア!!!!』



白銀の竜から放たれた蒼い焔はワイバーンを包み、完全に消滅させてしまった。



「す、すごい……」



思わずヴァイスからもれたその言葉。すると白銀の竜は少し離れ、ヴァイスの方を向く。



『小僧、貴様か?我を封印していた石像を破壊したのは?』


「え?……もしかして、竜の石像の事?」


『そうだ。その口振りからするに、貴様のようだな、礼を言うぞ』


「い、いえ、こちらこそありがとうございます……って、あーー!!」



ヴァイスは膝を地面につけて、落胆した表情を見せる。



「わ、ワイバーンが死んじゃった……どーしよー!!」


『何を喚いている?貴様はあれに命を狙われていたのだろう?』


「た、確かにそうですけど……あ~どうしようどうしよう……」



半ば泣き顔になるヴァイス。白銀の竜はとあるものを目にする。



『小僧…その鞘の紋章…ローエングリンの物か?』


「え?あ、はい。僕ヴァイス・ローエングリンと言う者です」


『ほう……貴様には封印を解いてもらった借りがあるな。貴様が良ければ、我が力を貸すが?』


「ほ、本当で――」


『だが、一つ問わせてもらおう』


「?」



白銀の竜は腕を組む。



『貴様は我をどうする?』


「どう、するって……分りにくい質問だなぁ。う~ん……一緒に生きていく」


『何?』


「一緒に過ごして、一緒に頑張って、一緒に生きていく。これが僕の答えだけど……どうかな?」


『詰り、貴様は我と『共存』を望むと言う事か?』


「う、うん」


『……ククク、フハッハッハッハッハッハ!!!!』



高らかに笑う白銀の竜。ヴァイスは何がなんだか分らないが



「わ、笑われてる…?」


『いや済まぬ、ここ数百万年生きてきたが、貴様の様な者は初めてよ!ククク……他の者共は屈服させるだの、従わせるだの詰らぬ事ばかり言っておった。どのような返答が来ても力の一部しかやらぬ心算であったが、こればかりは予想外だ!!……小僧、ヴァイスと言ったな』


「は、はい!」


『気に入ったぞ、貴様に我が力の全てを授けよう!我をその身に宿すが良い!』


「えっと……どうすれば?」


『簡単だ……グォアアアアア!!!!』


「!?わぁあああああああ!!!!」



突然、白銀の竜は口を大きく開き、再び蒼い炎を放つ。ヴァイスはその炎に包まれて燃えていった。だが不思議と熱くなく、心地よいものであり、そのまま意識が途絶えていった。そして途絶える意識の中、声が聞こえる。



『目が覚めるころには、我は貴様の内に存在する。我が名はバハムート……覚えておくが良い……』



こちらの物語にも学園が存在します。それは次回の話にでますので、お楽しみに。

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