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日常

作者: 七藤 四季

 7時ちょうどに目覚まし時計が鳴った。カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。18歳の誕生日を迎えたばかりの少年は布団から手を伸ばし、アラームを止める。彼は起き上がると、畳の上に置いてあるメガネを手探りで探し始めた。やがて見つかるとそれを掛け、階段を下りてリビングに向かった。

 朝食を食べ終え、少年はいつものように学校へ行く支度を始める。歯を磨いたり、右側だけはねている寝ぐせを直したりといつもの順番で。用意ができると、くたびれた鞄を持ち、家を出た。いつもの風景の中を歩き、見飽きた校門をくぐって、自分の教室に着いた。ホームルームが始まる1分前――いつもと同じ時間に着席する。

 チャイムと共に先生が現れた。スーツ姿で、胸には造形の花をつけている。先生は持ってきた紙袋から自分がしているものと同じ造形の花を取り出し、配り始めた。全員がそれを胸に付けるのを確認すると、先生は話始めた。その時間はいつもより長かった。

 話が終わると、少年達は廊下で整列してから体育館に向かった。体育館に設置されたパイプいすに座ると、退屈な時間が彼を襲い始めた。壇上には先ほどからいろいろな人が立っている。特徴は様々だが、全員10分以上は話をしていた。

 教室に戻ると、アルバムや記念品が配られた。そして最後に卒業証書が渡されると、先生が最後の話をし始めた。それが終わると、少年は友達と三十分ほど話し合い、いつものように友達に別れを告げ、教室を後にした。


 7時ちょうどに目覚まし時計が鳴った。カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。少年は布団から手を伸ばし、アラームを止める。彼は布団から出ると、畳の上に置いてあるメガネを手探りで探し始めた。やがて見つけるとそれを掛け、階段を下りた。

 朝食を食べ終えると、少年はいつものように学校へ向かおうと家を出た。ただし家族に見つからないように。いつもの道をいつもと同じ速度で歩く。やがて見飽きた校門をくぐり、下駄箱に靴をしまった。だがいつも入っていたスリッパはそこにはなかった。彼は階段を上り、自分の教室に入る。そこはいつもと同じ風景が広がっていた。前と後ろに黒板があり、机は40個ちゃんと全部ある。少年は自分の席に着いた。やはり目の前に写るものはいつもと変わらない。――ただ誰もいないだけだった。

 少年の右頬に一筋の透明な線が入った。時計の針はホームルームの開始時刻を差していた。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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