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第15話:親切すぎた自動販売機


「はざま村」の入り口。そこは最近、ソラの噂を聞きつけた冒険者や、道に迷った商人が時折通りかかるようになっていた。

「アレンさん、最近村の入り口で座り込んでる旅人をよく見かけるんです。皆さん、喉が渇いてるみたいで……。でも、わざわざうちまで来てもらうのも申し訳ないじゃないですか」

ソラは庭で、巨大な鉄の塊(実は伝説のミスリル合金)をトンカチで叩きながら言った。

「(……いや、ソラさん。彼らは村の入り口にいる『ポチ(ケルベロス)』を見て、腰を抜かして動けなくなってるだけですよ……)」

アレンは心の中でツッコんだが、もはや無駄だと知っている。

「だから、村の入り口に『自動販売機』を置こうと思うんです! ほら、ボタンを押すと飲み物が出てくる箱です。これなら、僕が畑仕事をしてる間も、旅人の皆さんが喉を潤せますから」

「……じ、自販機? まぁ、飲み物くらいならいいけど……動力はどうするんだよ?」

「あ、チッチさんが協力してくれるって言うんです」

ソラが指差した先では、元魔王ゼノン(チッチさん)が、箒を片手に「チチチ」と鳴いていた。

「……チチッ。(ソラ殿、魔力を結晶化させた『魔石』を動力源にすれば、万年は稼働し続けるぞ。……余っている『大魔王の核』を一つ埋め込んでおこうか?)」

「あ、チッチさん、ありがとうございます! 『丈夫な電池を入れる』って言ってますね。助かります!」

「(……おい、今のは『電池』なんて可愛いもんじゃないだろ……! 万年稼働ってなんだよ!!)」


数時間後。村の入り口、ポチの犬小屋の隣に、ピカピカに輝く「自動販売機(一号機)」が設置された。

ソラは満足げに、自販機のボタン横に「メニュー」を書き込んでいく。

「えーっと、まずは冷たいお茶(元気が出る)。それから、体に良い(傷が治る)スポーツドリンク。あと、気分が良くなる(魔力回復)コーヒーもいいですね」

ソラは、庭の薬草(実は伝説の霊草『エリクサー草』)や、池のピピさん(リヴァイアサン)が浄化した聖水を、適当に煮出してボトルに詰めた。

「よし、全部『10円(銅貨一枚)』に設定しました! お財布に優しいですよね」

「(……待て待て待て! ソラさん、今、その『スポーツドリンク』の中身に、虹色に光る液体を混ぜなかったか!? あれ、伝説の『全回復薬エリクサー』だろ!!)」

アレンが戦慄する中、ソラのポケットからアカさん(古龍)が顔を出した。

「ポポポ、ポポッ!(……ソラ、これでは温かい飲み物が足りん。我の火で『超高温設定』の缶コーヒーも作れ)」

「あ、アカさん。いいですね! 『ホットも欲しい』って言ってますね。じゃあ、この缶コーヒー、アカさんに温めてもらいましょう」

「(……古龍のブレスで保温されたコーヒー……。缶が溶けるか、飲む人の胃が溶けるかの二択だぞ……)」


そこへ、一人のボロボロになった冒険者が通りかかった。彼は「はざま村」の噂を聞きつけ、命からがら辿り着いたSランク冒険者である。

「はぁ、はぁ……。なんてことだ……。村の入り口に冥界の番犬ポチが寝ているなんて……。もうダメだ、喉が渇いて死ぬ……」

彼はふと、ポチの隣にある奇妙な箱に気づいた。

「……ん? 自動……販売機? 銅貨一枚……だと?」

彼は震える手で銅貨を投入し、一番上の『冷たいお茶』のボタンを押した。

ガコンッ、という音とともに、黄金色に輝くボトルが出てくる。

「……なんだ、この芳醇な香りは。……ゴクッ……。……ッ!? な、なんだこれは!? 体中の傷が一瞬で塞がり、失った魔力が爆発的に膨れ上がっていく……!? こ、これは茶ではない、神の血だ!!」

彼は、たった10円で「不老不死」に近い力を手に入れ、その場で号泣した。

さらに隣の『気分が良くなるコーヒー』を飲んだ瞬間、彼のレベルは上限を突破し、周囲の空間が魔圧で歪み始めた。

「(……あぁ、また一人、世界のパワーバランスから逸脱した冒険者が誕生しちまった……)」

アレンは遠い目をして、空を仰いだ。

そこへ、池から顔を出したピピさん(ミニリヴァイアサン)が「ピピピッ!」と鳴いた。

「(……ソラ様、商品が少なくなっています。私の鱗を削った『冷製サファイア・ソーダ』も追加しておきました)」

「あ、ピピさん、補充ありがとうございます! 『炭酸も入れたよ』って言ってますね。気が利くなぁ」

「(……リヴァイアサンの鱗入りソーダ……。飲むだけで海中呼吸と水魔法無効化が付きそうだな……)」


数日後。村の入り口は、伝説の自販機を求めてやってくる、各国の騎士団や賢者たちで大行列になっていた。

「おい、見たか!? あの自販機の『特製ぬか漬けジュース』を飲んだら、末期の呪いが一瞬で解けたぞ!」

「私は『アカさん印のホットココア』を飲んだら、火属性魔法の威力が百倍になった!」

大混乱の入り口を眺めながら、ソラはのんびりと庭でポチを撫でていた。

「アレンさん、見てください。自販機が大好評ですよ! 皆さん、あんなに喜んでくれて……。やっぱり、喉を潤すのは大事なことですね」

「……ソラさん。あの行列の中に、隣国の国王が三人くらい並んでるの、気づいてます?」

「え? あぁ、本当だ。皆さん、ボランティア活動の帰りでしょうか。喉が渇いてるんですね。……ま、いっか。みんなで仲良く飲んでくれれば…平和が一番ですからね」

ソラがニコニコと笑う横で、自販機の動力源にされた邪神(ぬか床)が、樽の中で虚しく呟いていた。

『……我は……神だぞ……。10円で……お茶を冷やすための……保冷剤扱いするなぁ……』

今日も「はざま村」の入り口では、10円で世界の常識が塗り替えられ、新しい伝説(と最強すぎる旅人)が量産され続けていくのだった。


読んでいただきありがとうございます!


もし面白かったら【★★★★★】やブックマークで応援していただけると嬉しいです!


ソラくんの「ま、いっか」は、まだまだ続きます。


本日、ついに聖女エルフ・エルナのビジュアルを活動報告にて解禁しました!

「はざま村」最高レベルの美貌を誇る彼女ですが、中身は……皆様のご想像通りです。

圧倒的な透明感、神々しい祈りの姿……。

ですが、彼女の「信仰心」は、ソラと出会ったことで斜め上の方向へ進化してしまったようで……。

「え、この美少女がそんなことを!?」と驚くかもしれませんね。

ぜひ、活動報告をチェックしてみてください!

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/3030454/blogkey/3601401/

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