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第12話:爆速建築! ギルドは『生きている』


隣町「カザル」の冒険者ギルドがあった場所。そこには、ただ風が吹き抜ける完璧な「更地」が広がっていた。真っ黒焦げで座り込む職員たちの前で、ソラは腕まくりをして宣言した。

「皆さん、安心してください。幸い、更地になったおかげで基礎からやり直せます! 僕、村では鶏小屋の修理とかよくやってたんです。大工仕事には自信があるんですよ!」

「……いや、ソラさん。これ、国家予算級のギルド建物ですよ……鶏小屋と一緒にしないで……」

アレンが力なく突っ込むが、今のソラには届かない。ソラの目は、完璧な設計図を脳内に描く「超職人モード」に入っていた。

「さあ、みんなで手分けしましょう! アレンさん、ゼノンさんは資材の整理を。ユウナさんとエルナさんは、魔法で建材を浮かせて固定してください。アカさんは……火加減の調整をお願いしますね」

「ポポポォ!(合点だ! 焼き尽くしてやるぜ!)」

「あ、アカさん、燃やすんじゃなくて、接着剤を乾かすくらいですよ?」

そしてソラは、物置(空間収納)から、古びた、しかし不気味な紫色のオーラを放つ木樽を取り出した。

「あ、そうだ。ちょうど持ってきた『ぬか床』さんも手伝ってください。中身がこぼれないように、重石として建物の中心に鎮座してもらいましょう」

樽の中から、震えるような声が響く。

『……我は邪神ぞ……。万物を腐敗させ、世界を闇に染める存在……。それを、新築物件の「文鎮」代わりに使うとは……貴様、正気か……!?』

「あはは、ぬか床さんもやる気満々ですね! さあ、始めますよ!」


工事が始まると、周囲の時間は加速したかのように錯覚された。

ソラが『万象創造』を込めた神話級の金槌を振るうたび、何もない空間から、白銀の輝きを放つ「世界樹の材木」や、アダマンタイト製の釘が出現する。

「はい、そこ! 浮かせてください!」

「了解よ! これくらい、朝飯前ね!」

女神ユウナが指を鳴らすと、巨大な大黒柱が軽々と宙を舞う。

「聖域展開……! 建材の劣化を数万年単位で防ぎますわ!」

聖女エルナが、本来なら魔王軍の総攻撃を防ぐための最上級結界を、ただの「防腐処理」として木材にぶち込んでいく。

「(おい、ゼノン……俺たち、何してるんだろうな)」

アレンは、伝説の魔王ゼノンと一緒に、ソラが創造した「絶対に錆びない最高級の金具」をバケツリレーで運んでいた。

「……チチチ、チチチッ。(……聞くな、アレン。我は今、自分が魔王であることを忘れることにした。今はただの、ソラ殿の助手だ。……ほら、次の『オリハルコンのカスガイ』が来たぞ)」

ソラの作業スピードは異常だった。

一般の大工なら数ヶ月かかる工程を、彼は「整理整頓の延長」で進めていく。バラバラになった建材を「えいっ」と一箇所にまとめるだけで、なぜかそれらがパズルのように組み合わさり、数秒で柱が建ち、壁が張り、屋根が()かれていくのだ。

「せっかく立て直すんですから、使い勝手が良いほうがいいですよね。えーっと、お掃除が楽なように床を少し滑らかにして……。あと、空気がこもらないように風通しを良くして……。よし、おまけに『リラックスできるお香』みたいな効果もつけちゃいましょう!」

ソラは『万象創造』の力を無意識に垂れ流しながら、「ちょっとした生活の工夫」のつもりでトントンと金槌を振るう。

だが、その一振りごとに建物には神話級の術式が刻まれ、建材は意志を持つかのように脈動し始めた。

「(……待て、それ、床を滑らかにするんじゃなくて『生体組織』に変換してないか!? 風通しっていうか、建物が呼吸してるだろ!!)」

アレンが心の中で絶叫する中、ソラは最後に、建物の中心に「重石おもし」として置いた邪神のぬか床に、優しく金槌を当てた。

「あ、ぬか床さんもずっとここに置くわけにいかないし、今のうちに建物の『魔除け』として馴染ませておきますね。魔除け(邪神)があれば、悪い人も寄ってこないでしょうし。……よいしょっと!」

ソラは、邪神の放つ「世界を滅ぼす呪詛」を、「強力な魔除け成分(唐辛子的なもの)」だと勘違いし、建物の基礎に無理やり「同期」させた。

『ギャァァァァァ! 我の神格が……建物の警備システムの一部に組み込まれていくぅぅぅ! 私は邪神だぞ、不審者を追い出すための「センサー」扱いするなぁぁぁ!!』

邪神の悲鳴は、ソラの耳には「新築の家に馴染んで喜んでいる音」にしか聞こえない。

邪神の負のエネルギーを燃料として吸い上げ始めたギルドは、淡い光を放ちながら、ドクン、ドクンと心地よい(?)鼓動を刻み始めたのだった。


日が暮れる頃。そこには、以前の石造りの建物とは比較にならないほど、荘厳で美しい「白亜の巨塔」がそびえ立っていた。

「よし、完成です! どうですか、皆さん!」

呆然と立ち上がるギルド職員たち。受付嬢がおそるおそる入り口の扉に近づくと——。

『イラッシャイマセ。本日モ、オ疲レ様デス』

扉が勝手に開き、癒やしの香りが漂う。足元に溜まっていた砂埃は、床が勝手に「ゴクリ」と飲み込むようにして消滅した。

「……え、扉が喋った?」

「お、おい! この椅子、座った瞬間に肩凝りが治ったぞ!?」

「見てください! 依頼票の掲示板が、私の適正に合わせた依頼を自動で選別して差し出してきます!」

職員たちは、そのあまりの「至れり尽くせり」な機能に震え上がった。

しかし、一番驚愕したのは、乱入してきた不届きな酔っ払い冒険者への対応だった。

「ひっく……なんだこの豪華なギルドは! 俺様が一番乗りだぁ!」

酔っ払いが床に唾を吐いた瞬間。

『不衛生ナ不届キ者ハ、排除シマス』

ギルドの壁から石の腕がニョキリと生え、酔っ払いの襟首を掴むと、そのまま窓の外へと優しく、しかし抗えない力で放り投げた。

「……あはは、防犯機能もバッチリですね!」

ソラは満足げに頷いた。

「(……いや、これもうギルドっていうか、ダンジョンだろ……)」

アレンが遠い目をする横で、邪神(ぬか床)は完全に力尽き、樽の中で静かになっていた。


「さあ、これで僕の『普通さ』も証明できましたね! こんなに素晴らしい建物をあっという間に直せるのは、私が『どこにでもいる、ちょっと器用な村人』だからです!」

「「「(……どこに、いるんだよ、そんな村人!!!)」」」

職員一同の心の叫びが響き渡る中、ソラは清々しい顔で町を後にした。

結局、能力測定の結果は「爆発したため不明」となったが、ソラは「装置が古かったせいで測定不能=平均的すぎてエラーが出た」と、独自の理論で納得していた。

「さあ、帰りましょう! 今日の夕飯は、ぬか床さんの美味しいお漬物ですよ!」

『……もう、殺してくれ……』

夕焼けの中、はざま村へと帰る一行の影は、どこまでも長く、そして非常識に伸びていた。


読んでいただきありがとうございます!


もし面白かったら【★★★★★】やブックマークで応援していただけると嬉しいです!


ソラくんの「ま、いっか」は、まだまだ続きます。


活動報告にて、ソラとユウナのキャラビジュを公開しました!ユウナ様がめちゃくちゃ美少女なので、ぜひ見てみてください!


https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/3030454/blogkey/3599284/

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