第0話:女神様のうっかりと、ブラック社員の勘違い
【読者の皆様へ】
本作はAIをアイデア整理などの補助として活用しながら、作者が構成・執筆した物語です。
ゆるく楽しい勘違いスローライフを、気軽に楽しんでいただければ嬉しいです。
「……あ、これ。ダメなやつだ」
——そう思った時には、もう遅かった。
深夜三時。製薬会社の研究室。
ソラ——本名、天野宙は、顕微鏡のレンズ越しに見える世界が、万華鏡のように歪んでいくのを感じていた。
新種の薬草成分を抽出するための連日の徹夜。最後にまともな食事をとったのがいつだったか、もう思い出せない。
(……静かな、ところで……。誰にも邪魔されない……田舎で……のんびり庭いじりでもして……暮らしたかったな……)
それが、ソラの現世での最後の願いだった。
プツン、と糸が切れるような音がして、ソラの意識は深い闇へと沈んでいった。
「ま、いっか。……これでやっと、寝れる……」
「あわわわ! ちょっと待って! まだ死んじゃダメだってばー!」
鼓膜を突き抜けるような、賑やかな女性の声でソラは目を覚ました。
そこは、どこまでも続く真っ白な空間。目の前には、絶世の美女が一人。……いや、美女なのだが、なぜか必死に自分の頭をポカポカと叩きながら、涙目でうろたえている。
「あ、起きた!? 良かったぁ! ごめんねソラくん! 君の会社のブラックぶりが神様の想像を超えてて、寿命の計算を三、四十年くらいミスっちゃった!」
ソラは呆然と彼女を見上げた。
輝くような金髪に、透き通るような青い瞳。そして、神々しいオーラを放っているのに、どこか「ドジっ子」の波動を感じさせる女性。
「……えーっと、あなたは?」
「ワタシ? ワタシは女神! 名前は……そうね、ユウナって呼んで! 君を死なせちゃったお詫びに、異世界へ転生させちゃいます!」
ユウナと名乗った女神は、ソラの手を握ってグイグイと身を乗り出してきた。
「さあ! 望みを言いなさい! どんな願いでもワタシが『最高ランク』で叶えてあげるから!」
ソラは、まだ半分寝ているような頭で、ずっと抱いていた夢を口にした。
「……静かな場所がいいです、ユウナさん。辺境の田舎で、庭付きの家があって……。そこで趣味の家庭菜園と研究をして、のんびり過ごしたい。……それだけです」
「えっ、それだけ!? もっと『ハーレム』とか『世界制覇』とか言わなくていいの? ……まあいいわ! その願い、ワタシが特盛で叶えちゃうんだから!」
ユウナさんがパチンと指を鳴らす。
「いい? 君には特別に『全知全能の解析眼』と、何でも創れる『万象創造の右手』、ついでに死なないための『不磨の聖体』を授けるからね! 感謝しなさいよー!」
だが、疲れ果てていたソラの脳は、ユウナさんの言葉を「スローライフ仕様」に全力で自動変換してしまった。
(解析眼……? ああ、よく見える老眼鏡的なやつか。万象創造……器用な手先? DIYに便利そうだな。不磨の聖体……風邪を引かない健康な体か。……ま、いっか。なんとかなるか。これなら田舎暮らしも安心だ……)
「じゃ、行ってらっしゃーい! ワタシもたまに様子を見に行くからねー!」
ユウナさんの賑やかな笑い声に背中を押され、ソラの意識は再び光の中に溶けていった。
「……ふぅ。……よく寝た。人生で一番寝た気がする」
ソラが目を開けると、そこは見たこともないような深い森の中だった。
空は紫と紺が混ざり合ったような不思議な色。空気は肺に吸い込むだけで細胞が活性化されるような、異常な濃度の魔力で満ちている。
こここそが、神域と魔界のちょうど中間地点。
世界で最も危険な魔獣が跋扈し、一吹きで軍隊を消滅させる毒霧が漂う人類未踏の聖域——『狭間の地』。
だが、ソラの瞳に宿った『解析眼』は、持ち主の「のんびりしたい」という欲望に配慮して、情報を徹底的にマイルドに書き換えた。
「わあ……。空気がちょっと濃いけど、森のマイナスイオンがすごそうだ。……おっ、あそこに綺麗な石が落ちてる」
ソラが拾い上げたのは、一個で国を買えるほどの魔力を秘めた『オリハルコンの原石』。だが、ソラの目には「ちょっとキラキラした、漬物石に良さそうな石」にしか見えていない。
「よし、まずは家を建てよう。あそこの枯れ木を使わせてもらおうかな」
ソラが手をかけたのは、神話の時代から立ち続ける『世界樹』。
彼は『万象創造の右手』を振るった。本人は「器用に工作するぞ」と気合を入れただけなのだが、次の瞬間。
ドガガガガガーンッ!!!
光の粒子が舞い、世界樹は一瞬にして極上の建築資材へと姿を変えた。
釘一本使わず、魔法のような速度で組み上がるログハウス。それは、座るだけであらゆる傷が治り、結界によって邪悪な存在を一切寄せ付けない、地上最強の「聖域」だった。
「よしっ、完成! なかなかいい家だ。……お、蛇口をひねらなくても水が出る。しかもこの水、すごく甘くて美味しいぞ」
ソラが飲んでいるのは、死者をも蘇らせると言われる『神の雫』だが、彼は「田舎の天然水は違うなぁ」と感銘を受けている。
「さて、次は庭の草むしりだな。……ん? あそこに大きな三つの顔を持つワンちゃんがいるけど……まあ、田舎だし珍しい生き物もいるよね。ま、いっか。なんとかなるか」
ソラは腰を下ろすと、先ほど拾ったキラキラした石——『オリハルコンの原石』と、そこらへんに落ちていた頑丈そうな枝——『神木の枝』を並べた。
「素手で抜くのも大変だし、サクッと鍬でも作っちゃおう」
ソラが『万象創造の右手』を意識して、二つの素材を合わせるように手をかざした。
ピカァァァーーーッ!!!
目も眩むような黄金の光が溢れ出し、次の瞬間、ソラの手には一本の鍬が握られていた。
神の枝を柄にし、あらゆる物質を切り裂くオリハルコンを刃にしたその道具は、振るえば空間ごと大地を耕し、一突きすれば魔神すら消滅させる、神話にも登場しない『超神級の農具』へと変貌を遂げていた。
「お、我ながらなかなかの出来だ。適当に作ったわりには、手にしっくり馴染むぞ」
ソラはその鍬を肩に担ぎ、鼻歌を歌いながら庭の開拓を始めた。
その背後では、ソラが鍬をひと振りするたびに「ドォォォン!」と地脈が震える音を聞き、森の魔獣たちが白目を剥いて失神していたが、彼は「土が柔らかくて作業が捗るなぁ」と、満足げに微笑むばかりだった。
——この時、ソラはまだ知らない。
自分が作ったその鍬が、後に“神すら恐れる農具”と呼ばれることを。
今日から連載スタートです!
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