第一話 手紙
くしゃりと丸められた紙くずのようなものを見つけた。
それは思いのほか大きくて、つい拾って広げてみれば、手紙であった。
「総務部長様へ、か」
その手紙は未開封であった。
読まれなかった手紙を俺は拾ってしまったということか。
「開封するのも失礼だが、気にはなるよなぁ」
見ずに捨ててしまうのがいいのか、読まれなかった手紙が可哀想な気持ちもある。
「よし、共犯者を作るか」
他人宛ての手紙を開封する罪悪感はあいつにぬぐってもらおう。
俺の足はあいつの元へ向かっていた。
「一ノ瀬、いるかー?」
俺は呼びながら入口の扉を開けて中に入る。
開いたということはいるということだ。
あとはどこにいるのか。
「こちらにいますよー」
「おう、そっちな」
ズカズカと入ってはいるが、この建物は一ノ瀬と俺と共同の建物だ。
何も気にする事はない。
そして、この家は洋式で靴を脱ぐ必要もない。
2階まで上がって声のした方へ向かう。
「おかえりなさい、先輩。コーヒー飲みます?」
「お願いする」
「承りましたー」
俺の顔を見るなり、後輩一ノ瀬めぐみは満面の笑みで、コーヒーを淹れに行く。
今日の彼女のファッションはぶかぶかのパーカーをワンピースのように着こなし、短パンを履いている。
すらりとした足は黒いタイツで覆い隠されている。
今日も寒いものな。
「でー、先輩。どうかされました?」
一ノ瀬はコーヒーを俺の前のテーブルに置く。
そして、俺の前へ座った。
俺は先程拾った手紙をテーブルに置き、言う。
「なぁ、この手紙、読まないか?」
「先輩も悪趣味ですねぇ、どこでそれ、拾ってきたんです?」
「それはとりあえず置いておいて、読んでみようぜ」
「あ、分かりました。自分の罪悪感を薄れさせようとする魂胆ですね」
「あったりー」
「仕方ないですね、一緒に読みますよ」
呆れたと言わんばかりの顔でこちらを見る一ノ瀬に苦笑を返す。
さあ、おまちかねの手紙だ。
読んでみようじゃないか。
『お久しぶりです、総務部長。昔お世話になりました、川原奈月です。この度、お手紙を書かせて頂きましたのは経理課長の件です。彼が私に何をしたのか、被害者がまだいること、それをこちら手紙でお知らせしようと思ったのです。言葉でのセクハラにモラハラ、机と席を隠すというイジメ、その他色々ありました。私だけではなく、他の方にもしていると自慢気に話しているのを覚えています。どうか部長、彼を止めてください。よろしくお願いいたします。川原』
「どうしますか、先輩?」
「一ノ瀬も調べるのも付き合うか?」
「仕方ないですね」
さぁ、まずは聞き込みだ。
一ノ瀬を引き連れて外へと向かう。




