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露見

スマホの画面を眺めながら、直哉は深夜の気の緩みで指を走らせた。

何百、何千と交わしてきた文字の波の中で――ふと、ぽろりと零れた一文。


――「なあ、お前いつまで幽霊やってんの?」


一瞬、画面が静止する。



数秒後、既読のマークとともに、怒涛の勢いで文字が流れ込んできた。


『はぁ!? なにその言い草!? 私まだ現役だから!』


「……いや、お前、もう死んでんだろ」直哉は苦笑交じりに返す。


『だからって“幽霊扱い”はヒドくない!? こうして文字打ってるんだよ!? 既読ついてるんだよ!? 存在感バリバリでしょ!』




「いやいや……存在感バリバリな幽霊って、それ余計タチ悪いわ」


『むしろ褒め言葉でしょ!? 私は成仏拒否組なんだから! 直哉とずっと話すって決めたんだから!』


「……こえーよ。そんな宣言」


『怖がらなくていいの! ずっとそばにいてあげるって言ってるの!うれしくないの!? 』



直哉は頭を抱えつつ、画面を見つめる。



“幽霊”であることを全力で否定しながら、同時に全力で幽霊であることを誇る――矛盾だらけの結衣。



直哉は画面を見つめながら、少し言いにくそうに文字を打ち込んだ。


――「……でもさ、ずっとこのままっていうのも、不自然っていうか。輪廻とか転生とか、あるんじゃないの?」


すぐに既読がつく。

だが、返ってきたメッセージはいつもみたいに絵文字やスタンプで賑やかではなく、妙に淡白だった。


『そんなの知らないわよ。……もしかして直哉、私に成仏してほしいの? そんなに私、ウザい?』


画面の文字が小さく震えて見えた気がして、直哉は思わず慌てる。


「ち、違う違う! そういう意味じゃないって!」


必死に追い打ちで文字を送る。


――「俺さ、お前とこうやって話すの、正直すごく安心するんだよ。だからウザいなんて思ったこと一度もない」


――「ただ……お前がずっとここに縛られてるのも、ちょっと心配になっただけ」


数秒の沈黙。

直哉の胸がじわじわ締めつけられる。やがて、ぽつんと返事が届いた。


『……ほんと?』


「ほんとだよ。俺にとってお前は……幽霊とかそういうの関係なくさ」




小さな間をおいて、今度は少しだけ絵文字が混ざった返事が返ってきた。


『……なら、もう少しだけここにいさせて。 私、まだ直哉と一緒にいたいから』



結衣はスマホを胸に抱きしめ、ため息混じりに微笑む。

輪廻も転生も、そのうち考えればいい。

今はただ、しょんぼりして涙をこらえている彼女を安心させること――それが一番大事だった。




結衣から返ってきたメッセージに、直哉は一瞬息を呑んだ。

さっきまで絵文字で照れ隠ししていた彼女が、今度は真っ直ぐに、冷たいほどに素の言葉を投げかけてきたのだ。




『……でもね、直哉。私、やっぱり問いただしてみたいの。』


『私を殺した人に――どうして? 私があなたに何をしたの?って』


画面に浮かぶ文字は、幽霊の少女の奥底に沈んでいた願いを抉り出す。

その一文を見た瞬間、直哉の心臓が嫌な音を立てて跳ねた。


「……結衣……」


打ち込む指が震える。それでも彼は逃げなかった。


――「……わかった。俺が探すよ。犯人を」


数秒の間。

既読がついても、すぐに返事は来ない。直哉はスマホを握りしめたまま、息を殺す。

やがて、ぽつりと文字が現れた。





『……ほんとに? 危ないことになるかもしれないよ?』


「……でも、心残りなんだろ?」

打ち込んだ文字を見つめながら、直哉の胸にじわりと重さが広がる。


数秒の沈黙。既読はついているのに、返事が来ない。

直哉が呼吸を飲み込んだ瞬間――ようやく短い言葉が届いた。


『……うん』


その「うん」には、照れも、冗談も混じっていなかった。

ただひたすらに、未練の重さを抱えた声が透けて見えるようで、直哉は拳を握りしめる。


――「じゃあ、俺が探してやる。結衣を殺したやつが誰で、どうしてそんなことをしたのか」





しばしの沈黙。


やがて結衣は、小さく、ためらいがちな文字を落とした。


『……ありがとう直哉、大好きだよ』


その瞬間、直哉の視界が一瞬真っ白になった。



心臓がドクンと音を立て、手に持ったスマホを取り落としそうになる。


「……は? な、なに言ってんだよお前……!」


口ではそう呟きながらも、耳の奥がじんじん熱い。

胸の奥から込み上げてくるのは、妙なこそばゆさと、得体の知れない幸福感。




――大好き。




文字を目で追うたびに、その言葉がじわじわと頭に浸透していく。

幽霊だとか、生きてないだとか、そんな理屈を全部吹き飛ばすほどの破壊力。


「くっそ……やっぱコイツ、ずるいな……」



直哉は枕に顔を押し付けながら、どうにか誤魔化す。

画面の向こうで笑っているであろう結衣を想像しただけで、胸が爆発しそうだった。








翌日。

直哉は通学電車の揺れに身を任せながら、スマホのブラウザを開いた。

検索窓に打ち込むのは、昨日から頭を離れない名前。


――「藤本結衣 殺人」




エンターを押した瞬間、ずらりと並ぶニュースの見出しが目に飛び込んでくる。


《女子高生刺殺事件 未だ犯人は逃走中》

《深夜の住宅街で無惨な犯行》

《凶器は殺傷性の高いダガーナイフか》


「……ナイフで、めった刺し……か」


指先が震える。

記事をスクロールするたびに、現場写真や無機質な言葉の羅列が胸を締めつけてきた。


――痛かっただろうな。

直哉は唇を噛む。結衣のメッセージがふと脳裏によぎる。

「どうして? 私があなたに何をしたの?」


「……結衣」

心の中で小さく呟くと、さらに画面を読み込む。




《事件当夜、現場周辺で不審者の目撃証言あり》

《被害者は帰宅途中、背後から襲われた可能性》


そこには犯人像の断片や、警察が掴んでいるわずかな証言が転がっていた。

直哉は記事をひとつひとつ保存し、ノートアプリにメモを取る。


――「犯人はまだ捕まってない……つまり、俺が調べる余地はある」





いつもなら他人事のはずのニュース。

けれど、そこに刻まれているのは“結衣の最期”そのものだ。

彼女の声が背中を押すように、直哉は情報を貪るように読み込んでいった。




あの事件から、そろそろ一か月。

当時は黄色いテープで区切られていた殺害現場も、今は何事もなかったかのように静まり返っている。

アスファルトの上には乾いた落ち葉が舞い、血の痕跡など一片も残っていない。




――結衣が最期を迎えた場所。



よく考えれば皮肉なことに、直哉と結衣が毎日のように並んで会話していた花壇の、まさに目の前だった。


直哉はスマホを取り出し、深呼吸ひとつ。

まず頼るべきは、最も有力な情報源――殺された本人である結衣自身だ。




――「なぁ、犯人の顔とかは見たのか?」


すぐに返ってきた文字は、ためらいがちに震えていた。


『……ううん。マスクにサングラスで、全然わからなかった』


直哉は唇を噛みしめる。犯人の手がかりは、やはり簡単には掴めない。




――「声は? 男か女か、分かったりする?」


『……低い声だった。男だと思う。乱暴で、荒っぽい感じ。』


――「身長とか、体格は?」


『……私よりはずっと大きかった。けど細かいことは……怖くて、あんまり……』


結衣の文字はところどころ滲むように、途切れ途切れだ。

思い出すだけで苦しいのだろう。


直哉は慌てて追い打ちのメッセージを打つ。




――「ごめん、無理に思い出さなくていい」

――「ただ……お前のために犯人を見つけたいんだ」


数秒の沈黙。

やがて、かすかなスタンプと一緒に文字が浮かんだ。


『……ありがと。直哉がそばにいると、怖くても少しだけ思い出せるよ』



直哉は深く息をつく。

情報は少ない。しかし真実に近づくための糸口は得られた。

結衣が勇気を振り絞って口にした“記憶”を、無駄にするわけにはいかなかった。




結衣から得られた情報は決して少なくなかった。

――犯人は明確な殺意を持ち、何度も何度も刃を突き立てたこと。

それが通り魔的な偶発なのか、結衣を狙った計画的な犯行なのかはまだ分からない。

ただ一つ言えるのは、最初から「殺すために近づいてきた」という事実だ。




直哉が考え込んでいると、不意に結衣がぽつりと文字を打った。


『なんだろう……私、すっぽり何か忘れてる気がするの』


「……仕方ないよ、結衣。だって実際に……殺されてるんだし」


冗談めかして返したが、内心は冷や汗が流れる。

結衣は殺された瞬間の記憶に、大きな空白を抱えているのだ。


『思い出そうとすると……あっ――痛!』


「結衣っ!? 大丈夫か!」


『……うん、大丈夫。けど変だよね、体なんて無いのに頭が痛いなんて……』


直哉は唇を噛みしめた。

彼女が感じている痛みは、心に刻みつけられた“最後の記憶”が形を変えて訴えているのだろうか。


「無理すんなよ。時間ならたっぷりあるんだから」


『……でもね、何か思い出せそうなの。あの時の私、いったい“何を見た”んだっけ……』



文字が途切れ、沈黙が訪れる。

結衣の頭の奥に眠る“忘れられた光景”。

それこそが、この事件を解くための最後の鍵なのかもしれなかった。


更に追及の手を緩めない直哉は、静かに言った。


「何でもいいんだ。ほんの些細なことでも構わない」


結衣は、しばらく黙ったまま唇を噛みしめていた。 何かを思い出そうとしているような、でも言葉にするのが怖いような――そんな表情。


「些細って言えば、ほんとに些細なんだけど……」


小さな吐息を混じらせながら、結衣はぽつりと呟いた。


「どうした?」


「私のスマホ……画面にヒビ入ってるでしょ? でもね、生きてたときはあんなのなかったの」


直哉は一瞬、言葉を失った。 そして、静かに答える。


「……ああ。刺された時に落として、割れたのかもしれないな」


結衣は、かすかに頷いた。


「そのとき、痛すぎて……何が起こったのか全然わからなかった。ただ、視界が一瞬で真っ赤になって……」


その声は、まるで風に溶けるように儚くて。 けれど、直哉の胸には鋭く突き刺さった。


(……結衣は、あの瞬間を覚えている。断片的に)


そして―― ほんの小さな違和感が、直哉の心の奥底に芽を出した。




(……おかしい。何かが引っかかる)


直哉は胸の奥に、小さな棘のような違和感を覚えた。 それは、結衣の言葉の端々に潜んでいた“ズレ”。


「結衣……刺されたとき、スマホを投げたりしたか?」


「えっ? ううん」


結衣はきょとんとした顔で首を振る。


「痛みで頭が真っ白になったけど……投げるなんてしないよ。だってあれ、私の命そのものだもん」


直哉の眉間に、深い皺が刻まれる。


(……だとすれば)


スマホの画面に入ったヒビは、ただの落下衝撃じゃない。 誰かが、意図的に力を加えた可能性――それが浮かび上がる。


心臓が、重く脈打つ。 直哉は記憶を掘り起こす。


結衣のスマホケース。 血で真っ黒になったあの革製カバーは、事件後、警察を通じて母親の手に戻った。 綺麗に拭かれていたが――革の断面に染みついた血だけは、どうしても取れずに残っていた。


つまり――


結衣は、スマホを手に握ったまま刺された。


(……犯人は、結衣のスマホを“壊そうとした”のか?)





背筋に冷たいものが走る。

それは単なる「偶然の事故」なんかじゃない。誰かの意志が、その場に存在していた証拠だった。




直哉は眉をひそめ、頭を抱える。

普通に考えれば、手に持ったまま倒れたとしても——


ブック型のスマホの液晶保護シールにヒビが入るだろうか?


「……いや、これ……おかしい」


画面のヒビは、単純に手から落ちた衝撃では説明できない。

直哉は指先で画面の端を軽く触れながら、頭の中であらゆる可能性を巡らせる。


(誰かが……手に強い力を加えた? でも何のために……?)



違和感が頭をチクチク刺激する。

小さなヒビひとつに、事件の新しい糸口が潜んでいる――直哉の心は、そう確信していた。




「なぁ……結衣。殺されたとき、何を見てた?」


スマホの画面越しに問いかける。

結衣は少し眉を寄せ、思い返すように視線を泳がせた。


「ん……タイムプラスの、ティックトックかな」



口元にかすかな笑みを浮かべながらも、その声にはどこか切なさが混じっていた。

どうやら、アイドルグループのSNSを眺めながら歩いていたらしい。

耳にはワイヤレスイヤホン――背後から忍び寄る影に、気づく余裕なんてあるはずもなかった。




「……なぁ、履歴とか見れないか? もしかして犯人がそこにアクセスしてるかもしれない」


直哉はサファリの履歴を確認するが、怪しいページは一切見当たらない。

結衣もひとつひとつ確認しながら、淡々と証言する。


――「これ、私見てたやつ……」


怪しい痕跡はなし。

だが、直哉は何か掴めるはずだ、と写真アプリを立ち上げた。


そこに映るのは、無邪気な笑顔の結衣だった。

友達とパンケーキを頬張る姿、バイト先でふざけ合う姿……生きていた頃の断片。


「あんまり見ないでよね! プライバシーなんだから!」


結衣はワーワー文句を言うが、画面の中には特別変わったものはない。

ただ一点、直哉の目を引いたのは、これほど写真好きな結衣にしては、家族の写真が少ないことだった。


「お母さんとの写真は多いな……でも、お父さんとの写真はあんまりないんだな」


「……そう? 別に気にしてなかったけど……基本パパ仕事だし趣味も合わないし」



結衣は少し首を傾げながら、目を細めてこちらを見つめる。


「……気になる、というか、引っかかるんだよな」

そう呟きながら、彼は再び画面をスクロールする。




結局、この日は暗くなるまで花壇に座り、直哉は結衣と話を続けていた。


「そろそろ帰るよ。明日はバイトだから、明後日な」


充電済みの大容量モバイルバッテリーを花壇の隙間にそっと置く。


「うん……色々ありがとう、直哉」


少し間が空いて、結衣は続ける。


「私は大丈夫だから、無理しないでね」


「了解だ、結衣」


直哉は立ち上がる。別れ際の空気に、結衣の心がわずかに揺れる。

気がつくと、後ろから思い切り抱き着いていた彼女。

もちろん直哉には見えない。しかし、何となくその気配を察すると、直哉はそっと手を自分の肩に置く。そこにはちょうど結衣の頭がある位置だった。


(直哉……まるで私が見えているみたい……嬉しいよぉ……)


結衣は頬をそっと直哉の肩にすりすりと押し付ける。

目にはわずかな光が宿り、画面越しの彼にしか見えないけれど、心の中では満たされた笑みを浮かべていた。




「おやすみ、結衣」


直哉がメッセージを送ると


数秒後、スマホの画面に文字が浮かぶ。


『おやすみ、直哉』




直哉が自宅に戻る為花壇から離れる、それをスタバのテラス席からずっと見ていたのは武雄だった。


ここ数日の直哉は、なんというか……妙にキラキラしていた。




いや、見た目はいつも通り。笑顔も健在。周囲には「最近調子いいっす!」なんて軽口を叩いてる。でも、武雄の目は誤魔化せない。講義中はほぼ夢の世界、課題は手つかず、机の上には謎のメモと空のエナジードリンク缶。ひっきりなしに通知が届くスマホ(おそらく女)これはもう、何かある。


「……ちょっと、調べてみるか」


そう思ったのは、好奇心でも暇つぶしでもない。


これは、紛れもなく――友情からの行動だった。




「……確か、この辺りだったな」

武雄は低く呟き、夜の花壇に腰を下ろした。


暗闇。

常人ならば絶対に見落とすであろう、わずかな光がそこにあった。


「やばっ、人が来る! やばいやばいやばいっ!!」

結衣は慌ててスマホの画面輝度を限界まで落とす。

だが――いくら暗くしても、液晶が放つわずかな光は完全には消えない。


そのかすかな明滅を、武雄の目が逃さなかった。



幼いころから直哉も一目置いてきた、鷹のような観察眼と異常な記憶力。

暗闇の中に潜む“黒”を、鋭い視線が正確に撃ち抜く。



――そう。武雄が見つけたのは、最大限に暗く設定されたスマホが、それでもなお零していた微かな光だった。




「……こいつか」

武雄は小さく吐息を漏らし、花壇の隙間へ手を差し入れた。

そこにあったのは、電源の入ったままのスマホと、大容量のモバイルバッテリー。

暗闇の中では到底気づかれるはずのない光――そのわずかな漏れを追って、彼は迷いなく掴み上げる。


「直哉! 直哉っ!! 私のスマホ、見つかっちゃった! なに、この人っ!!!」

結衣の悲鳴は虚しく宙に溶け、武雄には一切届かない。


彼は一瞬の躊躇もなく画面を覗き込んだ。

暗転した液晶には何も映っていない。だが次の瞬間――武雄の指が右上から左下へ滑る。

隠されたメニューが現れ、指先でスライドバーを押し上げる。



途端に、光が蘇った。

黒に沈んでいた画面は色を取り戻し、無数のメッセージが――赤裸々に、鮮明に浮かび上がった。




画面に浮かんでいたのは――

親友からの短いメッセージ。


『おやすみ、結衣』


それに続くのは、女子高生殺人事件の「殺された本人」への聞き取りログとそれに答える「本人」の会話。


「……おいおい、なんだこれ……直哉、お前……」

武雄は思わず息を呑み、眉を深くひそめた。理解の外にある情報が次々と押し寄せてくる。




「やめてーっ! やめろこのヘンタイ! 拾い乞食! スケベッ!」

結衣は怒りに任せて全力のグーパンチを振り下ろすが――当然、拳は虚空をすり抜ける。武雄の頬に触れることすらできない。


そして、武雄をさらに混乱させたのは、トークルーム内に散見されるやり取りだった。


「結衣、お前……幽霊なんだからさ」

「だって私、死んでるもーん!」

「そろそろ成仏すれば?」

「やだ! 直哉とずっと一緒にいるの!」




紛れもなくそこに存在するのは――地縛霊。

しかも親友と当たり前のように会話をしている。


「……昔から、あいつ“見える”って言ってたよな。でも、まさか……」



言葉を失った沈黙の中、武雄は意を決したようにスマホを握りしめた。




「……直哉」

武雄は結衣のスマホの画面に指を滑らせ、短く文字を打ち込んだ。


『おい直哉、武雄だ。話がある……さっきの花壇まで戻って来い』



ためらいは一切なかった。

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