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第八話・夢の鬼と天狗と河童

 翌日、午後の学生帰宅時間──土手に昭和の番長か応援団長のような長ランを着た、黒い巨大ロボットが膝抱え座りをして、帰宅していく生徒たちを眺めていた。

《いいなぁ……オレも学校に行って、青春してみたいなぁ》

 学ラン姿の黒い自立人工電脳巨大ロボット──『黒鉄(くろがね)のビスマス』がタメ息を漏らす。

 ビスマスは、怪力だけが武器のポピュラーな巨大ロボットだった。

《だいたい、操縦者が音声登録をした初期段階の時にオプション無しを選択しちゃったから、空も飛べないし、腕飛ばして攻撃もできない……それなのに、団十郎さん。根性で空飛べだの……腕ブン回せばパンチ飛ばせるだの、ムチャな要求ばかりしてきて》

 ビスマスの操縦者は、暁のビネガロンのパイロット、国防の名字違いの父親で遊び人の『茶釜 団十郎 ちゃがまだんじゅうろう』だった。


 ビスマスは学ランの中から取り出した巨大なノートを広げる。

 ページに書かれていた自作のポエムをニヤニヤしながら眺めていた、ビスマスに声をかけてきた人物がいた。

「おい、そこの黒くてデカいの……魔王の息子は今、どこにいる?」

 ビスマスが、声の聞こえてきた方を見ると、そこに腰に手を当てて立つ

暗闇 果実がいた。

 ビスマスは、怪人衆の一人で魔王 真緒を警護している、果実の存在を知っている。

《えっ?》

「どうした、知っていたら早く教えろ。魔王真緒さえ倒せば、この世界は支配できるんだろう」


《…………魔王 真緒なら、この時間なら学校からの帰路で待っていれば》

「そうか、変な勇者の格好をしたジジィを痛めつけた時に『魔王城には、屁をこく女がいる。あの女の屁を浴びたら数日間は臭いが抜けないぞ』と、言われたから魔王の息子は城の外で待ち伏せした方がよさそうだな」

 そう呟くと、いつもと雰囲気が異なる暗闇 果実は、スタスタと歩いて行ってしまった。

 黒鉄のビスマスは、ポカンとした顔で、暗闇 果実が歩いて行った方向を見ながら。

 ポケットから取り出した、妖怪ヌリカベサイズのスマートフォンで、魔王城内に居る荒船・ガーネットに連絡した。


 帰宅途中の真緒は、魔王城近くの帰路を一人で歩いていた。

 登校時には、海斗や満丸が警護してくれるが。

 週に数回の割合で、真緒の意向で帰宅時にフリーにさせてもらっている。

(学校の登下校で毎回、海斗や満丸くんの時間を削ったら悪いもんね)

 一人で、閃光王女のテーマソングを口づさみながら歩いていた真緒に、私服姿の真緒と同年の少女が話しかけてきた。

「真緒さま、お久しぶりです」

「君は確か……怪人衆の」

「はい、怪人チワワ女です……ワン」

 その時、暗闇 果実の声が聞こえた。

「探したぞ、魔王の息子」

 見ると、クレーンゲームでゲットしたらしい。

 デフォルメ化された、アニメキャラ・西方魔導師ナックラ・ビィビィのビックなヌイグルミを片手で抱え。

 食べているクレープのクリームで口の周りを汚した、果実が立っていた。

「探している途中に、立ち寄ったゲーセンのクレーンゲームで、このヌイグルミをゲットするのに千円以上使っちゃったぞ」

 真緒は、いつもと様子が異なる果実をジッと見てから言った。

「君、果実じゃないね……誰なの?」

「鬼天河 血姫、夢世界の住人だ。暗闇 果実の体は、あたしがもらった」

「夢世界って……夢太郎くんが守っていてくれる、あの場所」

「知っているのか? 七色 夢太郎を?」

「うん、子供の頃からのボクの夢の友だち」

「そうか、それなら話しは早い」

 クレープを食べ終えた血姫の果実が、クレープを包んでいた紙を路上に捨てると、捨てた紙に近づいた真緒が拾う。

「ダメだよ、道にゴミを捨てちゃ……本物の果実だったら、怒鳴られているよ」

「わりぃ、現実世界にまだ慣れていなくて……変な勇者のジジィが道にツバ吐いているの見たけれど、やっぱりアレはやっちゃいけない悪い大人の見本だったんだな……じゃあ、仕切り直して」

 血姫の果実の目の瞳孔が、縦長の鬼の瞳孔に変わる。

 血姫が果実の顔で真緒に言った。

「魔王 真緒、おまえを倒して、この世界の支配者になる! 出てこいやぁマオマオ!」

 チワワ怪人の女が、真緒をかばうように前に進み出る。

「真緒さま、少し離れていてください……あたしも怪人衆の一人、真緒さまをお守りするワン!」

 少女の姿が小型犬のチワワの姿に変わる。

「きゃんきゃんきゃんきゃん」

 チワワ女に向かって片手を向ける、血姫の果実。

「うるせぇ! 犬ころがぁ!」

 河童は両腕が繋がっていて、一方の腕を引っ張ると、もう片方の腕が引っ張られて短くなる。

 チワワ女に向けられた果実の片腕がグイィィンと伸びて、チワワ女を突き飛ばす。 

「きゃんっ」

 突き飛ばされて歩道に転がった、チワワ女に駆け寄って介抱する魔王 真緒。


 真緒が悲しそうな顔で、血姫の果実に言った。

「どうして、こんな酷いコトをするの?」

「弱さは罪だから……この言葉は暗闇 果実が、夢の中であたしに言った言葉だぞ」

「果実が?」


「子供の頃から、魔王の息子を守るコトを義務づけられた暗闇 果実は、強くなろうと努力した……その中で、果実の心の中で生まれた言葉……弱さは罪」

「果実がそんな……知らなかった」

 血姫の果実が、鼻から上のカラス天狗半面で顔を隠して言った。

「それじゃあ、そろそろ……魔王の息子には覚悟を決めてもらおうか」

 指の関節をポキポキ鳴らしながら、近づいてくる血姫の果実と真緒の間に球体が転がり込んできた。

 停止した球体が言った。

「真緒くん、大丈夫!」

 灰鷹 満丸だった。

 満丸が現れた直後に今度は、マンホールのフタが勢いよく跳ね上がり、ホオジロサメ怪人化した銀鮫 海斗が下水道から飛び出してくる。

「真緒! ケガはないか!」

 ビルの屋上を跳び渡り、放屁ゾリラ怪人化した瑠璃子。

 建物の壁をワシャワシャと這い降りてくる、ナゲナワクモ怪人の荒船・ガーネット。

 最後に、魔法のホウキにまたがって空を飛んできた魔女・桜菓と。

 小型宇宙船から、太モモに宇宙銃のレッグホルスターを装着して、短いスカート姿の緋色が飛び降りてきて。

 飛び去っていく宇宙船の中から、なぜか包帯で全身をグルグル巻きにされた狂介が、緋色が着地した近くに放り投げられて転がる。


 灰鷹 満丸

 銀鮫 海斗

 瑠璃子

 荒船・ガーネット

 桜菓

 緋色

 そして、包帯でグルグル巻きにされてモゴモゴ、うめいている極神 狂介の計七人が真緒の前に集結した。

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