Ep1.魔法とは即ち経験である
はじめまして、あおいです。
突然ですが、皆さんは魔法を使いたいと思ったことがありますか?空を飛んだり、天候を操作したり……
今回は皆さんの魔法の認識とは少し違うかもしれない世界でのお話です。拙い文章ですが是非お楽しみください。
魔法使いと聞けば、杖を持ったり魔法陣を展開させたりして巨大な炎や氷を出すものを期待する人が多いのだろう。
かくいう私も、そんな人の作った物語に出てくるような魔法を期待していた。
この世界の魔法は全て経験がものを言う。
「自分で空を飛んで風を感じた」経験があれば、きっと空だって飛べるのだろう。ただそんな経験をした人は存在していない。
氷を見て、触り続けて経験値を貯めて氷を出せるようになった人は存在する。ただそれは製氷機で作れるような氷だし、経験の記憶が薄れれば本物の氷とは言えない物が出てくる。
私は空を飛びたい。全身で風を感じる事はきっと気持ちがいいだろうし、私の名前で空を飛べたら何かに勝った気になれる気がする。
そんな妄想に浸っていたら母が部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「ソラ〜、ちょっとおつかい行ってくれないかな?」
「買うものリストは作ってあるから…お願いっ」
ちょうど風を感じたかったところだ。
私は嬉々としてリストを受け取り、外へと飛び出した。
もう昼間だというのに外は涼しく、辺りからは花の香りがしてきた。
花の香りをかいでいたら、少し心が落ち着くのを感じる。
最近母は疲れていそうだし花でも買っていこうと思い、私は買い物が終わったら花屋に寄ってから帰ることにした。
母からもらったリストを見ながら買い物を終わらせ、花屋へと向かう。
さすがに一輪しか買わないのは味気なく思うため、手持ちのお金と相談しながら買う花を決めていると、いつの間にか空は茜色に染まっていた。
結局名前のよくわからない赤い花を数輪買って、私は家へと向かう。
流石に遅くなりすぎてしまった。母が家で心配しているかもしれないと思い、少し駆け足で家へと向かう。
何故だろう、少し胸の辺りがゾワッとした。
家に近づくにつれて人が多くなっているように感じる。何か近くで催しなどあっただろうか。
それに人の熱気のせいなのか少し汗ばんできてしまった。
私の家のあるべき場所を見たとき、私の視界には高く燃え上がる炎が見えた。
燃えている。何が。私の家が。
どうして。わからない。知らない。
母はどこにいる。まだ家にいたらどうする。
私が帰るのが遅かったから、まだ私を家で待っていたらどうする。
私を止めようとする大人を力任せに振り切り、私は家へと駆けこんだ。
手にはなぜか花を握ったままだった。
母がいなければそれでいい。むしろここには居ず外に逃げていてくれ。
家に入り母のことを呼ぼうとする。その判断が間違いであったのかもしれない。
私は無意識に大声で呼ぼうと息を吸い込んだ。
私の肺には一切の空気が入ってこなかった。
代わりに異常なまでに熱いものが大量に入ってきた。いや、あれが空気だったのだろうか。
予期せぬ事態に私はその場で倒れ、咳き込む。
咳き込んだせいでまた肺の中の空気がなくなった。
またあれを吸いたくはない。
度重なる非現実な事象と、私にまとわりつく熱気のせいでもう正常な判断はできていない。
私は何を思ったのか、また息を吸い込んだ。
いくら咳き込んでも、息を整えようと息を吸えばまた咳き込む。
そんな永久機関にはまりながら私は母を探そうと一歩ずつ歩みを進めていた。
何とかリビングへ着いたとき、私の中の時は止まった。
椅子に座ったままテーブルに伏せている母の姿がそこにはあった。
母には私がここに戻ってくることが分かっていたのかもしれない。
あまりにも暴れた様子のない部屋を見て思う。
さっきまでの焦りが嘘かのように今は頭がすっきりしている。
母のもとへ行こうと歩みを進め、何とか隣の椅子に座る。
ああ、最期に母に会えてよかった。
欲を言えば声が聞きたかったが、無理は言えない。
私は力を振り絞って掠れきった弱弱しい声を出す。
「お母さん、大好き。」
私はゆっくりと意識から手を離した。
あとがきです。
特にないので次回の予定だけ。
更新は常に未定ですが、三話くらいまでは構想は練ってあるので早めに更新したいです。
がんばります。




