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第   八 章  エリイ(叡璃彝) 炎の赤い髪  

 イユたちにまた一人、強力な戦士が加わることとなった。 青天、雪の斜面を歩く少女。



 炎のような赤い縮れ髪で、背中までたっぷりある。そのせいか背中のものは隠されていた。古代希臘(ギリシア)の海神ポセイダーオンのごとき、長い三叉戟をにぎり、広大なる純白の中、小さな一点の紅。

 ボディスを着て、長いスカートを穿き、十七世紀仏蘭西の村娘のような衣装。ボディスは質の悪い絹で作ったグリゼットと呼ばれる布地で、普通は灰色が多いが、彼女のものは緋色であった。ボンネットは被っていない。腰に剣を佩いていた。

 その衣装から想像もできないが、彼女は現象世界に於いては、姉妹ともに武闘家であり、鍛錬のための山籠もりで、山岳修行の修験者のようなことも経験していた。彼女の家が代々巫女であったことも無縁ではあるまい。

 彼女自身体が熱くなって、古代の巫女のようなトランス状態になることがあった。

 空手を習って、たちまち上達したり、大会で優勝したり、願望実現能力が異様に高いのは、もしかしたら、そのせいもあったかもしれない。



 ちなみに『若』という字の原型である象形文字は、髪を振り乱した巫女のトランス状態を表すというが、そういう女性は若い人が多かったせいで、若いという字に当てられたらしい。巫女の言葉は神の言葉で、そのとおりに実現するから「(ごと)し」の意味にもなるという。 



 嶮しい山を登ることは得意であった。

 その証拠に聖なる山イヴァントの絶壁を越え、ここまでたどり着いている。

 いずれ、なみの者ではない。じっと前をにらんで進んでいた。

 彼女の鷹のような眼は十数㎞先のイユたちの砦を捉えている。

「砦のようだわ。あそこまで行けば、誰かいるわね。絶対に、あたし丈ってことはないと思っていた。思ったとおりじゃん」

 ところが、数百mも行かぬうち、髭面の山賊たち三十数名に囲まれる。

「へへ、小娘だあ」

「うひょひょひょひょー、久し振りのご馳走だわー」

「最近、狼どもを見ないと思ったら、お嬢さんのお出ましか~い、やっぽー」

「はあはあ、ぐふふ、金もありゃ最高だがな」

「バカ、そううまくいくもんかよ」 

 愕くでも怯えるでもなく、むしろ、睥睨するように見廻す。 

「ふーん」

 それを見て瞋り出す山賊もいた。

「おいおい、なめてんじゃねえぞ」

 少女は一喝する。

「ざけんな。キタねーてめえらなんか舐めて堪るかよ」

「んだと、コノヤロー」

 山賊が腰の大鉈を毛のついた革製の鞘から抜く。だがその刹那、コンマ一秒で三十m近い間合いを詰めた少女がその山賊を串刺し。さらに両刃の三叉を振って斬り捨てた。眼に留まらぬ。山賊は上半身と下半身が泣き別れ、真っ二つ。

「何だと!」

 愕く余裕もない、次々惨殺。

「助けてくれー」

 まろぶように走り逃げる山賊ども。十数名か。

「あははは、そうはいかないわよ」

 ヴォッという、空気を圧し開き裂く音とともに、背中から左右二枚ずつ、計四枚の大きな翼が出て来た。どうやって折りたたんでいたものか、その大きさは一枚が二m以上もある。その色は強烈な深さの緋色で、どことなく黒光りを思わせるが、決して黒ではなく、鮮やかな緋色であった。

 バサッバサッとゆっくり空気を叩き、ふわりと持ち上がったかと思うと、もの凄い速さで賊どもに迫った。

「ひえええ、た、助けてくれえぃ」

 だが、少女は哄笑する。

「あはは、あはは、あははは、莫迦な奴、助けてくれだと? では、おまえは命乞いする女やこどもを助けて上げたか? 無慈悲に殺してこなかったか? 殺したくせに、なぜ、おまえは助けてもらえるんだ? 人にそんな仕打ちをしたくせに? 自分丈は助かりたいのか? 自分丈赦すのか? 自分丈赦されるのか? なぜ、赦されると思うのか? あはは、なぜ? なぜ? 

 無限に浅ましい。生きる資格もない。人間ですらない。おまえらに人権などない。生ごみと一緒に燃やしてもよい存在だ」

 楽しむように追い回して追い込んで、殺す。



「おい、そこまですることもなかろう」

 イリューシュだった。騒ぎを聞きつけて、来たのである。

 キッとした表情で、赤い少女がにらみ返す。その眼は歩いていたときとは、まったく変わって、鋭くなっていた。 

「ふ。

 蒙昧な輩め。

 さては貴様も仲間か。あそこは賊の砦か」

「何をバカな。奴らの仲間だから言うのではないぜ。人の命をそうそう簡単に奪ってよいはずがあるものか。俺にとっても、山賊どもは敵だが」

「愚かな。

 生存権は生得権だが、永久権ではない。他者の生存権を尊重せぬ者はその権利を喪う。権利は行為によって、常に査定されるべき。これほど明瞭で、当然の理論があろうか」

「それは理だが、裁くは難しく、安易に殺すは」

「問答無用。さような似非人道主義が被害者を虐げ、加害者を優遇する愚の骨頂をなす。加害者を守ることは、被害者を犠牲にすることでしかない。その逆も真だ。二兎は追えない。どちらかを現実は選択しなければならない。自明の理だ。それすら解せぬか。愚劣者。

 縁なき衆生は度し難きかな。闘うのみ」

 少女はイリューシュの前に舞い降りた。

「あたしの名はエリイ。貴様の名は」

「俺はイリューシュってもんだが」

 彼は抜剣しかけたが、止めた。

「なぜ、止めた。あたしは止めぬぞ」

 だが、イリューシュの眼から闘気は消えていた。

「おまえも山から来たのか。どうして翼がある」

 少し呆気にとられたようであった。

「それがどうした? 貴様に関係ない」

「そりゃ、そうだ、あはは。

 悪かったな」

「はあ? おかしな奴だ。

 あたしも何だか闘う自分が莫迦みたいに思えてきた。恨みもないしな。

 想像くらいつかぬか。

 山を越えて来たに決まっている。あの絶壁だ。翼が欲しいと強く願った。強く希って、想い画いたとおりの翼が生じた」

「おまえ、凄いな、意志の塊みたいな人だ。その強さも、意志で獲得したのか」

「つくづく脱力させる奴だな。元々武術で鍛えていて、山籠もりなどしているうちに修験道に目覚め、山深い野生で生きるうちに、勘が鋭くなったのだ。

 だが、貴様に関係ないだろ。そっちこそ、ここで何している、あのような砦で」

「うん、大した意味はない。けど、おまえも面白い奴だな。武術で山籠もりか。本当に変わっているぜ。

 その三叉戟も凄い」

「これか。『海神』と名をつけた」

「海の神、古代ギリシャのネプチューンか。確かに三叉の鉾を持っていたが。

 なあ、少し休んでいかないか。話も聞きたい。立派な翼があるとは言え、疲れただろう、あの山越えは」

「いや、道を急ぐ。生は疾く去り逝くなれば」

「まあ、白湯(さゆ)でも飲んで行けよ。これも(えにし)さ。そもそも、この世界の地理がわかるのか、何が解るか、知り得るか。それも意志の力か、そうか、さもありなん」

「何が、そうであろうものか。ふざけるな、知る訳がない。勘と観察を頼りに、探りながら、進むのだ。他にどんな方法がある? 確かさのないすべての世界に於いて」

「なるほど。

 確かさは、確かに、どこにもないが、地理についてなら、マコトヤ・アマヤスという男が少し詳しい。人は何も知らないわけでもないのだ。

 だから、始末が悪いとも言えるが。ふ、まあ、どうでもよいか、そんなことはな。来いよ、紹介するぜ」

 そう言って、無防備に背を向けた。山賊どもは()くに消えている。平然と歩む。



 反って隙がない。無意識な、自然な強さか。虎や獅子の強さ、鍛錬の成果ではない。のんびり昼寝をしていても、めきめきと備わる天然理の強さ。



 しかし、イリューシュの足は止まった。空を見上げる。眩そうに手を翳すも、

「ん? あれは」

 何事かとエリイも見遣るが、驚愕。



 空から何かが降りて来る。

 龍の頭首に、鷹の翼と胴体、虎の四肢を持つ神獣が舞い降りて来た。ずんという音とともに雪に深く四肢を埋める。

 又それに乗っていた女騎士が凄かった。 



 エリイは巨魁な女闘士の凄まじい闘気と殺気をまざまざと見上げた。それは炎のような光背となって現れている。尋常ではなかった。双眸は冷血なる蛇の縦の瞳孔で、微動だにせず、表情もない、非情なる殺戮の眼であった。



 エリイ問う、

「何者か」

 黄泉の国で絡み合う蛇の群れのような長き髪を、鋼鉄の兜の下から靡かせ、その女戦闘士は言う、 

「ふ。我を知らぬとはな。ならば、教えてやろうぞ、我が名はジン・メタルハート(瞋・鋼鉄心魂)」



 黒い鋼鉄の鞘から抜いた大剣、刀身の長さ二m四十㎝、その幅三十㎝、その黒い刃は黒い叢炎とともに、黒龍が絡みついて、熾え盛っている。黒龍は彼女の気を錬成し、龍の構造を造って、その依り代に龍神の精髄を召喚したものだ。

 地獄のような、見たこともない妖剣であった。これぞ彼女の象徴である。漆黒の鎧兜、楯とともに、天下に轟く、無敗無敵の殺戮兵器、リャーマ・ネーグロであった。

 それを振るう巨漢女戦闘士は、戦場に出れば数千の兵士を屠り、かつてハン・グアリスの平原で、武器を持たぬ無抵抗の難民数十万を虐殺した、非情残酷な殺戮神である。



 しかしながら、この世界に来たばかりの二人は知る由もない。エリイは三叉戟をすかさず構える。これほどの敵を眼の前にしたことがない。全身に戦慄が走った。あのような巨大な剣も見たことがない。ジンも二m超える長身であるが、その背丈よりも長じている。あんな剣が振るえるのか。しかし、現に彼女は片手で軽々と持っていた。手に汗が滲む。

「どう攻めるべきか、凄まじい気魄で、一切隙がない。剣から発する気の力。大岩でも豆腐のように切りそうな威力だ。しかも、あの龍は」

 焦りを感じ、イリューシュを見遣った。

「ジン・メタルハート?」

 彼は女豪傑の空前の凄絶に動ずるもなく、首をかしげるも、剣を抜く。ジンの双眸が睜かれた。

「うぬ、それは、きさま」

「ん?」

「龍肯の聖剣。ここで見ようとは思わなんだぞ、運が廻って来たか。手に入れれば、神霊や四天王・十二神将ですら、我に跪こうぞ」

「何だって! これって、そんなに凄いのか!」

 エリイもまったく訳がわからないながらにも、眼を丸くしている。確かに見事な彫の神気あふるる剣ではあるが。

「イリューシュ、おまえのそれは何だ」

「知らん、拾った石ころだ」

「バカな」

 今でこそ鋼の剣だが、最初は石であったから、嘘ではない。



 エリイが必殺のタイミングで雷よりも速く三叉戟を繰り出すも、蚊ほどにも思わぬジンに斃される。翼が折れた。全然レベルが違う。こいつ人間か! エリイがそう想った刹那であった。

 全身から炎のような闘気を噴き出し、ジン・メタルハートがまさに飛び掛からんとする時。

 割れ鐘のような銅鑼声が、

「待て、待て、そこな怪物、待たんかい」



 山々に響くその大音声にイリューシュが振り向けば、

「おお」

 勇ましい巨魁の猛者が二人、アガメムノンとマハールーシャであった。さすがのジンもこの二武者に比すれば、半分ほどに見える。

「メタルハートなんざ、何するものぞ」

 しかも、その後からは、杖を振るリンレイ、弩を持ったリヨン、不敵な面構えのリカオンだ。数十の人狼沙門もついて来ている。

「あゝ、来ちゃだめだ」

 そう言ったのは、イユとアヴァの姿が見えたからである。あのアヴァが走っている!

「何でだ?」

 黄金のアガメムノンと黒き怒髪のマハールーシャが襲い掛かる。空気を裂く巨きな豪剣が同時に襲う。鋼と鋼がぶつかり合う激しい音、まるで大鐘のように轟く。

「あゝ」

 信じがたい光景、アガメムノンとマハールーシャが弾き飛ばされていた。二つの剣を一撃で弾き返したのだ。転倒し、二人が唸る。「ぅうぬっ」

 間髪入れず、攻撃の後の隙を突くようにリヨンが弩を引き、投げ槍のような矢を次々と射た。

「はっ」

 絶妙なタイミングだったにもかかわらず、ジンはいとも簡単に斬り落とす。

「凄え、武闘の神だ」

 敵ながらイリューシュは唸った。

 リンレイとリカオンが囲むも、手が出せない。リヨンは遠くで照準を合わせた。人狼沙門たちも円形に周りで構えるも、同じく手が出せない。



 そんなところへ、イユとアヴァが。

「莫迦、来るなって言ってるだろ、何で来たんだ」

「だって!」

 だが、メタルハートは彼女たちを見て眼を剥く。

「何と!」

 しかし、言い終わらぬうちに、イユが真咒を唱え、

「やどふるふぱむさしうにやたやしうにやたたどふるふぱむ」

 それは有名な聖句『色即是空空即是色』であった。さらに続けて、

「ぶやぶわろふくゎやてゐすまぷわんちゃすくゎんだわすたふむしうちゃすぶわぶわぶわしふんにやんぱしうやてゐすま」

 順は逆だが、漢訳して『照見五蘊皆空』、漢文は正確ではなく、和語で直訳すれば、「五つのものの集まりであると見抜き、(さらに)その五つのものが空であることをも覚った」とでも言うべきであろうか。



 その聖句は燦燦たる光の潮となってあふれ、アヴァの頭上に集約して留まり、アヴァの頭上から龍肯の聖なる剣を荘厳した。



「おおっ」

 剣が天の光神のように炸裂して輝き、イリューシュに力が漲る。身体は自然に動いていた。眼にも止まらぬ速さで、ジンを激甚に打し、黒き龍をも裂く。

「バカな!」

 ジンが驚愕と、常には見せない、畏怖を泛べる。だが、イリューシュの天威も超える勢いは止まらない、

「ぅらあああっ!」

 大きく振り被って襲う。

「うわ」

 あのジン・メタルハートが転げるように逃げた。素早く立ち上がって、体勢を直そうとするも、

「はあ、はあ」

 息が荒い。

「そら、これを喰らえ」

 山が落ちるような重く激烈なマハールーシャの大剣。今度は防ぐのが精いっぱい、後ろからアガメムノンの剣が水平に飛ぶと、「ぅぐわ」

 鎧が缺した。ほとんど伝説化しているあの鎧が。エリイが飛んで首を狙うも、三叉戟は躱されたが、ジンの太腿の皮を破る。

「うぬ、くっそう! ……ぅぐわっ!」

 リヨンの弩が腕に刺さった。憤りが眼窩から噴き出す。

 凄絶な眼で、

「ぅぐわゎあ、ぅぎゃあぁぁぁぁりゃあうおああああっ」

 絶叫を上げて鬼神のごとく暴れ、周りを薙ぎ斃し、素早く龍鷹虎に乗る。

「このままで済むと思うな」

 悪鬼のごとき捨て台詞を残し、矢のように飛び去った。

「あ、待て!」

 エリイが飛翔して追おうとするも、この時にようやく着いたマコトヤが止めた。

「やめよ、深追いするな。やめよ、翼ある者よ」

 言われるまでもなく、翼の怪我で飛べない。そもそも、神速の龍鷹虎に追いつけない。

 余りのことに言葉を失っていた禿のリンレイがも眼を丸くして感嘆の叫びを上げた。

「ジン・メタルハートをやっつけた。あのメタルハートを。凄い。本当に凄い。驚くべきことです。信じられません」

 同時に、もし、イリューシュたちが敵だったら、と想像する丈で恐ろしかったし、味方でよかったと安堵もするのである。

 それはともかく。

「くそう、逃したか」

 エリイがそう言いながら戻って来て、純白の雪上に真緋も鮮やかに血を流し、膝を突く時、その刹那である。

「まいった! 降参だ!」



 と大声で叫び、イユたちがいる位置よりも、数十m高い位置の雪の下から、雪を蹴散らして、唐突に、数十名の男たちが現れた。山賊だ。龍肯城砦を高い位置から奇襲しようと、雪の下に洞を作って隠れ、夜を待っていたのである。

 それを見た他の山賊の連中も、何だよ、そうかよ、やってられっか、馬鹿らしいやとばかり、雪を蹴散らして、次々出てくる。さらには、もう数十m高い位置からも、数百の山賊どもが出てくる、出てくる。

 その体たらくに怒り猛った山賊の幹部も、堪えられずに雪の中から飛び出て来て、

「ちくしょう、おまえたち、裏切ったな」

 そう言われては、山賊どもとても黙ってはいない。

「裏切ったもくそもあるか、こんな闘い無意味だ。蟻が巨鯨と海で闘うようなもんだ、いや、その方がまだ勝ち目がある、俺たちよりゃあな!」

「そのとおりだあ、親方、人間あきらめが肝心さ、早めに降参して赦してもらおうや」

「あゝ、そうともさ、損得で考えてみようぜ、親方」

「いや、いや、損得丈じゃねえ、俺は見たぜ、この世にゃ、まだ真実があるんだ、見ただろ、あの鬼神よりも恐ろしいジン・メタルハートを倒したんだぜ、物的な力の権化みたいな奴に、聖なる力が勝ったんだ。聖句の力が現実の力に変換された瞬間を見ただろ」

 そう言ったのは、ジョン(與繁)という男だった。

「確かだ、俺も見たぜ」

「なあ、おい、あのお嬢ちゃんの聖句が、あのちっちゃいこどものところで増幅して、俺たちが狙っていた聖剣に神の力を与えた。

 こりゃあ、俺たちが奪って使えるようなもんじゃねえ。俺たちにどうこうなるような代物じゃねえんだ、わかっただろう、見ただろう、むしろ、この聖なるものを護り、仕えることがせいぜいのお役目ってもんじゃねえかい?」

 苦虫を潰したような顔で聞いていた頭領イマニュが言った、

「わかった、わかった、そうしようぜ、降参だ、降伏だ、白旗さ、さあ、この方々は聖人様たちだ、きっと俺たちを赦してくださるだろうさ」

 イリューシュは笑った。他の彼の仲間たちも哄笑した。マコトヤは冷笑を泛べ、言う、

「いいのかなあ、首領イマニュ、せっかく、小生らを上から攻撃しようっていう名案だったのに。勿体ないなあ」

 静かな声であったが、静寂の中、よく響いた。



 すると、どうだろう。それを聞いて、突如、雪を蹴散らして姿を現わせるは、腹を抱えて笑う人狼沙門、山賊どもよりも高い位置、完全武装し、数十名。

 それを見上げて、あ然とする山賊ども。

「何てこったい!」

「まいったぜ! 奇襲されるのは俺たちの方だったって訳かい?」

「完全に裏をかかれていたぜ!」

「やばかったな」

「危ねえ、危ねえ、降参して大正解じゃねえかよ」

「こんなこったろうと思ったぜ、あの頭領について行った日にや、命がいくつあっても足りねえや」

 イリューシュが笑いを堪えつつ、

「ってことだ。貴様らが攻撃しようって瞬間に、貴様らは全滅さ、上から下から挟撃されるってえ訳だ。

 負けたと思うなら、俺たちの下につけ。飯丈は保証する。人狼沙門どもは狩りや採取の天才だからな。倉庫からはみ出すほど、食うものはあまってる。

 その代わり、おまえらは当面、人狼以下の預かり身分だぜ」

 イマニュは呵々大笑した。

「まいった! 本当にまいった! どうか、こんな俺らでよけりゃあ、手下にしてくだせえや」

「応ともよ、来い」 



 かくして一同はぞろぞろと砦、龍肯の城砦に引き返した。

 山賊どもは砦の外の焚火で煮る大鍋の野兎スープを振舞われ、早速、自分らの住む小屋の製作に取り掛かった。

 それ以外の主要な者ども、暖炉の前にマコトヤを中心にイユ、イリューシュ、エリイ、アヴァ、アガメムノン、マハールーシャ、リヨン、ガリオレ、リカオンなどが集まった。しばし、和やかに白湯など啜っていたが、

「アヴァの存在意義がわかった。まあ、そうだろうなとは思っていたが。

 アヴァローキティーシュヴァラ、観自在菩薩は観ること自在、遍く衆生を観て救う。普く実相を観て般若波羅蜜多を観取体得する。魔訶般若波羅蜜多心経に於いては、空の思想の語り手であった。

 実現者、実行者である。

 一つの仮説を置こう。イユを究竟究極の真義の実在実存だとする」

「んな、バカな」

 イリューシュが嗤うも、マコトヤは冷笑を泛べ、

「アヴァは真義の語り手、表現者、表出者、実現者、実行者であると言える。神髄はイユにある。いや、イユである」

「わたしがあ?」

「うむむ、凄い話なんだろうが、よくわからない」

 エリイが唸った。

 マコトヤは火打石を打ってパイプに火を点ける。

「本日、小生らが見た、あの現象を説明することができる、さように考えるならば」

 マコトヤはさらに自説を述べ、

「イユの力は癒しを基本とする。

 女性原理的なもの、陰と陽とで言うならば、陰。その最たる象徴は月だ。

 原始的な、暗黒時代的な獣性、湿潤の生命、本能、海馬、野性の叫びだ。

 易経で言えば、乾坤の坤。仏教で言えば、胎蔵界的だ。

 維持と育成、融合的、有機的、健やかな生命の充溢、時には暴力的なまでの、超越的氾濫だ。

 女性原理だからと言って、優しいとは限らない。生の全体を網羅する力だからだ。豊穣、気紛れ、非情なる大自然、大地、水、龍神、歓喜と幸福と養生と暴虐と音楽と舞踏と陶酔、()()()()

 美と詩歌。デオニュソス的な、又はオルフェウス的な。

 それに比して、聖剣は男性原理的、太陽、乾坤の乾、破壊と創造、金剛界的だ。乾燥して明晰、禁欲的理想主義、合理主義、苦行、死、生存からの厭離。静謐、アポロン。ロゴス、イデア。

 イユと聖剣とは、陰と陽の関係でもある。すなわち、陰陽が互いに補完する時、それは太極をなし、究竟究極の真義を生む。世界最強の力を生む」

 マコトヤは懐から陰陽図を出す。白い勾玉型のものと黒い勾玉型のものとが重なって、円を象っている図だ。

 背反する陰と陽とがぴったりと重なって、一つの円を作り、完全なるもの、全網羅的なるもの、究極ということを表し、すべての本源である太極という概念の意義を表現している。

 マコトヤはいつもこんなものを持っているのかと、イリューシュは頓珍漢なことで感心していた。

「陰陽それぞれが極まって、陰が陰であることを超越して陽となり、陽が陽であることを超越して陰となる時、双方甚深微妙に相合わさって、太極をなす。

 太極は一切を網羅する究竟の原理である。万象をなす。

 それ、すなわち、全肯定なる龍肯の義を全うする。

 すなわち、太極をなすことは龍肯をなすことでもある。

 だが、龍肯は普段は現れない。

 なぜなら、究竟の力であり、全世界(無際限に存在する一切の平行宇宙群もその一部)である龍肯、それはすべてであるがゆえに差異をなさず、されば特性も出だせず、差異も特性もなくば、現実には顕現し得ないからである。

 なのであるが、差異なくしては顕現し得ないと言っても、現実には摩訶不思議な機らきにより顕現することがある。

 さように敢えて顕現するがゆえに、差異及び特性を帯びねばならず、陰か陽のいずれかの性質を帯びて顕現するのだ」

「なるほど、そこまではわかるな」

「聖剣の場合は剣の本質である陽として性質を帯びて顕現する。本来、両義全義である龍肯が陽の性質を帯びて顕現する。現に今回、陽の性質(金剛界的な性質)を帯びて顕現していた。

 どうやら、これが聖剣の奥義らしい。

 究竟真義である龍肯を顕現するから、イユの真咒を受けた聖剣の破壊と攻撃の力は凄絶なのだ。

 宇宙など軽く凌駕する。

 龍肯の聖剣が龍肯の聖剣になるのは、イユがいればこそなのだ。

 そうであったとすれば、ジン・メタルハートなど相手にならなかったのは当然だ。いや、未だ今のうちだから、こんなもので済んだが、次に会うときは骨も残らないだろう」

「あの、ジン・メタルハートがか」

「他にジン・メタルハートがいるか? まあいい、小生が今言ったとおりだとすると、一つの推測が成り立つ」

「何だよ」

「対をなす者がいてもおかしくないということだ」

「どういうことなの?」

 イユが訊くと、マコトヤは鬚を擦りつつ、

「胎蔵界を金剛界が補完して究竟究極の真義、太極、龍肯の義をなす存在もあり得るということだ。

 金剛界系、男性原理系のイユがいて、胎蔵界系、女性原理系の〝何か〟を目覚めさせる、そういう組み合わせが存在するはずだ、ということだ」

「何だって!」

「さほど驚く話ではない。さまざまな組み合わせがあり得る。

 起こったことが現実だ」

「そりゃ、そうかもしれないが」

「たとえば、イリューシュの聖剣の金剛界的な力がイユに逆流して、イユが龍肯をなし、胎蔵界系の龍肯、女性原理系の龍肯、究極の陰の力を発揮するとか」

「どうして逆流が起こるか想像もつかんが」

「おまえが拒めば、起こるかもしれないな。又はおまえが激しくイユを護りたい、力を与えたいと希えば、あるかもしれない。基本おまえはイユを受け入れている。だから、普段は逆流など起こらない。

 いつも仲良くしていれば、金剛界系の龍肯が成立するんだ。

 ふむ、そう思えば、金剛と胎蔵を結びつける力は愛だとも言えるな。とすれば、いずれにも偏らない太極は陰陽の立場を超えた愛の完成とも言える」



「そうなのか。わかるような、わからんような。

 じゃ、話戻るが、金剛界系のイユが胎蔵界系の何かを補完して太極を起こす場合は、陰の力、女性原理、胎蔵界系の龍肯が起こるんだな」

「必ずしも攻撃とは限らないが」

「難しいなあ」

「わからなくてもわかっているし、わかっていても何も知らないのさ」

「余計わからん。

 そうだ、俺も思いついたが、純粋な龍肯ってないのか、ないのかって言うか、起こり得ないのか」

「純粋な龍肯って、何だ」

「だから、偏らない龍肯だ」

「偏らない?」

「金剛系とか、胎蔵界系とかに依らない、男性原理とか女性原理とかいう色のない、龍肯のあるがままの龍肯、って言うのかな、何かの特性を帯びない、うーん、何かの様相を呈さない、純粋な龍肯自体の龍肯」

「何となくわかった。

 それは、陰陽の両義を具有し、かつ陰陽のいずれにも偏らず、双方の力を発揮するというようなパターンはあり得ないのかということだな。

 結論から言えば、ない。逆に言えば、いつもどこにでもある。

 陰陽両義ならば、全肯定であって、他者がなく、平常道であって、何も起こらない。現象は偏りによって差異をなし、現出するからだ。

 我々に先天的に備わる思考のパターンに依ってな」

「ふうん、まあ、そうなんだろうけどさ、だからこそ、逆に、あったりするんじゃないかと思ったが」

「そうとも言える。

 機らきは不可思議だからな。

 思惟を軽く超える。論理は所詮、ツクリモノ(捏造)でしかない。論理性に根拠はない。

 そもそも、理由など必要なのか。

 世界(宇宙ではない。一切の平行宇宙をも含めたあらゆる界のことだ)の開闢以前には、物理的法則はなかったが、世界は起こった。

 理由のない現象もある。起こったことが現実なのだ」

「それだよ、それがあるかなって、思ったんだ。俺が世界で初めて思いついたのかな」

「いや」

「そうだと思ったよ」

「大昔から伝承されている。

 知る人は知る。

 有名な神の名で知られている。

 人類の最も原初的な神の一柱とも言える神、阿修羅だ。

 阿修羅と言えば、悪鬼羅刹を想い泛べる人が多いが、大本は光の神アスラ。

 究竟の始源神で、最も古い神、太古は月として獣を揺籃し、後には太陽となって稲や麦を育み、月と太陽が表裏をなす、陰陽両極の神となった。

 日本の奈良時代の阿修羅像が少年のようでもあり、少女のようでもあるのは、その本質を直観していたからだ。当時は未だその感覚が残っていたのだ、或いは日本の古代に丈、秘かに伝わっていたのかもしれない。

 一切を凌駕するような、途方もない金剛界の機らきと、途方もない胎蔵界の機らきが相対し、止揚して相極まり、互いに超越し合って、陰が陽となり、陽が陰となって、太極をなす時、両義的な、差異をなさずに、全肯定、究竟の肯定たる龍肯を維持したままの、純粋な龍肯が眼前に現れる、という説がある。

 真偽は確認のしようもないが、自在無礙の龍肯なら、あり得ない話でないことは確かだ。

 いずれにせよ、純粋なる龍肯(と言うのも可笑しいが)である究竟神アスラは喩えるならば、無際限な透明、ただの現実。顕現しても、何も起こらないかもしれない。ともかくも、予想がつかない。小生らに吉と出るか、凶と出るかはまったくわからない、わかりようがない、わかり方がない。

 もし、その力が敵となって、小生らを襲うならば、それは恐るべきことだ。史上空前の力がいたずらに動けば、宇宙も滅びかねない」

「滅多に起こることではないだろうな、マコトヤ」



「むろんだ。数千兆、いや、数千京の数億乗の一にも満たない確率だ。

 だが、なぜ小生が金剛界系のイユを懸念したかわかるか。

 胎蔵界系のイユが起こす金剛界系の龍肯と、金剛界系のイユが起こす胎蔵界系の龍肯が陰陽としてぶつかって止揚し、超越極まって太極を()す時、アスラは起こり得る」

「ぅううむ……。

 だが、自らを滅ぼす可能性もあるんだろ? まさかそんなことはすまい」

「だとよいがな。

 一つの求道に凝り固まった狂信者は得てして過ちを犯す。固執はプラスもあるが、マイナスも多い。

 執著の強い粘着質な人間は、自らの異常を認めるべきだが、往々にしてそういう人間は愚かしく矜持し、自分を正義と見做して顧みない。

 ストーカーとか虐待とかクレーマーとか、皆、その類だ。自分は赦されると思う愚かな人間だ。自分を赦すが、他人を赦さない。だから、己を顧みず執著し、粘着する。

 人間はさらさらしている方がよい人間なのだ」

「誰のことを言ってるんだ」 

「スパルタクスの皇帝モルグやシルヴィエの皇帝イータのことさ。

 いずれにせよ、今日起こったイユにまつわる現象から、さまざまな憶測が成り立つ。粗々雑把な理屈だが、これが今回の一件の収穫とも言える。

 さまざまな事象が繋がっていた」



 マコトヤがそう語っている時でも、アヴァは相変わらず、燦燦と赫く双眸で彼方を見つめている。聖堂の薔薇窓のように。

 イリューシュはエリイを紹介した。彼女は状況もわからぬまま、席を勧められ、毛皮の敷物の上に坐る。

「しばらく傷を癒すがよい。温泉もある」

 マハールーシャがそう言った。エリイは唇を噛み、無念の表情であったが、已むなしとあきらめ、黙って頷く。

「感謝する」

 そう言った。翼の傷には秘蔵の白い布が当てられ、イユの聖句が添えられる。

 岩の暖炉は赤々と、よく乾いた木を少し丈燃やしていた。

 塩漬けの肉が冷蔵倉庫から出される。木の串に刺され、じっくり炙られた。

 雪を溶かした水で、肉のスープが作られる。

 塩は岩塩だった。地層の圧迫を受けてできた岩塩柱が近くにあり、古代の岩塩採掘坑であったが、今は廃坑となっていて、残った岩塩をイリューシュたちがかき集めて肉の保存用に使っている。

 初期の頃(と言っても、わずか数日前までのことだが)の冷凍保存は、解凍が大変であったため、狩猟した肉の保存方法を塩漬けに切り替えているのである。



 さて、叡晰なる聖者、甚深なる般若波羅蜜の研究者、最も偉大な沙門マコトヤはエリイカに説明した。まるで教授の講義のようである。

「現存する古代資料『マニュアル』に拠れば、この世界は主に南大陸スール北大陸ノルテ東大陸オエステ西大陸エステで構成されている。

 総面積は二十億四千七百二十八万五千二百二十四㎢、陸地の面積は約五億九千五百七十六万㎢、現象世界の約四倍だ。

 今、小生らのいるこの聖なる山は、北大陸ノルテの北西部にある大山脈の一部で、アカデミア天領と呼ばれる聖域の東端にある。アカデミア天領の中心には、聖の聖なる真の学園都市がある。それがアカデミアだ。

 真理を探求し、真理を保持し、真理を深め、真理を護る。この真理とは、実在実存の真義の究竟の真奥の臍下丹田たる本質神髄のうちの心臓たるべき部分の精髄である魂魄を精製した純粋なる、大本元基なる神聖究極真を言う。

 アカデミアこそ生きる意味の至高であり、存在を支える柱だ。世界を構築する棟梁(アルケー=原理)だ。最も重要な場所だ。

 精神と魂の故郷。

 現象世界から来る人間の多くが、ここのどこかに着陸する。その由来は誰も、いや、今いる人間のほとんどは知らない。

 エリイ、あなたの目指す場所はどこか」

「よくわかっていないのだが、〝黒い皇帝のいる国〟だ」

 マコトヤの顔がわずかに曇る。

「なぜ」

 エリイも顔を訝しげに顰め、

「いや、そちらこそ、さような面持ちで、なぜ、訊くのか」

 マコトヤは暗鬱な思慮深いまなざしで、

「その名を聞いて、なぜと問わずにいられようか。

 あなたに教えよう、その国の名はスパルタクス。今まさに、このアカデミア天領に侵入し、神聖を冒瀆しようとしている帝国スパルタクスだ。

 そして、あゝ、口にするも忌まわしき黒い皇帝とは、スパルタクスの皇帝モルグ・マテリアル・ノワールソレイユ、黒い皇帝と呼ばれる。

 彼が統治するようになってから、スパルタクス帝国は、この真如の世界にあるまじき国となった。この北大陸に、神聖シルヴィエ帝国のような国がまた一つ増えたのだ。

 我らが()()()丈ではない。四つの大陸は大きく物質主義へと傾きつつある。

 この真如の世界は、かつては真義を第一とした。すべてに勝って優先されていた。

 しかし、いつしか東西南北の各大陸に物質主義、利益主義に走る傾向が生まれ、武のみを優先する超大国が生まれた。彼らが猛威を振い、自ずから弱肉強食がまかり通る世界となってしまったのである。

 その最たる者が神聖シルヴィエ帝国だ。アカデミアを簒奪し、物的にも精神的にも世界に君臨しようと画策している。

 十億を優に超える軍兵を以て我らが大陸を蹂躙せんとし、巨大な経済力を背景に、圧倒的な科学力で他国を圧していたが、スパルタクスまでもがモルグの統治の下、正義を顧みない、人を獣化させる、力丈の価値観を謳うようになった」

 エリイは表情を動かさなかった。

「あたしの往く目的はそういうこととは何ら関わりがない。

 私怨だ。強い私怨だ。大義を超える。

 人々のためを思うのも結構だが、世界中の人の苦しみを、もし如実に知る能力があれば、その者は生きることに堪えられないだろう。どれほどの信じがたい悲惨が、理不尽が、残酷があると思うか。どれほどの絶望が。

 人が他人の苦しみを他人事と思うのは、生き残るために已むを得ない智慧なのだ。いや、生き残るための本能だ」

 冷然と言うのである。

「復讐ということか。しかし、あなたは現象世界で生きていた。誰があなたに教えたのか、黒い皇帝の存在を」

 マコトヤが言うと、エリイは語った。

 

 


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