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第   九 章  エリイの事情 世界の事情



 土砂降り。



 捜査は遅々として進まなかった。エリイは部活が終わると、所轄の警察署に寄った。担当者がいないことも多かったが、最初のうちは、いれば差し支えない話をしてくれた。だが、三回目くらいからは、いても出て来なくなった。それでも通った。その後は、現場を確認に行くのが常だった。部活が午後六時半に終わるから、現場に行くのは八時過ぎで、暗い。


 エリイよりも強い姉がやられてしまったのだから、当然危険であったが、彼女の性分はそれを顧みなかった。


 姉は数か月前からストーカーの被害を受けていた。

 相手はまったく見知らぬ男で、下校の際、いつも尾行されていたらしい。或る日、姉は面と向かって文句を言ったが、男は何も言わず、背を向けて去った。肩を落としているように見えたので、快活明朗で直截的な性格の姉は、もう来ないだろう、と思ったらしい。


 陰質な人間の性分をよくわかっていなかった。


 攻撃は陰に籠もって激しくなる。姿を見せずに、盗撮し、それを家のポストに入れたり、通学路に破った姉の写真に血糊をつけて撒いてあったり、猫の死骸を家の前に置かれたりしたこともあった。


 両親は心配し、警察に通報し、警察官が立ち寄って帰った次の日、姉の写真を使った猥褻なコラージュ写真が家の近くの壁や電柱に貼られた。恐らくは家に警官が来ていたのをどこかから見ていたのだろう。姉は激怒した。


 警察官に激しく訴える。彼らは捜査すると言ったが、その悠長な態度に苛立って、待ち切れぬ姉は逆に待ち伏せて男を追跡し、アパートを突き止めた。表札に手書きされた小さな文字がある。伊香鎚磨迦という名であった。


 そのままの勢いで、乗り込んで痛罵し、警察へ連行しようとする。

「わかりました。行きます。支度をさせてください」

 マカ(磨迦)は、そう言った。

 姉は許した。その判断は明らかに、こどもゆえの甘さであった。


 最初に鉄の棒で後頭部を打ち、気を喪わせて、衣服を脱がして写真を撮って犯し、刺し、ゴキブリの餌を播いた。死骸をゴキブリに喰わせようと考えたらしい。むろん、遺骸を消滅させようとしてのことではなく、ただ、「復讐」のため、ゴキブリの餌にするという、彼女がもし生きていたならば、最も嫌がるような、怖しいことをしてやろうという動機、「恨みを晴らす」ためであったらしい。


 遺体は十日後に、あまりの腐臭のため、近所の人が通報し、家主から鍵を借りた警察官が発見した。その部屋の住人の姿はない。

 解剖の結果、姉は最初の後頭部の打撃で意識を喪ったが、まだ生きていて、頭部への衝撃によって脳内出血し、嘔吐した痕跡があった。だが、マカはそれを平然と、容赦なく強姦したらしい。


 その話を聞いて、エリイの憤りは頂点に達した。

「必ず殺す」

 もし、この怒りが正義でないなら、正義など要らない。もしくは、正義など、この世に存在しないものの名だ。その想いが貫く。


 マカは殺害後、逃亡していた。エリイは警察の逮捕の報告を待った。災厄はそればかりではない。



 ニュースが流れ、ネットのパッシングが起こった。

『自分から男のアパートに言ったんだって(笑)』『女子高生だろ、男の部屋に行くって、どういう意味かわかるだろw』『その気がなきゃ行かねーでしょ(笑)』

 匿名性に隠れた、卑怯で、陰質で、執拗な攻撃である。エリイカが少しでも反論しようものなら、さらに炎上した。


 無数の憤りを抑え、エリイは男を探すことに集中した。

 見つからない焦燥の日々に滾る。ようやく、マカが逮捕された。彼はただ罪を逃れたいがために、「女が誘った」、「同意の下だった」、「女の方から先に暴力を振るった」などと、嘘を主張し、弁護士は「心神喪失状態」と言った。


 エリイは憤激する。

「心身を喪失すれば、人を殺してもよいのか。そういうことじゃないと反駁するだろうが、結果的には、そういうこと以外の何ものでもない。被害者の家族にとっては、そうだ。あたしたちの心情は顧みられないのか」


 エリイは警察に、姉の性格や、武術をやっていたことや、暴力を振るうことがあったかなどと訊かれた。まるで犯人扱いだ。

 憤りと悔しさで魂も裂ける日々。


 そんな時である。

 あろうことか、男は拘置所から姿を消した。何という警察のずさん。世間の非難はやや矛先を変えたが、実際、不可思議なことであった。

 まるで、消えたようにいなくなったらしい。

 エリイは説明を求め、警察署に行き、警察官に詰め寄ったが、口は閉ざされていた。

「捜査に関することは言えない」


 憤懣悲憤の涙。この絶対の正義の憤りが通らないならば、この世界に何の価値もない、消えてしまえ、そう思った。そう思い続けた。もはや日も夜もわからないくらい、思い続け、憎み続け、怒り続け、悲しみに裂かれた。その頃のことは、思い出そうとしても思い出せない。

 だが、眠れず、食べられず、狂しい憤りの日々を過ごすうち、次第に、神秘的な、忘我恍惚の状態が訪れるようになった。何かを感じていた。予感していた。憤死狂死の日を、だろうか。

 わからなかった。しかし、感じていたのである。



 或る日、部屋に帰ると、白い貴公子がエリイを待っていた。家人は気がついていない。気がついていれば、彼女に言ったであろう。

 どこから入って来たのかさえもわからない、高貴で玲瓏な顔立ちに氷のような金髪を垂らした男を、彼女は怖れなかった。まるで、最初からそれを知っていたかのように。

 自分でも不思議だった。部屋にいることに、驚きすらしなかったのだ。

「おまえの捜す男は見つからない。この世界にいない。歪んだ拝物思想に憑かれた権力者に招かれたのだ。獣性を本来あるべき姿と捉えた逆転遡行の思想家にな。

 さあ、どうするか。

 来るだろうな。おまえは来るだろうな。必ずや。そこがどんな世界であろうとも。

 そうだとすれば、おまえの姉の死も畢竟、なるべき運命だったのだ」

 エリイは怒り、呆れた。

「意味がわからない。運命だって、よくもそんなことを」

「それだ。そうやって、憤怒に滾り、炎の巫女の性のなすがままに、おまえは奴を追って、その世界に行くことになるのだから。

 おまえのその性格もそのためのものでしかない」

「何を言っているのかわからない。奴は別の世界に逝ったということか。そんな話が信じられるか」

「見せてやろう。たとえ、信じられなくとも、見たものは、まさしく見たのだ。仮に真実ではなかったとしても、切実ならば、現実なのだ。人間である限りは、そこから逃れられない」

「おまえは、いったい」

「レコンキ・レヴォリューノ。ヴィスコンティ州の侯爵、白い聖騎士団の騎士、スパルタクス帝国の譜代の臣だが、帝国の運命を憂い、敢えて大恩ある皇帝家に背く者。それもまた、君主の真意と国家の真の未来を思えばこそ。

 我こそは『革命の騎士』の一人でもある」

「革命?」

 レコンキはそれに応えなかった。

 空間を、まるで紙を手で裂くように、びりびりと裂いた。空間であった場所が平面な幕で、現実がそこに映った画像であったかのようである。その向こうには、鮮やかな世界があった。

 白い山脈、深い森、湖、大河、緑の草原、壮麗な帝都、輝く鎧を着けた数万の兵士たち。

 エリイは見た。一瞬ですべてを。

 壮大な世界だ。大帝国。

 そして、さらには…………

 皇城の謁見の間で、荘厳なる皇帝を拝謁するイカヅチ・マカがいた! 黒山羊の頭を被り、カラスの羽根で作った長いマントを羽織っている。自分の血の狂気にすっかり陶酔していた。

 皇帝が皇杖を振り、言祝ぎ、荘厳に恩寵を賜る仕草をする。その言葉は、

「おまえも今日から、自然の発生する魔性、瘴気、貪瞋癡、湿生の生命、超越的で非情な、サイケデリックな悪魔だ。

 何と魅惑的なことか。古来伝承の文様のように。

 マカ、悪魔マカとしてこの真如の世界に転生せよ」

 エリイはゆっくりとレコンキを振り返った。爛爛たる火の鳥のまなざしで。

「あそこへは、どうやって行けばいい」

 レコンキは欣然と微笑んだ。底意に満ちたまなざしで。 

「造作もないこと」



 

 そこまで話すと、エリイは嗚咽した。

「少し休んだ方がよい」

 マコトヤの指示でエリイに部屋が与えられ、彼女が下がっても、イユは暫時涙していた。止まらない涙を見て、イリューシュが心配し、

「ひどい話だぜ。しかし、イユ」

「違うのよ、イリューシュ。わたしにはエリイの気持ちがよくわかるの。わたしも兄を殺されたわ」

「え」

 イリューシュは黙った。心なしか蒼白に見える。

 イユも努めて涙を抑え、ようやく動揺が冷めると、今度は山の天気のように早変わりし、不満たっぷりの顔であった。マコトヤへ言う。

「あんな話は今まで聞いたことがなかったわ」

 マコトヤは微笑する。

「あんな話とは」

「北大陸や南大陸とか、地理のことよ」

 彼は平然と、

「訊かれなかったからね」

「わたしだって知らないから訊きようがないわ」

「小生も訊かれなくては答えようがない」

 イリューシュが間に入る。

「まあ、いいじゃないか。

 ちなみに、マコトヤ、古代資料『マニュアル』とやらは、いったい、どこに所蔵されているんだ」

「写本であれば、各地の大きな修道院や神殿にあるね。

 何よりも、アカデミアに、そのオリジナルがある」

「いつか行ってみたいな、そのアカデミアとやらに。俺も何か気になる、その『マニュアル』ってのが。

 どうも引っ掛かるんだな」



 板で仕切られた部屋に下がったエリイは、しばらく興奮が冷めなかった。忘れる日はないのに、まざまざと見せつけられたような気分だ。辛い思い出だった。

 今は悲しみ苦しむ時ではないと、心を律す。冷静に無慈悲になるべき時であると再び決した。深紅の翼を持つ復讐者の双眸は冷厳に沈む。

 リンレイが来た。

「いいですか」

「いいよ、どうぞ」

「お風呂です。湯浴みしてください。温泉から汲んでますので、薬効もあります。傷を癒します」

 香り高いシーダーの樹木を刳り抜いて作った大きな浴槽に、湯気の立つ温泉の湯がたっぷり入っている。山賊らが運んだ温泉の湯を沸かして入れたものだ。こういうことがいとも簡単にできるようになったのは、短い期間で登窯式の暖炉や竈や湯沸かしなどが増設されたためであった。ガリオレがさまざまな都市計画とともに、温泉を直接引く方策をも検討している。

 ほんの一瞬、エリイは(男っぽい自分を棚に上げて)少年のようなリンレイの前で脱ぐことを躊躇ったが、バカバカしいと思い直し、さらりと衣を落とす。

 素足の指先が浸かった瞬間から、

「あゝ、何と心地よいことか。気持ちいい」

 静かに身を沈めて、

「手の指の先、足の指の先に血流が甦る。あゝ、疲れが癒えるよ。暖まる。素晴らしいものだな」

 湯の源泉は特に傷を癒すものを選んであった。湯治も目的の一つであったからである。肉体と精神がともに癒されるような癒しをエリイは感じた。

 湯を掛けながら、リンレイはふと気がつく。

「これは」

 思わず声にしてしまう。それは刺青に見えた。だが、巫女であったという彼女に刺青があるのも(古代ならいざ知らず)不自然で、訳ありとも思い、言及すまい、と思うのと、声が漏れるのと、同時であった。

「え、何」

 エリイも何ごとかと思わざるを得ない。

「いえ、何でもないんです、あゝ、大したことじゃなくて、これです。この二の腕のところに」

「何だろうか、こんなものはなかった。もっとも、こっちの世界に来てから服脱ぐことがなかったから、いつできたものか。

 痣かな」

「それにしては形が整い、きれいに見えます。鳥でしょうか」

「鳥?」

「翼を広げた鳳凰のようにも見えます。美しい、赤くて」

「自分では見えにくいが。うむ。どれ、どれ。っしょ。ん?

 ……え?」

「どうしたんですか」

「これは」

「何ですか」

「紋だ。我が神社の紋だ」

「鳥なんですか」

「火の鳥、なぜこんな痣が」

「何だか、気のせいか、ますます鮮やかになって、かたちも細かく、はっきりしたように思いますが」

「湯のせいだろう、血行が良くなって、色つやが。

 不思議だ、刺青と言われても仕方ない」

 その話は、それで終わった。


 リンレイは手ですくった湯をエリイに掛けながら、柔らかい布で拭く。そうやって湯浴みを手伝いながら、スパルタクスへの道程を話した。エリイは聴きながらも、奇妙な感触を覚えざるを得ない。 

「スパルタクスへ行くなら、直線の陸路よりエジンバール川を船で行くのが速いし、確実なようです。このまま峡谷を南下し、ヴォゼヘルゴに入り、ストラングラーという地方都市を目指すとよいとのことでした。霧深い街らしいですよ。

 ヴォゼヘルゴは、かつてシルヴィエ神聖帝国の策略で内乱状態になって危険でしたが、神聖帝国の勢力を撃退したクラウド=レオン・ドラゴ連邦の一部となって、今は非常に安定しているようです。

 クラウドは、三年前の神聖シルヴィエ帝国とクラウド=レオン・ドラゴ連邦の大戦の後は、この世界で、最高に正義が生きている国と言っても過言ではありません。

 アカデミアの守護者です」

「そうか。傷が癒えれば、すぐ出発したい。あゝ、焦燥する」

 湯の成分が沁みて、傷が快癒するように覚えた。傷が癒えるような気がすると、心もわずかに安らぐかのように感じる。

 

 

 さて、その頃。

 誰もがマコトヤの説いた言葉を考え、解釈し、憂慮した。

 最大の関心事が聖剣のことではなくなり、究竟神アスラがもしも敵方になったら、ということに変わってきている。

 リンレイがそれを問うがため、マコトヤの部屋(区画)を訪れると、既にアガメムノンが来ていた。イリューシュもいた。マコトヤは語った。

「むろん、聖剣が大きな鍵だ。

 イユの対になる金剛界的なイユの議論は公式にされたことはない。むろん、ありふれた思考なので、多くの識者や、ちょっと学問を齧った者でも考えついているであろうことは間違いないが、たとえば、神聖シルヴィエ帝国がそれを学究しているという話は今まで聞いたことがない。

 アスラについても同じだ。

 実は先ほどから、ずっと考えているのだが。やはり……」

 マコトヤの眼が集中し、何もない虚空の一点を見つめる。

「アスラの顕現は、いつもあるがゆえに、絶対にあり得ないのではないか、という結論だ。実際、今まで起こったことがない。

 もっとも、金剛界系の龍肯の力が起こったのも、イリューシュの持つ聖剣で初めて見たくらいだが」

「何だよ、それじゃ当てになんねえな……、ちょっと待て、じゃ、俺が世界史上初?」

「そうとも言える。有史以降はない」

「有史以前は」

「記録がないから、確かめようがないだろ」

「じゃ、ないのか」

「わからないな。

 ふむ。今、急に思いついたんだが、すなわち、アスラが顕象するとしたらどういう状況かということだが」

「何だよ、どっちなんだよ、あり得るのか、起こるのか」

「わからない。

 だが」

「だが?」

「陰が極まって陽となるように、又陽が極まって陰となるように、常識を遙かに超えた途方もなく大きな力が炸裂すれば、何が起こっても不思議はない。途轍もない、物凄く大きな力が起これば、あり得るかもしれない、アスラも」

「なるほど」

「物凄く大きな力だ、むろん。

 超弩級の力、一切の平行宇宙をもそのほんの一部でしかないとするほど無際限に巨大な、いわゆる全世界を凌駕し、その世界のすべてを吹き飛ばし、超越するような、途方もない力が起これば」

「だから、聖剣が狙われるのか」

「いや、聖剣では無理だ。それをしようとするならば、求めるものは聖剣の力ではない」

 黙って聞いていたアガメムノンが眼を丸くした。

「不足だというのか、イリューシュの持つあの聖剣では。あんなに凄いのに」

「不足だ。むろんだ。さすがに不足であろう、今、小生が言った言葉が理解できていないようだな。全然不足だ」

 リンレイも問う、

「大きな力って? たとえば」

「すぐに思い泛ぶの龍神だ。これほどの巨大な力はない。龍族のうちで知られる限り、最大のものは、幾千の平行宇宙を跨ぐほど巨大で、髭がかすった丈で一つの宇宙が消滅するとまで言われる。

 龍神は水であり、陰であり、胎蔵界の原理で動く。

 それがもし金剛界系のイユの力を受けて発動する、胎蔵界の本質を帯びた龍肯として顕現するならば、アスラを生むための一方の力(胎蔵界の力)として足るであろう」

 イリューシュは銀嶺の方角を見上げた。

「龍の力なら、ここにも機らいているようだが」

「そのとおりだ。龍神の背がある。恐らくこのイデアの大地(イデアの地球、イデア・アース、Idea Earth 、IE)に於いては、最大の龍神力であろう」

「では」

「ここも起こり得る場所の一つだ」

「じゃ、もう一つの超弩級の力がここに来れば」

「それは、いったい、何だ」

「いくつか考えられるが、龍神の永遠の敵と言えば」

「鳥だ。蛇の敵が鳥であるように。それは」

「あゝ、そういう話なら聞いたことがある、迦楼(かる)()天、ガルーダだ」

「だけど、それはどこに潜んでいるのか。ここに来させるように、図っている奴がどこかにいるだろうか」

「まったく、わからないね。小生も迦楼羅が怪しいとにらむが」

「ガルーダを扱う民族や国家があるか、あるいは団体、いや、個人でもいいが」

「東大陸のリョンリャンリューゼン(大華厳龍國)か、イン=イ・インディス(殷陀羅尼)だろうな。

 しかし、彼らはこの問題で表舞台には出て来ていないから、そういう謀りごとがあるかどうかについては、何とも言えない」

 イリューシュは問う。

「今、我々の眼に見え、知性で理解できる、諸々の現象から推測すれば、シルヴィエとスパルタクスという二つの大帝国は、聖剣を狙っている。彼らが金剛界系のイユを探しているとか、アスラを研究している痕跡はない。

 取り敢えずそういう了解でよいか、マコトヤ」

「小生のアンテナでつかんでいる範囲内で考えれば、そうだ。それが情報のすべてを網羅していないことを小生自身も承知しているがね」

「だが、知る限りに於いては、イユと聖剣が狙いなんだろ? 狙いがイユと聖剣なら、イユと聖剣を集中して守ろう。他については、取り敢えず捨て置く。

 それでよいということになる」

 マコトヤは黙った。ミカエロが来た。

「その断言は危険だな。いろいろな可能性を考えておこう」

 マコトヤもうなずいた。

 アガメムノンが言う、

「とは言え、現実優先だ。

 帝国スパルタクスは既にクラウド・レオンドラゴ連邦内に入っている。アカデミア天領との境は間近だ。峡谷を溯って来るつもりであろう。

 シルヴィエの艦隊が北極圏の海を渡っているという情報もある」

 

 

 

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